PDE-5 - バイエル薬品

バイエル薬品株式会社
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News Release
PDE-5 阻害薬で十分な反応が得られない肺動脈性肺高血圧症の患者さんには
リオシグアトへの切り替えが効果的と考えられることが試験により判明
2016 年 9 月 4 日-ドイツ・バイエル社は、非盲検、非対照、多施設、単一群第 IIIb 相パイロット試験、
RESPITE(Riociguat clinical Effects Studied in Patients with Insufficient Treatment response to PDE-5
inhibitors)の全データ成績を本日発表しました。RESPITE では、ホスホジエステラーゼ 5 阻害薬(PDE-5
阻害薬)の単剤治療またはエンドセリン受容体拮抗薬との併用治療で十分な反応が得られない肺動脈性
肺高血圧症(PAH)の患者さんを対象に、リオシグアトの臨床効果を評価しました。PDE-5 阻害薬をリオシ
グアトに変更し、リオシグアト治療を継続した患者さんにおいて、6 分間歩行距離(6MWD)、WHO 機能分
類(FC)、NT-proBNP(心不全の血清マーカー)レベル、血行動態の改善が示されました。試験成績は、ロ
ンドンで開催された国際会議、欧州呼吸器学会(ERS)において口頭発表されました。
RESPITEは、PDE-5 阻害薬(sildenafil または tadalafil)による治療で十分な反応が得られない、すなわち
WHO機能分類(FC)がIII度、6MWDが 165~440mでかつ心係数が 3.0 L/min/m2 未満のPAH患者さん
61 例にリオシグアトを 24 週間投与するパイロット試験です。薬剤変更時の 1~3 日間の休薬期間を経て、
患者さんはリオシグアト治療を開始し、8 週間の用量調節期間で投与量(最高 2.5mg TID)を調整し、その
後に 16 週間の用量維持期間が続きました。この探索的試験での評価項目は 6MWD、WHO FC、臨床
的悪化、肺血行動態、生活の質、その他の疾患関連パラメーターや一酸化窒素経路関連バイオマーカ
ーの変化、および安全性です。
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24 週時に、リオシグアト治療を継続していた患者 (84%, n=51)の 6MWD は平均で 31m 延長。
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24 週時に、患者の 52%(n=52)は WHO FC II 度であり、2%は WHO FC I 度(n=52)。
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24 週時に、NT-proBNP の平均値はスクリーニング時のベースライン値から 347 pg/mL(n=52)
低下。
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注目すべき点として、24 週時には患者の 34%(n=47)が、少なくとも WHO 機能分類 II 度、か
つ臨床的悪化を示すことなく 6MWD の少なくとも 30m 延長を達成。
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2 例の死亡を含む、6 例の患者(10%)に臨床的悪化イベントが認められた。薬剤との因果関
係ありとされる死亡例は無かった。
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10 例(16%)の患者が試験を中止(中止理由は、有害事象 4 例、、死亡 1 例、有効性の欠如 1
例、患者の要請による脱落 3 例、医師の要請による脱落 1 例)。
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患者の 10%超で発現し、最も多く報告された有害事象は、消化不良、頭痛、下痢、めまい、低
血圧、鼻咽頭炎、嘔吐、末梢性浮腫、右心室不全。
RESPITE の成績は、今後の臨床研究実施の根拠として利用することが意図されています。
リオシグアトは肺高血圧症(PH)の治療に、PDE-5 阻害薬、ERA(エンドセリン受容体拮抗薬)や PCA(非
経静脈的プロスタサイクリン誘導体)とは異なる独特な作用機序を提供します。ERA と PCA はリオシグアト
と異なる治療ターゲットに作用するため、それらとの併用は効果的な相助療法となりますが、sGC 刺激薬と
PDE-5 阻害薬との併用は、体血圧に相加効果を及ぼす可能性があるため避けなければならず、併用禁
忌となっています。
リオシグアトの開発と販売は、sGC モジュレーター領域におけるバイエルと MSD(米国とカナダではメルク
社、関連会社を含む)との全世界での戦略的業務提携の一環です。
肺高血圧症(PH)について
PH は、進行性で生命を脅かす深刻な心肺疾患であり、肺動脈圧が正常値よりも高くなり、右心不全や死
に至る場合があります。PH は運動能力を著しく低下させ、QOL を低下させます。PH の最も一般的な症状
は、息切れ、疲労、めまい、失神などであり、いずれも労作により悪化します。PH の症状は非特異的であ
るため、診断が遅れることは稀ではありません。わずか数ヶ月であっても治療開始の遅れは生命予後に悪
影響を及ぼすため、早期診断と正確な PH タイプの確認が非常に重要です。また、PH の専門医による継
続的な治療モニタリングや、PH のタイプと病期に適した治療が受けられるようにすることが極めて重要に
なります。
PH には 5 種類あり、それぞれが患者さんに与える影響は異なります。個々の患者さんの PH の原因は異
なる可能性があるため、治療で最もよい成果を上げるために、患者さんは PH 専門医のいる施設で治療を
受ける必要があります。
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肺動脈性肺高血圧症(PAH)について
5 種類の PH のうちの 1 つである PAH は、血管収縮により肺動脈圧が大きく上昇し、右心不全や死に至
る可能性がある進行性の疾患です。PAH は、組織のリモデリング、血管収縮を引き起こす肺動脈内皮の
形態変化を特徴としています。こうした変化の結果として、肺の血管が収縮し、心臓が肺に血液を送り込
むことがより困難となります。PAH は希少な疾患であり、その患者数は 100 万人あたり 15~52 人と言われ、
男性よりも女性で発症率が高くなっています。多くの場合、PAH の原因は明らかではありませんが、遺伝
的な要因とも考えられています。
この 10 年にわたり、すでにいくつかの治療方法が提供されているにもかかわらず、PAH 患者さんの予後
は依然として不良であり、効果的な別の治療選択肢が必要とされています。PAH 患者さんの死亡率は現
在でも依然として高く、診断から 1 年で 15%、3 年で 32%となっています。
リオシグアトについて
リオシグアトは、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼ばれる新しいクラスの薬剤で、PH におけ
る重要な分子メカニズムをターゲットとした経口治療薬として、バイエルが発見・開発しました。sGC は心肺
系にみられる酵素であり、一酸化窒素(NO)の受容体です。NO が sGC と結合すると、この酵素がシグナ
ル分子である環状グアノシン一リン酸(cGMP)の合成を促します。cGMP は、血管拡張、増殖、線維化、
炎症を調整する重要な役割を担っています。
PH の病態では内皮機能不全、NO の合成障害を伴い、sGC への刺激が不十分になります。リオシグアト
には、NO-sGC 結合を安定化することにより、内因性 NO に対する sGC の反応性を高めるという新規の作
用機序があります。また、NO による刺激がない状況でも、異なる結合部位を介して sGC を直接刺激しま
す。リオシグアトは、 sGC の刺激剤として、NO-sGC-cGMP 経路を回復させ、cGMP の産生を増加させるこ
とにより、NO の欠乏に対処します。
リオシグアトはこうした新規の作用機序により、PDE-5 阻害薬など既存の PAH 治療薬に加えて治療の幅
を広げる可能性があると期待されています。また、外科的治療不適応又は外科的治療後に持続・再発し
た CTEPH の患者さんにおいて臨床的有益性を示す初の治療薬となりました。リオシグアトが承認される
まで、CTEPH 患者さんを対象として承認された薬物療法はありませんでした。
リオシグアトは、2013 年 10 月、米国において手術不適応のCTEPH、外科的治療後に持続・再発がみら
れたCTEPH並びにPAHに対してアデムパス®の販売名で承認されました。欧州及び米国では、希少疾病
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用医薬品指定を受け、2014 年 3 月、欧州医薬品庁(EMA)により外科的治療不適応又は外科的治療後
に持続・再発したCTEPH 、PAHの治療薬としてアデムパス®錠の販売名で承認されました。2014 年 1 月、
日本において、希少疾病用医薬品指定を受け、外科的治療不適応又は外科的治療後に持続・再発した
CTEPHを適応として承認され、2015 年 2 月にPAHを適応として承認されています。
2014 年 10 月より、リオシグアトの開発と販売は、sGC モジュレーター領域における MSD(米国とカナダで
はメルク社、関連会社を含む)との全世界での戦略的業務提携の一環で、同社との世界規模の戦略的提
携により、この領域をリードする 2 社が協力することとなりました。両社はこの有望で新しいクラスの化合物
と、患者さんの利益に向けた化合物の持つ可能性を十分に活用する意志を表明します。承認を受け患者
さんに使用可能となった初の sGC 刺激剤、リオシグアトは、本提携の一環として生み出された最初の製品
です。
バイエルについて
Bayer: Science For A Better Life
バイエルは、ヘルスケアと農業関連のライフサイエンス領域を中核事業とするグローバル企業です。「Science For A Better Life」と
いうミッションのもと、バイエルはその製品とサービスを通じて、人々のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献すると同時に、
技術革新、成長、およびより高い収益力を通して企業価値を創造することも目指しています。また、バイエルは、持続可能な発展
に対して、そして良き企業市民として社会と倫理の双方で責任を果たすために、これからも努力を続けます。グループ全体の売
上高は 463 億ユーロ、従業員数は 116,800 名(2015 年)。設備投資額は 26 億ユーロ、研究開発費は 43 億ユーロです。この数
字は、コベストロ社として株式市場に 2015 年 10 月 6 日に上場した高機能ポリマー材料の事業を含んでいます。詳細
はwww.bayer.com.をご参照ください。
バイエル薬品株式会社
2016 年 9 月 9 日、大阪
将来予想に関する記述 (Forward-Looking Statements)
このニュースリリースには、バイエルの経営陣による現在の試算および予測に基づく将来予想に関する記述 (Forward-Looking
Statements) が含まれています。さまざまな既知・未知のリスク、不確実性、その他の要因により、将来の実績、財務状況、企業の
動向または業績と、当文書における予測との間に大きな相違が生じることがあります。これらの要因には、当社のWebサイト上
(www.bayer.com)に公開されている報告書に説明されているものが含まれます。当社は、これらの将来予想に関する記述を更
新し、将来の出来事または情勢に適合させる責任を負いません。
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