事業承継対策と M&A - 経営総合支援サイト入口

事業承継対策と
M&A
事業承継対策
Ⅰ 事業承継対策とM&A
1.M&Aにより会社譲渡が増加している背景
2.M&Aによる事業承継対策のメリット
Ⅱ M&Aの基本
1.M&Aの手法別メリット・デメリット
2.事業承継に有効な「株式合併」と「事業譲渡」
3.事業承継で合併が使われない理由
Ⅲ M&Aの具体的な進め方
1.M&Aのスケジュール
2.譲渡希望企業を分析するポイント
3.M&Aにおける企業評価の考え方
4.M&A成功のための留意点
事業承継対策とM&A
事業承継対策
Ⅰ 事業承継対策とM&A
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M&Aにより会社譲渡が増加している背景
M&A の増加の背景には、二つの要因があると考えられます。一つは後継者問題、もう
一つは市場規模の縮小です。
後継者問題とは、戦後日本の高度成長期に起業した経営者たちが高齢になったにも関わ
らず、後継者がいないというものです。後継者がいない経営者にとって、上場する・廃業
する・M&A による事業承継の 3 つしか選択肢がありません。廃業を選択すると多くの社
員が失業してしまうため、廃業は避けたいと思う経営者がほとんどです。そうなると上場
するか M&A による事業承継のどちらかになります。上場するには厳しい基準を超えなけ
ればならないので、ハードルは高いです。そのため、消去法で残った M&A による事業承
継によって後継者問題を解決する経営者が増えていったのです。
続いて高齢化社会とデフレの長期化によって日本国内の市場規模が全体的に縮小してい
るというものです。この要因から多くの企業は日本市場だけではもはや成長が見られない
と見切りをつけ、積極的な海外展開のために M&A を行っています。これら二つの要因が
絡み合い、今日の M&A 増加の背景となっています。
■1985 年以降のマーケット別 M&A 件数の推移
IN-IN:日本企業同士の M&A
IN-OUT:日本企業による外国企業への M&A
業による。㈱レコフ調べ
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OUT-IN:外国企
事業承継対策とM&A
事業承継対策
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M&Aによる事業承継対策のメリット
■事業承継の3つ手法
●親族内承継
●内部昇格
●第三者承継(外部招聘とM&A)
(1)最後の手段としてのM&A
オーナー社長などが保有している株式を第三者に譲渡して社長も交代する方法。
経営権の承継と支配権の承継が同時にできることになります。
また、事業も誰にも迷惑をかけることなく継続され社員の雇用も守られます。
(2)M&Aを利用して第三者に事業承継をするメリット
➀親族内に後継者に適任なものがいない場合でも、会社を存続させることができる
M&Aを利用して事業承継することで、後継者不足を理由に廃業しないで済み、従業員
の雇用を確保し、取引先との取引を継続することもできます。
②後継者教育が不要
M&Aを利用して買収する主体である企業は、一般にはマネジメント体制が確立してい
ることから、経営に関するノウハウを教育する必要がなく、業務の引継を中心に行えば済
むため、事業承継に要する時間は親族への承継や役員・従業員への承継に比べて短いこと
が多いです。
③資金調達の必要性がない
M&Aによる承継の場合、事業を継承する側は第三者であることが多く、株式や事業を
譲渡すれば事業承継は完了し、譲渡に係る税金も取得した現金から支払えばよいことから、
資金調達の必要がありません。(株式交換や合併の場合は、手元資金か取得した株式を売
却することで納税する必要があります。)
④魅力のある会社であれば、現経営者はハッピーリタイアメントすることができる
事業規模が大きく財務体質が健全な会社や、優れた技術・ノウハウを有している会社な
ど買収企業にとって魅力のある会社であれば、現経営者は売却代金によってハッピーリタ
イアメントを送ることができます。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
Ⅱ M&Aの基本
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M&Aの手法別メリット・デメリット
(1)M&A の手法
「M&A」とは、Mergers and Acquisitions,直訳すると「(企業の)合併・買収」とい
う意味です。企業の合併や買収だけでなく、事業譲渡や資本業務提携を含めた広い意味で
の企業間提携の総称として使われています。概念としては、経営権の移動を伴う(または
影響を及ぼす)経済行為となります。
(2)M&Aの主な手法のメリット・デメリット
①株式譲渡
これは、売り手が買い手に株式を売却する方法です。通常は現金を売り手に渡します。
買い手は通常は会社なので、売り手の会社は、買い手の会社の子会社になります。
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事業承継対策とM&A
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メリット
①売り手の株式譲渡益に課せられる税率は 20%(非公開会社)なので、税引き後の手
取現金が多い。
②簡便である。売り手の会社が株式の譲渡に取締役会の承認が必要ならば、取締役会
決議ですむ。
③売り手と買い手が別法人であり、企業文化摩擦があまりない。
デメリット
①売り手の会社に、引き継ぎなくない資産・負債があっても引き継がなくてはならな
い。特に簿外の債務がある場合は問題となる。
②別法人なので、グループとしての融合が遅く、シナジー効果が表れるのが遅い。
②合併
売り手会社が買い手会社を包括的に吸収する方法です。当然、買い手会社は消滅します。
売り手会社の株主は、通常は買い手会社の株式(現金も可)をもらいます。
メリット
①買い手は対価として、通常は株式を発行するのでお金が不要である。
②手続きはそれほど複雑ではない。
③売り手と買い手が同一法人となるので、統合効果が早く表れる。
デメリット
①売り手と買い手が、同一法人となるので、文化摩擦が起こる場合がある。
②売り手が入手する株式が非公開の場合、売り手は株式の現金化が困難である。
③売り手の会社に、引き継ぎなくない資産・負債があっても引き継がなくてはならな
い。特に簿外の債務がある場合は問題となる。
③事業譲渡
商法で言う営業譲渡です。売り手の事業(資産・負債・人材等)を買い手に売却する方
法です。これは売却代金が売り手会社に入ります。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
メリット
①買い手は、好きな事業だけ選んで、購入できるので、簿外債務等を引き継ぐリスク
が低く抑えられる。
デメリット
①買い手は個別に資産を選定する必要があるので、煩雑である。
②従業員の同意が必要とされる。
③資産の譲渡となるので、取引に消費税が課される。
④株式交換
買い手会社が、売り手会社の株主から、売り手会社株式を受取り、対価として株式を交
付します。これにより、売り手会社は買い手会社の子会社となります。
メリット
①買い手は現金が不要である。
②売り手と買い手が別法人であり、企業文化摩擦があまりない。
デメリット
①売り手が入手する株式が非公開の場合、売り手は株式の現金化が困難である。
⑤新株発行
売り手会社が新株を発行して、買い手会社が売り手会社の議決権の過半数を取得します。
メリット
①買い手会社は全株取得するほどには、お金を必要としない。
②買い手会社のお金が事業資金として使われる。
デメリット
①売り手株主がお金を手にできない。
②買い手会社は 100%の議決権を取得できない。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
⑥会社分割
売り手会社の一部事業を切り出して、買い手会社に吸収させる方法です。売り手株主は、
通常は買い手会社の株主となります。
メリット
①買い手はお金がかからない。
②事業の法的移転が事業譲渡より簡便である。
③売り手と買い手が同一法人となるので、統合効果が早く表れる。
デメリット
①売り手と買い手が同一法人となるので、文化摩擦が起こる場合がある。
②売り手が入手する株式が非公開の場合、売り手は株式の現金化が困難である。
いろいろな手法がありますが、中小企業の M&A で最も多いのが株式譲渡です。買い手
が嫌がらなければ、売り手にとってこれが最も簡便です。
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事業承継に有効な「株式合併」と「事業譲渡」
■「株式譲渡」と「事業譲渡」が有効な理由
後継者不在の事業承継に限ると、M&A を用いた解決手法は「株式譲渡」と「事業譲渡」
の2つになります。事業承継の目的が「経営権の承継」と「支配権の承継」にあるからで
す。この2つの承継をスムーズに進めるための手法として
「株式譲渡」と「事業譲渡」があります。
➀株式譲渡
株式譲渡とは、売り手(オーナー)が保有している株式を譲渡することによって、会社
の経営権を買い手に譲渡する手法です。会社の株主が代わるだけですので、会社組織に変
更はありません。
売り手は直接キャッシュを得ることができ、買い手は企業をそのまま譲り受けることに
なるため有形無形の資産をそのまま引き継げるというメリットがあります。
②事業譲渡
事業譲渡とは、買い手(オーナー)が所有している事業の一部を買い手に譲渡する方法
です。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
売り手は、譲渡した事業に関する資産及び負債のみを譲渡します。売り手は事業譲渡を
行うことにより経営資源の選択と集中を行うことができ、買い手は必要な資産のみを譲り
受けることができるというメリットがあります。
会社ではなく、個人事業でビジネスをされている方の譲渡はこの事業譲渡になります。
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事業承継で合併が使われない理由
(1)被合併会社の株主の問題
乙社は後継者不在の企業であり、乙社の社長は
引退を考えていると仮定します。
取引きのある甲社に合併を持ちかけたところ、
合併協議の際に株式保有割合が問題になりました。
甲社の社長は甲社の株主で保有割合の多数を占
めておきたい一方、乙社のオーナーは事業は甲社
に任せるが、株式は正当に評価してもらい、相応
の割当を受けたいと考えます。百歩譲り甲社 2/3、乙社のオーナーが甲社の株主の 3/1
で応諾したとしても次の問題が発生します。
(2)将来、事業に何の関係もない株主が現れるリスク
事業を譲渡した乙社のオーナーに相続が発生した時に、このオーナーの親族に相続され、
事業に何の関係もない株主が現れることになります。
乙社オーナーの親族は株式の買取を提案するはずです。そうであれば、最初から甲社オ
ーナーが乙社オーナーの株式を全部買い受けておけば、こうした問題は回避できます。
(3)株式買い取り問題の発生
●相続後も株を持ち続ける親族
●買取を求める親族
●甲社のオーナーは
不安になる。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
Ⅲ M&Aの具体的な進め方
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M&Aのスケジュール
①事前検討
企業概要の把握を行い、M&A を進められるかの検討を行います。
②アドバイザリー契約の締結
M&A 業務を M&A アドバイザーに委託する場合、M&A アドバイザー締結する契約です。
③候補先企業の選定
譲る相手として、どの企業がふさわしいかを検討し、業種・規模・地域などから選定し
ます。
④交渉開始
譲渡企業側から希望条件の提示とともに詳細な資料の提示を行います。その後会社訪問、
トップ同士の面談を行います。
⑤基本合意契約の締結
買収監査の実施、譲渡条件の決定を行います。
⑥最終合意契約の締結
公表の方法、譲渡代金の支払い、仲介手数料の支払いを行います。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
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譲渡希望企業を分析するポイント
(1)財務内容
①貸借対照表のポイントは「純資産の部」
債務超過の企業は相手が見つかりにくい場合が多く、債務超過であ
に確認するポイントになります。
るかどうかは最初
表面上は債務超過でなくても実質的に債務超過の場合があるので注意が必要です。
②損益計算書は「経常利益がポイント」
利益体質にあるかどうかも重要な確認ポイントです。
経常的に利益を出せる企業は買収からみて魅力的です。中小企業の場合は節税対策で保険
に加入していたりして利益を圧縮しているケースがあるので、実質的な利益を判断するこ
とになります。
③その他のチェックポイント
借入金、粉飾の有無、従業員退職引当金などの簿外債務、訴訟などの潜在債務の確認も
重要です。
(2)事業内容の把握
事業承継型の M&A は同業者間で成立することが多いため、事業内容の把握は M&A を
進める上で重要なポイントです。
モノの流れ、カネの流れ、組織体制、人材構成、顧客分布、経営方針などを資料はヒア
リングを通して把握します。
(3)法人資産と個人資産の区別
中小企業の場合は法人資産と個人資産の区別が明確でない場合が多く存在します。
●個人所有の不動産を法人に貸し付けている。
●法人で社長の自宅を建築して社宅としている。
●社長を被保険者として保険をすべて法人で契約しており、個人の契約
がない。
●社長の自宅が法人の借入金の担保に入っている。
M&A を進める際に、これら法人資産と個人資産を実態に合わせて区分することで M&A
の取引形態が変わることもあります。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
(4)コンプライアンスの励行状況
●労働法規に沿った運営がされているか
⇒社会保険の加入状況、労働時間管理、各種届出等
●会社法に沿った運営がされているか
⇒各種議事録の作成、適正な役員重任登記、株主変更時の手続き等
●各種業法に沿った運営がされているか
⇒資格者の手当、製造物責任、各種届出等
●建築法制に沿った建築物か
(5)事業引継の可能性
買収側にとっては、M&A 後も事業が円滑に継承できるかが重要です。事業の継承がう
まくいかなければ、M&A を行う意味がありません。
その可能性の判断ポイントを以下の通りです。
●現代表者の事業影響度合い
●M&A 取引後の現代表者の引継関与度合い
●現代代表者の家族、親族の事業関与度合い
●幹部役職員と現代表者の関係、事業関与度合い
●取引先との契約関係
●賃貸借物件など期間の定めのある契約の延長の可能性
●仕入先、外注先などとの契約関係
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M&Aにおける企業評価の考え方
M&A を進めるに際して最大の関心は「いくらで譲渡(買収)できるか」ということだ
と言えます。M&A の主流は「株式譲渡」ですので、科の場合の金額というのは株式の値
段、つまり株価です。この株価を「企業評価」と言います。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
(1)企業評価はどう行うか?
企業評価は機械的にできるものではなく、収益性や財政状態、成長性、業界特性、経営
計画などの検討を総合的に行ってはじめて可能になります。
(2)企業評価方法の種類
大企業も含めた企業の M&A における評価方法は複数あります。
●時価純資産価額法
●超過収益による営業権算定方式
●ディスカウント・キャッシュフロー法
●類似業種比準法
(3)中小企業 M&A で一般的な企業評価方法
通常、中小企業の価値を表すのに適していると言われるのが時価純資産価額法です。時
価の純資産価額に加えて、別途収益性を考慮して営業権を算定し、その合計が企業評価額
(株式時価総額)となります。この方法により、企業の財政状態と収益性の両方を反映さ
せた企業評価が可能となります。
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M&A成功のための留意点
会社売却成功のポイントは、買いたいという企業が現れることが重要です。買収希望企
業を惹きつけ、会社売却・事業売却の可能性を高めるポイントを紹介します。
①会社売却のタイミングを誤らない
かつては M&A が盛んな業界でも M&A が殆ど行われなくなることがあります。例えば、
かつては酒販業は免許の新規取得が難しく、免許取得のための M&A が多かったのですが、
規制緩和により M&A は殆どなくなりました。
また、会社の業績や社長様個人の体調が悪化してからですと、企業価値が下落するだけで
なく、売却不可能な状況になることもあります。
②売却意思・売却条件を固める
会社売却の意思が固まっていない企業の買収を買い手企業は真剣に検討しにくいもので
す。会社売却ありきではなくても、この条件が受け入れられれば売却するという条件を固
める。
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事業承継対策とM&A
事業承継対策
③会社の実態を正確に把握できている
会社の実態を正確に把握できていることが前提になります。部門別や製品別の利益など、
買い手企業は様々な切り口から資料を求めてきます。
不利な情報は表面化させたくないというのが人情ですが、売却手続最終局面では買い手
企業の調査で把握されるものと思っておいて下さい。この場合買い手企業の心証が悪くな
りますので、必要なタイミングで開示する心構えでいてください。
④売却対象会社の強み・弱みを明確にする
買い手企業は自社の成長を目的として M&A を考えます。
買い手企業がゼロから立ち上げるよりも買収の方が有利だと考えるような、技術・ノウ
ハウ・社員・販路などの強みを明確にし、アピールできるようにしてください。弱みにつ
いては買い手企業が補ってくれる可能性があるので神経質にならず、「買い手企業からこ
の経営資源が支援してもらえればもっと(売却対象)会社を伸ばせる」という点から考え
てください。
⑤専門家を活用する
殆どの経営者の方にとって会社売却は初めてのことです。
上記の内容も具体的にどう取り組んだらいいのか難しく感じ、「いつかきちんと調べてか
ら」、と問題を先送りしているケースも多いのではないでしょうか。このような場合、何
をどこまですればいいのかについて M&A の仲介者に相談してみるのも現実的な方法です。
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