平成 28 年度公共事業評価の実施状況(事後評価) 平 成 28 年 8 月 23 日 岩手県政策地域部 1 評価の目的 公共事業の事後評価は、事業完了後一定期間を経過した時点において、事業の効果や環境への 影響等について検証し、その結果を今後の同種事業の進め方や評価手法の見直し等に反映すると ともに、必要に応じて適切な改善措置の検討に資することを目的としています。 このたび、平成 28 年度公共事業事後評価の結果を取りまとめましたので、政策等の評価に関 する条例(平成 15 年岩手県条例第 60 号)の規定に基づき、実施状況を公表するものです。 2 評価の対象 農林水産部及び県土整備部が所管する公共事業3地区について、事業完了後一定期間を経過し たものを対象として評価を行いました。 評価の対象となる事業及び評価実施事業数は、次のとおりです。 事業の種類 3 評価の対象となる事業 評価実施事業数 道路事業 事業完了後概ね 3 年目となる事業 ― 水産基盤整備事業 事業完了後概ね 6 年目となる事業 ― 道路事業及び水産基盤整備事業以外 事業完了後概ね 5 年目となる事業 1事業 評価の実施時期 平成 28 年7月 4 評価の方法 「事業の効果等」 、 「利用者等の意見」、 「社会経済情勢等の変化」の 3 つの項目について評価を 行い、今後の課題等(当該地区の改善措置の必要性、今後の同種事業のあり方及び事業評価手法 の見直しの必要性)を取りまとめました。 5 6 評価実施事業地区 所管部局 事業名 路線名・地区名 市町村名 県土整備部 港湾改修事業 久慈港・諏訪下地区 久慈市 評価調書 別紙のとおりです。 7 その他 事後評価実施結果については、8月 29 日に開催される岩手県公共事業評価専門委員会(公開) に報告する予定です。 【本件に関するお問い合わせ先】 〇公共事業評価の制度全般について:政策地域部政策推進室評価担当(電話 〇事後評価実施結果等について :県土整備部建設技術振興課(電話 019-629-5181) 019-629-5951) 平成 28 年度公共事業事後評価地区 1 位置図 港湾改修事業 軽( 米久 町 慈港 洋野町 諏訪下地区 久慈市) 二戸市 1 九戸村 一戸町 久慈市 野田村 八幡平市 葛巻町 普代村 岩手町 田野畑村 岩泉町 滝沢市 盛岡市 雫石町 宮古市 紫波町 山田町 花巻市 大槌町 西和賀町 遠野市 釜石市 北上市 住田町 金ヶ崎町 大船渡市 奥州市 陸前高田市 平泉町 一関市 県土整備部 公共事業事後評価調書 平成 28 年8月 岩 手 県 平成 28 年度公共事業事後評価調書 目次 県土整備部 1 港湾課 港湾改修事業 久慈港諏訪下地区 久慈市 1~7 様式16 公共事業 事後評価調書 事業名 港湾改修事業 路線名等 補助・単独 地区名 久慈港 平成28年7月21日作成 担当部課名 諏訪下地区 港湾課 市町村 久慈市 〔事業根拠法令等: 港湾法第43条〕 (1) 事業目的 久慈港は、昭和26年に避難港として指定され、昭和31年より諏訪下地区の整備を進めた後、昭和 50年に重要港湾となり、岩手県が港湾管理者となっている。 諏訪下地区防波堤(L=1,050m)は、昭和46~61年度に整備した施設だが、台風や風浪等の異常気象 により度々被災し、港内の係留船舶や荷役作業の安全性に支障が生じた経緯がある。 このことから、防波堤の前面に消波工を整備し、防波堤の保全や港内の静穏度の向上を図ること により、港の物流機能の効果を高めて地域振興を図るものである。 (2) 事業内容 防波堤(改良) L=440.8m 消波ブロック設置 1.0式 (3) 整備目標等 港内の静穏度(H1/3 = 2.0m未満) 事業 着手 H6年度 事 当初計画 業 総事業費 費 (うち用地費) 〔 百 万 円 〕 事 業 概 要 (4) これまでの評価経緯 平成15年度:再評価(事業着手後10年経過):事業継続 政策評価委員会の答申:県の評価は妥当 平成20年度:再評価(再評価後5年経過):事業継続 政策評価委員会の答申:県の評価は妥当 1,800.0 事業 期間 再評価時 総事業 (うち用地費) 1,800.0 最終全体事業期間 H6 ~ H24 H6 ~ H25 H6 ~ H18 (再評価時全体計画期間) 用地 (当初全体計画期間) 着手 再々評価時 総事業費 (うち用地費) 2,060.0 年度 工事 着手 最終 総事業費 (うち用地費) 2,036.1 財源 2,000.9 35.2 0.0 国庫 県 他 事業概要図 防波堤(改良) L=440.8m 1 H6年度 整備効果の発現状況 ○久慈港の港湾取扱貨物量 平成27年(H27.1.1~H27.12.31)の久慈港で取 り扱った貨物量は181千トンであり、事業評価時 の計画貨物量311千トンに対して約42%減となっ ている。 主な要因は、平成21年11月、久慈港の主要な 貨物である鉱産品(珪石)の鉱山採掘が縮小した ことによるものであること、平成23年には一時 的に貨物が増加したが、東日本大震災津波の影 響により貨物取扱が低迷している状況である。 平成27年度以降については鉱産品(珪石)の販 売販路拡大に向けた動きにより鉱産品(珪石)の 取扱が増えていること、久慈港背後に立地した バイオマス発電所で使用する貨物取扱(平成28 年は約3万トンが久慈港諏訪下地区で陸揚げされ る予定となっている。)が始まったため今後は 貨物量は増えていくものと思われる。 (千トン) 珪石の鉱山 採掘の縮小 H23他県大雪の影響により一時的に 鉱産品(珪石)が増加したもの 諏訪下防波堤被災履歴 事 業 の 効 果 等 ○久慈港諏訪下防波堤の被災履歴 久慈港諏訪下防波堤は、これまで冬期風浪 等の異常気象によりたびたび被災している。 中でもH3.2.15~18の冬期風浪は防波堤本体が 滑動するなどの重大な被害が発生した。 本事業開始以降は、防波堤改良(消波ブロック 設置)により防波堤本体の滑動が生じる等の 重大な被害は起きていない。 久慈港では平成28年1月18~19日にかけて過 去最大の波浪が発生したが、防波堤の被災は 無かった。この波浪条件を基に防波堤の安定 性について検証した結果、防波堤を改良しな ければ滑動するなどの重大な被害が発生する 結果となった。 被災年月日 S5 7 .3 .2 1 ~2 2 H 3 .2 .1 5 ~1 8 H 5 .3 .8 ~9 H 6 .9 .1 8 ~2 2 H 1 8 .1 0 .6 ~8 H21.1.10 H23.3.11 被災原因 冬期風浪 被災状況 消波工飛散 ケーソン滑動 冬期風浪 消波工飛散 冬期風浪 消波工飛散 台風2 4 号 消波工飛散 上部工破損 風浪 消波工飛散・破損 冬期風浪 消波工飛散・破損 消波工飛散 地震 津波 ケーソン破損 ○荒天時における港内静穏度の解析 防波堤改良前(消波ブロック設置前)と改良後(消波ブロック設置後)のシミュレーション結果では、岸壁前面の泊 地においての波高が2.0m未満(5,000DWT以上の船舶が錨泊可能な波の高さ)の範囲が増える。 これは、諏訪下地区に整備されている最大水深岸壁(-10m)並びに泊地(-10m)へ入港可能な船舶 12,000DWT級(船長139m)を対象に荒天時においても安全に錨泊が可能となる。 ○は12,000DWT級の船舶が錨泊するために必要な範囲(風速20m/sの場合) 【改良後】 【改良前】 ※錨泊は可能となる。 ※錨泊可能なエリアが確保出来ない。 2 〇 費用便益分析 費用便益分析手法: 港湾投資の評価に関する解説書2011年 (単位:百万円) 区分 ①建設費 (現在価値化後) ②維持管理費 (現在価値化後) ①輸送コスト削減 (現在価値化後) ②被災の回避 便 (現在価値化後) 益 ③港内の安全性向上 項 (現在価値化後) 目 ※ 取扱貨物量 費 用 項 目 総便益(B) 費用対便益比(B/C) 注1) 注2) 事後評価時 事業評価時 再評価時 再々評価時 (基準年:H6年)(基準年:H14年(基準年:H20年) (基準年:H28年) 1,391 1,918 2,744 3,949 121 153 87 119 2,932 3,862 3,183 1,747 ※1,265 ※753 84千トン 85千トン 72千トン 23千トン 2,932 3,862 3,183 1,747 ※3,765 1.9 1.9 1.1 0.4 ※0.9 便益額を想定で算出している場合は(※)を付すこと。 前回評価時の便益項目が定性的な評価となっている場合は、事後評価時の便益項目には前回評価時との 変化について説明すること ※費用便益が増減した理由 ・社会経済情勢の変化や東日本大震災津波の影響もあり平成27年の港湾取扱貨物量(速報値)が計画貨 物量の311千トンに達していないため費用便益比が減少した。 ・事業期間が19年と長くなり、建設費(現在価値化後)が大きくなったことにより費用便益比が減少し た。 (参考便益) 被災の回避:防波堤(改良前)の設計波以上の波(異常波)が発生した場合に防波堤改良をしていれ ば防波堤機能の消失を免れることができ、復旧に支出する追加的な費用を回避すると いうもの。 港内の安全性向上:荒天時に避泊可能水域が確保できていない場合、久慈港沖を通過する船舶が避 泊出来ずに海難事故が発生する可能性がある。防波堤改良により避泊可能水域 を拡大避泊可能隻数を増やすことにより船舶の損失額を回避するというもの。 久慈港港湾改修事業に関するアンケート調査結果 利 用 者 等 の 意 見 ①調査対象:港湾利用(港湾荷役会社1者、港湾工事会社7者、漁業協同組合1者) ②調査対象者:9者 ※調査対象者は諏訪下地区及び掘込地区岸壁等の直接利用者を選定した。 ③抽出方法:久慈港諏訪下地区港湾利用者を特定、 ④調査方法:設問表によるアンケート調査 ⑤調査時期:7月 ⑥回収結果:100% 波の影響が少な Q1 通常時の港内の静穏度は以前と く係留がしやすく 比べてどうですか なった 33% ・波の影響が少なく 係留しやすくなった・・・33% ・以前と状況は変わらない・・・22% ・よくわからない・・・44% 44% 22% 3 以前と状況は変 わらない よくわからない Q2 荒天時(高波浪時)の港内の静穏度は 以前と比べてどうですか。 ・波の影響が少なく 係留がしやすくなった・・・33% ・以前と状況は変わらない・・・22% ・よく分らない・・・44% 44% 22% Q3 台風や冬期風浪などで諏訪下外防波堤を 越える波がありますが、以前より減った と思いますか。 よく分らない 33% 56% ・以前より減った・・・33% ・以前と変わらない・・・11% ・よく分からない・・・56% 利 用 者 等 の 意 見 33% 11% 以前より減っ た 以前と変わら ない よく分らない 非常に良かっ たと思う Q4 防波堤改良実施は良かったと思いますか。 22% ・非常に良かったと思う・・・・・22% ・良かったと思う・・・・・11% ・あまり良さを感じない・・・・・11% ・よく分からない・・・・・56% 波の影響が少 なく係留がしや すくなった 以前と状況は 変わらない 56% 11% 11% 良かったと思 う あまり良さを 感じない よく分らない Q5 防波堤改良実施により、以前と比較し自然環境の変化について感じることがありますか。 ・以前と変わらない・・・・・22% ・よく分からない・・・・・・78% Q6 諏訪下地区港湾施設について更なる改善点はないか。 ・消波ブロックの設置幅拡幅及びパラペットの設置により、更に越波を抑制できれば更に利用しやす くなると思う。 ・平成6年以前と比べ一定の効果はあることは認識しているが、荒天時等にFD(フローティングドック)係 留などの港内の更なる静穏度向上に向けた整備を要望する。 Q7 諏訪下地区港湾利用上で改善すべき点はないか。 ・諏訪下地区南側の仮護岸部を岸壁整備してほしい。 社 会 経 済 情 勢 等 の 変 化 (1) 事業着手時と事後評価時の社会経済情勢の変化 久慈港諏訪下地区はこれまで、水産品や久慈港背後からの鉱産品及び林産品等の搬出港として発展し てきた。 しかし、その後の社会経済情勢の変化や東日本大震災津波の発災など、久慈港のみならず本県港湾を 取り巻く環境が大きく変化したところである。 東日本大震災津波により減少した港湾取扱貨物量の回復・拡大を目的に平成28年までの当面の目標を 示した「岩手県重要港湾利用促進戦略(平成25年3月)」を作成し、その方針のもと、利用促進に取り 組んできた結果、県内の港湾取扱貨物量は概ね震災前の水準に回復しつつある。 今後は「岩手県重要港湾促進戦略」の後継の「岩手県港湾利用促進プラン」に基づき、久慈港の主要 貨物を基本に新規貨物の掘り起しに取組んでいく。 4 ○ 関連する開発プロジェクト等の状況 国土交通省では恒久的な津波対策と湾内静穏度向上のため湾口防波堤の整備を進めている。併せて、 三陸縦貫自動車道等の復興道路についても鋭意工事を進めている。 (2) 自然環境等の状況及び環境配慮事項 社 会 経 済 情 勢 等 の 変 化 (動植物、地形・地質、歴史文化、景観等の状況及び岩手県自然環境保全指針による保全区分) ・本地区の岩手県自然環境保全指針による環境保全区分は「E」である。 ※環境保全区分【E】:自然環境が強度に改変され、あるいはほとんど欠くことにより、概ね 人為的環境となっている地域 ・また本地区を河口とする久慈川は鮭等が遡上する河川である。 (事業実施において環境に配慮した事項) ・環境保全区分[E]に対する保全方法として、事業実施に際して「公共事業に係る希少野生動植 物の保護に係る検討部会」の構成員である有識者から、専門家としての助言を受けながら自 然環境の保全に配慮している。 ・本地区では港湾緑地の整備を行っており、港湾整備に伴う自然環境の修復等に努めている (事業完了後の環境変化) ・特に以前と比較し大きな自然環境の変化は見られない。 (事業名) 事業の概要 今 後 の 課 題 等 着手 年度 完了 年度 H6 H24 当初 事業費 (百万円) 1,319 事業計 改善措 画・調 評価手 完成時 再評価 事業の 利用者等 社会経済 置の必 査のあ 法の見 情勢等の 要性 事業費 年度 効果等 り方の 直し の意見 (百万円) 変化 見直し 概ね肯定 概ね発現 重大な変 3,734 H20 的な意見 なし なし なし している 化なし が多い (1) 当該地区についての総括的なコメント及び改善措置の必要性 ①総括的なコメント 本事業は防波堤の保全や港内の静穏度の向上を図ることにより、港の物流機能の効果を高めて 地域振興を図るものである。防波堤(改良)後は港内の静穏度も上がり、冬期風浪等の異常な波 に対しても堤体が滑動するなどの被害はなくなり、事業の効果は概ね発現されたと考えている。 また、利用者からのアンケート結果からは効果がわからないと言う意見が多かったが、肯定的 な意見も相対的に多かった。さらに、平成6年度以前の状況を知っている人からの聞き取りでは防 波堤の改良の効果があったと言う意見であった。 港の物流機能の効果を高めて地域振興を図ることとしていたが、平成27年実績では計画貨物量 に達していない状況である。これは社会経済情勢の変化や東日本大震災の影響で貨物の取扱が低 迷していたが、現在は鉱産品の販路拡大や久慈港背後に立地したバイオマス発電で使用する貨物 の取扱が始まり今後は貨物が増えると期待される。 また、半崎地区に立地した北日本造船(株)が東日本大震災以降も順調に貨物を扱っていること から久慈港全体の貨物量は増えていくと期待される。 ②改善措置の必要性 諏訪下地区における取扱貨物量は減少したが、今後は新規取扱貨物が見込まれること、防波堤 が保全されていることなど、現時点において改善措置の必要性は無い。 (2) 今後の同種の事業計画・調査のあり方や事業評価手法の見直しの必要性 ①今後の同種の事業計画・調査のあり方 本事業については、社会経済情勢の変化、企業等の利用に対応した港湾施設を整備する事業であ る。また、港湾施設の整備には多くの時間と費用を要するが、本県の財政状況も厳しいことから必 要性、緊急性等を総合的に判断し、早期投資効果が発現できるように効果的な事業を行っていく必 要がある。 ②事業評価手法の見直し必要性 事業評価の見直しの必要は無い 5 公共事業評価 事後評価調書 (付表) 事業名 路線名等 港湾改修事業 久慈港 補助・単独 地区名 ヤシ殻(PKS)荷卸し状況 (H28.6.13 諏訪下岸壁-7.5m) 6 港湾課 担当部課名 諏訪下地区 市町村 久慈市 公共事業評価 事後評価調書 (付表) 事業名 路線名等 港湾改修事業 久慈港 補助・単独 地区名 担当部課名 諏訪下地区 港湾課 市町村 久慈市 釜石港湾事務所提供写真 冬期風浪 平成3年2月 台風 平成6年9月 冬期風浪 平成3年2月 防波堤改良前(H6.6) 防波堤改良後 7
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