明治学院大学法学部 2016 年度春学期 定期試験の問題解説・採点基準について 【科目名 民事法入門(統一試験) 】 【担当者名 阿部満、今尾真、伊室亜希子、黒田美亜紀、 波多江久美子、竹田智志、松谷秀祐 】 各設問の番号 各設問の問題解説・採点基準 クラスによって若干のばらつきがあったが、受験者 267 名の平均点は 55 点(70 点満点)であった。得点分布を以下に示す。 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 60 点以上の者が 131 名と受験者の約半数を占めたが、40 点台の者が 50 名近くいた。40 点台の者については、説明問題で得点を得られていな いことが多かった。いきなり暗記しようとするのではなく、しっかりと理 解することが大切なことを肝に銘じてほしい。 Q1 五肢択一の問題(1 問 5 点×5 問=計 25 点) 知識確認問題を少し改変して(選択肢の入替)出題した。 【講評】 Q1-1 民法の基本原理の組み合わせ Q1-2 心裡留保・虚偽表示・錯誤の定義 Q1-3 無効と取消しの差異、取消しの効果(制限行為能力者の特則) Q1-4 原始的不能、同時履行の抗弁権、危険負担 Q1-5 物権と債権の差異 いずれも基本的な知識を問う問題である。 全体的によくできていたが、Q1-5 の正答率が低かった。Q1-1~1-4 は ....... 正しいもの、Q1-5 は誤っているものを選ぶ問題であった。正しいものを 選ぶ問題と誤解してしまった人は今後問題を注意深く読むようにしてほ しい。 Q2 空欄補充の問題(1 問 5 点×3 問=計 15 点) 知識確認問題の中からそのまま出題した。 【講評】 Q2-1 契約の意義 Q2-2 権利能力の始期・終期 Q2-3 不法行為の要件 いずれも基礎的な知識を問う問題である。 特に正答率が低かったのが Q2-3②「法律上保護される利益」であった。 条文の文言なので正確に記す必要がある。 「法律上保護すべき利益」 「法律 上保護されるべき利益」などでは誤りとなる。ほかには同じ Q2-3③結果 回避、④慰謝料、⑤過失相殺について誤答が散見された。間違えた人はし っかり復習をしておいてほしい。 Q3 説明問題(1 問 10 点×3 問=計 30 点) 知識確認問題の中からそのまま出題した。 【講評】 いずれも理解しておくことで今後の民法各編の勉強に役立つと考えら れる問題である。 Q3-1 売買契約の意義および性質 売買契約を締結すると、売主に財産権移転債務、買主に代金支払債務が 発生することと売買契約が諾成契約、有償契約、双務契約であることを記 す必要がある。 売主の債務について「所有権移転義務」や「所有物譲渡義務」「目的物 引渡義務」 「物の引渡し義務」とした者が少なくなかった(譲渡は O.K.と した)。売買の目的物について制限はなく、売買は財産的価値があって譲 渡できるものであれば成立する(貸金債権や知的財産権なども対象とな る)ことに注意しよう。また、諾成契約や双務契約の意味を取り違えて解 答している者が散見された。各契約を特徴付ける性質を、その定義とから めて頭の中で理解するようにしよう。 売買は典型契約の中でも特に重要なのでしっかり復習しておいてほし い。 Q3-2 契約どおり債務が履行されない場合の救済手段 履行の強制(強制履行)、債務不履行による損害賠償請求、契約の解除 について記す必要がある。 履行の強制の具体的な方法、すなわち直接強制・代替執行・間接強制の みを説明している答案がかなりあった。債権者の救済手段はそれに限られ ない。なぜならそれだけでは債権者が被った損害が完全に回復できず、ま た債権者が契約の拘束力から免れたいと考える場合があるからである。債 務不履行があっても契約は失効しないことに注意しよう。 解除を「取消し」と混同している者が少なくなかった。解除は解除権を 有する者が行える。債務不履行は解除権の発生原因であるが、取消権の発 生原因ではない。 Q3-3 無権代理人と取引をした相手方の救済 本人に対しては、追認するか否かの催告、取消権の行使、表見代理が成 立する場合には本人に効果が帰属すること、無権代理人に対しては、追認 が得られない場合に履行または損害賠償の請求ができることについて記 す必要がある。 表見代理が成立する場合に本人に効果が帰属する可能性についての説 明がぬけ落ちている答案がみられた。 三者が登場し、混乱しやすいところなので、本人に対して請求できるこ とと無権代理任に対して請求できることを整理して理解するようにして ほしい。
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