出光興産がロイヤル・ダッチ・シェルグループからの 取得株式数を減らし

平 成 28 年 8 月 23 日
各位
出光昭介・正和・正道・日章興産株式会社代理人
弁護士
浜
田
卓二郎
弁護士
神
部
健
一
出光興産がロイヤル・ダッチ・シェルグループからの
取得株式数を減らして取得できるかに関する見解
ロイヤル・ダッチ・シェル・グループ(以下
RD シ ェ ル ) か ら 取 得 を 予 定 し
て い る 昭 和 シ ェ ル 石 油 株 式 125,261,200 株( 議 決 権 比 率 33% )に つ き 、出 光 興 産
が取得株式数を引き下げて取得することも検討しているとの一部報道がありまし
た。
これについては、時価を大きく上回る価格で多額の対価を支払ってまで株式を
取得することの経営判断の不合理さに加え、法律上も以下の問題があります。
【法律上の問題点】
1.
法令違反でないことの事前確認ができない
RD シ ェ ル か ら の 取 得 時 点 で 、 出 光 興 産 の 特 別 関 係 者 ( 金 融 商 品 取 引 法 27
条の 2 第 7 項 1 号、同施行令 9 条 3 項)である出光昭介氏・正和氏・正道氏
( 以 下 「 出 光 家 」)が 、 昭 和 シ ェ ル 石 油 株 式 を 何 株 所 有 し て い る か は 、 出 光 家
しか把握できません(他人名義の所有、信託を通じた所有も含まれる等のた
め )。 出 光 家 は 、出 光 興 産 に よ る 同 株 式 の 取 得 に も 反 対 し て い ま す の で 、 出 光
興産に所有株式数をお伝えしません。
したがって出光興産は買付時に、取得株式数と出光家の当該時点の所有株
式 数 の 合 計 が 、 公 開 買 付 義 務 が 生 じ な い 1/3 以 内 に あ る か 、 判 断 で き ま せ ん 。
公開買付義務違反は刑事罰、および巨額の課徴金の納付対象となる証券市
場における重大な法令違反ですから、
「 出 光 家 は 500 億 円 も の 資 金 は 用 意 で き
な い だ ろ う か ら 、 20% の 買 付 で あ れ ば 、 出 光 家 の 所 有 株 数 を 合 計 し て も 1/3
は超えないだろう」との判断で実行できる性質のものではありません。
1
そもそも合法性について理論的・実証的な説明ができない行為は、コンプ
ライアンスの軽視です。
2.
取 得 株 式 数 を 減 ら し て も 、結 局 RD シ ェ ル の 保 有 株 数 も 1/3 基 準 の 合 算 対 象
となり、公開買付義務から免れられない
株 式 数 を 減 ら し て 取 得 す る に は 、事 前 に 売 主 の RD シ ェ ル と 買 主 の 出 光 興 産
の間で、契約変更の協議が必要になります。
取 得 株 式 数 を 減 ら す と 、そ の 分 RD シ ェ ル は 昭 和 シ ェ ル 石 油 の 大 株 主 と し て
残 り ま す の で 、RD シ ェ ル の 議 決 権 の 行 使 は 、合 併 等 に 必 要 な 株 主 総 会 の 賛 否
に影響を及ぼします。
株券等の買付を行う者との間で、共同して株主としての議決権その他の権
利を行使することを合意している者は、特別関係者となります(金融商品取
引 法 27 条 の 2 第 7 項 2 号 )。 こ れ に 該 当 す る か 否 か は 、 契 約 書 や 口 頭 の 合 意
がなくとも、黙示の合意でも認められ、それは当事者間の接触の有無、交渉
の経緯等などの具体的事情により判断されると解されています。
RD シ ェ ル は 、 昨 年 7 月 の 契 約 で は 所 有 株 式 35% の う ち 33% を 譲 渡 対 象 と
し 、 2% を 引 き 続 き 所 有 す る こ と に な っ て い ま す 。
こ の と き RD シ ェ ル と 出 光 興 産 は 接 触 し て い ま す が 、 同 契 約 締 結 時 点 で は 、
いまだ昭和シェル石油と出光興産の経営統合の協議が始まっていなかったか
ら 、出 光 興 産 と RD シ ェ ル が 接 触 し て い て も 、RD シ ェ ル が 引 き 続 き 所 有 す る
2% の 株 式 に つ い て は 、両 社 の 間 に 、将 来 の 合 併 総 会 に お け る 議 決 権 行 使 に 関
する黙示の合意があったとはいえない、との判断が可能であったかもしれま
せん。
しかし現在では、既に経営統合が合意され、合併承認の株主総会を予定し
ているなど状況が一変しており、同様に考えることはできません。
今から取得株式数の減少に向けた協議をするならば、その後に控える合併
承認総会での議決権行使の扱いについても、議論が不可避と見られます。
また出光興産は、黙示の合意と認定される可能性があるとの理由で、昭和
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シ ェ ル 石 油 株 式 の 15% を 所 有 す る サ ウ ジ ア ラ ム コ グ ル ー プ と は 、 出 光 興 産 に
よる昭和シェル石油株式の取得が完了するまで接触できない、とこれまで出
光家に説明してきました。このサウジアラムコグループとの接触と、取得株
式 数 の 減 少 に 向 け た RD シ ェ ル と の 協 議 の た め の 接 触 に 、何 ら 違 い は あ り ま せ
ん。
したがって出光興産が、株式数を減らして昭和シェル石油株式を取得して
も 、引 き 続 き RD シ ェ ル が 所 有 す る 昭 和 シ ェ ル 石 油 株 式 に つ い て は 、RD シ ェ
ルと出光興産の間で、昭和シェル石油と出光興産の合併承認の株主総会での
議 決 権 の 行 使 に 関 し 、黙 示 の 合 意 が 推 認 さ れ 、RD シ ェ ル は 出 光 興 産 の 特 別 関
係 者 に 該 当 す る の で 、 公 開 買 付 義 務 の 発 生 に 関 す る 1/3 基 準 の 判 断 の 際 、 RD
シェルに残された昭和シェル石油株式数を分子に加算しなければならないと
考えられます。
以上
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