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自治体技術系職員数と工事検査等の体制について
伊藤久雄(認定NPO法人まちぽっと)
1.建築・土木職員数
総務省は毎年4月1日現在の「地方公共団体定員管理関係」を公表している。それは、
次のような公表のスタイルをとっている。2015 年(平成 27 年)の調査結果は以下のとおり
である。
1.平成 27 年地方公共団体定員管理調査結果のポイント(PDF)
2.平成 27 年地方公共団体定員管理調査結果の概要(PDF)
3.平成 27 年地方公共団体定員管理調査結果(PDF)
4.団体別データ
(1)平成 27 年 4 月 1 日現在
都道府県データ(EXCEL)
(2)平成 27 年 4 月 1 日現在
指定都市データ(EXCEL)
(3)平成 27 年 4 月 1 日現在 市区町村(指定都市除く)データ •第 1 表
部門別職員数一覧
(北海道~沖縄県)(EXCEL)
•第 2 表-1 部門別職員数(北海道~三重県)
(EXCEL)
•第 2 表-2 部門別職員数(滋賀県~沖縄県)
(EXCEL)
•第 3 表-1 部門別増減員数(北海道~三重県)(EXCEL)
•第 3 表-2 部門別増減員数(滋賀県~沖縄県)(EXCEL)
•第 4 表
職種別職員数(総職員)(北海道~沖縄県)(EXCEL)
•第 4 表
職種別職員数(一般行政部門)(北海道~沖縄県)
(EXCEL)
次ページの表は、東京都区市町村と長野県市部の建築・土木職員数である。なぜ長野県
の職員数をここに掲載したのかといえば、7 月 11 日から 12 日にかけて行った長野県佐久市
への行政視察(日の出町町会議員に同行)において、技術系職員や工事検査体制などをヒ
アリングしてきたからである。
さて、都内自治体と長野県の建築・土木職員数である。
①
区部の職員数は、さすがに数は確保されていると思われる。特に、世田谷区など広域
の区は多くの職員が配置されている。
②
多摩地域の市部は、八王子、立川、武蔵野、三鷹、府中、調布、町田などの各市は多
数の職員が配置されている。しかし、福生市が建築・土木職員ともにゼロであったり、
東村山市が建築ゼロ、土木1といったような市もあり、自治体にとって配置数に大きな
違いがある。
1
③
町村や島しょには、ほとんど配置されていない。
都内自治体の建築・土木職員数 建築技師
千代田区
中央区
港区
新宿区
文京区
台東区
墨田区
江東区
品川区
目黒区
大田区
世田谷区
渋谷区
中野区
杉並区
豊島区
北区
荒川区
板橋区
練馬区
足立区
葛飾区
江戸川区
土木技師
43
49
73
87
50
45
56
67
56
53
93
164
43
54
84
52
69
50
102
91
125
57
76
40
50
84
75
49
52
66
77
85
54
146
214
43
70
91
74
58
51
104
148
160
109
142
(2015年4月1日現在、総務省調べ)
建築技師
八王子市
立川市
武蔵野市
三鷹市
青梅市
府中市
昭島市
調布市
町田市
小金井市
小平市
日野市
東村山市
国分寺市
国立市
福生市
狛江市
東大和市
清瀬市
東久留米市
武蔵村山市
多摩市
稲城市
羽村市
あきる野市
西東京市
63
31
40
27
8
34
8
30
66
8
11
21
0
19
15
0
10
4
2
5
6
14
11
4
3
17
長野県市部の建築・土木職員数
長野市
松本市
上田市
岡谷市
飯田市
諏訪市
須坂市
小諸市
伊那市
駒ヶ根市
中野市
大町市
飯山市
茅野市
塩尻市
佐久市
千曲市
東御市
安曇野市
建築技師
66
29
16
6
10
5
5
0
1
5
3
2
0
5
6
11
4
1
9
土木技師
149
68
24
9
32
8
14
13
11
17
8
8
14
13
14
36
14
7
41
2
土木技師
162
77
69
49
73
31
29
38
137
28
36
52
1
24
31
0
14
10
8
18
23
39
34
12
23
41
建築技師
瑞穂町
日の出町
檜原村
奥多摩町
大島町
利島村
新島村
神津島村
三宅村
御蔵島村
八丈町
青ヶ島村
小笠原村
土木技師
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
4
0
0
0
2
0
0
0
0
0
4
0
5
④
長野県の市部は長野市と松本市は、数多くの職員が配置されているものの、小諸市や
飯山市のように建築職がゼロの市があるように、地域によって異なる状況は多摩地域の
市部と同様である。
2.都内自治体の工事検査等の体制
まず、工事完了検査等において「検査係」のような専管組織があるかどうかをホームペ
ージ検索によって調査した。
⇒別紙参照
なお、千代田区と、三鷹市、調布市、町田市、国立市は組織図等からは確認できず、契
約事務規則にもとづいて作成した。したがって、以下の分析の対象としていない。
(1) 区部
①
検査担当専管組織(係長級組織)の有無
検査担当専管組織を持つところは、港区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田
谷区、渋谷区、豊島区、北区、板橋区、足立区、江戸川区の各区である。組織は係長
(係員を持つ)が置かれるところと、検査担当(1 人の組織)が置かれるところとがあ
る。
その他の区には専管組織(係長級組織)はない。
②
検査を所管する部局
総務部に置かれるところがほとんどであるが、財務部(世田谷区)や管理部(荒川
区)に置かれているところもある。世田谷区と荒川区は経理課が財務部おとび管理部
に置かれていることによる。
中野区は検査員の指定が2つに分かれ、中央区のみ、土木、建築を所管する環境土
木部、都市整備部に置かれている。
なお佐久市は、検査部門を会計局会計課という、現金・有価証券の出納・保管や決
算の調整などを行う部局においているが、区部には同様な体制をとっているところな
ない。
(2) 多摩地域
①
検査担当専管組織の有無
検査担当専管組織を持つところは、八王子市(課組織)、武蔵野市(以下、係長組織)、
青梅市、昭島市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、福生市、狛江市、東大和
市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、稲城市、あきる野市の各市である。組織は区
部と同様に、係長(係員を持つ)が置かれるところと、検査担当(1 人の組織)が置か
3
れるところとがある。
その他の市には専管組織(係長級組織)はない。
②
検査を所管する部局
唯一、検査課という課組織を持つ八王子市は財務部に置かれている。
最も多いのはやはり総務部で、武蔵野市、昭島市、小金井市、小平市、東村山市、
福生市、東大和市、東久留米市、多摩市、稲城市、あきる野市、羽村市が総務部にお
いている。その他は企画(管理)部門のとろこが多く、行政管理部門もある(立川市、
府中市)。
なお区部と同様に、佐久市のような体制をとっているところはない。
3.今後の課題
(1) 定数削減の影響
バブル崩壊以降、特に総務省による「集中管理プラン」による締め付けや、小泉内閣に
よる財政の三位一体改革などによる財政悪化で、公務員の定数削減や非常勤職員化が進行
した。この影響は小規模自治体ほど大きく、技術部門(土木、建築職員)の現状は先述し
たとおりである。
また、団塊世代に代表されるや専門的技術を持った職員の退職も、部門を超えて深刻で
ある。
(2) 技術部門の影響
現在、清瀬市のようにCM(コンストラクション・マネジメント)を導入する自治体が
増えるものと予想される。CMとは、清瀬市を事例にみると、以下のような自治体業務の
支援であり、規模の小さい自治体などにおいて、建築職などの技術系職員の不足を補う観
点から導入がすすむ可能性がある。なお清瀬市の場合は、検査支援・マネジメントはCM
の対象業務にはなっていない。
*基本・実施設計者の選定支援業務
*基本・実施設計マネジメント業務
*施工者選定支援業務
*施工マネジメント業務
このような業務は、本来は自治体職員の業務であるが、これら業務をCM導入というこ
とで委託していけば、自治体職員の専門性は現在より一層失われていくことが懸念される。
CM導入がすすめば、自治体職員の中に公共建築に関わる専門知識を持った職員がいなく
4
なる。現在のところ、土木(道路、橋梁、公園など)にはCM導入の動きはないが、定終
削減が続けば、建築と同様な事態が生まれることも予想できる。
今後、公共施設マネジメントや総合管理計画が課題になるが、庁舎や公共施設の建設-
施工-維持管理などの全過程について、誰がチェックしていくのか、最終的な責任はだれ
が負うのかなどが問われることになる。
(3) どのように専門家の育成するか
比較的規模の大きい自治体は、技術系職員を計画的に採用し、育成を急ぐべきである。
当面は経験者採用などによる対応も検討すべきである。
規模の小さい自治体においては、
「技術管理室」などの共同設置も検討すべきである。こ
こでも経験者採用を検討すべきである。
東京都などからの支援(職員派遣、研修など)も求められるが、都自体が今後同様な課
題をかかえることが予測できる。都に頼らない対策が急務である。
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