排ガスから CO2 を分離しよう・・・アミンによる温暖化対策技術

排ガスから CO2 を分離しよう・・・アミンによる温暖化対策技術
【はじめに】
地球温暖化が世界的な関心を集めています。地球規模での温度上昇により、海面上昇、大規
模災害の増加などの危険性が高まるとされています。原因としてはいろいろな説あり、気候の長
期的変動、太陽の活動周期なども挙げられますが、人為的要因として二酸化炭素濃度の増加が
挙げられています。石炭、原油など化石燃料を短期間で人間が燃焼したために大気中の二酸化
炭素の濃度が高くなり、温度を保つ効果のある二酸化炭素が地球の温度を上げているという説
です。現在、化石燃料を使わない新エネルギー(太陽エネルギー、風力、バイオマスなど)への転
換が必要とされていますが、全てのエネルギーを置き換えられるには技術の向上や時間が必要
です。そこで現在、実用性の高い温暖化対策技術として CCS と呼ばれる二酸化炭素を分離貯蔵
する技術が関心を集めています。
CCS (Carbon dioxide Capture and Storage)
処理済みガス
CO2ガス
工場・発電所など
図1
CO2の分離
CO2の貯蔵
CO2 の分離貯蔵(CCS)のイメージ (RITE HP 引用*)
CCS とは、図1に示されるように工場や発電所から排出されるガスから二酸化炭素のみを分
離し、地中の安定な相への圧入や海洋への分散で貯蔵する技術です。CCS には、分離+輸送
+圧入の操作が必要で、それぞれの操作にはエネルギーがかかります。現在、より低エネルギ
ーでの CCS の実現を目指して多くの研究がなされています。
本実験では、CO2 分離の現場で使用されているアミンと呼ばれる吸収剤を用いて実際に CO2
の吸収を行い、その仕組みを勉強したいと思います。
*(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
【分離の原理】
CO2 は炭酸水があるように水中にも溶けますが、多くはありません。そこで CO2 と反応するアミ
ンと呼ばれる物質を水に溶解し、CO2 の吸収量を増やします。
アミンと CO2 は以下のような形態で、吸収されます。
式
2R-NH2 + CO2 ⇌ R-NH3+ + R-NH-COO-
上記反応は、酸とアルカリの反応と呼ばれます。
図2に CO2 分離装置の模式図を示します。左の
塔では、アミンは上式の反応によって排ガスから
CO2 のみを吸収します。CO2 を吸収したアミン溶液
は、右の塔で温度を上げることによって逆の反応
が進み、CO2 を放出します。CO2 を放出したアミン
は、再び左の塔に戻り、CO2 の吸収を行います。
処理済
ガス
CO2
99.9%
アミン循環
利用
廃ガス
CO2吸収塔
CO2放散塔
図2 アミンを用いたCO2分離装置
【実験】
今回は CO2 の吸収、放散の現象を実験で観察します。
アミンの種類で性能の違いを見ます。また、pH との関係を整理して CO2 分離に適したアミンを探
索します。
*pH:溶液中の水素イオン濃度を表し、物質の酸性、アルカリ性の度合いを示す数値
pH = -log10[H+]