AgIC #1000 インク 劣化試験報告書 1. 概要 #1000 回路の寿命見積もりを目的とし,抵抗計測試験を実施した.印加電圧による変化だけでなく,温湿度に よる寿命の変化に着目する為に恒温恒湿槽を用いて温湿度を固定し計測を行った.また,得られた抵抗値データ より回路寿命の予測を行った. 2. 実験手法 実験に使用した回路パターンを図 1 に示す.+(プラス) 端子と-(マイナス)端子間に電圧を印加し,パターン線 間に生じる電界による回路の劣化の影響について+-S 図 1 実験回路パターン(単位は mm) 間の抵抗を測定することで調査を行う.実験条件を表 1 に示す.温湿度は室内での使用環境を想定した標準状態 である 25℃/60% 条件に加え,回路にとってより厳しい 条件となる高温多湿環境を想定した 40℃/80% 条件に おいて抵抗の増加を計測した. ばらつきを考慮し,各条件について複数の試料を用意 し,最も抵抗増加が大きかった試料を寿命見積もりにお ける基準値とした.試料は印刷後 1~3 週間乾燥剤を用 いて保管したものを使用した. 表 1 実験条件 実験ケース 温度 [℃] 湿度 [%] 電圧 [V] 標準状態 0V 25 60 0 標準状態 3V 25 60 3 標準状態 24V 25 60 24 高温多湿 0V 40 80 0 高温多湿 3V 40 80 3 高温多湿 24V 40 80 24 3. 実験結果 各条件における実験結果について図 2 に示す.横軸に時間経過を,縦軸に計測された抵抗値を基準となる抵抗 値で除した無次元抵抗値(抵抗増加率)を取り表示した.計測初期においては試料毎のばらつきによって急峻な 変化が確認された為,抵抗値の変化がほぼ線形となったときの抵抗値を各条件における基準抵抗値として採用し た.このばらつきは試料の保存期間の違いが一因になっていると考えられる.全体の傾向として,印加電圧の増 大よりも温湿度の増大が劣化に対してより大きく寄与していることがわかる. (a) 標準状態 0V (b) 標準状態 3V (c) 標準状態 24V (d) 高温多湿 0V (e) 高温多湿 3V (f) 高温多湿 24V 図 2 抵抗変化の様子 次に,図 2 に示す各条件において最も劣化の激しかった試料に着目し,その抵抗増加率を表 2 にまとめた.増 加率については 1 日毎の抵抗増加率を算出し表示した. 標準状態を一般的な室内環境と仮定すると,未使用で保管した場合 1 ヶ月で 10%程度の抵抗増大が見込まれ, 連続運転を行った場合では 20~30%程度の増大が予想される.高温多湿条件において,その寿命は著しく短くな り,連続運転時は勿論のこと,未使用の場合でも標準状態の倍程度まで劣化が進んでしまう為,保管場所には十 分注意する必要がある. 表 2 各条件における抵抗増加率 0V 3V 24V 抵抗増加率@標準状態 [%/day] 0.4 0.8 1 抵抗増加率@高温多湿 [%/day] 1 8 100 4. 寿命の予測 最後に各条件における回路寿命を簡易的に算出する.ここでは回路寿命を以下のように定義する. 寿命 L = 抵抗が基準値の 2 倍となる経過時間 × 0.7 (安全率) ここで安全率とは試料のばらつきを考慮したものであり,個体差が存在する中で有意な値を導く為に導入したも のである.経過時間については抵抗増加が線形であるとし,抵抗値が 2 倍になった時点で使用不可であると仮定 した.算出結果について表 3 に示す.室内での使用であれば 2 ヶ月程度は使用可能であり,高温多湿条件におけ る利用は頻繁な交換が必要であることが分かる.保管については室内環境では半年程度乾燥剤を用いて涼しい場 所で保存すれば寿命は更に延びることが予想される. 表 3 各条件における回路寿命 0V 3V 24V 回路寿命@標準状態 [day] 175 (約半年) 87.5 (3 ヶ月) 70 (2 ヶ月) 回路寿命@高温多湿 [day] 70 (2 ヶ月) 9.1 (1 週間強) 0.7
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