1 March. 11, 2011 JST関西8私大新技術説明会 フッ化物水溶液中で 耐食性を発揮する Ti合金の開発 関西大学 化学生命工学部 准教授 春名 匠 2 従来技術に関する情報とその問題点 チタンおよびその合金 ・比較的高強度 ・軽量 ・高耐食性 ・高生体適応性 口腔内インプラント用材料 虫歯予防の目的で フッ素(フッ化物)が使用 (歯面塗布, 洗口剤, 歯磨剤) チタン: フッ素(フッ化物) 中で腐食劣化を 生じる 3 発明で解決できる技術的問題点① チタンの高耐食性: チタン表面に自発的に 形成される酸化皮膜 (高環境遮断性) 技術的問題点: チタンを含め多くの金属は 酸化物よりフッ化物を形成 した方が熱力学的に安定 → 金属表面の酸化物が フッ化物に変化 4 発明で解決できる技術的問題点② 金属フッ化物の水に対する溶解度 NaF LiF KF MgF2 FeF2 FeF3 CrF3 NiF2 3.98 0.133 50.41 0.13 sl s sl s i(s:HF) 2.50(20℃) CuF CuF2 AlF3 AgF BaF2 CaF2 NH4F ZnF2 i 4.49(20℃) 0.5 64.23 1.61 1.6 45.9 15.2g/l(2H2O) i : insoluble s : soluble sl : slightly 多くの金属フッ化物:溶解度が大きい 多くの金属フッ化物 フッ化物水溶液中で腐食劣化を生じる 文献)「金属材料活用事典」、鈴木朝夫 他著、産業調査会、(1999) 651-660 5 発明で解決できる技術的問題点③ 金属フッ化物の水に対する溶解度 NaF LiF KF MgF2 FeF2 FeF3 CrF3 NiF2 3.98 0.133 50.41 0.13 sl s sl s i(s:HF) 2.50(20℃) CuF CuF2 AlF3 AgF BaF2 CaF2 NH4F ZnF2 i 4.49(20℃) 0.5 64.23 1.61 1.6 45.9 15.2g/l(2H2O) i : insoluble s : soluble sl : slightly 難溶性を示す化合物: 難溶性を示す化合物 MgF2, CaF2, NiF2, LiF, AlF3, CrF3, CuF これらのフッ化物はフッ化物水溶液に対して 高遮断能力を有する 文献)「金属材料活用事典」、鈴木朝夫 他著、産業調査会、(1999) 651-660 6 発明で解決できる技術的問題点④ チタンと1A族・2A族金属、Niとの合金化 フッ化物水溶液中において,チタン合金表面に 添加金属のフッ化物皮膜の自己形成 環境遮断能に優れた難溶性皮膜による 高耐食性の発現 7 発明を実現する技術的手段(Ti-Mg、Ti-Ca合金) ステンレス鋼容器 ステンレス鋼容器 Ti (暴露法) Ti (浸漬法) るつぼ(C) 950℃ Mg Ca 拡散浸透 炉冷 8 発明した合金の有効性評価方法 (耐食性試験方法) 溶液:HF + NaF 水溶液 ([F-]=0.024 mol/L, pH 4) 歯磨剤中の[F-](=1000ppm) 温度:25℃ 溶存酸素:純窒素ガスにより除去 評価方法:電気化学 動電位分極試験 電位掃引速度 1.6mV/s 電位範囲 -2.0 ∼ 1.0 V 9 Ti-Mg合金試料の性状 Mg濃度分布 硬度 430 h保持するとMgが均一にTiに浸透 10 Ti-Mg合金(暴露法)の耐食性 電流密度 / A・m-2 100 0h 48h 10 処理時間の 増加とともに 活性態電流密度が 顕著に減少 (430h処理材は 未処理材の 約1/20の腐食速度) 168h 1 430h 0.1 (b) 暴露法 -2.5 -1.5 -0.5 電位 / VAg/AgCl 0.5 1.5 11 Ti-Mg合金(暴露法・浸漬法の耐食性) 浸漬法,暴露法ともに 処理時間の増加に対して 活性態での 最大腐食速度は 指数関数的に減少 活性態最大電流密度/ A・m-2 100 浸漬法 浸漬 10 暴露法の方が 最大腐食速度を 顕著に減少させる ことができる 暴露法 蒸着 1 0 200 400 拡散処理時間 / h 12 Ti-Ca合金試料の性状 表面層 硬化量大 (350∼700Hv) 内部層 硬化量小 (200∼300Hv) 13 Ti-Ca合金(暴露法)の耐食性 (pH 4) Ti Ti-Ca (内部層) Ti-Ca (表面層) 0.76M 0.24M 0.076M 0.024M 0.0076M 内部層 表面層 純Tiと挙動変わらず 活性態消失 >>> 耐食性向上 14 発明を実現する技術的手段(Ti-Ni合金) 試料作製 アーク溶解にて作製 0.8Ni (Ti-0.8mass%Ni), 2.0Ni (Ti-2.0mass%Ni), 4.0Ni (Ti-4.0mass%Ni), 5.5Ni (Ti-5.5mass%Ni), 1.5Ni (Ti-1.5mass%Ni) 3.3Ni (Ti-3.3mass%Ni) 4.5Ni (Ti-4.5mass%Ni) 10.0Ni (Ti-10.0mass%Ni) 熱間圧延, 炉冷 マイクロカッター 組織観察 10 4 10 動電位分極曲線 15 250 200 ∼ 150 ∼ ∼ Vickers hardness(Hv50gf) 300 ∼ ∼ Ti-Ni合金の硬度に及ぼすNi濃度の影響 100 0 0.1 1 10 100 Ni concentration / mass% Ni濃度0.8∼56mass%のTi-Ni合金においては、 Ni濃度の増加とともに硬さが増加 16 Ti-Ni合金の耐食性① (pH3.8) 活性態・・・2.0Ni, 5.5Niのみ消失 (高耐食性) 17 Ti-Ni合金の耐食性② (活性態電流密度に及ぼすNi濃度の影響) 2.0Niが最小値を示す (Tiの耐食性に対して15.3%(pH3.4), 6.9%(pH3.8), 30.2%(pH4.8)) 18 Ti-Ni合金の耐食性③ (NaCl水溶液中での孔食電位に及ぼすNi濃度の影響) 10.0Ni以下のNi濃度では孔食を示さない 19 新技術の特徴・従来技術との比較 フッ化物水溶液に耐食性を有するチタン合金の 開発例は見当たらない 高耐食性チタン合金 → Ti-Pd, Ti-Pt, Ti-Moなど 不働態酸化皮膜の安定性を向上 フッ化物環境中: 金属酸化物より金属フッ化物の方が安定 → 不働態酸化皮膜のフッ化による母材の腐食劣化 本発明合金: 環境遮断性を有する金属フッ化物皮膜の 自発的形成による母材の耐食性向上 20 想定される用途・業界 発明合金の用途 → フッ化物に接触する金属材料部位 ・歯科(臨床)医療分野:口腔内インプラント用材料など ・医療材料分野 ・製薬業界 ・化学製品製造分野 ・化学装置製造分野 ☆ Ti-Pd, Ti-Pt, Ti-Moと比較して安価な素材 → 大きな市場規模が見込まれる 21 実用化に向けた課題 • 現在、耐食性を示すフッ化物イオン濃度、pH 領域を確認済み。 • 問題点はTi-Mg合金、Ti-Ca合金の作製方法が バッチ式であること、ならびに作製時間が2 ∼3週間程度必要であること。 • 現在、作製時間の短縮するための手法につい て検討している。 22 企業への期待 • 材料作製法がバッチ式である点については、インプラ ント用材料のような小さな部材への適用だと問題は小 さいと考えられる。 • 材料作製に長時間必要である点については、処理温度 を大きくすることでの対応を検討している。 • 材料作製法に関する問題点(バッチ式・長時間処理)に ついては、対応して頂ける企業と相談させて頂きたい。 • 歯科医療分野だけでなく、広くフッ化物水溶液を取り 扱う企業、非常に硬いTi表面が必要である企業には本 技術の導入が有効と思われる。 23 本技術に関する知的財産権 発明の名称 :1A族金属または2A族金属−チタン 出願番号 :特願2006-234166 出願人 :関西大学 発明者 :春名 匠,大石敏雄, 山下直司,元家大介 発明の名称 :チタン−ニッケル合金及びチタン− ニッケル合金を有する歯科医療用部材 出願番号 :特願2008-77683 出願人 :関西大学 発明者 :春名 匠 24 お問い合わせ先 関西大学 社会連携部 産学官連携センター (文部科学省産学官連携コーディネーター) 柴山耕三郎 電話:06−6368−1306 FAX:06−6368−1247 e−mail:[email protected]
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