ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と光増感法 の組み合わせによる新規癌

ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と光増感法
の組み合わせによる新規癌治療法
静岡県立大学・環境科学研究所・光環境生命科学研究室
准教授
伊吹裕子
助教
豊岡達士
研究背景
H2A
H2B
ヒストン修飾を標的とした抗癌剤の開発
H3
H4
HAT
Histone octamer
HDAC
Sodium butyrate
(SB)
Trichostatin A
(TSA)
Linker DNA
Core particle
H1
アセチル化されたヒストンは、凝集したクロマチン構
造をほどき、種々の分子がDNAに接近できるようにな
るため、転写を活性化する。アセチル化は、ヒストン
アセチル化酵素 (HAT) によるアセチル化と、ヒストン
脱アセチル化酵素(HDAC)による脱アセチル化のバラン
スにより制御されており、多くの腫瘍細胞ではこのバ
ランスが崩れていることが報告されている。
研究背景
ヒストン脱アセチル化阻害剤
Pivanex/AN-9
Butyric Acid
HAT
HDAC
Trichostatin A
Valproic Acid
O
O
N
H
NH2
H
N
N
MS-275
Zolinza/Vorinostat/SAHA
Apicidin
O
研究背景
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と抗がん剤を
組み合わせた新規抗がんストラテジー
ヒストン脱アセチル化酵素
阻害剤 (HDACI)
Sodium butyrate (SB)
Trichostatin A (TSA)
+
Ionizing radiation
or
Anticancer drugs
効率的な細胞死
HDACIと光線力学療法の組み合わせ
(PUVA)
Sodium butyrate + 8-methoxypsoralen + UVA
(SB)
(8-MOP)
O
H3C
ONa
高い抗腫瘍効果
研究背景
PUVAとは
PUVA
多くの皮膚疾患の治療法として使用されている
8-methoxypsoralen + UVA
(8-MOP)
尋常性白斑
乾癬
掌蹠膿疱症
皮膚リンパ腫
アトピー性皮膚炎
がん治療への適用はない
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤との組み合わせにより劇的な
抗腫瘍効果が現れる
実施例
実験方法
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 (Sodium butyrate (SB), Trichostatin A (TSA))
O
SK-Mel-28 (skin melanoma)
HSC-1 (squamous cell carcinoma)
HH (cutaneous T-cell lymphoma)
ONa
HDACI処理後の細胞内Histone H3のアセチル化
untreated
H3C
~24h incubation
1h incubation
8
12
16 24
H3 CBB
UVA
(~5J/cm2)
Ac-H3
H3 CBB
Cell survival
Apoptosis assay
etc.
4
Ac-H3
untreated
8-MOP
SB (3mM)
24h incubation
0.1 0.3
1
3 (mM)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
結果1
HDACI+PUVAは高い抗腫瘍効果を示す
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3 SB (mM)
生存率(%)
生存率 (%)
実施例
0
3
3
0 0.1 0.3 1
8-MOP (10-5M)
UVA (5J/cm2)
0
0 4
8
12 16 24 SB (3mM) pre-
treated time (h)
PUVA
(8-MOP: 10-5M, UVA: 5J/cm2)
皮膚悪性黒色腫細胞、扁平上皮癌細胞、皮膚T細胞リンパ腫など種々の癌細胞に
おいて効果があることを確認した。
実施例 結果2
HDACI +抗がん剤に比べ高い抗腫瘍効果を示す
PUVA
Bleomycin
SB (+)
0 10-7
10-6
10-5 8-MOP (M)
SB (+)
0 1
UVA (5J/cm2)
Paclitaxel
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
SB (+)
10-8
10-7
10-6
10-5
100
10-4 (M)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
SB (-)
SB (+)
0 10-7
10-6
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1000 (μg/ml)
Adriamycin
SB (-)
0 10-9
10
生存率 (%)
生存率 (%)
SB (-)
生存率 (%)
生存率 (%)
生存率 (%)
SB (-)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
SB (-)
SB (+)
0 10-5
10-4
10-5 (M)
10-3 (M)
5-Fluorouracil
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
SB (-)
SB (+)
生存率(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Etoposide
10-4
10-3
10-2
(M)
これまで行われてきたHDACIと各種抗がん剤との組み合わせに比べ、
高い抗腫瘍効果を示した。
HDACI+PUVAは新しい癌治療法として有効
本法の利点
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と光増感剤の混合剤
または組み合わせによる作用により、薬剤耐性の腫瘍
に対しても高い効果が得られる可能性がある。
光照射を行うため、ある一定範囲のみを標的にするこ
とが可能である。
PUVAは皮膚疾患の治療に現在利用されており、その
安全性評価を新たに行う必要がないことから、実用化
に必要なステップが少ない。
HDACI+PUVAは新しい癌治療法として有効
本法の利点
皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の治療への適用
HDACIの一つであるスベロイルアニリドロキサム酸
(Zolinza/Volinostat/SAHA)は、既に米国で皮膚T細胞
性リンパ腫への適用が承認されている。
PUVAはCTCLの治療法の一つである。
HDACI+PUVAによりその効果を増強できる可能性あり
課題
in vivoでの効果のチェック
臨床に適した混合剤、適用方法の検討
効果の高いHDACIの探索、 新たな光増感法の検討
企業への期待
HDACI、および光増感剤の開発に取り組む企業との共
同研究を希望
新たな光増感法、HDACIを検討することにより、
より効果的な方法を検討したい。
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :ヒストン高アセチル化状態におけ
る光増感処理による腫瘍殺傷法
• 出願番号
• 出願人
• 発明者
:特願2008-307283
:静岡県公立大学法人
:豊岡達士、伊吹裕子
問い合わせ先
知的財産コーディネーター 園部尚
教育研究推進部産学連携室 川嶋哲朗
産学官連携推進コーディネーター 鈴木次郎
産学官連携推進コーディネーター 内山尚和
TEL 054-264-5124
FAX 054-264-5099
メール [email protected]