第 1 回 海技教育機構 研究発表会予稿集 2016 年 9 月 教育・実習への適用のための機関点検支援システムの機能拡張 ○疋田 1. 賢次郎* 沼野 はじめに 正義* 石村 惠以子* 多田 回、システム自体の改造を必要とする。そこでこれまでの 船舶の安全運航に寄与するため、センサやデータロガー 訪船調査等により、練習船での機関科実習において資する 等による電子化の遅れた小型の既存内航貨物船を主な対 と考えられる機能を以下のとおり列挙する。 象として、我々は機関点検支援システム(以下、「システ ・機関室内での現在位置を知る機能 ム」という)の開発を進めてきた 恭祐** 1)。システムは、主機関、 発電機関、その他機関室機器等の定期的な巡回点検を、タ ブレット PC、スマートフォン、IC タグリーダ等と独自に 開発したアプリケーションソフトを利用することにより、 点検結果の入力及び記録の電子化を図り、点検結果の有効 利用や陸上との共有を図るシステムである。システムを装 着した状況を写真 1 に示す。 -今機関室内のどこにいるのか確認。IC タグで実現。 ・眼前の機器が何であるか知る機能 - 機器の名称や機能、点検項目、点検の際の注意事項を 確認。IC タグで実現。 ・習熟度を確認する機能 - QA 形式で回答する。機器の名称や、注意事項等を回 答。現場、あるいは教室でも確認可能。 システムは船毎に異なる機関室内の機器や配置に対応 - 点検等の所要時間を計測する機能。推奨経路に沿って するため、導入時に個船毎に”点検シナリオ”を作成・編集 一巡するのに要する時間を記録。 する必要がある。この”点検シナリオ”を工夫することによ ・習熟度を評価する機能(実習生用) る、教育・実習への活用の可能性については前報 1) 2)で報 告しているところである。ただ、シナリオによる工夫のみ では限界があるため、今回はさらに点検用アプリの機能拡 張によって教育・訓練に資する取り組みについて紹介す る。 - 習熟度の評価をグラフ・チャート等で確認する。 - 複数回習熟度確認を行った場合これまでの評価結果 のトレンドを確認する。 ・習熟度を評価する機能(指導者用) - 複数の実習生について比較・評価を可能とする。 3. まとめ 練習船での機関科実習において、巡回点検作業は各班に 指導員がついて機関室の現場で直接指導を受ける形で行 防音具内に イヤホン 装着 スマートフォン (点検支援アプリ インストール済み) われてきた。昨今、さらに多くの実習生を現在の体制で受 け入れることは困難となっている。またこれまでの実習に おいても、班内でやる気のある実習生とそうでない実習生 との間で、実習への取り組みに差が生じていた。 右手に IC タグリーダ 写真 1 機関点検支援システムの一形態 システムの機能拡張により、実習生の自習能力を高め、 達成度の見える化を図ることにより、機関の巡回点検に関 する知識・技能の習得・向上と底上げ、また指導員の実習 2. システム機能拡張の概要 効果の評価に要する負担軽減を図りたいと考えている。 点検シナリオの工夫によって、各点検箇所に応じた詳細 な説明の教示や、点検結果記録機能と質問用ガイダンスに よる、実習生の回答の記録機能を実現していた。ただし、 参 考 文 献 1) 疋田賢次郎、沼野正義、石村惠以子、多田恭祐:機関点 質問への回答結果の正誤は直ちには分からず、自習用と考 検支援システムの開発 -教育・実習への活用- 、(独)航 えた場合課題もあった。ただ現在のシステムを、点検のみ 海訓練所 第 15 回航海訓練所研究発表会予稿集 2015 ならず、教育・実習や習熟、さらに作業指示などに用いる 年9月 には限界がある。そこでユーザの要望に応じて様々なこと 2) 石村惠以子、沼野正義、疋田賢次郎、多田恭祐:機関点 に使用できる様にシステムを改造し拡張性を高める。今 検支援システムの開発 -第三報 教育への適用- 、日 * 国立研究開発法人 海上技術安全研究所 ** 独立行政法人 海技教育機構 練習船海王丸 機関長 本マリンエンジニアリング学会 第 85 回マリンエン ジニアリング学術講演会 講演論文集、2015 年 11 月
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