株式市場 通し(16 年 9 1 )

2016 年 9 ⽉ 1 ⽇
第 74 号
株式市場⾒通し(16 年 9 ⽉ 1 ⽇)
大和住銀投信投資顧問 経済調査部
部長 門司 総一郎
日経平均は先週まで一進一退でしたが、今週に入って騰勢を強め、足元は 17000 円目前となってい
ます。他市場が横ばいで推移しているにもかかわらず日本株が強い理由の 1 つに、これまで市場参加
者に無視されてきた経済指標などファンダメンタルズの改善がここに来て評価されていることがある
と見ていますが、今回はそうした経済指標を紹介しながら、日本株の先行きについて考えてみます。
表は月次で発表される主な日本の経済指標の中で、経済活動の状況を示すものから 14 の指標を選び、
直近の実績をエコノミスト平均の予想や前月の実績と比較したものです。
予想との比較では、上回った(失業率は下回った)ものが 8、下回ったものが 3。前月との比較では改
善したものが 10、悪化したものが 4 です。いずれもよい指標の方が多数であることから、足元の日本
経済は着実に回復しつつあると考えられます。
8月に発表された主な日本の月次経済指標
発表日
指標名
予想
1
8月2日 消費者態度指数
7月分
2
8月3日 日経日本PMIサービス業
7月分
3
8月5日 毎月勤労統計-現金給与総額(前年比)
6月分
4
8月8日 景気ウォッチャー調査現状
5
実績
前月
42.0
41.3
41.8
50.4
49.4
0.3%
1.3%
-0.1%
7月分
42.5
45.1
41.2
8月10日 景気ウォッチャー調査先行き
7月分
42.0
47.1
41.5
6
8月10日 機械受注(前月比)
6月分
3.2%
8.3%
-1.4%
7
8月18日 輸出(前年比)
7月分
-13.7%
-14.0%
-7.4%
8
8月23日 日経日本PMI製造業(速報値)
8月分
-
49.6
49.3
9
8月30日 失業率
7月分
3.1%
3.0%
3.1%
10
8月30日 全世帯家計調査-支出(前年比)
7月分
-1.5%
-0.5%
-2.3%
11
8月30日 小売業販売額(前年比)
7月分
-0.9%
-0.2%
-1.3%
12
8月30日 鉱工業生産(前月比)
7月分
0.8%
0.0%
2.3%
13
8月30日 住宅着工件数(前年比)
7月分
7.3%
8.9%
-2.5%
14
8月30日 商工中金中小企業業況判断
7月分
46.3
47.8
-
-
出所:Bloomberg、経済活動の状況jを示す指標を対象。予想はBloomberg集計のエコノミスト平均予想、-は予想なし
中でも注目されるのは消費関連の指標の改善です。消費者心理を示す消費者態度指数は予想を下回
って前月から低下しましたが、雇用・所得関係(失業率、毎月勤労統計)、需要側統計(全世帯家計調査)、
供給側統計(小売業販売額)などその他の消費関連の指標は幅広く改善しています。
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
1
市場のここに注⽬!
2016 年 9 ⽉ 1 ⽇
日本の個人消費については弱いとの見方が根強くありますが、消費関連の経済指標全体としてはむ
しろ改善していることから、弱いとは考えていません。エコノミストの間でも「個人消費は緩やかな
増加基調を維持」(大和、岡本氏、8 月 30 日)、「民間消費も 7 月は安定を増した」(野村、棚橋氏、8
月 30 日)など、最近は明るいコメントが目立ちます。
製造業関連の指標はまちまちです。8 月日経 PMI(製造業)は 3 ヵ月連続改善、また 6 月の機械受注も
予想を上回る改善となりましたが、7 月輸出は予想を上回る前年比マイナス、鉱工業生産も予想を下回
り前月比横ばいです。
ただし、鉱工業生産については出荷が前月比 0.9%増加する一方で在庫は 2.4%減少しています。した
がって 7 月に生産が足踏みしたのは在庫調整のためであり、最終需要は悪くないと考えられます。エ
コノミストのコメントにも「(生産の)見通しは明るく、底入れ感が出ている」(SMBC 日興、牧野氏、8
月 31 日)、「生産と出荷は 2014 年から緩慢な低下基調にあったが、ようやく下げ止まりに転じた」(ド
イツ、松岡氏、8 月 31 日)など前向きなものが、多く見受けられました。
このように最近の経済指標の中では、景気が回復しつつあることを示すものが多数ですが、株式市
場はそうした経済指標に反応しませんでした。これは市場関係者の関心が為替レートとそれに関連す
る政策面での動きに集中する余り、景気や業績などの材料が無視されたためと考えています。
しかし、日本の景気は決して悪くなく、また 4-6 月の決算も減益ではあったものの、アナリストの
見通しを上回るものでした。足元の日本株上昇はこうしたファンダメンタルズの改善が遅れて市場関
係者に評価され始めたことによると考えています。
ファンダメンタルズが改善しているのは日本だけではありません。米国でも経済指標の改善は続い
ており、9 月の追加利上げも視野に入ってきました。また最近は新興国についても、景気は底入れした
との見方が広まりつつあります。
世界的に景気が改善しているのであれば、日本だけ景気が腰折れするリスクは小さく、今後も持続
的な回復が期待できるでしょう。その場合は日本の株式市場もここまでのボックス圏を抜け出し、来
年にかけて持続的に上昇すると予想しています。
以上
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す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
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