. 第2部 3MTM エムポア TM キレートディスク EZ カートリッジの 上手な使い方 -機材の準備、操作編- E-1 . 【はじめに】 この「3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの上手な使い方」では、3M™ エムポ ア™ディスク EZ カートリッジキレートの一般的な使用方法を紹介しています。主に使用する機 材類を下記に示しました。これら機材類に関する具体的な使用法や取り扱い方については、次の 章の「3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの操作」にて述べていきます。 (使用固相) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレート ( 図 2-1 ) (小物類) (1)樹脂製手袋、(2)pH メーター、 (3)酸バス用容器、(4)保管用ポリ袋、 (5)保存用容器 (固相操作関連機材) (1)GL-SPE 吸引マニホールドキット、(2)バキュームキット、 (3)吸引マニホールド用、(4)樹脂製廃液バット (5)吸引マニホールド用試験管ラック (固相小物) (1)エンプティリザーバー、 (2)PTFE 製ルアーストップバルブ、 (3)溶出受器&最終定容用容器、 (4)メモリ付き小容器(50mL) 、 (5)ピペッター(5~10mL)、(5)スポイト、(6)ルアーロックタイプ注射筒 (試薬・溶媒類) (1)超純水、 (2)酢酸アンモニウム緩衝液 ( 0.5 ~ 2 mol/L )、 (3)硝酸 ( 1 ~ 2 mol/L )、 (4)濃アンモニア水、(5)標準金属溶液 カートリッジ入り口 直径 25mm3M™ エムポア™ディスクキレート ルアーチップ 図 2-1. 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレート E-2 . 【使用器具 (小物類)】 (1) 樹脂製手袋 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレー トを取り扱うにあたっては、操作時におけるコンタ ミネーションの防止のために、前処理時には樹脂製 手袋を使用してください ( 図 2-2 ) 。 また、人体に有害な酸溶液や金属試薬を皮膚に接 触する事を防止する役割もありますので、必ず使 図 2-2. 手袋例 用してください。 (2)pH メーター キレート作用は pH の影響を強く受けるため正確な pH が測定できるものを用いて下さい。試料に直接電 極を浸すタイプの製品は、ブランクの要因となる可能 性があります。少量の試料を採取して測定できるハン ディタイプの方が使い勝手が良いです ( 図 2-3 ) 図 2-3.pH メーター例 (3)酸バス用容器(浸け置き洗浄用容器) 浸け置き洗浄用の容器です。密閉可能な 1~10L 程度の樹脂製容器を用います。2 mol/L 程度 の硝酸溶液を酸バス用容器の半分程度入れ、使用する器具、小物類を浸漬させることによって洗 浄を行います。洗浄後の器具類を保管する場合は、精製水でよく洗浄した後、ブランク影響のな い場所で乾燥し、 「(4)保存用ポリ袋」と、 「(5)保存用容器」に入れて保管してください。 (4)保管用ポリ袋 清浄に乾燥が終了した器具類は、コンタミネーション防止のため、ポリ袋にて保管します。 (5)保存用容器 「(4)保管用ポリ袋」に入れた器具類は、樹脂製コンテナで保管してください。 図 2-4. 酸バスによる洗浄例 図 2-5. 保管用ポリ袋例 E-3 図 2-6.樹脂製コンテナ例 . 【使用器具 (固相機材)】 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートを操作するために効果的に使用するために は、複数の機材を準備する事が必要です。吸引マニホールドを利用して処理する場合のイメージ を(図 2-7)に示しました。実際には各処理行程において、複数の機材を準備する必要があります。 次のページより 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートを使用する場合の機材の一 例を紹介します。 エンプティリザーバー (p.E-7 参照) ルアーストップバルブ (p.E-7) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレート GL-SPE 吸引マニホールド (p. E-5) 溶出液受器 &最終定容用容器 (P*参照) 試験管ラック 図 2-7. 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートと吸引マニホールド E-4 . (1)GL-SPE 吸引マニホールドキット 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートを使って複数の検体を処理する場合は、専 用のマニホールドが必要です。GL-SPE マニホールドキット無機分析用は、比較的腐食に強く、 金属溶出物の少ないステンレス製バキュームゲージと調圧弁が標準付属しています。また、チャ ンバー部がガラス製ですので視認性が良く操作性に優れています(図 2-8,2-9) 。 図2-8. GL-SPEマニホールドキット無機分析用 注:フッ酸や腐食性が激しい酸を用いる場合は、 ガラスチャンバー製のマニホールドでは対応で き ま せ ん 。 完 全 樹 脂 製 の MetaSEP Vacuum Manifold Set を用いてください(お問い合わせ ください。 図2-9. GL-SPEマニホールドパーツ類 E-5 . 廃液瓶 (2)バキュームキット(図 2-10) エアーポンプ 吸引マニホールドを減圧にする際に必要です。 エアーポンプに直接溶媒や検水が入り込みます と、故障の原因となるため、廃液瓶も併用する 事をお勧めいたします。 図 2-10. SPE バキュームキット (Cat.No. 5010-50040) (3)吸引マニホールド用ドレインプレート(図 2-11) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレート に通液したコンディショニング液や検水は、専用の廃 液バット(ドレインプレート)で回収してください。 図2-11. 樹脂製廃液バット (ドレインプレート) (CatNo等はお問い合わせください) (4)吸引マニホールド用試験管ラック(図 2-12) 無機分析用マニホールドラック用樹脂製ナット (Cat.No. 5010-50129) 「GL-SPEマニホールドキット無機分析用」にセ ット可能な12 mm/16 mm 試験管兼用ラックです。 試験管高さに合わせて、クリップを使い底板の高 さを調整する事ができます。(使用しているナッ トは金属製です。樹脂製に統一させたい場合は、 無機分析用マニホールドラック用樹脂製クリップ、 無機分析用マニホールドラック用樹脂製ナットに 交換してください。) 無機分析用マニホールド ラック用樹脂製クリップ (Cat.No. 5010-50128) 図2-12.吸引マニホールド用試験管ラック (Cat.No. 5010-50034) E-6 . 【使用器具 (固相機材)】 (1)エンプティリザーバー(空リザーバー) (図 2-13) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートに液を流すために必要なポリプロピレン製 リザーバー容器です。目的用途に合わせて容量(サイズ)を選んでください。フリットはポリエ チレン製のフィルターの役割をします。 (溶液を流すだけの目的で使用する場合は「フリット無」をご使用下さい。 ) 図2-13.エンプティリザーバーとフリット (2)PTFE 製ルアーストップバルブ(図 2-14) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジ キレートの流量を調節するためのバルブです。 耐酸性、耐溶媒性に優れたテフロン製を使 用してください。バルブを開く事で液が流れ、 図2-14. ルアーストップバルブ (PTFE製,12個入) (Cat.No.5010-60010) 閉める事で液が止まります。バルブを適度な 回転位置で止める事で流速の調整ができます (図 2-15) 。 調整 流 コントロール された流速 (全開) 図2-15. ルアーストップバルブによる液速の調整方法 E-7 止 . (3)溶出液受器&最終定容用容器 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートから溶出された重金属類溶液の受器は、最 終定容用の容器と兼用させる事を推奨します。最終定容量は試験法やメソッドによって異なりま すので、用途に合った製品を選択してください。一般的に樹脂製のディスポーザブル試験管や遠 沈管がよく利用されています(図 2-15) 。定容メモリ付きの金属分析用試験管なども市販されて いますし、ICP などのオートサンプラーチューブなどでも使用可能です(注) 。 【受器選択の注意点】 ・メーカーや製品によってメモリの精度や、ブランクが 異なりますので事前に目的用途に適合するかを確認す る必要があります。 ・メモリ線などが印刷されている製品は、洗浄時に消えて しまう場合がありますので注意してください。 ・一度使用した容器は使い捨てを推奨します。 図2-15. ディスポーザブル遠沈管(市販品) (4)メモリ付き小容器 (50mL) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートのコンディショニングに 20~50mL を使用 する場合は、50mL 程度のメモリ付き小容器があると便利です(図 2-16)。 図2-16 . メモリ付き小容器 E-8 (DigiTUBE) . (5)ピペッター(5~10mL 用)(図 2-17) 5~10 mL 程度のコンディショニング操作 を行う場合は、5~10mL 用のピペッターを用 いると便利です。 図2-17. ピペッター例(市販品) (6)スポイト(図 2-18) 試料水の pH 調整を行う場合には、市販の 樹脂製スポイトを使用してください。 (50~100μL 程度のピペッターなどでも 代用できます。 ) 図2-18 . スポイト例(市販品) (7)ルアーロックタイプ注射筒(容量は 5~10mL 程度)(図 2-19) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッ ジキレートに保持された重金属類を溶出 させる場合に使用する注射筒です。 溶出操作においてはポンピング作業が必要 になりますので、シール性の高いルアーロ ックタイプの製品を推奨します。 図2-19 . ルアーロック注射筒例 プラスチックディスポーザブルシリンジ 5mL 用 (100 本) Cat.No.5010-55105 10mL 用(100 本) Cat.No.5010-55110 E-9 . 【機材類、試薬の準備について】 微量の金属類を測定する場合は、機材類や試薬からの汚染影響を最小限にする必要があります。 使用前のパーツ類の選択や洗浄における一般的な注意点を紹介いたします。 (目的物質の種類や 濃度によっては、ここに記述した以上に洗浄が必要な場合もありますので、ご注意ください) 1) マニホールド 上蓋カバーアセンブリーのデリバリーチップ部分がステンレス製である場合は、PTFE 製のチ ューブに交換してください(図 2-20)。通液部分であるルアーフィッティングや、デリバリーチ ップは定期的に取り外し、洗浄を行ってください。汚れがひどい場合は、新品と交換してくださ い。 図2-20 . デリバリーチップの交換 2)樹脂製容器類(受器、メモリ付き小容器など) 表面に付着している有機物は中性洗剤とアセトンで洗浄します。次に酸バスに移し、硝酸で漬 け置き洗浄を行います*参考)。 3)3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの洗浄 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレート洗浄はメソッド中の「コンディショニング」 時の操作で行うのが一般的です。 *参考)ICP 発光分析・ICP 質量分析の基礎と実際―装置を使いこなすために, 上本 道久 (監修), 日本分析化学会関東支部編,p133-136 E-10 . 4) 試薬類 1 mol/L 酢酸アンモニウム (CH3COONH3 ) 緩衝液として試料に添加する酢酸アンモニウム溶液を調製します。市販の酢酸アンモニウム 試薬には、金属不純物を含まれているものが多くありますので、そのため、グレードの高い 試薬を用いるか、酢酸アンモニウム試薬の精製操作が必要です。次のページに酢酸アンモニ ウムの精製法を記述します。(これ以外にも、高純度の酢酸と高純度のアンモニアを混合さ せても調製する方法でも作成可能です。) 0.5 mol/L 酢酸アンモニウム(CH3COONH3 ) 上記手順によって精製された 1mol/L 酢酸アンモニウム溶液を超純水で 2 倍希釈して作成し ます。 2 mol/L 硝酸 (HNO3 ) 原子吸光用もしくはそれ以上のグレードの 試薬を用いて、精製水で希釈したものを使 用して下さい。硝酸は検水の pH 調整や 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレー トからの重金属類を溶出する液として使用 します。 濃アンモニア水 (NH3+H2O ) 試料水の pH 調整用に使います。汚染影響の無い市販高純度アンモニア水を使用して下さい。 原液での pH 調整が行いにくい場合は、適度に超純水で希釈してご使用ください。 標準金属溶液 必要な標準金属溶液をご用意ください。 複数の金属が混合されている標準溶液も市販されています。 E-11 . 【基礎情報】3M™ エムポア™ディスク キレートを用いた酢酸アンモニウムの精製方法 3M™ エムポア™ディスクキレートを用いてブランク影響を低減させた酢酸アンモニウムを作成 することができます。通液法(ダイナミック法)と浸漬法(スタティック法)が存在します。 【浸漬法(スタティック法) (1)汚染の無い樹脂製容器に 1mol / L 酢酸アンモニウムの溶液を 1〜2L 作成します。 (2)洗浄済み 3M™ エムポア™ディスクキレート (5010-30055)を1L あたりに 2〜3 枚入れます。 (3)ディスクを入れた状態で 2 昼夜以上静置する事で、酢酸アンモニウム溶液中の金属イオンを 除去する事が可能となります。 樹脂容器中で 1 mol /L の酢酸アンモニウムを調製 洗浄されたキレート ディスクを入れる。 1 昼夜以上置いて酢酸アンモニウムを 精製する。適宜振りまぜる。 ※ キレートディスクは洗浄し、 精製用のキレートとして再利用する。 精製された 1mol/L 酢酸アンモニウム溶液 キレートディスクに 金属類が吸着 【通液法(ダイナミック法)】 (1)汚染の無い樹脂製容器に 1mol / L 酢酸アンモニウムの溶液を 1〜2L 作成します。 (2)3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートをマニホールドにセットし、コンディ ショニングを行います。 (3)汚染の無い樹脂容器を受器として用意し、 「 (1) 」で調製した酢酸アンモニウムを流します。 (4)回収された酢酸アンモニウム溶液は、再度「(3) 」の操作を行う事で精製効果を上げることが できます。 樹脂容器中で 1 mol /L の 酢酸アンモニウムを調製 コンディショニング済の EZ カートリッジキレートに通液 E-12 精製された 1mol/L 酢酸アンモニウム溶液 . 【操 作】 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートを使うにあたって、基本的な手順とフロ ーを示します。 (サンプルや目的によってメソッドのアレンジが必要です。 ) セ ッ ト コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートを セットする 試料調製 (検水100mL) コンディショニング 酢酸アンモニウム濃度として 0.1mol/Lとなるように 酢酸アンモニウムを加える。 メタノール 5~10 mL 2mol/L 硝酸 50 mL 精製水 20 mL 0.1mol/L 酢酸アンモニウム 5 mL アンモニア水でpH5.6に調整 試料通水 洗 浄 0.5mol/L 酢酸アンモニウム溶液 10mL 超純水 20mL 溶 出 2mol/L 硝酸 5 mL 超純水 4mL 超純水で 10mLに定容 ICP-AES ICP-MS E-13 . (1) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートのセット セ ッ ト 【手順1】 コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートを吸引マニホールドに付ける 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートをパッケージから取り出し、無機 分析用マニホールドにセットします。3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレ ートの下にルアーストップバルブ、上にエンプティリザーバーをしっかりと取り付け てください。 【手順2】 ルアーストップ エムポア EZ エンプティ バルブ(p.E-7) カートリッジキレート リザーバー(p.E-7) 廃液バットの設置 吸引マニホールド内部に、廃液バットをセットします。 E-14 . (2) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートのコンディショニング セ ッ ト コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートは試料を流す前にコンディショニ ング(洗浄&活性化)操作が必要です。通液したコンディショニング液は廃棄しますの で、廃液バットが確実に設置してあることを確認してください。また、エムポア EZ カートリッジキレートに流れている液を引き切ってしまい、エムポア EZ カートリッ ジキレートに空気が入ってしまう状態(液切れ状態)にしないように注意してくださ い。コンディショニングの操作においては、次のページに記載した「コンディショニ ングの注意点」をご一読の上、行ってください。 【手順 1】 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの膨潤 ストップバルブを閉じた状態で、メタノールを 5~10 mL を空リザーバーに入れます。 吸引ポンプの電源を入れ、マニホールドを陰圧状態にします。 ストップバルブを開き、エ 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートへメタ ノールを流します。液切れしない位置でストップバルブを閉じます。 【手順2】 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの洗浄 液切れしていない事を確認し、2 mol/L 硝酸を 50mL 流します。 (本行程における硝酸 洗浄量は、測定対象物と目標濃度によって増減させてください。 ) 液切れしない位置でストップバルブを閉じます。 【手順3】 2mol/L 硝酸から超純水への置換 液切れしていない事を認し、超純水を 20mL 流します。硝酸がリザーバー内壁に残って いると、回収率に影響を与える可能性がありますので、エンプティリザーバー内壁に付 着した硝酸を洗いこむように、十分な置換を行ってください。 液切れしない位置でストップバルブを閉じます。 【手順4】 超純水から緩衝液への置換 液切れしていない事を確認し、0.1mol/L 酢酸アンモニウムを 5mL 流します。酢酸ア ンモニウムは精製されたものをご使用ください(p.E-12) 。緩衝液の置換が終了しま したら、液切れさせない状態を維持したまま、次の操作に移ります。 液切れしない位置でストップバルブを閉じます。 E-15 . ピペッターや、DigiTube などで液を入れる。 ストップバルブを開けて通液する 【コンディショニングの注意点】 コンディショニング開始してから次の「試料通水」が終わるまでは、液切れ(3M™ エムポア™ ディスク EZ カートリッジキレートに流れている液を引き切ってしまい、3M™ エムポア™ディス ク EZ カートリッジキレート内部に空気が入ってしまう状態)を起こさないように注意してくだ さい。液切れを起こさないための溶媒操作は、次の(1)~(3)の手順で行う事を推奨します。 次の液をリザーバーに入れる前には、ストップバルブが閉まっているかどうかと、液切れが起き ていないかを確認してください。 (1)決められたコンディショニング液を空リザーバーに入れ、流速 5~10mL/min 程度で 流します (A)。 (2)液が固相に近づいたら、ストップバルブで液量を 1~2mL/min 程度に遅くします (B)。 (3)空リザーバーのテーパー部分から足の地点まで液面が到達したら、ストップバルブを閉 めます。液の流れが止まった後、次のコンディショニング溶液を入れてください (C),(D)。 A B C D テーパー部分 ! 足部分 閉 この範囲内に液が到達したら ストップバルブを閉じ、次のコ ンディショニング液を注ぐ。 (空気を入れないことが重要) E-16 液を引き切ってし まう(液切れを起こ す)と、回収率に影 響を与えます。 . (3) 試料調製 コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ セ ッ ト 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 3M™ エムポア™ディスク 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートに目的成 分を保持させる場合は、試料水を適切に調製する必要があります。特に pH の影響は 回収率に大きな影響を与えるため、酢酸アンモニウムによる pH 調整は重要な作業行 程となります。また、試料水に存在する浮遊粒子(Suspended Solid : SS)に吸着 した金属類は、キレートディスクでは保持できませんので、事前に SS を分解しろ過 する必要があります。JIS_K0102 などを参考にして SS の事前除去を行ってください。 【手順1】 酢酸アンモニウム添加 試料水に緩衝作用を持たせるために、0.1moL/L になるように酢酸アンモニウムを添 加します。事前に 2mol/L の酢酸アンモニウム溶液(精製済み)を用意しておき (p.E-12)、試料水 100mL あたり 5mL 添加する事で約 0.1mol/L 試料となります。 酢酸アンモニウム試薬を、試料水 1000mL あたり 7.7g の割合で直接溶かしても作成可 能ですが、試薬自体に含まれる金属が分析に影響を与えない濃度である事を確認して ください。 【手順2】 pH 調整 試料水を pH5.5 に調整します。pH が 5.5 より低い値になっている場合は。高純度 濃アンモニア水で pH を 5.5 に調整してください。 pH を下げる場合は 2mol/L 硝酸使用します。 E-17 . (4) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの試料通水 コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ セ ッ ト 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 コンディショニングが終了したエムポア 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキ レートに試料を通水して、目的とする重金属類を固相に保持させる行程です。廃液バ ットの容量が十分である事、3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートが液 切れしていない事、ストップバルブが閉じている事を確認してください。 【手順1】 試料の通水 ストップバルブを開いて、25mL/min 以下の通液速度で通水してください。 試料の通水は、なるべく途中で中断せずに連続的に行ってください。 残渣の影響で目詰まりなどを起こした場合は、吸引圧を上げて強引な通水を行なうと 非常に危険です。過度な減圧はガラスマニホールド爆縮の危険性があります。 目詰まりするような試料を処理する場合は、試料を分割して複数の固相で処理する、 試料通水量を減らす、ろ過の方法を変更する、などの処置を行ってください。 【手順2】試料通水の終了 試料通水が終わりそうになったら、ストップバルブを用いて流速を 1~2mL/min 程度 に調整してください。液切れをしないような液面位置でストップバルブを閉じてくだ さい。 試料水をリザーバーに入れる ストップバルブを開け試料を流す E-18 . (5) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの洗浄 セ ッ ト コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートに目的の金属類が保持された後は、 想定の妨害となるカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等を洗浄除去す る必要があります。0.5mol/L 酢酸アンモニウムで洗浄することで、目的の重金属を 保持させつつ、カルシウム、マグネシウム類をキレートディスクカートリッジより洗 い流す事ができます(参考 P**) 。廃液バットの容量が十分である事、3M™ エムポア™ ディスク EZ カートリッジキレートに空気が入っていない事、ストップバルブが閉ま っている事を確認してください。 【手順1】 0.5mol/L 酢酸アンモニウム溶液による洗浄 0.5mol/L 酢酸アンモニウム溶液 10mL をエンプティリザーバーに入れます。 その際は、 なるべくエンプティリザーバー内壁も洗いこむように流してください。ストップバル ブを用いて、1~2 mL/min 程度の通液速度で通液してください。液切れをしないよ うな液面位置でストップバルブを閉じてください。 【手順2】 超純水による洗浄 続いて、超純水 20mL を同様にエンプティリザーバーに入れてください。ストップバ ルブを用いて 5mL/min 程度の通液速度で通液します。 (この操作以降は、エンプティ リザーバーを外しますので、洗浄液はなるべく残さないでください。 ) 酢酸アンモニウム洗浄 超純水洗浄 E-19 . (6) 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートの溶出 セ ッ ト コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートに保持された金属類を溶出させる 重要な行程です。少量の硝酸で確実に溶出を行うためにはいくつかのポイントが存在 します。 【手順1】 受器のセット ストップバルブを閉めた後、マニホールドの陰圧を解除し、ポンプの電源を切ります。 上蓋カバーアセンブリーを外し、廃液バットを取り出し、試験管ラックをマニホール ド内部に入れ受器をセットします。 (受器は目盛りを確認し、洗浄したものを使用し てください(p.E-8)。その後、上蓋カバーアセンブリーをマニホールドにセットしま す。受器とデリバリーチップ部(溶出液の出口)の位置関係をしっかりと確認してく ださい。 (次ページ【受器設置のポイント】参照) 試験管ラックを入れ、受器をセットする E-20 受器とデリバリーチップとの位置関係を 確認してください(次ページ参照)。 . 【受器設置のポイント】 溶出液を確実に回収するため、溶出液が溶出操作時に飛散しないように、受器(ディスポー ザブル験管)が上蓋カバーアセンブリのテフロンデリバリーチップ部(溶出液の出口)にきち んと入るように高さを調節しておく必要があります。高さの調整は試験管ラックの底板で行う 事ができます(p. E-6) 。3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートからの溶出された 液は、最初の数滴で多くの成分が溶出されるため、操作並びにセッティングに特に注意を払う 必要があります。 E-21 . 【手順2】 ルアーロック注射筒に硝酸を満たす ルアーロック注射筒(p.E-9)を用意し、溶出に用いる 2mol/L 硝酸を 2~3mL 吸い込み ます。注射筒内部を軽く洗浄し液を捨てます。この操作を 2~3 回行います。次に溶出 に用いる 2mol/L 硝酸 5mL を吸い込みます。 【手順3】 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートと注射筒の連結 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートから空リザーバーを取り外します。 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートに【手順1】で準備した注射筒を 取りつけます。 (注:硝酸が飛び散ると危険ですので、接続部がルアーロックでしっかりと固定して あることを確認してください。 ) 【手順4】 浸漬操作 ルアーストップバルブを開け、ゆっくりとした速度(1 滴/1 秒)で 1mL ほど硝酸を押 し出します。その後、ストップバルブは開けたまま、約 1 分間静置します。 E-22 . 【手順5】 ポンピング操作 ストップバルブを開けたまま、注射筒のシリンジピストンで、約 0.5mL 量を数回上下 させます。 【手順6】 押し出し溶出 ゆっくりと押し出しながら残りの硝酸を溶出させます(1~2滴/秒)。 【手順7】 超純水による押し出し溶出 硝酸を出しきったら、いったんシリンジを外し、超純水を約4mL 吸い込みます。 3M™ エムポア™ディスク EZ カートリッジキレートに取りつけ、ゆっくりとした速度 (1~2滴/秒)で、超純水を押し出します。 E-23 . (7)(8) セ ッ ト 溶出液の定容・測定 コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 試 料 調 製 試 料 通 水 洗 溶 定 測 浄 出 容 定 溶出液を受けた受器を取り出し、超純水で 10mLに定容してください。 その後、測定を行ってください。 E-24
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