超音波疲労試験機による高強度材の 超高サイクル疲労特性の評価 107 回を超える繰返し荷重により生じる金属材料の疲労破壊,いわゆる超 研究の背景と目的 島村 佳伸 工学研究科 准教授 高サイクル疲労,の疲労特性評価を従来の疲労試験機で実施するのは困難 です.そこで,本研究室では,超音波技術を用いた疲労試験機の開発を実施 しています.超音波疲労試験機の特徴は,20kHz という超音波領域での繰返 し荷重を材料に負荷することにより,超高サイクル領域における疲労試験の 加速試験を行えるところにあります.今回は,超音波疲労試験機の表面硬化 鋼への適用例などを紹介します. ■ キーワード 引張圧縮の繰返し軸荷重を負荷することが出来る超音波疲労試験機は既 ・ 超音波疲労試験 に実用化され,高強度鋼を中心とした多くの金属材料の超高サイクル疲労特 ・ カーボンナノチューブ強化 性の検討に用いられています.しかし,回転軸などの疲労強度向上に広く用 プラスチック プラスチック 研究の概要 ・ 天然繊維強化バイオマス いられている表面硬化鋼の疲労特性は引張圧縮の繰返し軸荷重では評価で きません.またバネ鋼など,純せん断繰返し荷重が作用する場合の疲労特性 は,負荷が組み合わせ応力状態であることから,単軸応力の場合の結果と同 一にはなりません. そこで,本研究室では圧電ねじり振動子を用いた超音波ねじり疲労試験機 の開発を実施し,浸炭鋼などへ適用し,超音波ねじり疲労試験機の有用性を 検討しています. ■ 技術相談に応じられる関連分野 ・ 金属疲労 ・ 繊維強化複合材料の強度と ・ 特筆すべき研究ポイント: 超音波疲労試験機の設計開発がおこなえる 破壊 ・ 新規研究要素: 超音波ねじり疲労試験機の開発(日本初) セールスポイント 超音波ねじり疲労試験機による浸炭鋼の疲労特性の評価(世界初) ・ 従来技術との差別化要素・優位性: 疲労試験周波数が従来装置(通常 10Hz のオーダー)に比べて約 1000 倍 高いため,疲労試験に要する時間を1/100以下に短縮することができ る. ・ 特許等出願状況: なし ねじり振動子 18.3 kHz アンプ マウント 制御装置 振動増幅ホーン イメージ図 ギャップセンサ オシロスコープ 試験片 マイクロスコープ 図 図 ねじり変位計測 超音波ねじり疲労試験機の構成と外観 浸炭材の超高サイクル疲労特性と疲労破面 [試験機について] 本研究室の技術協力により,すでに超音波ねじり疲労試験装置が市販されている. 今後の展望 [試験機の応用例] ・バネ鋼の超高サイクル疲労特性(純せん断の繰返し荷重が作用する部材への応用) ・ベアリング鋼の超高サイクル疲労特性 (純せん断の繰返し荷重により疲労き裂が発生する転がり疲労への応用) ・表面硬化鋼(軸荷重では疲労試験ができない部材への応用) [今後の課題] ・設計疲労曲線の取得への適用については,まだ基礎研究が不十分(ひずみ速度効果,寸法効果など) ■ その他の研究紹介 ・カーボンナノチューブ強化プラスチックの成形とその強度特性に関する研究 ・天然繊維強化バイオマスプラスチックの長期耐久性(疲労)に関する研究
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