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2016/9/1
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL: 03-5919-9341
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画 : 「築地市場内企業」の倒産・廃業動向調査
2003 年以降で 110 社が消滅
~業歴 30 年以上の老舗業者が 8 割超~
はじめに
11 月 7 日に予定されていた築地市場の豊洲新市場への移転について、東京都の小池知事は 8 月
31 日、当面延期することを表明した。水産関係を中心とする市場内企業の中には、長引く業績不
振から経営的な余力に乏しい業者もあり、なかには倒産や廃業に追い込まれるケースも見られる。
帝国データバンクは、集計可能な 2003 年 1 月から 2016 年 8 月までに倒産(負債 1000 万円以上、
法的整理のみ)ないし休廃業・解散に至った企業の中から、築地市場<東京都中央区築地 5-2-1
>内に本社を構える企業(=「築地市場内企業」)を抽出し、年別推移、業種細分類別、業歴別、
負債額別に集計・分析した。なお、
「築地市場内企業」に関する調査は今回が初めてとなる。
調査結果(要旨)
1. 「築地市場内企業」の倒産・休廃業等の発生状況を見ると、集計可能な 2003 年以降の累計で
111 件判明。年別では 2006 年(12 件)、2013 年(14 件)、2015 年(12 件)で 2 ケタ判明
2.
業種細分類別に見ると、「生鮮魚介卸売業」が 84 件(構成比 75.7%)で全体の 4 分の 3 を占
めた。以下、
「野菜卸売業」(7 件)、
「農畜産物・水産物卸売業」(4 件)などが続いた
3.
業歴別に見ると、「30 年以上」の老舗業者が 90 件(構成比 81.1%)を数え、全体の 8 割を超
えた。一方、
「10 年未満」は 2 件(同 1.8%)にとどまる
4. 倒産した 78 件を負債額別に見ると、「1 億円未満」が 54 件(構成比 69.2%)で最も多く、全
体の約 7 割に達しており、小規模業者の倒産が大部分を占める結果となった
(件数)
「築地市場内企業」の倒産・休廃業状況(累計)
120
100
休廃業
倒産
80
60
40
20
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
(年)
1
2016/9/1
特別企画 :「築地市場内企業」の倒産・廃業動向調査
1. 年別推移
築地市場内に本社を構える企業(=「築地市場内企
業」)について、集計可能な 2003 年以降の倒産・休廃業
等の推移を見ると、累計で 111 件判明した。内訳は、倒
産が 78 件、休廃業・解散が 33 件となった。
年別では、2006 年(12 件)、2013 年(14 件)、2015
年(12 件)で 2 ケタ判明している。なお、2016 年は 8
月末時点で 3 件にとどまっており、前年に比べてやや落
ち着いた状況となっていることが分かる。
年
倒産
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
※ 2016
合計
休廃業
5
4
6
9
8
7
5
5
3
4
9
1
10
2
78
合計
4
5
3
3
0
2
3
1
0
3
5
1
2
1
33
9
9
9
12
8
9
8
6
3
7
14
2
12
3
111
※ 2016年は8月末時点の数値
2. 業種細分類別
業種細分類別に見ると、
「生鮮魚介卸売業」が 84 件(構成比 75.7%)を数え、全体の 4 分の 3
を占めた。内訳を見ると、倒産
が 62 件、休廃業が 22 件となっ
順位
業種細分類別
構成比
(%)
合計
ている。以下、「野菜卸売業」
が 7 件(同 6.3%)、
「農畜産物・
水産物卸売業」が 4 件(同
3.6 % )、「 乾 物 卸 売 業 」「 食
料・飲料卸売業」「果実卸売業」
「水産練製品製造業」がそれぞ
れ 2 件(同 1.8%)で続いた。
1
2
3
4
4
4
4
8
生鮮魚介卸売業
野菜卸売業
農畜産物・水産物卸売業
乾物卸売業
食料・飲料卸売業
果実卸売業
水産練製品製造業
冷凍倉庫業
84
7
4
2
2
2
2
1
倒産
75.7
6.3
3.6
1.8
1.8
1.8
1.8
0.9
休廃業
62
5
2
2
1
1
1
0
22
2
2
0
1
1
1
1
3. 業歴別
業歴別に見ると、
「30 年以上」の老舗業者が 90 件(構成比 81.1%)を数え、全体の 8 割を超え
た。以下、「10 年以上 30 年未満」が
19 件(同 17.1%)で続いた。
一方、「10 年未満」は 2 件(構成比
1.8%)にとどまっており、総じて業
歴の長い業者の倒産・休廃業が大部分
業歴別
10年未満
10年以上 30年未満
30年以上
合計
合計
2
19
90
111
構成比
(%)
1.8
17.1
81.1
100.0
倒産
休廃業
1
14
63
78
1
5
27
33
を占めることが分かった。
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4. 負債額別
倒産した 78 件を負債額別に見ると、
「1 億円未満」が 54 件(構成比 69.2%)で最も多く、全体
の約 7 割を占めた。次いで、「1 億円以上 5 億円未
負債額別
満」が 21 件(同 26.9%)で続いており、小規模業
合計
1億円未満
1億円以上 5億円未満
5億円以上 10億円未満
10億円以上
合計
者の倒産が大部分を占める結果となった。
他方、負債 10 億円以上の倒産は 2 件(構成比
2.6%)にとどまっている。
54
21
1
2
78
構成比
(%)
69.2
26.9
1.3
2.6
100.0
5. 主な倒産事例
TDB
企業コード
商号
業種
負債
(百万円)
態様
倒産年月
1
984147149
丸商水産物卸協同組合 支払事務代行
2,800
破産
2006年5月
2
980633812
三興魚類(株)
生鮮魚介・塩干物仲卸
1,327
民事再生法
2007年2月
3
980904970
近藤食品(株)
生鮮魚介卸
639
破産
2007年5月
4
984144512
(株)野末商店
生鮮魚介卸
300
破産
2010年6月
5
980955656
(株)勝沼商店
業務用調味料・食品卸
240
破産
2015年9月
6. まとめ
東京都中央卸売市場が公表している『仲卸業者の経営状況 2015』によれば、全体の 4 割以上の
業者が債務超過の状態にあるなど、築地市場を含めた市場内の仲卸業者は依然として厳しい経営
状況が続いている。今回延期が決まった新市場への移転問題については、長引く業績不振から移
転にともなう各種費用が負担となるケースも考えられる。過去の倒産・休廃業の事例を見ても、
今後の負担増から経営に影響を受ける企業が出てくる可能性も否定できない。新市場への移転は
安全、衛生面でのメリットももちろんあるが、関連事業者の経営環境への一定の配慮も必要な状
況といえるだろう。
【 内容に関する問い合わせ先 】
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内藤 修
FAX 03-5919-9348
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