10 プラスチック上にも形成できる 高速薄膜トランジスタ 島根大学 総合理工学部 電子制御システム工学科 梶川 靖友 トランジスタとは ソース電極金属 絶縁体膜 ゲート電極金属 ドレイン電極金属 半導体結晶 電子の流れ (電圧) 通常のトランジスタ VS 薄膜トランジスタ(TFT) (コンピュータなどの集積回路) (液晶ディスプレイ) 1万分の1mm ソース ゲート ドレイン ソース Si単結晶 0.5mm 電子の流れ 電子のスピードが速い ゲート ドレイン ガラス アモルファスSi これをプラスチックに またはSi多結晶 電子のスピードが遅い 高速化 電子スピード と 電子の移動度(易動度) 120 電子速度(cm/s) 100 80 60 この比例直線の 傾きが移動度 40 20 (単位はcm2/Vs) 0 0 5 10 15 電界(V/cm) トランジスタ用半導体は移動度が命 多結晶 (多数の結晶粒の集まり) 単結晶 電子 非晶質 (アモルファス) 電子 高速 平坦な舗装道路 舗装の途切れた道路 低速 でこぼこ道 従来技術 ガラス 薄膜トランジスタ 個々の画素の液晶にかける電圧を ON/OFFするスイッチの役割 液晶ディスプレイ (アクティブマトリックス方式) 欠点:暗い アクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイ 長所:明るい プラスチック基板に 移動度が小さいと、十分な電流が流れない 従来技術とその問題点 曲げられる有機ELディスプレイ用には、 プラスチック上にも形成できるほどの低温で製膜でき、 しかも、移動度の高い半導体薄膜材料が必要 高形成温度 移動度 非晶質シリコン 低(◎) 低(×) 多結晶シリコン 高(×) 高(○) 非晶質シリコン 低い温度で形成できるためプラスチック上にも形成できるが、 電子移動度が低いため、スピードやパワーが出ない。 多結晶シリコン 高い電子移動度を持つが、 形成には高温が必要なのでプラスチック上に形成するのは困難。 新技術 曲げられる有機ELディスプレイ用の半導体薄膜材料 として、 III-V族化合物半導体の混晶のひとつである InGaAsの多結晶薄膜 を用いる InGaAs多結晶薄膜とは? 半導体の種類 IV族 元素半導体 III-V族 化合物半導体 II-VI族 化合物半導体 Si, Ge GaAs, InP ZnO, CdTe 混晶 InAs : GaAs = 7: 3の混晶 InAs : GaAs = (1 - x) : xの混晶 In0.7Ga0.3As In1-xGaxAs 半導体の用途 Si InGaAs 単結晶 トランジスタ 多結晶薄膜 トランジスタ 集積回路 液晶ディスプレイ 高周波用トランジスタ (携帯電話、衛星放送) 曲げられる 有機ELディスプレイ 毒物 無毒 リン化合物 ジクロルフォス リン酸カルシウム メタミドフォス InP, GaP ヒ素化合物 亜ヒ酸 InAs, GaAs InGaAsに毒性はない 300℃まで耐えられる 耐熱性プラスチック 基板を200℃程度に加熱し、InGaAsを分子線蒸着法により堆積した 分子線蒸着装置 Molecular-beam Epitaxy (MBE) As Ga In 原子間力顕微鏡(AFM)での観察結果 電気的特性の組成による変化 103 電子移動度(cm2/Vs) 電子濃度(cm-3) 1019 1018 1017 1016 1015 1014 0 0.2 0.4 Ga組成 x 0.6 102 101 0 0.2 0.4 Ga組成x 0.6 新技術の特徴・従来技術との比較 高形成温度 移動度 非晶質シリコン 低(◎) 低(×) 多結晶シリコン 高(×) 高(○) 多結晶InGaAs 低(○) 高(◎) フレキシブルな 薄膜トランジスタ用 材料として有望 電子移動度(cm2/Vs) 1000 Si単結晶 多結晶 InGaAs 100 多結晶Si 10 多結晶 ZnO 1 非晶質 Si 0.1 0 200 400 600 形成温度(℃) 800 1000 多結晶のSiやZnO 多結晶のInGaAs 低速 高速 電子 電子 結晶粒 結晶粒 粒界 粒界でのエネルギー障壁が高い 結晶粒 結晶粒 粒界 粒界での障壁がほとんどない 電子移動度のアレニウスプロット(測定温度に対するプロット) 1000 x=0 電子移動度 [cm2/Vs] x=0.19 100 x=0.3 x=0.36 10 x=0.44 Ga組成 x=0.53 1 0 2 4 6 8 1000/T [K-1] 10 12 14 電子移動度の活性化エネルギー(障壁の高さ) 400 Si多結晶 基板温度350℃ 基板温度200℃ CdTe多結晶 E μ[meV] 300 CdS多結晶 200 100 0 0 CuInSe2 (CIS)多結晶 0.2 0.4 Ga組成 0.6 ・InGaAs多結晶薄膜を分子線蒸着法にて堆積させた。 このとき,基板は200~300℃に加熱した。 ・基板加熱温度が低いので 耐熱性プラスチック(ポリイミド)上にも堆積できた。 ・電子移動度は,500cm2/Vsと Si単結晶に匹敵するほど高かった。 ・電子移動度が高いので,有機EL素子の電流駆動用の フレキシブルなトランジスタとして利用できる。 想定される用途 ・有機ELディスプレイ駆動用トランジスタ ・曲面形状の高速電子回路 ・シート状パソコン 実用化に向けた課題 ・Role-to-role製膜装置の開発 企業への期待 ・薄膜トランジスタを試作できる企業、 Role-to-role製膜装置を開発する企業 との共同研究を希望。 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称: 出願番号: 出願人: 発明者: 半導体多結晶薄膜及び半導体装置 特願2007-322712 国立大学法人島根大学 梶川靖友 問い合わせ先 島根大学産学連携センター 地域産業共同研究部門 教授 北村 寿宏 TEL : 0852-60-2290 FAX : 0852-60-2395 e-mail: [email protected] 島根大学産学連携センター 知的財産創活部門 教授 阿久戸 敬治 TEL : 0852-60-2290 FAX : 0852-60-2395 e-mail: [email protected]
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