Page 1 12。水中溶接継手の試験検査" 被覆アーク溶接法による水中

12 .水中溶接継 手の 試験 検査 ※1
宮
森
勝
弥 村
井
徹
被覆 アー ク溶 接 法 によ る水中溶 接は 実際 の工事 に用い ら れて いる が、特殊 な環境 で施工 さ れるため に、陸上 の もの に比
し、強度的 にやや劣 る ものと思 わ れる。また実際 に海中で 行 われた試 験結果 も公表 さ れた もの が少ない。そこ で現 在行 わ れ
てい る水中溶接 の強度的 信頼性 を調査 するこ と を目的 と して、 水深約 4m の海中で板厚12mmの軟綱板 を下向 き、横向 き、
立向 きの姿勢で突 き合せ溶接し たもの につい て、X線 検 査、強度試験、 顕微鏡 観察 等 を行った。
以上 の諸試験 より、外観 が良 好 でも内 面 にブロ ーホ ー ル等の 欠陥 が発生す ること、 引張 り強度 は母 材の80%以 上と なり
好結果 を示す が伸 びが毋 材の1/3 ∼1/2 になるこ と等 が判明 した。
Test Results of Underwater Welding
Katsuya MlYAMORI *4,Tohru MURAI * s
The
strength reliabilityof an underwater
rods was studied. Mild steel plates of 12mm
depth
of water for three
and vertical. A
welding using conventional welding
thickness were welded
different attitudes including
series of X-ray inspections and mechanical
indicated that many
of that
horizontal
tests for the welds
blow-holes were concealed inside the welding beads of good
appearances, and that tensile strength and elongation of the welded
were more
in 4 meters
specimens
than 80 percent and less than 50 percent of parent metal respectively.
ま え が き
く 公 表 さ れてい る が、 ダイバ ー が実 際 に海 中 で 行 っ
た もの の 試験 結 果 の 公 表 は 少 ない。 本 報 告 は水深 4
近年海洋工事 がさかんになり、水中溶接の分野に
m の 海中 で板 厚12mm の 軟鋼 板 に下 向 き、 横 向 き、 立
おいても数多くの基礎研究やプラズマ溶接、水 ジェ
向 きの 姿 勢 で突 合 せ溶 探 し た もの につ い て、 X線検
ット局部乾式水中溶接等の試みがなされている。こ
査、 強 度 試験 、 顕 微鏡 検 査 を行っ た もの で あ る。 な
れらは新しい海洋構造物の建造方法を生み出すもの
お、継 手部 の 試験 は石 川島 播 磨重 工㈱ に衣 頼 し た。
と期待されている。 ダイバ ーによる被覆 アーク溶接
法は古 くから沈船引上げ、船舶の応急修理、護岸工
2.
現 在 実 際 に行 われてい る水中溶接 工事 の 強度 的 信
事等に用いられている。こ れらの溶接施工法は陸上
と同 じ イルミナイト系、あるいはチ タニア系の溶接
棒に防水加工を行い、直流の溶接機によって行 われ
ている。悪条件の環境下であるため、ブロ ーホール、
スラ グ巻込み、硬度の増加、アンダーカット等の欠
目 的
頼性 を調査 し て、 水 中 溶接研 究 の 資料 を得 る。
3.
方 法
3.1 溶 接継 手 試験 板
陥が発生して、陸上のものに比し強度的にやや劣 る
試験 板 は溶 接 は水 深 約 4m の海 中 で 、 そ れ ぞれ イ
と思 われる。水中溶接継手の実験室的 な研究は数多
ル ミナ イト系 B −10 とチ タニ ヤ系 B −33 を用い て行
゛1 本研 究は、科 学技術庁研究調整局 から委託 を受
けた「海中作 業基地 によ る海中実験研 究( シート
ピ ア計画)」の一環 として実施 した ものであ る。
−
’21前潜水技 術部(現石 川島播 磨重工業㈱)
潜水技術部
former; Manned Undersea Technology & Engineering
Department
(present; Ishikawajima Harima Heavy Industries,LTD.)
Manned
Undersea Technology & Engineering Department
表 1 試 験 板 の 符 号 と 溶接 条 件
Symbol of test piece and conditionof welding
水 深, 溶 接 棒
姿 勢
符 号
溶 接 条 件
Welding conditions
試験板寸法
電流
Working depth
Working
electrode
Attitude・
Symbol
パ ス数
Dimension of
welded plate
水 温
(C)
透明度
(m)
,
Underwater
Visibil ity
Number
of pass
下 向(F)
Flat
H F
283
6
10
1.0
274
7
11
(15
204
5
10
1.3
//
283
1 ∼6
10
1.0 -1.26
t =12×260 ×300
190
9
23
/
7.91
10
23
/
7.05
4
23
/
1.70
t =12×280 ×400
-3.07
横 向
&5m
Horizontal
HH
// ×260x
H V
yz
//
1.78
D 4 301
B −10.
5や
立 向
Vertical
×250 ×yz
0
下 向1(見本)(FS)
Flat
(specimen)
H FS
Xy ×270x
下 向(F)
Flat
MF
t om
横 向 H)
D 4313
Horizontal
MH
yy ×//
MV
X/ ×270x
X400
0180
B−3 3.4$
立
向(V)
Vertical
(米) 角変 形 は 溶 接 後の 状 態を 示 す。
-
81 //
つた。母材はC =0.15∼0.18%、Gy=- 31 .5kg/mm2
°'B=46.5kg/mm2 , Efl=45.Wo の軟鋼 でありヽ 試
験板の形状は板厚12mm、板巾250mm 、長さ400mm で
裏当金(t
= 9 mm X 40mm)付 き、45°
V開先とした。
表1には試験板の符号と寸法、溶接条件及び溶接後
の変形 を示 す。
3.
2 継 手性能試験
図1 に示 すように試験片 を採取して以下の手順で
各試験板の継 手性能 を調べた。
図2
図3
図 1
化 学 分 析
マ クロ
ミ クロ
硬 度
図4
100倍 写 真
図 1 試験 板 の 形状 お よ び試験 片 採取 位 置
図 5
Shape and arrangement of test piece
ビッカース硬度計(10kg)
一 図6
下 向
引張 り
Flat
表裏 曲 げ
シャ ルピ
4。 継 手 性 能 試 験 結 果
4.1 外観検査
図 2に外観写真を示 すが下向 き、横向 き、立向 き
共にビートの形状 は良好である。横向 き及び立向 き
横 向
ではそれぞれ約1 ∼ 3mm程度のアンダーカシトがピ
Horizontal
ートの両側 に生じている。
4.2 X 線検査
図3にX線写真 を示す が、ブロ ーホールの発生が
みられ、陸上の基準で判定すると3・4級程度 と認
められる。
特に下の写真 からはブロ ーホールがビート全体 に
分布していることがわかる。
立 向
4.3 マ クロ試験
Vertical
図4は断面マ クロ写真であり、下向 き、立向 きで
はアンダーカットの発生がみられ、又 どの姿勢にお
いてもブロ ーホールの散在が観察 される。
4.4 ミ クロ 試験
図5に下向 き溶接 について、①母材部、②熱影響
部及よび③溶着金属部の3箇所の倍率100 のミ クロ
写真 を示す。写真撮影した熱影響部及び溶着金属部
-
図2 外観写真
External picture
82
判 定
Evaluation
J1S 3 級
3rd class of JIS
母
JIS 4 級
材
Base metal
4th class of OIS
JIS 4 級
4th class of JIS
(X100
JIS 3 級
)
3rd class of JIS
{2 } 熱 影 響 部
Heat affected
zone
判 定
Evaluation
JIS 4級
(X100
4th class of 01$
)
(3 ) 溶 着 金 廣
JIS 4級
Deposite
4th class of JIS
JIS 4 級
4th class of JIS
図3 X線写真
X ray picture
図5 断面ミクロ写真HF
Micro picture of section of test piece HF
下 向 : 6 パ ス
Flat :
6 passes
横 向 : 7 パ ス
Horizontal :
7 passes
図6 硬度分布H F S
Hardness distributionof test piece HFS
立 向 : 5 パ ス
Vertical:
5 passes
図4 断 面マ クロ写真
Macro-picture of section of test piece
-
83 破断後の形状
Fracturing behavior
図7 引張試験
Tensile test
図8 曲げ試験
Bending test
84
破断面
Fracture surface
表 2 継 手 部 の 機械 試 験 結 果 一 覧
母材破断強度(0 が46.5kg/mn2 〉
との比率
Ratio t o the stren覃th of base metal
破断した時の角度9・II
は2 の試験片の各値
actured specimen, 2 values of
°/
゜indicate the test results
o
f 2 specimens
Test iece of JIS-No. 4 試験片31 の平均値を示す. Mean valve of the test results of 3 specimens 4。6 引張り試験
引張 り、表裏曲げ、シャルピー衝撃試験の結果を
まとめて表2に示 す。
図 7に引張り試験後の形状 を示 すが、下向 きの試
片は母材 から、その他のものは溶着金属部のアンダ
ーカット及びブローホールの部分より破断した。母
材破断強度と試験片 の破断強度の比である継 手効率
は100 ∼83 %となっており、比較的良好な結果 を示
す。伸びは8 ∼13 %で陸上に比較して%∼%である。
4.7 曲げ試験
曲げ試験結果の試験片 を図 8に示 す。下向 き姿勢
では表裏曲げ共に180°曲ったものもあるが、他の姿
図 9 シ ャ ルピ ー衝 撃 試験破 断 面
勢では28∼70°程度で欠陥部 より折 れた。 180°曲が
ったものでも表裏に欠陥の認められるものもある0
4.8 シャルピー衝撃試験
Breaking point of charpy impact test
は再加熱された部分であり、熱影響部では緇粒化し
アンダーカット が大 きいために、100mm2の標準試
たフェライトとパーライト が、溶着金属部では微細
験片 がとれず7.5 ×10×55mmの試験片 とした。衝撃
化したフェライトとパーライト が認められる。 また、
値 は4.9∼7.0ky m c
/㎡で欠陥 が認められるにもか
最終層以外の層の変質部は次層の溶接 により組織 が
わらず結果は良好である。 試験後の試験片 を図 9
に示 す。
改善されて陸上の場合と大差ないことが判 る。
4.
5 硬度測定
5。
図6に下向 きの硬度測定結果を示 す。 最終層熱影
響部は硬化 が認められ1300H V となり、'
他 の例では
以 上 の試 験 結 果 を考 察 し 次 の 結 論 を得 た。
400 H Vの硬化 が認められたら 溶着金属部は全般的
に200 H V 以下であり陸上の場合と大差 がないよう
思 われる。
-
結 論
(I ) 外 観 が良 好 で も内 面 にブ ロ 一 ホ ー ル等 の 欠陥
が認 め ら れ る。
(2 ) 最終 層 の熱 影 響 部 は 急 冷 さ れ硬 化 す る が、 他
85
の層の熱影響部および溶着金属部では次層溶
( 3) 引張 り 強度 は母 材の80 % 以 上 と なり、 良 好 な
接 による再加熱のためさほどではない。組織
結 果 と なっ てい る が伸 びは陸 上 溶 接 の %∼ %
についても同様に、最終層以外では、比較的
と なっ てい る。
良好な組織となっている。
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