DNAを素材とするナノ光・電気回路の高精度・大量 生産に適したナノ構造作製技術 東京工業大学 大学院総合理工 学研究科 准教授 村田 智 1 研究の背景 今日の高度情報化社会は半導体デバイスの微細化技術に より支えられている.しかしリソグラフィーによるデバイスの 微細加工はその分解能において限界に達しつつあり,高度 情報化社会の持続的発展のためには,デバイスの超微細化 と高性能化を低コストで実現する新たな製造技術が必要とさ れている. 2 従来技術の問題点 これまでに作られたナノサイズの金属構造は,おおよそ, (1)プローブ顕微鏡を用いたスポット的な構造, (2)粗い表面などの自己組織化的な構造, (3)金属ナノ微粒子の固定, (4) 集束イオンビーム(FIB)や電子ビーム(EB)を用いて作製さ れた構造 に限られている. (1)〜(3)では,自由な構造を作るのが困難であり,(4)は高い機 能を持つナノ構造を作製するには精度が不十分である.また, (4)はコストが高く,構造作製後に任意の場所へ分子やナノ 微粒子を固定化する技術が確立されていない. 3 提案する技術 本技術は,人工的に合成したDNA分子を素材とするナノ構 造の作成法にかかわるもので,何種類かのDNA分子を試験 管の中で混ぜ合わせるだけで,設計したとおりの精密なナノ 構造がひとりでにできあがるというもの.そのための新しい 構造要素(セルフアセンブリモチーフ)の提案を行う. 4 提案する技術の特長 人工核酸分子によるプログラムナノ構造体の作製技術はこれ らを一気に解決する可能性を持っている.すなわち, (1) ナノ構造を10nm程度の精度で自在にデザインできる. (2) 溶液中で一度に大量の構造が作製でき,特殊な装置を必 要としない. (3) 化学合成により任意の位置に分子やナノ微粒子を固定化 することができる. (4) 高分子マトリクス中への分散が可能 5 これまでに提案されたDNAナノ構造とのちがい 従来のDNAナノ構造はDNAタイルとよばれる14×4×2ナノ メートルの大きさの構造単位(モチーフ)がよく使われている が,剛直な平面構造しかできないという制約があった.ここで は,より単純なモチーフで,3次元結晶構造やその他の多様 なナノ構造を構成可能なものを提案する. 本提案の特長 (1)つくれるナノ構造の分解能が高い(~10ナノメートル) (2)直交継ぎ手モチーフにより3次元結晶構や空洞のあるナノ 構造などバリエーションがひろがる (3)少ない種類のDNA分子で構造が作れる(平面構造ならば2 種類でOK) 6 想定される用途 • • • 高密度磁気記録媒体(現状の100倍の記録密度) ナノ光・電子デバイスの骨組み構造として(従来の 方法では作成不可能な分解能をもつデバイスを安 価に製造) タンパク質結晶解析(DNA結合性タンパクの無条件 結晶化) 7 実用化に向けた課題 • 現在、平面状のナノ構造についてある程度の 規模の成長が可能なところまで開発済み。し かし、3次元化が未解決である。 • 今後、結晶成長条件について実験データを 取得し、磁気記録媒体等に適用していく場合 の条件設定を行っていく。 • その場合,実用化に向けて、磁性ナノ粒子の 固定化技術の開発が必要。 8 企業への期待 • 未解決の結晶成長技術については、モチー フの改良および結晶成長の精密な環境制御 技術により克服できると考えている。 • 幅広い応用分野をもつ化学系企業との共同 研究を希望。 • また、微細ナノ構造を必要とする企業、ナノバ イオ反応場等への応用を考えている企業に も、本技術の導入が有効と思われる。 9 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :核酸構造体及びその核酸 構造体を用いた核酸構造物 • 出願番号 :特願2008-012050 • 出願人 :東京工業大学 • 発明者 :浜田省吾,村田 智 10 お問い合わせ先 <技術的内容> 東京工業大学 准教授 村田 智 TEL:045-924-5680 FAX:045-924-5680 e-mail :[email protected] <技術の育成及び特許の取扱等> 東京工業大学 産学連携推進本部 特許流通アドバイザー 鷹巣 征行 TEL:03-5734-7634 FAX:03-5734-7694 e-mail :[email protected] 11
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