新生ストラテジーノート 第 234 号 2016 年 8 月 4 日 調査部長 江川 由紀雄 [email protected] (03) 6880-6035 史上最低の住宅ローン金利と史上最低水準ではない国債利回り 今月(2016 年 8 月)、多くの住宅ローン貸出金利は史上最低水準を更新したが 住宅金融支援機構の証券化支援事情を用いた【フラット 35】(買取型)の8月の融資金利は、融 資率 90%以下、返済期間 21 年以上 35 年以内の区分で、融資金利は 0.90%と、先月の史上 最低記録を更新した 1。省エネ性能や耐震性に優れた住宅などを対象とする場合(つまり、【フラッ ト 35】S の要件を満たす場合)に、当初5年間(長期優良住宅、認定低炭素住宅等のとくに性能が 優れた住宅については当初 10 年間)、0.3%の金利引き下げの対象になる。民間の住宅ローン についても、8 月の貸出金利は過去最低水準となった事例が多々ある 2。 図表 【フラット 35】融資金利の推移 1 2.0% 1.8% 1.6% 1.4% 1.2% 1.0% 0.8% 0.6% 0.4% 0.2% 2016年5月 2016年3月 2016年1月 2015年11月 2015年9月 2015年7月 2015年5月 2015年3月 2015年1月 2014年11月 2014年9月 2014年7月 2014年5月 2014年3月 2014年1月 0.0% 注: 融資率 90%以下、返済期間 21 年以上 35 年以内の最頻値 出所: 住宅金融支援機構 1 住宅金融支援機構が運営するサイト Flat35.com http://www.flat35.com/kinri/index.php/rates/top 報道例として、時事通信 「住宅ローン金利、最低更新=10年固定、3行引き下げ-8月」 2 2016 年 7 月 28 日 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016072700827&g=eco 1 新生ストラテジーノート 新生証券株式会社 調査部 住宅ローンの貸出金利と市場金利との関係、タイムラグに注意 住宅ローンの貸出金利は、月次で更新される慣行が根付いている。銀行に限らず、多くの住宅 ローン事業を行っている事業者は、毎月 1 日から末日までの間に貸し出す場合の貸出金利を当 月 1 日または前月末近くの日に公表する。こうした慣行のもとでは、住宅ローンの貸出金利は、事 実上、前月の下旬に決定することになる。 住宅ローンの貸出金利を決定する要素は様々ではあるが、程度の差こそあれ、国債流通利回 りに代表される市場金利が反映される。住宅金融支援機構の【フラット 35】については、MBS の 発行利回り・名目スプレッド、10 年国債流通利回りが反映されて決定される傾向が見られる。民 間プロパーの住宅ローンの貸出金利は、ときに、市場金利動向とは無関係に動くことがあるが、 営業方針や同業者との競合状況などが反映されるからであろう。 今月(2016 年 8 月)の住宅ローンの貸出金利は、史上最低または史上最低に近い水準となっ ているが、国債流通利回りはそうではない。先週の日銀による政策決定や今週の政府による経 済対策などに影響されたのか、先月下旬に比べると、国債流通利回りはだいぶ高い水準にある。 今月下旬の市場金利が来月の住宅ローン金利に反映されるであろうことを踏まえると、住宅ロー ン貸出金利が来月(9 月)、更に史上最低水準を更新する可能性はそれほど高くはないのではな いだろうか。住宅ローン利用者の借入れ・借り換え行動は、かならずしも住宅ローン金利のわず かな変化によって大きく影響されるものではないだろう。とはいえ、「史上最低」の住宅ローン貸出 金利は、既存の住宅ローンの借り換えを誘発する強い材料となる。民間ベースの住宅ローンの証 券化商品であれ、住宅金融支援機構が発行する MBS であれ、住宅ローンの借り換え動向が償還 速度に影響し、ひいては、投資採算に影響することになる。住宅ローンの証券化商品に投資する 立場からは、市場金利動向に加え、住宅ローン貸出金利動向(ひいてはそれによって誘発される 住宅ローンの借り換え行動の状況)についてのフォローも欠かせないように思う。 (調査部長 江川 由紀雄) 2 2 新生ストラテジーノート 新生証券株式会社 調査部 3 名称 :新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.) 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号 所在地 :〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル Tel : 03-6880-6000(代表) 加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 資本金 :87.5 億円 主な事業 :金融商品取引業 本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社 はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、 特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取 引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及 び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその 関連会社は、本書で取り扱われている有価証券またはその派生証券を自己勘定で保有し、または自己勘定で取引する ことがあります。弊社は、法律で許容される範囲において、本書の発表前に、そこに含まれる情報に基づいて取引を行う ことがあります。弊社は本書の内容に依拠して読者が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。本書は 限られた読者のために提供されたものであり、弊社の書面による了解なしに複製することはできません。 信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま たは参照する信用格付には、金融商品取引法第 66 条の 27 の登録を受けていない者による無登録格付が含まれる場 合があります。 3 著作権表示 © 2016 Shinsei Securities Co., Ltd. All rights reserved.
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