活動報告 [PDFファイル/250KB]

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東洋大学人間科学総合研究所 2015 年度活動報告
■研究チーム③
ビジョンと対話力を育てる大学教育
研究チームの研究課題名
ビジョンと対話力を育てる大学教育
チームリーダー
小林 正夫(社会学部社会文化システム学科・教授)
研究分担者名
研究員
迦部留 チャールズ(文学部英語コミュニケーション学科・教授)
斎藤 里美(文学部教育学科・教授)
篠崎 信之(文学部教育学科・教授)
鈴木 哲郎(ライフデザイン学部健康スポーツ学科・教授)
藤本 貴之(総合情報学部総合情報学科・准教授)
藤本 典裕(文学部教育学科・教授)
客員研究員
阿部 祐子(国際教養大学国際教養学部・准教授)
松村 直樹(株・リアセック/東洋大学非常勤講師)
2014 年度までの研究プロジェクトを振り返って
大学教育をめぐっては、近年、学生が4年間に学力だけではなく、自律的に課題を発見し対処でき
る能力を身につけるべきである、という風潮が高まっている。本チームは、2013 年度に、これまで研
究チームとして構成員相互に議論を重ねてきた内容を、授業の場を通して学生にぶつけ、その反応を
探る場として、東洋大学の白山・朝霞・川越の3キャンパスを結ぶ「全学総合科目」を、秋学期に開
設した。その狙いは複数あり、一つには、チーム内で検討してきた、昨今の大学教育に関わる新たな
視点を、専攻を異にするメンバーが、それぞれが得意とする分野で、
「学生の成長のきっかけとなる授
業」として提案してみよう、という教育研究から教育実践への踏み出しであった。また、東洋大学と
いう現場において、各キャンパスの様々な人財・教育や課外の諸活動・あるいは教員のネットワーク
や専門性を活かす様々なネットワーク機能の活用など、多様なリソースの存在を学生に提示する、と
いう大学改善の試みでもあった。そして、私たちが向き合う現在の学生が求めるものを知り、彼ら彼
女らの視点を再認識するための機会でもあった。
この「全学総合ⅠB」の授業形式は、やや特殊である。東洋大学の白山・朝霞・川越3キャンパスで
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ビジョンと対話力を育てる大学教育
同時開講する、テレビ会議システムを用いた相互通信型授業として運営された。また、一方的な講義
ではなく、学生の意見表明や教員総互間の討議を実況中継することを原則として、言い換えると、聴
講生とともに場を作り上げる形の授業として運営された。2013 年度は、はじめての年度であり、各担
当者は、機器の扱いやキャンパス間のカメラを通すやりとりに戸惑いつつ、学生の積極性と聴講者の
多さに後押しされて、試行錯誤を重ねた。
2014 年度は、その経験を活かしつつ、総合情報学部から新しいメンバーを加え、チームが対象とす
る大学教育の守備範囲を広げた。この年も受講者は引き続き多かったが、年度末の 2015 年 1 月に、研
究チームとして、全学総合ⅠB の講義をベースにした公開ワークショップを実施した。多人数講義で
は、学生との「対話」と言ってもその機会が限られるが、シンポジウムでは「学生の企画・発案によ
る授業の可能性と実現にむけた課題」として、参加した学生との突っ込んだ質疑ができた。その中で、
教員側の印象に残ったのが、学生の所属学部によって就学目的や学修目標などに差があるのではない
か、という点であった。
当該年度の研究活動
1.全学総合科目3年目の改善
2015 年度は、過年度と同様に秋学期開講で、白山・朝霞・川超の各キャンパスを結ぶ形で、
「全学
総合ⅠB」を開講した。なお、2013 年度の開講以来、担当者として授業に関わり、それ以前より、キ
ャリア教育という分野で研究会や書籍執筆に加わり、討議に参加していただいたリアセックの松村直
樹氏と、2014 年度からメディア論の立場で授業に参加している藤本貴之氏が、研究チームの正規メン
バーに加わった。また、2014 年度に海外特別研究で不在だった迦部留チャールズ氏が、授業と研究会
に復帰している。2015 年度の各回の講義内容と狙いとする分野(括弧書き)は以下のとおりである。
第1回
講義のねらいと方法
第2回
篠崎信之「学生生活とソーシャルスキル」 (コミュニケーション力など)
第3回
藤本典裕「大学に求められるもの-その変遷」 (大学教育論など)
第4回
藤本典裕「消費する大学・消費される大学」 (大学教育論など)
第5回
斎藤里美「学びのコミュニティをつくる」 (多様な学びの可能性)
第6回
小林正夫「海外での社会貢献活動に向けて:スタディ・ツアー、卒業後の進路」
(導入)
(グローバル教育)
第7回
阿部祐子「大学における異文化接触がもたらすもの」 (留学・異文化理解)
第8回
迦部留チャールズ「参画教育の可能性」 (多様な視座・
(広義の)政治意識)
第9回
松村直樹「大学の学びとキャリア形成」 (キャリア教育・社会人基礎力)
第 10 回
藤本貴之「メディアはデータをどのように伝えるか?:メディアが“作る”データの信頼
性」 (メディア論・社会論)
第 11 回
鈴木哲郎「身体からみた大学教育」 (生理学・心理学的教育論)
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第 12 回
鈴木哲郎「学びと快適空間」 (教育環境論)
第 13 回
小林正夫「地域社会と連携し展開する教育」 (社会貢献論)
第 14 回
藤本貴之「
“使う”から“作る”へ? ―これからの大学におけるメディアリテラシー」
(メディアリテラシー)
第 15 回 まとめに代えて:授業から学んだこと、意義、今後に生かしたいこと (まとめ)
3年目を迎えての改善点として、本学の授業運用向け情報システムである ToyoNet-Ace の活用によ
る学生のコメント収集とその還元がより効果的に行われるようになったことがあろう。また、学生の
興味関心の強さ弱さや、所属キャンパスごとの特性が、研究チームメンバー内である程度、共通理解
として形成されるようになった。
また、今後の改善に向けて、2015 年度に具体的に検討にかかった事項として、各キャンパスの特定
教室に備え付けられているハードウェアに依存しない、マルティメディア対応の双方向授業の可能性
についての検討会を3回にわたって行った。その結果、2016 年度は、聴講学生の関心が高い、国際教
養大学における、留学生との学びの意義について、現地すなわち東洋大学外からの発信として授業を
志向する形で、今年度の検討結果を科目の内容改善に生かしてみることになった。
2.学生目線での「ビジョンと対話力」の理解と育成に向けて
3年間の授業を通して、チーム内で気論のテーマとなっていることの一つが、所属キャンパスによ
って、学生の学修目標ならびに大学における学修姿勢に差異が見える、ということである。白山キャ
ンパスは多彩な文系の 6 学部からなっており、そこでの授業内の学生による小グループ討議は、グル
ープ内の各学部学生が共通して意見交換できる課題・テーマと、特定の学部・学問系統の学生以外は
なかなか議論の前提となる知識・経験に乏しく議論が活性化できない課題・テーマとに分かれる、と
いう認識が担当教員間の共通理解になりつつある。一方、実学系の学部からなる朝霞キャンパスは、
それぞれの学科で特性があるもののアクティブ・ラーニング的授業への親和性が高く、他方で、川越
キャンパスの特に理工学部は、ルーティンやモデル化された学修モデルや就職への意識が、多くの文
系学部とかなり異なる議論の方向性をもたらすことも多い。
2013 年度以来、成績評価の対象として、各回の講義内容を踏まえて、学生に自身が持つ「ビジョン」
(討議テーマを見る視座)を、ToyoNet-Ace を通して回収している。2015 年度は、チームメンバー
がそれぞれの担当回を中心に、学生が提出したコメントの内容・方向性を、学生個々のこれまでの経
歴等と関係づけて、特定の差異が観察できるかどうかのチェック期間とし、研究会での意見交流を行
った。
2016 年度は、2015 年度授業へのコメント分析の総括を行ったうえで、
「学生それぞれが持つ大学教
育に関連するビジョンと、これまでに学生が受けてきた授業や生育環境等との関連性」
「グローバル教
育に向けた各学生のビジョン」
「アクティブ・ラーニング的学びへの率直な期待度」等について、受講
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学生を中心とした定量アンケートを行う予定である。また、学生が最終レポート等で表明する、彼ら
彼女らが現代の大学教育の柱と考えている教育モデル・テーマに関しての現状認識とその背景分析を
目的とした、インタビュー調査の実施についても、具体化を急ぎたい。
以 上