熊本地震に関する 熊本県内事業主アンケート(後編)

2016 年 8 月 31 日
熊本地震に関する
熊本県内事業主アンケート(後編)
<連携>
株式会社大銀経済経営研究所(所在:大分市)
京都大学防災研究所
長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科
熊本大学減災型社会システム実践教育研究センター
公益財団法人地方経済総合研究所
〒860-0012 熊本市中央区紺屋今町9番6号 熊本紺屋今町ビル8階
TEL096(326)8634/FAX096(359)7226
<前編の要約>
熊本県内事業所の被害状況は、エリアによってその性質(母集団)が異なる。県内を直接的
影響の大きいエリア(以降、直接的被害エリア)と、間接的影響の及ぶエリア(以降、間接的
被害エリア)とに分けて比較分析した。
生産要素の被害(前編 p3~10)
電力・ガス・水道などの生産要素の外部要因、及び建物・設備・在庫、また従業員といった
内部要因が受けた被害は直接的被害エリアに多くのダメージを与えており、特に後者によって
69.3%の事業所が操業能力に影響があり、その内 31.3%が 6 月末時点で復旧していない。
経営環境の急変(前編 p11~13)
販売・仕入先の被害、人口流出、値下げ圧力、商流変化、購買行動の変化、そして風評被害
といった経営環境の急変は、直接的被害エリアばかりでなく間接的被害エリアの事業所の収入
をも下押ししている。
即ち減収になるとした事業所は、直接的被害エリアで 85.3%、間接的被害エリアでも 65.6%
と、両エリアの事業所とも半数を超えている。
経営課題(前編 p14~21)
「市場(ターゲット)を現状のまま」とは言い切れない事業所が、直接的被害エリアで 43.4%、
間接的被害エリアでも 30.3%に達する。
また、「活動拠点を現状のまま」とは言い切れない事業所も、同 35.7%、同 25.3%に達する
など、経営環境の急変によってリスクの高い判断を迫られている事業所が一定数存在すること
が窺える。
事業継続(前編 p22)
地震はまた事業承継・継続にも影響を与えており、直接的被害エリアの事業所では 11.3%、
間接的被害エリアでも 4.3%が経営問題として挙がり、両エリアを合計して 8.4%のウェイトと
なっている。
<調査内容>
調査対象は企業ばかりではなく、教育、医療・福祉施設など多岐にわたり、熊本地震が県内
全体の事業活動に与えている影響を対象にした調査となっている。
対
象:従業員 4 名以上の熊本県内事業所 10,044 先
調査方法:郵便による発送・回収
調査時点:2016 年 6 月末
調査期間:2016 年 6 月 24 日~7 月 15 日
回答状況:回答事業所 2,439 先(回答率 24.3%)
ⅰ
<問題意識>
地域経済にとって最も重要な課題は、熊本地震からの復旧の長期化を回避することである。
東日本大震災後の東北 6 県の倒産件数の推移を見ると、震災の翌年は一時的に減少するが、
すぐに増加に転じ、その後、徐々に落ち着いて行く中で、5 年目の 2016 年に入ってから急増
の兆しが出ている。
熊本がここから学ぶべきことは、震災から 1~2 年は復旧需要や各種支援の効果があるが、
それが過ぎた時は人口減少等に直面し、事業収入が容易には元に戻らないということではない
だろうか?
自治体が利子を補給する等で中小企業が資金調達に利用しやすい制度融資を例に挙げれば、
最長 5 年の返済猶予期間が終了する時期に、この問題が表面化して、県内経済は二度目の危機
を迎える懸念がある。
事業収入の復旧を長期化させる要因は、①消費マインド変化、②人口流出、③観光客減少、
④商流変化、⑤販売先の転出・廃業、⑥交通インフラ損壊、⑦人手不足などであり、二度目の
危機を回避するため、各事業所の懸命な努力を支える産学官金労言の連携が求められる。
東北6県の倒産件数(東日本大震災のあった 2011 年の倒産件数を 100 とする)
100
100
東北6県
全国
90
78
80
2011=100
81
77
71
70
60
50
40
40
30
20
10
0
2011
2012
2013
2014
2015
資料)東京商工リサーチ
ⅱ
2016
(1~6月)
<後編の要約>
人口移動の変調(p1~4)
熊本都市圏が人口を集中させながら熊本県全体の経済成長を牽引するメカニズムが、変調し
ている。
熊本地震発生直前の 4 月 1 日現在から 7 月 1 日現在までの 3 ヵ月間の人口移動を住民基本台
帳ベースで追いかけると、熊本都市圏をはじめ地震の直接的被害が大きい地域から、被害が比
較的少なかった地域へ分散し、そして県外流出が増加している。
事業継続問題(p5~6)
6 月末時点において事業継続問題を抱えている県内事業所は 8.4%であり(前編 p22)、今後
この問題が拡大するのか収束に向かうのかという見極めが重要だと考える。
事業継続問題と操業能力復旧及び事業収入回復との関係を見ると、両者とも強い相関が認め
られ、ここに事業継続問題を引き起こしている要因があると考えられる。
操業能力復旧遅延(p7~8)
建物や設備の損壊の大きさが、操業能力復旧を遅らせている。
また、従業員(その家族を含む)の被災で就業時間短縮や休職を余儀なくされ、人手不足が
深刻化している面がある。自由コメントからは、
‘緊急事態が続いている’との声も寄せられて
いる。
事業収入回復遅延(p9~11)
地震はまた事業経営を取り巻く環境を急変させて、事業収入回復遅延の原因となっている。
その環境変化とは「人口流出」を始め、
「販売・仕入先の被害」
「値下げ圧力」
「商流の変化」
「購
買行動の変化」「風評被害」等である。
なお人手不足は事業収入が回復した事業所でも課題に挙がり、また従業員規模の大小と事業
収入回復との相関は見られない。
事業継続問題
課題解決に向けて(p17)
事業収入回復には、
後戻りしない環境急変
に如何に適応するかが
課題である。
弊研究所は、直面す
る平常時ではない課題
操業能力
復旧遅延
生産要素
の被害
必要資金増加
内部被害
建物・設備、従業員
人手不足
外部被害
電力・ガス・水道等
事業収入
回復遅延
に対して、業種・業態
を超えた協力態勢(バ
経営環境
の急変
リュー・チェーン:価
値連鎖)を構築できれ
ばと取り組んでいる。
販売・仕入先の被害
商流の変化
人口流出
購買行動の変化
値下げ圧力
風評被害
※「風評被害」は時間とともに風化するが、後戻りしない経営環境変化に対しては、
如何に適応するかが課題。
ⅲ
<目次>
Ⅰ.熊本地震と熊本県の人口移動(統計分析)
…………………………………
1
1.本震以降 3 ヵ月間の熊本県の人口移動
2.人口移動の要因と課題
…………………
5
……………………………………………
7
Ⅱ.事業継続を困難にさせる要因(以下、アンケート集計結果)
1.業種と従業員規模
2.操業能力の復旧と事業収入の回復
Ⅲ.操業能力の復旧を遅らせている要因
1.生産要素(建物・設備、従業員)
2.従業員規模との関係
3.事業拠点の移転との関係
Ⅳ.事業収入(出荷・販売)の回復を遅らせている要因
……………………………
9
1.経営環境の変化(販売・仕入先の被災、商流変化、値下げ圧力、購買行動他)
2.マーケティング戦略の変化(市場、商品政策)
3.経営課題(運転資金、人手の確保)
4.従業員規模との関係
Ⅴ.事業収入の回復と行政への要望 ………………………………………………… 15
※事業活動の復旧・復興への提言(総括に代えて) ……………………………
アンケートから参考資料「ハード面の直接被害額」
建物設備
有効回答 1,089社計
除却
17
(単位:百万円)
在庫
臨時費
計
39,937
1,577
2,735
2,237
46,486
全業種(一社平均)
36.7
1.4
2.5
2.1
42.7
第一次産業( 〃 )
78.9
7.0
8.8
0.2
94.9
第二次産業( 〃 )
38.3
1.2
3.0
4.0
46.5
第三次産業( 〃 )
34.9
1.4
2.1
1.2
39.6
※「第一次産業」の一社平均被害額が大きくなっている主因は、畜舎の損壊と殺処分。
ⅳ
Ⅰ.熊本地震と熊本県の人口移動(統計分析)
分析対象:熊本県統計調査課「熊本県の人口と世帯数」
本統計は 2015 年国勢調査の速報値を基に、住民基本台帳の変動を加減して算出
されている。
分析期間:2016 年 4 月 1 日現在から同年 7 月 1 日現在の 3 ヵ月間(以下、当該期間)
1.本震以降 3 ヵ月間の熊本県の人口移動
(1)熊本県総人口の減少加速
①県全体の人口減少
・2016 年 7 月 1 日現在の総人口は 1,777 千人で、当該期間で 2,871 人減少した(前年同期は
207 人減少であり 2,664 人の減少加速)
。⇒資料p2
・性別では男性 852 人減少(前年同期は 209 人増)
、女性 2,019 人減少(同 416 人減少)で、
特に女性の人口減少が加速している。⇒資料p4
②熊本市が人口減少に転じる⇒資料p2
・東区で 1,083 人、西区で 307 人減少。北区は逆に 305 人増加し、中央区と南区は増加の勢
いが止まった。
・熊本市全体では 463 人の減少に転じ(前年同期は 768 人増加)
、熊本市は当該期間におい
て県内での人口吸引力を失っている。
③県外転出の増加⇒資料p4
・当該期間の県外転出は 9,352 人で、前年同期の 8,169 人を 1,183 人上回った。
・同増加の市町村別内訳は熊本市 620 人、菊陽町 108 人、益城町 85 人、その他、熊本地震
の直接的被害の大きいエリア(以下、直接的被害エリア)に集中する。
④県外から転入の減少⇒資料p4
・当該期間の県外からの転入は 7,593 人、前年同期は 8,587 人で 994 人減少した。
・同減少の市町村別内訳は熊本市 408 人、菊陽町 180 人、荒尾市 145 人、その他県内広範囲
に及ぶ。
(2)県内での移動
①人口転出地区⇒資料p4
・当該期間の県内移動は 16,004 人で、前年同期間の 13,106 人を 2,898 人上回る。
・転出増加の市町村別内訳は熊本市 2,263 人、益城町 646 人、御船町 112 人、南阿蘇村 92
人、その他、転出増加は熊本地震の直接的被害エリアに集中する。
②人口転入地区⇒資料p4
・上記移動において、逆に転入が前年同期比で増加した市町村は、合志市 114 人、玉名市 94
人、菊陽町 98 人、山鹿市 87 人、八代市 84 人と続く。
1
図表 1:熊本県市町村別人口増減(各年 4 月 1 日現在から 7 月 1 日現在の 3 ヵ月間)
2015
2016
(人)
(人)
500
300
150
0
-150
-300
-500
平成27年4月1日⇒7月1日
直接被害
熊本市
1,029
768
荒玉
△1,236
熊本県
△207
△49
熊本市
768
中央区
511
荒尾市
33
24
玉名市
△62
東区
191
南小国町
△31
玉東町
△20
西区
小国町
△40
南関町
△12
南区
産山村
△3
長洲町
33
北区
高森町
△17
和水町
△21
山鹿市
阿蘇市
西原村
△6
南阿蘇村
△31
八代
熊本市
△1,880
△463
(単位:人)
間接被害
荒玉
△991
△108
熊本市
中央区
玉名市
11
東区
△1,083
136
南小国町
△50
玉東町
△29
西区
△307
259
小国町
△17
南関町
△17
南区
279
△329
産山村
△13
長洲町
28
北区
305
高森町
△21
和水町
△46
△213
西原村
△106
山鹿市
△112
△122
南阿蘇村
△216
氷川町
3
合志市
245
大津町
180
人吉市
菊陽町
215
△14
阿蘇
八代
39
503
八代市
58
菊池市
△65
氷川町
△19
△170
合志市
358
21
大津町
75
人吉市
錦町
△40
菊陽町
135
錦町
多良木町
△14
菊池
上益城
△1,116
球磨
△144
△63
4
多良木町
△38
△29
御船町
3
湯前町
△1
御船町
△204
湯前町
嘉島町
73
水上村
△19
嘉島町
△43
水上村
7
益城町
48
相良村
△39
益城町
△822
相良村
△4
甲佐町
△3
五木村
△4
甲佐町
6
五木村
8
山都町
△135
山江村
△15
山都町
△53
山江村
△5
球磨村
△38
△295
球磨村
△12
あさぎり町
△21
宇土市
△30
あさぎり町
△216
宇城市
△194
水俣市
△141
美里町
△71
水俣市
△150
芦北町
△52
芦北町
△50
津奈木町
△23
津奈木町
△217
△7
宇城市
△131
美里町
△79
芦北
天草
343
△86
△44
宇土市
△463
阿蘇市
菊池市
宇城
△2,871
△55
△125
球磨
県 計
荒尾市
八代市
上益城
直接被害
△509
596
菊池
平成28年4月1日⇒7月1日
(単位:人)
間接被害
△104
阿蘇
500
300
150
0
-150
-300
-500
宇城
△466
芦北
天草
△12
△221
△21
△445
天草市
△283
天草市
△294
上天草市
△138
上天草市
△140
苓北町
△45
苓北町
資料:熊本県「熊本県の人口と世帯数」
△11
資料:熊本県「熊本県の人口と世帯数」
※熊本県内 45 市町村を、地震の直接的影響が大きいエリアを「直接被害」、間接的影響が大きいエリアを「間接被害」と表記。
2
2.要因と課題
(1)人口移動の特徴
・当該期間において、人口は熊本県内の直接的被害の少ない市町村へ、そして県外へと移動
した。
・この移動データは住民基本台帳に基づくものであり、一時的な避難ではない点に留意する
必要がある。
・また、熊本地震は女性の移動を大きく誘発したという特徴も指摘したい。
・一方、県外からの転入が減少した市町村は県内の広範囲に及ぶ。
(2)人口移動の要因(熊本地震の特徴)
①建物の損壊の多さ
・住宅の全半壊に例を取れば、熊本地震の 36 千棟(2016 年 8 月 7 日現在)に対して新潟県
中越地震は 17 千棟であった。
②県庁所在都市が被災
・上記の背景として、中越地震では県庁所在都市である新潟市の被災が比較的軽微であった
のに対し、熊本市は甚大な被害を受けたことが挙げられ、熊本市は当該期間においてこれ
までの人口吸引力を失い、人口減少に転じた。
③県外企業の支店・支所及び誘致企業の被災
・県外からの転入の減少は県内の広範囲に及ぶが、県外企業の支店・支所、誘致企業が集積
するエリアとの関係も窺える。
(3)課題
①県内事業所(非営利法人を含む)への支援
A.建物・設備の早期復旧
B.人口減少加速や所得環境悪化等に伴う個人消費低迷への対策と労働供給促進
C.大消費地である熊本市及び誘致企業等の被災に伴う事業収入減長期化への備え
②県外企業の支店・支所及び誘致企業への支援
3
4
天
草
芦
北
人
吉
・
球
磨
八
代
荒
玉
・
山
鹿
宇
城
上
益
城
菊
池
阿
蘇
熊
本
甲佐町
山都町
宇土市
2
9
2
15
42
109
73
144
273
90
195
384
2
6
63
30
46
109
76
73
249
108
125
421
18
△70
37
△65
△71
△34
△64
27
△135
△7
山都町
宇土市
荒尾市
玉名市
35
200
308
543
23
238
273
534
130
△97
15
△66
18
4
33
△62
荒尾市
玉名市
和水町
八代市
氷川町
人吉市
11
134
6
4
1
3
2
0
4
37
377
22
194
31
32
7
4
21
45
564
67
261
124
44
23
33
38
93
1,075
95
459
156
79
32
37
63
10
126
3
20
4
8
0
0
1
30
399
28
186
36
18
19
9
10
52
509
76
340
80
67
21
8
21
92
1,034
107
546
120
93
40
17
32
△41
12
87
△36
14
8
△20
△31
△84
△9
△66
△4
△28
△9
1
△8
△62
△12
3
△18
2
△7
△14
△33
△63
15
18
△22
△16
6
△5
△6
△125
3
21
△40
△14
△1
△19
△39
八代市
氷川町
人吉市
錦町
多良木町
湯前町
水上村
相良村
苓北町
10
20
47
77
5
23
29
57
△20
△25
△24
△21
△45
資料:熊本県統計調査課「熊本県の人口と世帯数」
天草市
21
239
520
780
26
262
386
674
△106
△177
△179
△104
△283
上天草市
11
81
191
283
10
67
142
219
△64
△74
△67
△71
△138
上天草市
苓北町
津奈木町
0
11
25
36
2
14
13
29
△7
△16
△9
△14
△23
津奈木町
天草市
芦北町
水俣市
3
2
54
151
81
131
138
284
4
4
46
102
78
95
128
201
△10
△83
△42
△58
△58
△83
△141
水俣市
△30
1
40
87
128
5
44
88
137
9
△30
1
△22
△21
あさぎり町
△22
あさぎり町
0
12
35
47
1
12
17
30
△17
△21
△27
△11
△38
球磨村
△52
球磨村
0
19
33
0
5
19
24
△9
△9
山江村
芦北町
山江村
0
1
14
18
19
1
4
10
15
△4
0
△6
0
△6
△4
△4
△15
五木村
間
錦町
接
的 多良木町
被
湯前町
害
エ 水上村
リ
相良村
ア
五木村
長洲町
10
61
107
178
51
97
73
221
△20
2
43
△1
△10
△15
48
△23
33
△21
和水町
南関町
7
37
52
96
2
61
長洲町
玉東町
1
13
27
41
1
6
42
23
30
105
3
△12
南関町
9
△9
△21
△11
△9
△15
△20
玉東町
△11
山鹿市
24
137
320
481
19
123
197
339
△142
△71
△96
△117
△213
山鹿市
△9
美里町
5
14
17
250
70
152
92
416
4
29
15
355
34
162
53
546
△39
△40
△38
△41
△79
美里町
△53
宇城市
27
143
463
633
16
164
386
566
△67
△64
△77
△54
△131
宇城市
△44
益城町
10
111
204
325
4
87
282
373
48
0
△21
8
3
11
52
66
2
42
87
131
65
8
45
28
73
嘉島町
41
6
30
133
169
5
47
132
184
15
14
3
御船町
7
10
132
449
591
35
327
395
757
166
49
△12
90
△11
125
215
菊陽町
△11
18
126
270
414
68
220
271
559
145
35
57
123
180
大津町
48
16
205
392
613
39
229
547
815
202
43
120
125
245
合志市
△3
嘉島町
27
130
277
434
23
137
275
435
1
△45
△34
△10
△44
菊池市
甲佐町
御船町
2
43
84
1
45
77
△6
益城町
菊陽町
9
20
70
99
129
2
30
65
97
123
△2
△4
△25
△7
△17
1
△14
△6
△31
直
高森町
接
的 西原村
被
南阿蘇村
害
エ 菊池市
リ
合志市
ア
大津町
西原村
5
13
57
75
7
28
42
77
2
△19
△15
△2
△17
高森町
産山村
南阿蘇村
0
3
10
13
0
4
11
15
2
△5
△1
△2
3
72
78
153
51
35
52
138
△15
△25
△16
△24
△40
小国町
△3
小国町
3
24
57
84
4
21
43
68
△15
△22
産山村
阿蘇市
南小国町
22
85
158
265
56
112
151
319
54
△16
△30
△17
41
北区
49
667
1,188
1,904
65
499
1,014
1,578
△326
△3
△172
△157
△329
北区
△9
南区
38
560
929
1,527
21
494
1,167
1,682
155
104
124
135
259
南区
24
西区
30
473
813
1,316
56
512
963
1,531
215
△79
58
78
136
西区
△31
東区
73
1,310
1,604
2,987
92
1,246
1,707
3,045
58
133
110
81
191
東区
阿蘇市
中央区
154
1,782
1,939
3,875
297
1,933
2,167
4,397
522
△11
171
340
511
中央区
南小国町
熊本市
344
4,792
6,473
531
4,684
7,018
624
144
291
477
768
熊本市
△44
△171
109
136
245
間接的被害
熊本市
中央区
東区
346
309
142
62
1,963
5,412
2,053
1,533
2,965
8,736
2,533
2,696
5,274
14,457
4,728
4,291
328
420
242
88
1,909
4,276
1,962
982
3,154
9,285
2,889
2,057
5,391
13,981
5,093
3,127
117
△476
365
△1,164
△1,108
13
△22
81
△5
△11
△294
△140
△21
△50
△150
△12
△12
△15
3
△123
△17
6
△77
△7
△27
△171
△63
△14
△23
△97
△15
3
△53
△9
0
△18
△223
△79
△12
△41
△69
△10
△19
△4
3
5
△5
8
△5
△6
△1
△3
△5
6
1
7
△4
△13
△21
△7
△9
△18
△13
△20
△20
17
△26
△29
△38
4
△63
△50
△18
△37
△188
1
△20
△36
△19
94
△27
58
△8
△23
36
△23
28
△26
△16
△107
△85
△50
△51
△85
△46
△8
△12
△9
△17
△17
△29
△28
△14
25
△84
11
△112
△24
△38
△157
△31
△33
△37
△25
△55
△71
△194
△5
△25
美里町
荒尾市
玉名市
0
4
37
14
279
228
46
163
237
60
446
502
1
46
24
12
210
203
27
185
371
40
598
96
苓北町
10
21
35
66
5
16
52
73
資料:熊本県統計調査課「熊本県の人口と世帯数」
天草市
15
211
553
779
16
256
436
708
上天草市
25
72
195
292
16
48
167
231
7
津奈木町
0
14
21
35
1
7
18
26
△71
△61
△9
芦北町
水俣市
1
129
136
266
4
105
76
185
△9
△81
6
あさぎり町
14
52
82
148
7
39
100
146
△2
35
球磨村
0
2
20
22
0
11
18
29
7
89
山江村
0
9
1
3
25
29
4
130
五木村
0
5
3
16
8
25
0
5
15
20
12
9
相良村
1
6
34
41
4
10
29
43
2
38
水上村
0
3
7
10
0
3
19
22
12
74
湯前町
0
11
41
52
0
7
29
121
多良木町
0
26
60
86
1
19
49
36
△17
69
錦町
0
33
76
109
△16
11
1
人吉市
13
159
254
426
17
120
276
413
△13
38
氷川町
10
27
72
109
4
21
83
108
81
八代市
171
347
402
920
128
445
593
1,166
246
120
和水町
6
30
45
81
1
23
38
△1
長洲町
11
62
86
159
17
103
72
33
62
南関町
6
40
71
8
46
80
9
192
玉東町
4
9
25
35
48
8
9
26
18
35
△13
△19
山鹿市
12
168
263
443
10
144
284
438
△5
△20
441
宇城市
26
185
483
△5
△109
694
宇土市
3
131
335
469
80
84
275
439
△30
0
△30
△28
△15
19
19
山都町
10
40
106
156
5
36
115
156
0
△53
△53
△28
△472
171
甲佐町
4
35
54
93
5
23
86
114
21
△13
6
△20
395
益城町
9
196
850
1,055
17
64
180
261
△794
△350
△822
△23
585
嘉島町
0
29
119
148
2
19
83
104
△43
△44
御船町
8
80
245
333
8
18
126
152
1
菊陽町
22
240
326
588
23
147
493
663
75
△181
60
△23
88
47
135
△117
大津町
13
203
333
549
30
234
336
600
51
24
88
75
△87
合志市
30
199
381
610
43
227
661
931
321
37
190
△13
168
358
△204
菊池市
17
171
311
499
24
116
4
176
281
6
49
39
94
352
西原村
南阿蘇村
2
41
101
135
178
2
18
59
79
492
高森町
2
18
52
産山村
72
2
0
8
23
5
48
15
71
1
△7
△187
△99
△1
△4
△58
△29
△7
△20
△9
△7
△12
△123
△57
△25
△8
△10
△53
△93
△49
4
△5
△16
△65
△216
△106
△21
△13
△1
5
7
77
78
162
62
41
52
155
△17
△40
5
小国町
6
41
51
98
9
19
30
△10
11
阿蘇市
南小国町
40
168
217
425
78
102
203
△36
△42
58
△14
△44
383
△50
△51
北区
46
667
1,221
1,934
42
459
1,766
2,267
333
△28
229
76
305
△35
南区
40
627
1,096
1,763
20
439
1,555
2,014
251
28
154
125
279
△86
西区
19
532
1,190
1,741
28
434
1,018
1,480
△261
△46
△209
△98
△40
△10
752
52
689
64
659
△11
△11
2
△3
223
59
67
0
377
167
33
425
236
30
△23
△80
△78
△2
△10
5
△16
2
3
△10
8
△6
△7
50
23
34
16
35
27
△46
7
56
7
△67
27
△19
25
12
34
△7
5
△3
△1
△11
0
△12
33
△9
4
9
6
△10
0
3
△4
△1
△1
△6
0
△28
1
14
3
△19
△1
△22
8
5
△8
△18
5
0
3
△8
△4
△7
△11
△5
△2
4
2
0
2
△2
1
1
△11
3
△19
△39
△1
2
△9
0
13
12
△5
20
2
△5
30
12
9
△11
20
△16
△10
0
0
4
△5
△15
△3
△15
△25
25
10
△3
△15
△1
9
△1
1
△1
24
2
12
14
△8
1
6
26
△11
△1
1
△2
5
5
13
△3
6
4
5
16
△4
3
9
12
△4
0
△22
3
0
8
11
33
2
32
3
35
△1
△2
△26
△27
0
△6
11
5
4
32
△3
△6
18
△6
20
6
26
9
△1
16
1
△12
△24
8
△4
△20
△2
△4
△26
△28
△24
2
△48
△47
△35
7
△3
2
△7
20
1
△33
0
△31
7
0
△3
△7
47
△3
△18
5
△66
△4
39
△64
4
△133
△24
44
△40
△100
△44
5
5
14
1
7
1
16
△84
37
△30
△162
△155
2
46
△7
84
132
△9
13
287
△13
△104
26
157
△35
183
△22
1
0
△5
1
△7
△21
△12
△9
△19
△34
6
△7
△14
△1
3
△1
△12
△12
△4
6
8
7
△25
7
3
△16
△30
0
△15
31
△57
△38
△18
△7
7
△25
△12
△5
△29
0
△5
5
△25
△2
△5
6
△7
△1
△11
△8
△25
△5
△9
2
28
△41
1
△9
△12
29
11
△71
△5
△10
△3
△24
30
△1
△32
42
17
20
△3
61
1
3
1
22
62
85
17
2
20
3
3
△2
85
646
△19
730
13
△38
△1
18
67
82
0
△39
2
△3
50
112
△1
12
108
△123
△3
164
21
△35
87
98
99
64
137
105
△36
△32
68
52
21
73
33
23
101
△3
△145
△7
47
△13
△105
19
△135
△11
0
△39
8
7
△49
8
9
△88
△21
△80
17
△63
19
△25
26
18
△67
44
9
△42
△10
42
31
70
12
46
36
82
△32
△7
10
6
3
△23
△23
△102
△112
△842
6
△23
△28
△4
11
△27
△513
△109
△6
△2
△7
△32
△94
3
△180
98
△91
△196
11
△11
△12
77
63
14
65
41
△29
△6
△11
△3
135
4
△38
△2
114
116
119
△357
△65
△106
14
△5
41
34
65
1
△21
77
57
△8
9
△51
△101
2
△10
58
92
△870
△116
△207
△7
21
65
79
152
△6
5
△18
0
△97
△181
△94
△6
2
△3
5
△5
△3
5
△7
△5
4
△5
2
△12
6
1
△38
△6
1
△29
△3
△11
70
△70
43
△35
113
△105
△13
22
△4
△3
△1
△106
△50
△10
△43
△79
△50
6
△7
△21
△185
△100
△4
△3
△6
4
△10
△4
5
0
9
11
6
0
17
8
15
0
23
23
△6
3
17
14
5
△24
△4
18
83
59
△6
160
22
△2
△13
△10
△96
5
△34
△14
△76
△14
△110
△5
△1
△28
△19
△25
401
233
634
△55
388
332
96
△76
30
△10
20
△78
55
△51
△476
33
△176
△12
271
594
△4
1,092
620
853
350
82
42
△35
△83
△354
2,263
△395
1,266
3,252
4,509
2,848
33
△9
県外
1,183
県内
2,898
他
(単位:人)
4,114
出
転出計
転
1,304
△55
29
△264
722
696
△267
△157
△408
△27
△111
△266
314
2,267
△84
21
416
△1,100
他
△111
1,748
△728
2,584
1,772
△2,737
△1,222
△11
△131
県外
△994
県内
2,898
△2,321
1,793
入
△52
△762
△215
47
△512
△813
△418
△443
△1,274
△168
△1,231
△172
△1,712
△1,197
直接的被害 △2,909
514
7,389
13,039
20,942
835
5,684
12,850
△307
△343
転
転入計
増減
増減
19,369
女
△1,603
△1,573
男
860
△1,061
計
△2,664
他
県外
9,352
県内
16,004
26,216
△1,456
転出計
△1,415
他
社会
自然
1,163
熊本県
人口
B-A 前年同期比
県外
(単位:人)
7,593
出
県内
転
16,004
入
24,760
増減
増減
転
転入計
社会
自然
△307
△652
387
343
△431
△522
△1,083
△599
△1,420
59
△460
女
△2,019
△392
△991
間接的被害
304
2,046
3,319
5,669
11,609
355
2,175
2,840
5,370
12,233
△299
△937
△708
△528
間接的被害 △1,236
男
△852
△463
直接的被害 △1,880
523
6,123
9,787
16,433
919
6,412
10,266
17,597
1,164
△135
292
737
1,029
827
22,102
直接的被害
計
△2,871
他
県外
8,169
県内
13,106
転出計
他
209
1,274
△1,072
女
△416
男
計
人口
2016年7月1日現在(4月1日⇒7月1日)
県外
熊本県
B
8,587
(単位:人)
県内
出
13,106
転
22,967
入
転入計
増減
増減
転
865
社会
自然
△207
人口
2015年7月1日現在(4月1日⇒7月1日)
熊本県
A
Ⅱ.事業継続を困難にさせる要因(以下、アンケート集計結果)
地震による生産要素の被害及び経営環境の急変が事業承継・継続に与える影響について、直接
的被害エリアの事業所 11.3%、間接的被害エリアでも 4.3%が経営問題として挙がり、両エリア
合算して 8.4%のウェイトとなっている(前編 p22)
。
6 月末時点での 8.4%のウェイトは既に看過できない大きさだと思われるが、より重要なことは
今後、この問題が拡大するのか終息に向かうのかという見極めであり、以下、その方向性と課題
を探る。
1.業種と従業員規模
事業承継・継続の問題は、業種別には「宿泊業」と「飲食サービス業」に多い(図表 2)
。この
様に観光客や消費者の動線に左右される立地産業にとって、地震の被害が甚大である。
また、今回の地震の被害を吸収する体力があるのは、従業員規模が 300 人以上の事業所である
様子も窺える(図表 3)
。
図表 2:事業承継・継続と「業種」
影響なし
多少の影響
0%
20%
影響あり
重大な影響
農林水産業
鉱業
製造業
建設業
卸・小売業
金融・保険業
不動産業
運輸・情報通信業
医療福祉業
宿泊業
飲食サービス業
その他サービス業
40%
60%
80%
100%
図表 3:事業承継・継続と「従業員規模」
影響なし
多少の影響
影響あり
重大な影響
9人以下
10~19人
20~29人
30~49人
50~99人
100~299人
300人以上
80%
85%
90%
5
95%
100%
2.操業能力の復旧と事業収入の回復
操業能力の復旧および事業収入の回復と、事業承継・継続の問題とは強い相関関係があること
が確認できる(図表 4、5)
。
この問題意識から、本レポートにおいて両者の復旧・回復を遅らせている要因を明らかにし、
求められる対策を探りたい。
図表 4:事業承継・継続と「操業能力」
操業能力の復旧度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響なし
81~99%
100%
77.5%
事
業 多少の影響
承
継
・
影響あり
継
続
55.3%
40.0%
重大な影響
10.5%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図表 5:事業承継・継続と「事業収入」
事業収入の回復度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響なし
81~99%
100%
101%以上
62.2%
事
業 多少の影響
承
継
・
影響あり
継
続
25.3%
23.5%
重大な影響
4.5%
0%
20%
40%
60%
6
80%
100%
Ⅲ.操業能力の復旧を遅らせている要因
土地、建物、設備、従業員などの生産要素の被害によって直接的被害エリアの事業所 69.3%、
間接的被害エリアでも 17.9%が操業能力に影響を受けているが、両エリアにおいて 30%前後が、
6 月末時点で復旧していない(前編 p10)
。
以下、その要因と課題を探る。
1.生産要素
(1)建物・設備
建物や設備等のハード面の被害は、操業能力の復旧を遅らせている(図表 6、7)
。
自由コメントから窺える遅延の要因としては、建設や補修業者、人手、必要資金等の不足の他、
各種補助金申請の事務負担が挙げられる。
図表 6:操業能力の復旧状況と「建物」
図表 7:操業能力の復旧状況と「設備」
操業能力の復旧度
0%
1~20%
21~40%
61~80%
81~99%
100%
被害なし
操業能力の復旧度
41~60%
79.1%
0%
1~20%
21~40%
61~80%
81~99%
100%
被害なし
建
物
41~60%
86.5%
設
備
被害あり
68.6%
0%
20%
40%
60%
被害あり
80%
100%
66.4%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(2)従業員(及びその家族)
従業員(及びその家族)の被災によって休職もしくは退職を余儀なくされ、日常的人手不足が
深刻さを増し、事業所の操業能力復旧を遅らせている(図表 8)
。
自由コメントからは、直接的被害エリアの特に福祉施設から‘緊急事態が続いている’との声
が寄せられている。
図表 8:操業能力の復旧状況と「従業員」
0%
1~20%
操業能力の復旧度
21~40%
41~60%
61~80%
100%
81~99%
従業員に被害はあったが、事業活動にほとんど
影響は出ていない
従業員に、就業時間の短縮や休暇等があったが、
事業活動への影響は軽微
従業員に、就業時間の短縮や休暇等があり、
事業活動に多少の影響が出た(出ている)
就業時間の短縮や休暇等が長期化し、
現在も、事業活動に影響が出ている
人手が不足し、現在も、事業活動に
大きな影響が出ている
0%
10%
20%
30%
7
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2.従業員規模との関係
従業員規模別には、操業能力復旧状況に差が認められない(図表 9)
。
中小零細から大企業まで、地震のダメージは事業規模に関係なく大きくのしかかっていること
に留意したい。
図表 9:操業能力の復旧状況と「従業員規模」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
操業能力の復旧度
61~80%
81~99%
100%
9人以下
10~19人
20~29人
30~49人
50~99人
100~299人
300人以上
0%
20%
40%
60%
80%
100%
3.事業拠点の移転との関係
事業拠点を「現状のまま」と言い切るのは 76.9%が操業能力を 100%復旧した事業所であり、
復旧が遅れるにつれて移転を検討する事業所が増加している(図表 10)
。
図表 10:操業能力の復旧状況と「事業拠点の移転」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
現状のまま
81~99%
100%
76.9%
当面は現状
事
業
拠
点
操業能力の復旧度
60.2%
どちらとも
48.3%
新規を検討
45.9%
新規を開発
54.5%
0%
20%
40%
60%
8
80%
100%
Ⅳ.事業収入(出荷・販売)の回復を遅らせている要因
地震による生産要素の被害及び経営環境の急変が事業収入(出荷・販売)に与えている影響に
ついて、直接的被害エリアの事業所 85.3%、間接的被害エリアでも 65.6%が「影響あり」と答え
ており、両エリアにおいて 50%弱が 6 月末時点で回復していない(前編 p14)。
以下、その要因と課題を探る。
※事業収入の回復度が 100%以上を「回復」と表記
1.経営環境の変化
(1)主要販売先と仕入先の被災
販売先被災の影響を受けつつ事業収入を 100%回復できた事業所は 37.0%に止まり、同影響が
無く 100%回復した事業所 81.6%と大きな差(44.6p)がある(図表 11)
。
仕入先被災の影響(同 14.9p、図表 12)と比較しても、販売先被災のダメージは大きい。
図表 11:事業収入の回復状況と「販売先被災」
図表 12:事業収入の回復状況と「仕入先被災」
事業収入の回復度
販
売
先
被
災
に
よ
る
影
響
事業収入の回復度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
81~99%
100%
101%以上
61~80%
81~99%
100%
101%以上
影響なし
仕
入
先
被
災
に
よ
る
影
響
81.6%
影響あり
37.0%
0%
20%
40%
60%
80%
影響なし
62.9%
影響あり
48.0%
0%
100%
20%
40%
60%
80%
100%
(2)商流の変化
商品供給ができない間に商流(取引関係)が変化してシェアを奪われ、事業収入の回復が遅れ
ている状況が窺われる(図表 13)
。
図表 13:事業収入の回復状況と「シェアの変化」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響(該当)なし
シ
ェ
ア
縮
小
・
喪
失
81~99%
事業収入の回復度
100%
101%以上
73.2%
多少の影響
41.0%
影響あり
19.7%
重大な影響
12.1%
0%
20%
40%
9
60%
80%
100%
(3)値下げ圧力
仮に商品供給能力を取り戻し取引関係の回復を目指しても、販売先からの値下げ圧力がシェア
の挽回を難しくしている(図表 14)
。
図表 14:事業収入の回復状況と「値下げ圧力」
事業収入の回復度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響なし
100%
81~99%
101%以上
59.4%
値 多少の影響
下
げ
圧
影響あり
力
42.7%
25.0%
重大な影響
22.2%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(4)購買行動の変化
生活者は地震を体験して消費マインドに変化が見られ、生活防衛や娯楽・レジャー等の自粛と
いった消費行動が事業収入の回復を遅らせている(図表 15)
。
図表 15:事業収入の回復状況と「購買行動の変化」
事業収入の回復度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響(該当)なし
購
買
行
動
の
変
化
81~99%
100%
101%以上
75.0%
多少の影響
44.2%
影響あり
34.6%
重大な影響
18.4%
0%
20%
40%
10
60%
80%
100%
(5)人口流出
本レポート p1~4 で指摘した熊本県の人口移動(地元事業所から見れば人口流出)は、事業収
入の減少に直結し、回復に大きな影響を与えている(図表 16)
。
図表 16:事業収入の回復状況と「人口流出」
事業収入の回復度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響(該当)なし
人
口
流
出
81~99%
100%
101%以上
62.4%
多少の影響
42.9%
影響あり
20.8%
重大な影響
13.3%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(6)風評被害
風評被害もまた、事業収入回復を遅らせている要因の一つとして事業主に認識されていること
が分かる(図表 17)
。
事業主の、この不安心理を払拭する支援の重要性も指摘される。
図表 17:事業収入の回復状況と「風評被害」
事業収入の回復度
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響(該当)なし
風
評
被
害
81~99%
100%
101%以上
63.8%
多少の影響
36.8%
影響あり
32.4%
重大な影響
13.5%
0%
20%
40%
11
60%
80%
100%
2.マーケティング戦略の変化
(1)市場(ターゲット)
経営環境の変化を受けて市場(ターゲット)を変えるという決断はリスクを伴う重い経営判断
の一つだが、収入の回復が遅れている事業所ほど、その決断を迫られている(図表 18)
。
図表 18:事業収入の回復状況と「市場(ターゲット)」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
81~99%
現状のまま
事業収入の回復度
100%
101%以上
65.9%
市 当面は現状
場
(
タ
ー どちらとも
ゲ
ッ
ト 新規を検討
)
40.7%
49.0%
29.3%
新規を開発
31.1%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(2)商品政策
市場(ターゲット)が変われば、それに合わせて商品も変わる。新商品開発に伴う高いリスク
に向かう決断を迫るのも、やはり事業収入の回復の遅れである(図表 19)
。
「新規を開発する」とするグラフの右側にピンク色の帯(収入の回復 101%以上)が出ている
点が注目される。復旧需要を含め、大きな経営環境の変化をチャンスととらえて売り上げを伸ば
している事業所があることが確認できる。
図表 19:事業収入の回復状況と「商品政策」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
現状のまま
商
品
政
策
事業収入の回復度
81~99%
100%
101%以上
65.7%
当面は現状
39.1%
どちらとも
42.4%
新規を検討
19.7%
新規を開発
23.8%
0%
20%
40%
60%
12
80%
7.1%
100%
3.経営課題
(1)運転資金
事業収入回復の遅れは運転資金の確保に影響を与えているが、運転資金確保に「重大な影響」
があると回答した事業所の 16.2%は収入が 100%回復している事業所であり、人件費高騰を含め
て平常時ではない経営環境が経費を増加させている状況が窺える(図表 20)
。
図表 20:事業収入の回復状況と「運転資金」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響なし
運
転
資
金
事業収入の回復度
100%
81~99%
101%以上
65.0%
多少の影響
58.2%
影響あり
28.7%
重大な影響
16.2%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(2)人手の確保
人手不足は事業収入回復を遅らせているが、一方で人手の確保に「重大な影響」があると回答
した事業所の 39.3%は収入が 100%回復している事業所であり、101%以上回復している事業所
も 10.7%ある(図表 21)
。
人手不足は事業収入回復ばかりではなく、事業の維持・拡大にも影響を与えている。
図表 21:事業収入の回復状況と「人手の確保」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
影響なし
事業収入の回復度
81~99%
100%
101%以上
60.1%
人 多少の影響
手
の
確
影響あり
保
50.6%
43.9%
重大な影響
10.7%
39.3%
0%
20%
40%
60%
13
80%
100%
4.従業員規模との関係
従業員規模別には、操業能力の復旧(p8、図表 9)と同様に事業収入の回復にも差が認められ
ない(図表 22)
。
ここでも中小零細から大企業まで、地震のダメージは事業規模に関係なく大きくのしかかって
いることに留意したい。
図表 22:事業収入の回復状況と「従業員規模」
0%
1~20%
21~40%
41~60%
61~80%
81~99%
事業収入の回復度
100%
101%以上
9人以下
10~19人
20~29人
30~49人
50~99人
100~299人
300人以上
0%
20%
40%
60%
14
80%
100%
Ⅴ.事業収入の回復と行政への要望
事業収入の回復状況別に行政への要望を見ると、回復が 80%以下の事業所に多いのが、
「①補
助金額の拡大」
「②補助対象の拡大」
「④税制優遇」等であり、逆に回復が 80%を上回る事業所で
は、
「⑤情報提供」
「⑪融資制度の拡充」
「⑬自治体の長期計画の明確化」が多い(図表 23)
。
以下、自由コメントから窺える各要望の内容を抜粋する。
1.事業収入回復が 80%以下の事業所に多い行政への要望
(1)
「①補助金額の拡大」
・事業継続、雇用維持に必要な資金の算定を実態に即して実施して欲しい。
(製造業)
・休業補償などの率を上げて欲しい。(情報通信)
(2)
「②補助対象の拡大」
・大企業にも支援の手を。
(製造業)
・流通業にとっては在庫の被害は経営問題に直結する。
(卸売業)
・利用者の移転で減収が続いている。震災による収入減も対象に。(福祉施設)
・職員が避難所の手伝いに従事している。人件費の一部負担を。
(福祉施設)
・医療機器への対象拡大。
(医療機関)
(3)
「④税制優遇」
・法人税率の見直し。
(製造業)
・震災による土地評価額を反映、見直して欲しい。
(運輸業)
・4 月決算で、今年も 6 月に法人税、消費税等の支払いが通常通りあり、その後で復旧関連の
費用支出があり、資金繰りが厳しかった。(医療機関)
2.事業収入回復が 80%を上回る事業所に多い行政への要望
(1)
「⑤情報提供」
・地場企業同士の取引拡大。
(製造業)
・悪徳業者を排除する意味でも、各種復旧業者を紹介して欲しい。(医療機関)
・地域のニーズを自治体とともに共有したい。(教育機関)
(2)
「⑪融資制度の拡充」
・スピード感のある対応が望まれる。(製造業)
・売上は回復しても経費は上がっている。(その他サービス業)
(3)
「⑬自治体の長期計画の明確化」
・具体的な復興計画を策定して、目標が見えるようにして欲しい。(製造業)
・本業を通じて復興に協力したい。
(製造業)
・将来ビジョンが具体化すると自社の店舗計画も決まり、地域の雇用貢献もできる。
(小売業)
・働く人が少なくなっている。復興計画でこの問題を取り上げて欲しい。
(福祉施設)
15
図表 23:事業収入の回復と行政への要望
0~80%
81~100%
影響なし
101%以上
45.5%
29.5%
32.1%
①補助金額(補助率)の拡大
17.5%
45.5%
28.7%
②補助対象の拡大
21.4%
16.8%
16.6%
10.8%
③規制緩和
17.9%
7.9%
40.1%
27.4%
28.6%
④税制優遇
16.6%
20.5%
14.5%
⑤情報提供
21.4%
11.6%
12.7%
⑥販路開拓支援
5.5%
3.6%
2.5%
⑦消費喚起・風評被害払拭等
5.8%
14.5%
10.7%
4.7%
3.0%
1.8%
3.6%
1.1%
⑧リーディング企業育成支援
5.4%
3.0%
7.1%
3.4%
⑨各種相談
2.7%
2.7%
3.6%
3.2%
⑩セミナー・研修等の開催
18.4%
11.3%
⑪融資制度の拡充
21.4%
6.6%
5.1%
3.6%
⑫人材支援(専門家派遣等)
10.7%
3.8%
11.7%
9.2%
⑬自治体の長期計画の明確化
21.4%
7.0%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
16
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
<総括に代えて>
事業活動の復旧・復興への提言
本調査は復旧に向けて懸命な努力を続けておられるさ中に、多くの事業主の方々のご協力を頂
きました。弊研究所と致しましては、単なる調査・分析に終わらせることなく、早期復旧と創造
的復興に資する提言活動を展開する責任があると考えています。
ご協力を頂いた本調査によって、熊本地震を境に経営環境が急変して様々な事業ニーズが発生
していることを目の当たりにしました。
そこで事業を継続・発展させるに当たり、直面している課題等を「生産要素」
「マーケティング」
「マネジメント」に分類してデータベース化することによって相互の交流を促進し、復旧・復興
に向けてバリューチェーン(価値連鎖)を形成することを提言したいと思います。
当該システムは弊研究所で開発し、システム稼働は 2017 年 1 月を予定したいと思いますが、
より実効性のあるものとするため、皆様のご意見を広く募集いたします。
是非とも、ご協力をお願い申し上げます。
<システム概要>
農林漁業、企業、医療・福祉、教育、金融など、あらゆる事業所(含む個人)にご参加頂き、
事業継続・発展に必要なニーズ、そして特技やアイディア等の情報を持ち寄り共有して、課題を
解決する仕組みの構築を目指します。
なお悪意の第三者を遮断するため、本システムの利用は商工会等(弊研究所を含む)の会員に
限定するなど、相互の一定の信頼関係の下で運用する必要があると考えています。
<ご意見・ご要望等>
下記の電話もしくはFAXにて、お待ち申し上げます。
TEL096(326)8634/FAX096(359)7226
公益財団法人地方経済総合研究所
〒860-0012 熊本市中央区紺屋今町9番6号 熊本紺屋今町ビル8階
担当:小田、宮野、東(ひがし)、松永、山中
17
図表 24:事業ニーズのデータベース化とバリューチェーン(価値連鎖)の形成
事業ニーズ
主な内容
1.生産要素
人手、人材、設備、資金、技術、情報、etc
2.マーケティング
商品、価格、販路、販促、出店、市場、海外、etc
3.マネジメント
コストコントロール、コミュニケーション、運営管理、etc
A事業所
D事業所
サ
プ
ラ
イ
ニ
ー
ズ
B事業所
C事業所
E事業所
E個人
相談者
バリューチェーン
(価値連鎖)
商工会会員等
提案者
サプライヤー
採用の判断
⑤
相談者
回答
主な事業
従業員数
その他
①
採用の可否
④
ID登録
提案
当研究所HP
地域の事業者
閲覧者
会員
②
サプライ
事業ニーズ公開
(個社名非表示)
YES
NO
ID登録
主な事業
従業員数
その他
③
会員番号
商工会等入会
海外への関心
必要な海外情報
アイディア・技術の商品化
助言を受けたい内容
その他困っていること等
課題解決者
以上
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