当日配布資料(3.18MB)

核酸シャペロン材料を利用した
高感度分子ビーコンシステム
九州大学先導物質化学研究所 丸山厚
(名大:浅沼 浩之先生との共同開発)
人工材料で初めて
核酸シャペロン活性を再現
核酸高次構造の維持
可溶性高分子電解質複合体
(ソフトな複合体)
核酸間静電反発の抑制
PLL: 10 wt%
Dex: 90 wt%
核酸間認識の強化
ハイブリッド形成の促進と
ハイブリッドの安定化
核酸シャペロン活性!!
核酸ハイブリダイゼーションの
促進と厳密化
人工材料で初めて
核酸シャペロン活性を再現
PLL: 10 wt%
Dex: 90 wt%
ハイブリッド形成促進効果
数百倍加速
核酸鎖交換反応促進効果
核酸シャペロン効果で正確なハイブ
リッド形成
核酸ハイブリッド安定化効果
ハイブリッド形成率を高め検出感度
を向上
核酸特異的結合性
検体採取の効率化、簡便化、
検体の保護
試料採取から検出まで遺伝子解析を
総合的・多面的にサポートし、
人と場所を選ばない簡便さと迅速、信
頼性を両立、
POC診断、感染症対策、個人化医療へ
貢献
くし型共重合体の核酸シャペロン活性
“ハイブリッド形成を200倍加速”
Target DNA
スクランブル配列
スクランブル配列 PLL-g-Dex
速度定数
k/106 M-1 S-1
DNA alone
5.8
20 mM Mg2+ 26.8
1 M NaCl
39.7
PLL-g-Dex 1070
DNA alone
Probe
DNA
20 mM Mg2+
PLL-g-Dex
0.5 nM DNA (1 pmol ), 20 ℃, 10 mM sodium phosphate buffer ( pH 7.2 ), 150 mM NaCl
天然のタンパク質を凌駕するシャペロン活性
相補的 一本鎖DNA
鎖交換率 (%)
100
75
人工シャペロンあり
2万倍の加速
(天然の400倍)
50
25
人工シャペロンなし
0
0
1
2
3
4
5
インキュベーション時間 / min
Chem. Eur. J, (2001)
J. Am. Chem. Soc., (2002)
Nucleic Acids Res., (2007)
 核酸塩基対の解離、再結合を顕著に促進
 解離、再結合にかかわるエネルギー障壁を低めている。
→核酸シャペロン活性
モレキュラービーコンの概要
モレキュラービーコン (MB)
末端に蛍光色素と消光色素が導入されたヘアピン構造のオリゴヌクレオチド
Stem領域
Loop領域
ターゲット遺伝子非存在下
色素同士が近接
蛍光色素の発光が抑制される
ターゲット遺伝子
ターゲット遺伝子存在下
色素同士が離れる
蛍光色素が発光する
Tyagi S and Kramer FR , Nat. Biotechnol, 1996, 14, 303-308.
MBの用途
・遺伝子由来の病気の検出
・細胞内でのRNA発現解析
・Real-Time PCR
非常に簡便なツール!!
モレキュラービーコンの長所・短所
MBの長所
MBの短所
・末端色素のBreathingによる消光能の低下
・プローブの設計が容易
・消光機構が内在している
・複数の色素の導入が困難
・任意の蛍光色素が使用できる ・基板上に固定化する際に新たな位置への
・高い汎用性
リンカー修飾が必要
従来のMBの問題
「末端」に色素が導入されているという点
色素の導入位置を「Stem領域内」に変えた新たなMBを作成
インステムモレキュラービーコンの概要
インステムモレキュラービーコン (ISMB)
D-Threoninolを足場に用いて疑似ヌクレオチド化した蛍光色素-消光色素対を
Stem領域内部に導入したモレキュラービーコン
ISMBの特長
・DNA塩基対間で蛍光色素と消光色素が会合する
・Breathingの抑制によってバックグラウンド蛍光が低減
・末端の修飾が容易となる
・Stem領域の任意の場所に任意の数の色素が導入可能
従来のMBの短所を克服し、より高感度なプローブの開発に成功
H. Kashida et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 7044-7047.
Y. Hara et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 5502-5506.
本研究の目的
ISMBとシャペロンポリマーを用いた
理想的なMBシステムの構築
理想的なMBシステムの条件
①高感度 -シグナル/バックグラウンド比(S/B比)が大きい-
色素対数の増加
バックグラウンド蛍光の低減
ターゲット遺伝子存在下の蛍光強度増大
②応答速度が速い
Stem領域の解離速度+ターゲットとの二重鎖形成速度が重要
Stem領域を短くすると・・・
Stem領域の丌安定化に伴いバックグラウンド蛍光が大きくなってしまう
戦略① -ISMB色素対を複数導入する+Stem領域を長くする
従来のISMB
ターゲット遺伝子存在下
新規ISMB
ターゲット遺伝子非存在下
Stem領域の長鎖化
=
蛍光色素の増加に伴う蛍光強度の増大
Stem領域の安定化による効率的な消光
S/B比の向上が期待できる
戦略② -PLL-g-Dexカチオン性グラフト共重合ポリマーの併用
Poly(L-lysine)-graft-dextran
(PLL-g-Dex)
核酸と水溶性ポリイオン複合体を形成
+
L-lysineの正電荷によって
核酸主鎖間の静電反発を緩和
A. Maruyama et al., Soft Matter, 2008, 4, 744-747.
1. Stem領域の安定化→バックグラウンド蛍光の抑制
2. 鎖交換の促進→応答速度の向上
3. 二重鎖の安定化→蛍光強度の増大
設計配列
Target:3’-ACGCCACCAGGAACTCTTTCCCG-5’ (Survivin gene)
MBt:5’-ETGGTC-CTTGAGAAAGGGC-GACCAQ-3’
色素
Stem領域:5 base pairs & 1 dye pair
MB1:5’-TGGETC-CTTGAGAAAGGGC-GAQCCA-3’
Stem領域:5 base pairs & 1 dye pair
MB2:5’-TEGGETC-CTTGAGAAAGGGC-GAQCCQA-3’
Stem領域:5 base pairs & 2 dye pairs
MB3:5’-GEGTEGGETC-CTTGAGAAAGGGC-GAQCCQACQC-3’
Stem領域:7 base pairs & 3 dye pairs
Perylene
(E)
MB4:5’-GECGEGTEGGETC-CTTGAGAAAGGGC-GAQCCQACQCGQC-3’
Stem領域:9 base pairs & 4 dye pairs
Anthraquinone
(Q)
バックグラウンド蛍光の比較
MB
従来型MBでは・・・
バックグラウンド蛍光が大きい
ISMBでは・・・
バックグラウンド蛍光が低減
MB + PLL-g-Dex
Conditions
[MB] = 0.2 µM, [Target] = 0 µM
[NaCl] = 100 mM, pH 7.0 (10 mM phosphate buffer)
O
Ex. = 425 nm, Em. = 460 nm, 20 C
PLL-g-Dexの添加により・・・
さらに効率よく消光
ターゲット遺伝子存在下の蛍光の比較
×45
MB/Target
MB1,MB2では・・・
色素対増加に伴い蛍光強度上昇
MB3,MB4では・・・
効率的に開かず蛍光強度低下
MB/Target
+
PLL-g-Dex
Conditions
[MB] = 0.2 µM, [Target] = 0.8 µM
[NaCl] = 100 mM, pH 7.0 (10 mM phosphate buffer)
O
Ex. = 425 nm, Em. = 460 nm, 20 C
PLL-g-Dexの添加により・・・
蛍光強度が大幅に増大
S/B比の比較
PLL-g-Dex存在下
S/B比=571を達成
×13
カチオン性グラフト共重合ポリマーを併用することで
ISMBの超高感度化に成功
MBの検出限界
PLL-g-Dex存在下で最高感度を示したMB3
+
460 nmの蛍光強度比
[Target] / [MB] = 1/100
[Target] / [MB] = 1/1000
Targetなし
バックグラウンド蛍光の低減により
十分な蛍光強度比が得られている
低濃度の検出が可能に!!
Conditions
[MB] = 0.2 µM = 200 nM, [Target] = 0.2, 2 nM
[NaCl] = 100 mM, pH 7.0 (10 mM phosphate buffer)
O
Ex. = 425 nm, 20 C
応答速度の評価
MB3
20oC
PLL-g-Dex存在下
kobs = 7.2 × 10-3 [s-1]
約 5 分で平衡状態に到達
×10
PLL-g-Dex非存在下
kobs = 6.1 × 10-4 [s-1]
Conditions
[MB] = 0.2 µM, [Target] = 0.4 µM
[NaCl] = 100 mM, pH 7.0 (10 mM phosphate buffer)
O
Ex. = 425 nm, Em. = 460 nm, 20 C
結論
色素対を複数導入したISMBとカチオン性グラフト共重合ポリマーの併用で、
・高感度化(S/B比=571)
・反応時間の高速化
・検出限界の向上
・特異的な配列認識能の向上 を達成した。
S/B比=571
約5分で平衡到達
お問い合わせ先
九州大学 先導物質化学研究所
教授 丸山 厚
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092-802 - 2522
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