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日本銀行大分支店 特別調査レポート
2016年8月23日
日本銀行大分支店
5月をボトムに回復に向かう大分県の観光
~ 熊本地震による影響のフォロー ~
内容に関する照会は、日本銀行大分支店総務課(TEL:097-533-9106 FAX:097-538-7085)
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余
白
<ポイント>

4 月の熊本地震発生以降、大分県内の宿泊者数は大幅に減少したが、その
推移をみると、5 月(前年比▲36.1%)をボトムに持ち直しに転じており、
「九州ふっこう割」が適用可能となった 7 月は前年水準近く(同▲4.5%)
まで回復。但し、地域や施設により回復状況にバラツキがみられており、
県内全体が満遍なく回復しているという訳ではない点には留意が必要。

大分県内の宿泊者数の実績値を基に算出した 4~7 月の観光消費額への
影響は▲61 億円と、5 月の特別調査レポート「熊本地震による大分県の
観光面への影響について」公表時の想定(4~7 月の影響額の想定:▲54
億円)を上回る形となった。

但し、これは、4~5 月の宿泊客数の落ち込みが前回想定よりも大きかっ
たことが主因であり、
① 6 月の宿泊客数のマイナス幅は想定とほぼ同水準、7 月は落ち込み幅が
想定よりかなり縮小していること、
② 観光関連業者からのヒアリング情報を踏まえると、8 月以降も各種支
援策の効果から宿泊客数が当初想定を上回る可能性が高いこと、
を踏まえると、年内(4~12 月)を通じてみれば、当初想定していた観光
消費額への影響額(4~12 月累計:▲116 億円)を縮減させることは十分
可能と考えられる。

なお、
「九州ふっこう割」以外にも、地元自治体等により、観光客の回復
のための施策が多数講じられており、今後こうした効果も少なからずプ
ラスに寄与していくと考えられる。

こうした施策の中には、期限を区切って実施されているものも少なくな
いため、政策効果が一巡した後を見据えた“次”の施策や取り組みにつ
いて戦略を練っておくことが重要である。
1
1.足もとの大分県の観光客の回復状況

4 月の熊本地震発生以降、大分県内の宿泊者数は大幅に減少したが、その推
移をみると、5 月をボトムに持ち直しに転じており、
「九州ふっこう割」が
適用可能となった 7 月は前年水準近くまで回復している(大分県公表統計
…4 月:前年比▲22.9%→5 月:同▲36.1%→6 月:同▲18.0%→7 月:▲
4.5%)。

但し、宿泊施設など観光関連業者へのヒアリングによると、地域や施設によ
り回復状況にバラツキがみられており、県内全体が満遍なく回復していると
いう訳ではない点には留意が必要。
──
別府地区や湯布院地区の施設からは、
「7 月入り後は稼働率がほぼ前年並みに
回復している」との声が聞かれている。一方、その他の地区の施設では、
「回復
しているが、引き続き前年の水準を大きく下回っている」とする声も少なくな
い。
── この間、「国内客に比べ海外客の回復が緩やかなものに止まっている」との
指摘も聞かれているが、こうした背景には、国内と海外での地震に関する情報
格差に加え、一部では「各種支援策の効果から国内客の予約が増加し、海外客
を十分に受け入れることができない」といった事情もある模様。
2
10
宿泊客数(合計)
(前年比、%)
前回想定
5
実績
0
▲5
▲ 10
▲ 15
▲ 20
4月
5月
6月
7月
前回想定 ▲21.4 ▲22.9 ▲16.8 ▲18.4
実績
▲22.9 ▲36.1 ▲18.0 ▲ 4.5
▲ 25
▲ 30
【4~7月】
前回想定 ▲20.0
実績
▲20.6
▲ 35
▲ 40
16/1
10
2
3
4
5
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7
8
9
10
11
12 (月)
宿泊客数(国内客)
(前年比、%)
前回想定
5
実績
0
▲5
▲ 10
▲ 15
4月
5月
6月
7月
前回想定 ▲15.5 ▲13.3 ▲ 8.1 ▲10.8
実績
▲22.1 ▲32.4 ▲17.3 ▲ 3.6
▲ 20
▲ 25
【4~7月】
前回想定 ▲12.0
実績
▲18.9
▲ 30
▲ 35
16/1
100
2
3
4
5
6
7
8
9
10
5月
6月
11
12 (月)
宿泊客数(海外客)
(前年比、%)
80
前回想定
60
実績
4月
7月
前回想定 ▲56.1 ▲98.1 ▲91.3 ▲88.7
実績
▲27.1 ▲65.5 ▲24.7 ▲12.1
【4~7月】
前回想定 ▲81.7
実績
▲33.3
40
20
0
▲ 20
▲ 40
▲ 60
▲ 80
▲ 100
▲ 120
16/1
2
3
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6
7
8
9
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11
12 (月)
(資料)大分県「大分県観光統計調査」
(注 1)前回想定は 16 年 5 月時点における当店試算値。なお、具体的な試算方法は、16 年 5 月 17 日公表「熊本地震による
大分県の観光面への影響について ~ 現時点における今後の見通しと課題 ~」を参照。
(注 2)15 年の計数が速速報値から速報値に改定されたため、16 年 3 月以前の計数は 16 年 5 月に試算した時と若干異なる。
3
2.観光消費額への影響

日本銀行大分支店では、5 月 16 日に公表した特別調査レポート「熊本地震
による大分県の観光面への影響について」において、過去の他地域における
震災時の宿泊客数の減少率等を参考に、観光消費額への影響を 4~12 月累計
で▲116 億円と試算した。うち 4~7 月の試算値(以下、前回想定)は▲54
億円であるが、今回新たに行った 4~7 月の宿泊客数の実績値を基にした試
算値(以下、実績)は▲61 億円と、マイナスの影響が 7 億円上回る結果と
なった。

もっとも、これは、4~5 月の宿泊客数の落ち込みが前回想定よりも大きか
ったことが主因であり、①6 月は想定とほぼ同水準、7 月は落ち込み幅が想
定よりかなり縮小していること(「実績」と「前回想定」の差:4 月:▲2.8
億円、5 月:▲12.2 億円、6 月:▲1.8 億円、7 月:+9.9 億円)
、②観光関連業
者からのヒアリング情報によると、8 月以降も各種支援策の効果から宿泊客
数が当初想定を上回る可能性が高いこと、を踏まえると、試算期間(4~12
月)全体を通じてみれば、当初想定していた観光消費額への影響額(▲116
億円)を縮減させることは十分可能と考えられる。
4
観光消費額(合計)
0
(前年同月差、百万円)
▲ 500
▲ 1,000
▲ 1,500
前回想定
▲ 2,000
4月
5月
6月
実績
7月
前回想定 ▲1,431 ▲1,666 ▲ 992 ▲1,334
実績
▲1,715 ▲2,887 ▲1,169 ▲ 343
▲ 2,500
【4~7月】
前回想定 ▲5,423
実績
▲6,114
▲ 3,000
▲ 3,500
16/4
5
6
7
9
8
10
11
12 (月)
観光消費額(国内客)
0
(前年同月差、百万円)
▲ 500
前回想定
▲ 1,000
実績
4月
▲ 1,500
5月
6月
7月
前回想定 ▲ 935 ▲ 919 ▲ 463 ▲ 754
実績
▲1,447 ▲2,365 ▲1,018 ▲ 261
▲ 2,000
【4~7月】
前回想定 ▲3,072
実績
▲5,090
▲ 2,500
16/4
5
6
7
8
9
10
11
12
(月)
観光消費額(海外客)
0
(前年同月差、百万円)
▲ 500
▲ 1,000
前回想定
4月
▲ 1,500
5月
6月
実績
7月
前回想定 ▲ 496 ▲ 747 ▲ 528 ▲ 580
実績
▲ 268 ▲ 523 ▲ 151 ▲ 82
▲ 2,000
【4~7月】
前回想定 ▲2,351
実績
▲1,024
▲ 2,500
16/4
5
6
7
8
9
10
11
12 (月)
(資料)大分県「大分県観光統計調査」
、観光庁「共通基準による観光入込客統計」
、同「宿泊旅行統計調査」
(注)前回想定は 16 年 5 月時点における当店試算値。実績は「大分県観光統計調査」における 16 年 4~7 月の宿泊客数を
基にした当店試算値。
5
3.今後の展望と課題

足もとの観光客の回復には、「九州ふっこう割」の効果を指摘する声が多い
が、
「九州ふっこう割」以外にも、地元自治体等により、観光客の回復のた
めの施策が多数講じられており、今後こうした効果も少なからずプラスに寄
与していくと考えられる。
──
具体的には、各自治体による観光クーポンの販売、NEXCO 西日本九州支社に
よる「九州観光周遊ドライブパス」の販売、大分県による海外向け情報発信の
強化(台湾でのマスコミ向け記者会見の開催、韓国の人気ブロガーの招待ツア
ー、韓国の旅行博覧会での PR 活動、多言語コールセンターの開設等)など。

こうした施策の中には、期限を区切って実施されているものも少なくないた
め、政策効果が一巡した後を見据えた“次”の施策や取り組みについて戦略
を練っておくことが重要である。
6
【当店がこれまで公表した特別調査レポートのご案内】
○ 当店では、これまで、以下のような特別調査レポートを公表しております。
○ 当店で公表している特別調査レポートは、
http://www3.boj.or.jp/oita/kohyo/tokubetu_repo.html
でご覧いただけます。
<当店が公表した特別調査レポートの一覧>
● 大分県内における銀行券流通の変化とその背景にある商流・個人消費の動向(16
年 7 月 21 日公表)
● 英国のEU離脱(BREXIT)による大分県経済への影響について(16 年 7 月 4 日公表)
● 大分県における設備投資動向の現状と先行き (16 年 6 月 8 日公表)
● 熊本地震による大分県の観光面への影響について
~ 現時点における今後の見通しと課題 ~ (16 年 5 月 16 日公表)
● アジア新興国経済の動向が大分県経済に及ぼす影響
~ 現状と今後の展望・課題 ~ (16 年 4 月 12 日公表)
● おんせん県おおいた観光レポート 2016
~ デスティネーションキャンペーンの総括と今後の課題 ~(16 年 1 月 28 日公表)
● 大分県における観光の現状と今後の課題 (15 年 6 月 5 日公表)
● 大分県における銀行券の受払動向とその背景について (15 年 4 月 17 日公表)
● 地場中小企業の現状と今後の成長に向けて (14 年 5 月 21 日公表)
● 大分県における産業クラスターの更なる発展に向けて (14 年 4 月 10 日公表)
● 観光・交流を中心とした「ビジター産業」振興による大分県経済の発展に向けて
(13 年 3 月 14 日公表)
○ なお、当店が公表している他の資料も是非ご覧ください。
(当店ホームページのトップページ)
http://www3.boj.or.jp/oita/index.html
(短観結果<最新:2016 年 6 月調査>)
http://www3.boj.or.jp/oita/kohyo/tankan.html
(県内金融経済概況<最新:16 年度春>)
http://www3.boj.or.jp/oita/kohyo/shikihou.html
(支店見学のご案内)
http://www3.boj.or.jp/oita/tennai_kengaku/kenngaku_annai.html
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以
上