北海道新幹線の開業効果とその波及 日本銀行函館支店 2016年9月 目次 ■ 北海道新幹線の開業効果 ■ 道南地域への波及:業種、地域、所得・消費 道南地域への波及:業種、地域、所得 消費 ■ 当地観光業の課題 1 1.北海道新幹線の開業効果 (1)観光施設の伸びは? ■ 五稜郭タワーの利用客数は 五稜郭タワーの利用客数は、足もと前年同月を大幅に上回って推移している。 足もと前年同月を大幅に上回って推移している 函館山ロープウェイも増加。 【図表1】五稜郭タワー利用客数推移 【図表2】函館山ロープウェイ利用客数推移 (千人) (%) 1,200 利用客数(左目盛) 前年比 (右目盛) 120 1,100 1,000 100 900 80 50 40 30 60 800 20 40 700 10 20 600 0 0 500 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 年度 (%) (千人) 200 2,000 140 16/1 2 3 4 5 6 月 利用客数(左目盛) 1 900 1,900 前年比 (右目盛) (右 盛) 190 1,800 180 1,700 170 1,600 160 1,500 150 1,400 140 1,300 130 1,200 120 1,100 110 1,000 35 30 25 20 15 10 5 100 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 年度 0 16/1 2 3 4 5 6 月 (資料)五稜郭タワー、函館山ロープウェイ 2 (2)観光客はどこから? ■ 利用客の内訳をみると、16/4月以降、国内客、その中でも関東・東北方面からの 旅行客が大きく増加 旅行客が大きく増加している。 【図表3】五稜郭タワー利用客数・国内外別 【図表4】五稜郭タワー利用客・国内客地域別 (%) (%) 60 60 海外 50 国内 前年比 40 北海道 東北 50 関東 信越北陸 40 東海中部 近畿 中国四国 九州 不明 国内客前年比 30 30 20 20 10 10 0 0 ▲ 10 ▲ 10 ▲ 20 ▲ 20 15/3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 16/1 2 3 4 5 6 月 15/3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 16/1 2 3 4 5 6 月 (資料)五稜郭タワー 3 (3)個人OR団体? 海外客は? ■ 国内客をみると、16/4月以降、個人旅行、団体旅行ともに前年比増加幅が 拡大している とりわけ 個人客の伸びが顕著 拡大している。とりわけ、個人客の伸びが顕著。 ■ 一方、海外客は頭打ち。 【図表5】五稜郭タワー利用客・国内個人団体別 (%) 【図表6】五稜郭タワー利用客・海外地域別 (%) 120 60 団体 50 個人 国内客前年比 100 40 80 30 60 20 40 10 20 0 0 ▲ 10 ▲ 20 ▲ 20 台湾 中国 東南アジア 韓国 その他 海外客前年比 ▲ 40 15/3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 16/1 2 3 4 5 6 月 15/3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 16/1 2 3 4 5 6 月 (資料)五稜郭タワー 4 (4)空港利用客が減った? ■ 空港利用客数は減少していない。 ■ 当地観光の入込客数は新幹線利用客分が純増。 当地観光の入込客数は新幹線利用客分が純増 【図表7】函館空港利用客数 (前年比、寄与度、%) 15 国内線 国際線 10 5 0 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 01 03 05 07 09 11 13 15 年度 16/1 2 3 4 5 6 月 (資料)函館空港ビルデング 5 (5)宿泊施設の伸びは? ■ 主要ホテル・旅館の宿泊客数(日銀函館支店調べ)は、12年度以降増加しており、 16/6月には 前年同月を+17%上回った 16/6月には、前年同月を+17%上回った。 ■ 夏のピーク期には宿泊施設がボトルネック化。 満杯で観光特需を取りこぼし。⇒次頁 【図表8】主要ホテル宿泊客数 (09年度=100) (09年度 100) 140 【図表9】主要ホテル宿泊客数前年比 (%) (14年度平均=100) (14年度平均 100) 16 130 前年比 宿泊客数 120 12 110 8 100 4 90 0 80 ▲4 70 09 10 11 12 13 14 15 年度 16/1 2 3 4 5 6 月 10 11 12 13 14 15 年度 16/1 2 3 4 5 6 月 (資料)日本銀行函館支店 6 (6)宿泊施設 キャ (6)宿泊施設のキャパシティ問題 ティ問題 ■ 函館市を訪れる宿泊客数は年々増加しており、特にピークシーズン(8月)は キ パシテ の限界に直面 キャパシティの限界に直面。 【図表10】1日当たりの宿泊客数 (千人) 20 <収容人数> 17,990人/日 18 ( 2015年10月商工会議所調べ) 13,597人 (75.6%) 16 1,462人 とりこぼし 15,854人/日(稼働率88.1%) 14 16/4月以降の宿泊客数は市集計値の 15年の実績値に当店集計値の 前年比を乗じて試算 (16/7~8月は6月の前年比を使用) 宿泊客数 収容人数 実質的な上限(稼働率80%を想定) 12 10 5,506人 (30.6%) 8 <収容人数の実質的な上限> 17,990人×80%(上限想定) =14,392人 14 392人 6 4 <一部屋当たりの収容人数> 収容人数(17,990人) 客 数( , ) 約 ÷客室数(7,387室)=約2.4人 2 0 15/4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 16/1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 (資料)函館市「平成27年度来函観光入込客数推計」、函館商工会議所 8月 大部屋の存在→需給ミスマッチの発生 →稼働率の上限 7 (7)人手不足による影響 ■ 宿泊施設等では、昨年3月頃より業況感が改善する中、人手不足感も 高まっており、その後も人手不足が続いている。十分なサービスが提供 高まっており、その後も人手不足が続いている。十分なサ ビスが提供 できないため、宿泊予約を断っている先もある。 【図表11】飲食・宿泊サービス雇用判断D 【図表11】飲食・宿泊サ ビス雇用判断D.I.の推移 I の推移 (%ポイント) 100 60 雇用DI 「 過剰」 超 80 (参考)業況DI 40 20 0 「 不足」 超 ▲ 20 ▲ 40 ▲ 60 ▲ 80 ▲ 100 14/9月 12月 15/3月 6月 9月 12月 16/3月 6月 9月 (予測) (資料)日本銀行函館支店 8 (8)インバウンド需要の動向 ■ 訪日外国人客は、ここ数年増加傾向にあったものの、足もとでは横ばい圏内の 動きとなっている。 ■ 為替動向によるものか宿泊施設等のキャパシティ不足によるものかは不明。 ただし、札幌では、訪日外国人客の需要は引き続き旺盛との声が聞かれている。 (参考)ドル、人民元、台湾ドル/円 【図表12】道南渡島管内の訪日外国人客宿泊客数 (%) (千人) 500 50 60 前年比 (右目盛) 宿泊客数(左目盛) 400 40 (02/4月=100) 130 120 人民元/円 110 100 40 90 80 70 300 30 20 60 ドル/円 台湾ドル/円 50 200 20 年度 0 (参考)訪日外国人の国別割合 100 ▲ 20 10 ▲ 40 0 0 09 10 11 12 13 14 15 年度 16/1 (資料)渡島総合振興局、みずほ銀行、函館市 2 3 月 15年度の訪日外国人客 :397,468人(函館市) *東南アジア:シンガポール・ タイ マレ シア タイ・マレーシア・ インドネシア 9 (9)国際線直行便の運航状況 ■ 訪日外国人観光客の増勢鈍化は、国際線直行便の運休・減便による影響 大き 。 次頁 が大きい。⇒次頁 【図表13】函館空港国際線直行便の運航状況 期間 航空会社 区間 内容 就航便数 備考 5月6日~ 中国国際航空 函館―北京(中国) 運休 週2往復→運休 15/7月の運行開始から10か月 余りでの運休。 5月21日~10月29日 中国東方航空 函館―杭州(中国) 運休 週2往復→運休 15/12月の運行開始から5か月 余りでの運休。 6月15日~10月29日 復興航空 函館―台北(台湾) 減便 週3往復→週2往復 8月2日~31日 エバー航空 函館―台北(台湾) 減便 週7往復→週5往復 搭乗率の低下が要因とみられている。 8月12日~ タイガーエア台湾 (LCC) 函館―台北(台湾) 新規就航 週5往復 函館空港では初のLCC定期就航となる。 9月以降 奥凱航空 函館―西安(中国) 新規就航 週3往復 16/5月就航予定も、航空会社側の都合 により就航延期が度重なる。 再び減便。 搭乗率の低下が要因とみられている。 16年度 (資料)報道各社 10 (10)国際線直行便運休・減便の影響 ■ 16年度上期に生じた運休・減便は、管内訪日外国人宿泊客数を1割強 押し下げるインパクト。 【図表14】直行便運休・減便の影響 運休・減便前 日程 航空会社 区間 座席数 (A) 運休・減便後 便数/月 計(A×B) (C) (B※) 座席数 (D) 影響 便数/月 計(D×E) (F) (E※) (C)-(F) 5/6~ 中国国際航空 北京 164 8 1,312 ― ― ― ▲ 1,312 5/21~10/29 中国東方航空 杭州 155 8 1,240 ― ― ― ▲ 1,240 6/15~10/29 復興航空 台北 300 12 3,600 150 8 1,200 ▲ 2,400 8/2~8/31 エバー航空 台北 184 28 5,152 184 20 3,680 ▲ 1,472 4,880 ▲ 6,424 合計 11,304 (※)週○便(片道)×4週間 ( )週 便(片道) 週間 (資料)報道各社、渡島総合振興局、檜山振興局、日本銀行函館支店 ■ 仮に搭乗率を70%とすると・・・ 11,304人/月×70%-4,880人/月×70%=4,496人/月 11,304人/月×70% 4,880人/月×70% 4,496人/月 の搭乗人数減少。 ■ 1年間では・・・ 4,496人×12=53,952人 の減少。 ■ これは、管内訪日外国人宿泊客(453千人<15年度>)の11.9%に相当するインパクト 11 (参考)観光サービスは複合消費財 観光は ● 観光資源 ● 交通手段・・・ 今の観光ブームの契機(新幹線) 海外客の増勢鈍化(減便) マイナス 要因 ● 宿泊施設・・・ ピークシーズンの需要対応上の制約 ピ クシ ズンの需要対応上の制約 の3点が揃って成立する。 需要を生み出す3要素。 宿泊施設や交通手段が制約になると、 潜在需要を取りこぼす 12 2.道南地域への波及 ( )業種 (1)業種 ■ 業種別業況判断D.I.をみると、観光関連産業(宿泊・飲食サービス、 運輸・郵便等)の改善幅・水準の高さが目立つ。 ■ 道内地域別のD.I.をみても、道南の水準の高さが際立っている。 (参考)道内地域別・業況判断D.I. 【図表15】道南地域の業況判断D.I. (「良い」-「悪い」、%ポイント) 1 /12月 15/12月 16/3月 6月 月 9月までの予測 9月まで 予測 変化幅 変化幅 9 17 8 7 ▲ 10 15 3 7 4 7 0 4 12 10 7 ▲ 15 卸売(19) 5 21 22 32 11 11 ▲ 21 小売(13) ▲30 ▲30 運輸・郵便(9) 輸 郵便( ) 33 宿泊・ 飲食 サービス( 7) 製造業(32) 非製造業(74) 月まで 予測 9月までの予測 月 16/6月 7 道 南(106) (「良い」-「悪い」、%ポイント) 0 ▲ 23 7 56 ▲30 78 22 33 ▲ 45 71 57 86 29 86 0 全 道 3 3 6 3 1 ▲5 全 国 全 国 9 7 4 ▲3 2 ▲2 変化幅 全 産 業 変化幅 全 道 6 3 1 ▲5 道 央 3 7 0 ▲ 3 17 8 8 6 0 3 7 0 ▲3 ▲4 ▲10 ▲8 道 東 道 南 道 北 (注) 道東は釧路支店、道南は函館支店、道北は旭川事務所の公表計数。道央はその他地域の計数。 (資料)日本銀行函館支店 札幌支店 (資料)日本銀行函館支店、札幌支店 13 ( )地域 (2)地域 ■ 北海道新幹線の開業効果は、函館を起点に地域的な拡がりをみせている。 ただし、観光施設中心。宿泊施設は、函館に集中。 【図表16】新幹線開業効果の地域的な拡がり (資料)函館商工会議所 14 (3)所得 消費 (3)所得・消費 ■ 現状、観光関連業種の業況改善を起点とした「雇用の改善→賃金引上げ →所得増、消費増→地域経済の盛り上がり→魅力ある街に→観光関連業種 の業況改善」とのサイクルには至っていない。 【図表17】地域経済の波及チャネル 観光関連業種の業況改善 観光関連業種の雇用改善 同業種の賃金引上げ 設備投資の増加 (宿泊キャパシティ や観光インフラ の改善) 改善) 一部家計の所得・消費増 地域経済の盛り上がり 一段と魅力ある街に 15 3.当地観光業の課題 ■ 当地観光業にとって、北海道新幹線の開業効果を「一過性」に終わらせることなく、 定番観光 定着 」 課題。観光関連 業 安 設備 「定番観光地としていかに定着させるか」が課題。観光関連企業が安心して設備 投資できる環境づくり。 ■ オン・オフシーズンの繁閑ギャップと滞在期間の短さという弱点の克服。 ⇒外国人観光客の増加 国内客向けの新しい観光スタイル 体験の創造 ⇒外国人観光客の増加、国内客向けの新しい観光スタイル・体験の創造、 道南の周遊 稼 化。滞在中 落 帰国 。 ■ 稼ぐ力の強化。滞在中に落ちるお金+帰国してからも消費。 ⇒インターネット物販、北海道ブランドの活用 【図表18】北陸地域の宿泊・飲食サービス業況判断D.I.の推移 (%ポイント) 80 70 (67) (66) 9月 12月 60 D.I. 50 40 30 20 10 0 ▲ 10 ▲ 20 14/9月 12月 15/3月 6月 16/3月 6月 (資料)日本銀行金沢支店 16
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