ストックボイス 『バロンズ拾い読み』2016 年 8 月 1 日号 2016 年 8 月 2

ストックボイス
『バロンズ拾い読み』2016 年 8 月 1 日号
2016 年 8 月 2 日(火)午後 10 時 15 分ごろから(スタジオ/電話)
エグゼトラスト株式会社
『バロンズ拾い読み』編集人
川田重信
原稿要旨
6. The Trader 出来高は少なく、株式市場は一休み
GDP 成長率が予想外に低く、株式市場に様子見姿勢が広がる
【米国株式市場】
村田
先週月曜日あたりから市場に高値警戒感がでたのでしょうか?米国の株式は上下を繰り返
し。ダウと S&P500 指数は若干のマイナスで 6 月 27 日(月)からの週間ベースでの上昇
は 4 週でストップしました。ダウは昨日の月曜日も小安くこれで、6 日間連続で下げまし
た。
川田
ダウは先週 5 日間と昨日も含め毎日小幅に下げ、この 6 取引日で 0.9%下げました。決算が
悪かった石油のエクソン、シェブロン、さらにコカ・コーラ、マクドナルドあたりが足を
引っ張っています。
1
S&P500 指数は昨日は小幅(-0.13%)に下げましたがこの6取引日は極めて狭いレンジ
の動きに終始しています。
一方で、ナスダック総合は先週火曜日から 5 連騰です。牽引したのは良好な決算を発表し
たフェイスブック(FB先週+2.43)、アルファベット(GOOGL 同+3.51)さらにはア
マゾン(AMZN 同+1.87%)が高値追い。ネットフリックス(NFLX、同+6.24)は決算で急
落しましたがその後反発しています。
年初来の上昇率ではダウと S&P500 が 6%前後、出遅れていたナスダック総合も+3%程
度とキャッチアップ中です。同様に出遅れていたラッセル 2000 は年初来+7.7%で主要指
数ではトップの上昇率です。
このラッセル 2000 は 2 月 11 日(金)に底(953.72)を打ちました。その後 S&P500 指数
が 18%上昇する間に 28%も上がりました。
8 月 1 日(月)現在
2
7. Up & Down Wall Street 米商務省が第 2 四半期の GDP 速報値を発表
【コラム】
7 月の雇用統計、イエレン FRB 議長の講演に注目 8 月は米国株にとって最悪の月
村田
ところで直近、相場の上下動が小さいです。FOMC や決算発表といったイベントはあるの
にあまり大きく反応しませんね?
川田
3
そうですね、ナスダックは活発な動きが目立ちますが、ダウと S&P500 は非常に小動きで
す。例えば S&P500 は過去 12 取引日で、上下で 0.9%以内のレンジ内取引です。この幅の
狭さはここ 40 年ほど無かったそうです。
村田
ところで早いもので、もう 7 月が終了しました、例年ここからは相場が荒れる時期と聞い
ていますが?
川田
NY ダウと S&P500 指数は 7 月、月間でそれぞれ 2.8%と 3.56%の上昇を記録しました。
ナスダック総合は 6.16%の上昇です。小型株のラッセル 2000 も 5%以上上昇しました。数
字だけ見るとまずまずの月だったといえます。ちなみに S&P500 は月間ベースで5カ月連
続高です。(2 月 1932、3 月 2059、4 月 2065、5 月 2096、6 月 2098、7 月 2170)もっと
も 3 月以降は極めて小幅の上昇率ですが。
村田
今月、来月は過去はどうだったんですか?
川田
『バロンズ拾い読み』の 7 番のコラムの後半にありますが、過去 20 年分のダウ工業株 30
種平均(NY ダウ)のデータによると、月間ベースのパフォーマンスで最悪だったのが 8
月で、平均するとマイナス 1.3%です。それに迫るぐらい悪いのが意外ですが 1 月でマイナ
ス 1.15%でした。相場が下げるイメージが強い 9 月は過去 20 年間に限ればマイナス 0.7%
です。
4
ただし過去 50 年間で見ると、8 月の平均リターンはマイナス 0.28%で、下落傾向がある危
険な月 9 月はマイナス 0.88%で最悪の月です。
いずれにしても相場は下げやすいのが 8 月、
9 月です。
5. Utility Stocks Could Shock Dividend Investors 配当指向 ETF
【配当利回り投資】
人気の配当指向 ETF は、金利上昇に伴う公益銘柄の下落が大きなリスクに
村田
他にはどうですか
川田
5 番の記事はどうでしょう?配当志向の ETF を取り上げた記事です。このたぐいの話題は
低金利の状態で株式に利回りを求める動きが盛んなので直近注目されています。
実際に、今年は配当指向の上場投資信託(ETF)のパフォーマンスは好調です。これらの
ETF は多くの場合、過去 1 年間のリターンが S&P500 指数を上回っています。
5
従来はインカムゲインのための投資手段と見なされてきた配当指向の ETF は、株価の値上
がりも大きいのでグロース株ファンドのような様相を呈していると、この記事では伝えて
います。
村田
パフォーマンスが好調なのは公益株、つまり電力やガス会社を多く保有しているからです
よね。
川田
はい、年初来 S&P500 の 10 セクターでパフォーマンスが最高にいいのが公益セクターで
す。ちなみに S&P500 は年初来 6%前後の上昇率ですが、この公益セクターは 20%程度上
昇しています。構成銘柄数は 500 銘柄のうち 28 銘柄しかありません。しかも時価総額でも
4%弱です。地味でそれほど投資家には目立たないセクターで、それが年初来 2 割も上がっ
ているわけです。
その公益株への資産配分が大きい ETF ほど、パフォーマンスも高くなっている。例えば、
公益株の組み入れ比率が 20%を超えるパワーシェアーズ・ハイイールド・エクイティ・デ
ィビデンド・アチーバーズ・ポートフォリオ ETF(PEY)の過去 1 年間のリターンは 24%
で、分配金利回りは 3.3%です。
そして記事ではこの公益セクターに割高感で出ているといっています。例えば予想株価収
益率(PER)は 19.2 倍と、過去 5 年間の平均である 15.7 倍です。現時点で公益事業セレ
クト・セクターSPDR(XLU)の年初来リターンは 20%強で、S&P500 指数の 7.5%を大
きく上回っています。
6
村田
公益セクターに特化した ETF を安易に追いかけるのは良くないということですか?
川田
利回り狙いの投資手法でも公益セクターの過度に依存しない ETF ならそれは検討する価
値はあると記事でも銘柄を紹介しています。
例えば、バンガードで人気の高い二つの配当指向の ETF は分配金が控え目なので、結果的
に直近の状況だと他の ETF を下回るパフォーマンスです。
具体的には運用資産 152 億ドル(1.6 兆円)のバンガード高配当利回り ETF(VYM)の場
合、公益株の保有比率は 8.8%しかないので、過去 1 年間のリターンは 11.6%となります。
また運用資産 221 億ドル(2.3 兆円)のバンガード配当アプリシエーション ETF(VIG)
は過去 10 年以上連続して増配を行っている銘柄から構成され、公益株の比率は 3.1%で、
過去 1 年間のリターンは 9.5%です。
一方、運用資産 65 億ドル(7000 億円)の i シェアーズ・コア高配当 ETF(HDV)と、運
用資産 13 億(1.4 兆円)ドルのウィズダムツリー・ハイ・ディビデンド ETF(DHS)は
ともに公益株の保有比率が約 11%と高くため、これがパフォーマンスに寄与し、過去 1 年
間のリターンはそれぞれ、14.9%と 17.2%となっています。
村田
利回り狙いの ETF を選ぶときには配当利回りだけで選ぶとダメということですか?
川田
7
はい「高い分配金利回りは必ずしも高いトータルリターンにつながるわけではない」とい
う事実があるからです。
現時点で配当利回りが魅力的でも、金利が上昇すればその魅力は薄れます。公益銘柄の場
合には規制上の制約によって増配が難しくなる可能性のあるので、特にこのことが当ては
まります。つまり、金利が上昇すれば、公益株の保有比率の高い ETF は、保有銘柄の下落
によってトータルリターンが落ちこむ可能性があるということです。
村田
では、利回り志向の ETF を選ぶときにはどういう点に注意すべきなんですか?
川田
キーワードは「配当成長」です。前述のバンガード増配アプリシエーション ETF や、運
用資産 24 億ドル(2.5 兆円)のプロシェアーズ S&P500 ディビデンド・アリストクラッツ
ETF(NOBL)などの配当成長が期待できる銘柄を組み込んだ ETF に注目すべきです。通
常、こうした ETF は個別セクターへの集中度が低く、多くの場合、利益成長に基づく増配
実績のある銘柄を保有対象としているため、金利上昇によるリスクも小さいです。
例えば、プロシェアーズ S&P500 ディビデンド・アリストクラッツは、過去 25 年以上連
続で増配を行っている銘柄から構成されており、保有する 50 銘柄のうち、公益銘柄はコン
ソリデイテッド・エジソン(ED)の 1 社のみで、消費財企業の比率が平均を上回っていま
す。そしてこの ETF の過去 1 年間のリターンは 13.3%。ただし、分配金利回りは 1.8%に
とどまっています。
いま私が申し上げたことは、日本で毎月配当の投信をお持ちの方にも参考になるのではな
いですか?いくら利回り、つまり配当額が大きくても、その配当の源泉にまで目配せする
8
必要があると思います。もっとも、多くの方には私は毎月配当の投信は不要だと思ってい
ます。毎月配当の投信の代わりに ETF の購入を検討しておられる方は今日も記事を参考に
していただくと私は大変に嬉しいです。
9
PowerShares High Yield Equity
Utilities Select Sector SPDR ETF
Vanguard High Dividend Yield ETF
Dividend Achievers Portfolio (PEY)
(XLU)
(VYM)
Vanguard Dividend Appreciation
iShares Core High Dividend ETF
WisdomTree High Dividend Fund
ETF (VIG)
(HDV)
(DHS)
ProShares S&P 500 Dividend
Consolidated Edison Inc. (ED)
Aristocrats ETF (NOBL)
チャートは 3 年
10