3地域連系系統における HVDC を用いた品質改善の検討

3地域連系系統における HVDC を用いた品質改善の検討
E02071
塚本
洋平
指導教員
1.はじめに
藤田吾郎
3.動的シミュレーション
2005 年 2 月、京都議定書が発効され先進国に二酸化炭
本研究では3地域の交流連系線故障時の場合について検
素など温暖化ガス削減を義務付けられた。そのため、わが
証している。ここで、故障がなく健全時をケース1(図
国では風力発電の導入目標が 2010 年度に 300 万 kW と定
2)に示し、A-C間故障時をケース2、B-C間故障時をケー
められ、現在は 80 万 kW でありこれから導入拡大が必要
ス3とする。故障状況の例として作業による停止、遮断器、
となる。その課題として風力発電の不安定な周波数を制御
保護リレーの故障があげられる。
し安定させることが挙げられる。一方、近年のパワーエレ
それぞれ HVDC の偏差ゲインは最適レギュレータ設計
クトロニクスの技術進歩は著しく、交直連系系統の検討が
より、HVDC の融通電力が限度まで達するよう重み行列を
行われ、我が国では北本連系で周波数制御が実施されてい
調整したなかで潮流連系、周波数変動を抑えるように設定
る。その他にも、交流系統の大規模化に伴う安定度問題、
し MATLAB command より LQR レギュレータからゲイン
短絡容量問題を解決しつつ、系統間の送電容量を増加させ
Kr を決定した。[2]フィードバック制御では HVDC によっ
る BTB(Back to Back)方式が、南福光 BTB として 1999 年 3
て連系されている A、C 系統の周波数を
月より運用を開始している。これは我が国初の同一周波数
有無の系統の周波数改善効果をグラフや標準偏差によって
内直流連系設備で、中部電力と北陸電力間を連系する目的
検証した。滞在率、標準偏差による検証結果を表 2~7 に
[1]
で設置され、可能性が検討されるようになった。
そこで本研究では風力発電設備を既存の電力系統Aに連
故障時の HVDC
示し、シミュレーション結果は容量の最も低い A 系統の
HVDC 有無の場合における周波数変動特性を図 3 に示した。
系した場合に HVDC(BTB)を C 系統と A 系統間に用いた際
の A、B、C 系統間の 3 地域連系系統における LFC 制御の
A系統
可能性について検証を行っている。
548万kW
2. 負荷周波数制御モデル
HVDC
本研究では実際に日本で採用されているA電力とC電力
の系統を交直変換で用いた HVDC を取り上げ A、B、C 系
統を図 1 のように交流連系したループ系統をモデルとした。
負荷周波数検証モデルとして図 2 のように 3 地域 HVDC
連系モデルを MATLAB の SIMULINK にて作成した。A 地
B系統
C系統
3223万kW
2639万kW
図1
3 地域モデル(概念図)
図2
3地域HVDC連系モデル
域は小容量系統(A電力)、B 地域は大容量系統(B電
力)、C 地域は小容量系統(C電力)を表しており、両系
統は HVDC 連系されている。これは HVDC の偏差ゲイン
Kr によって示され、Kr は LQR レギュレータより健全時、
AB 間故障時、BC 間故障時の場合をもとめ、パラメータ
にして動的シミュレーションを行った。
同様に、3 地域くし型 HVDC-AC 連系モデル、3 地域ル
ープ型 HVDC-AC-AC 連系モデルを MATLAB/SIMULINK
にて作成し、シミュレーションを行った。モデル図はそれ
ぞれ図 2、に示す。3 地域は、A 系統を小容量系統、B、C
系統を中容量系統とした。A-C 系統間と B-C 系統間の AC
連系は、周波数のフィードバックがかかるようにした。
各モデルの系統ごとの設定条件は表 1 に示す。
表2
健全時
Quality index
Occupation ratio(±0.2)
Occupation ratio (±0.1)
Standard deviation
HVDC有
SystemA
1
0.7579
0.07929
SystemB
1
0.758
0.07929
SystemC
1
0.7578
0.07929
表3
健全時
Quality index
Occupation ratio(±0.2)
Occupation ratio (±0.1)
Standard deviation
表4
SystemC
1
0.7579
0.0793
SystemA
0.9271
0.7653
0.09588
SystemB
1
0.7007
0.0883
SystemC
1
0.7007
0.0883
SystemA
0.4708
0.3068
0.3207
SystemB
1
0.6985
0.08658
SystemA
1
0.9762
0.04949
SystemB
0.851
0.5333
0.1475
SystemA
1
0.8367
0.07046
SystemB
0.7961
0.4551
0.1627
SystemA
5480
119
77
5282
SystemB
32230
14503
6446
11280
SystemC
26390
575
374
25440
HVDC
300
表 2、3、 図 3 より健全時の場合は HVDC の有無で A
系統の周波数変動量は滞在率、標準偏差の点から見ても制
御されている事が判明した。
表 4、5、
SystemC
1
0.9763
0.4949
図 3 より A-C 間故障時は表より周波数変動
量、滞在率、標準偏差の点から見ても HVDC 制御されて
いる事が判明し、故障時における周波数変動は実用可能な
段階まで制御されたといえる。
表 6、7、 図 3 より B-C 間故障時は表より滞在率、標準
偏差をみると HVDC 有では故障が起きている側の系統が
B-C間故障時 HVDC無
Quality index
Occupation ratio(±0.2)
Occupation ratio (±0.1)
Standard deviation
Genelator unit
Load Capacity
LFC Thermal
LFC Hydraulic
Non LFC
Thermal&Nuclear
Rated Capacity of
LFC
系統容量
4. 検討結果
SystemC
1
0.6988
0.08658
B-C間故障時 HVDC有
Quality index
Occupation ratio(±0.2)
Occupation ratio (±0.1)
Standard deviation
表7
SystemB
1
0.7576
0.0793
A-B間故障時 HVDC無
Quality index
Occupation ratio(±0.2)
Occupation ratio (±0.1)
Standard deviation
表6
SystemA
1
0.7583
0.0793
A-B間故障時 HVDC有
Quality index
Occupation ratio(±0.2)
Occupation ratio (±0.1)
Standard deviation
表5
表1
HVDC無
SystemC
1
0.8366
0.07046
制御され、HVDC 無では故障が起きていない側の系統が制
御されていた。
健全時では HVDC の有無では周波数変動量の変化はみ
られず、図 3 の波形、表 4、5 より A-B 間故障時が最も効
果があり容量差の大きい系統間故障時にもっとも効果を発
揮することが判明した。
A 系統、B 系統、C 系統を比べると A 系統は容量が少な
いために変動がより大きく現れることが判明したため図5
では A 系統のみを表した。
5. まとめ
(a)A-B間故障時/HVDC有
(b)A-B間故障時/HVDC無
本研究により、小容量系統と 2 つの中容量系統によるル
ープ型連系において交流連系故障時に HVDC によって容
量差の大きい系統間故障の場合に最も周波数が制御され、
HVDC 無では故障側とは反対の系統の周波数が制御されて
いることが判明した。また HVDC 無の場合は交流連系故
障していない側の周波数変動が制御されることが判明した。
(c)B-C間故障時/HVDC有
(d) B-C間故障時/HVDC無
以上より HVDC 連系設備の周波数制御面から見た役割は、
交流連系が解列した場合に容量差が大きい程機能する。一
方、健全時における AC 連系を伴っている場合には、周波
数改善には寄与しないことが判明した。
文
[1]
(e)健全時/HVDC有
(f) 健全時/HVDC無
図 3 シミュレーション結果(A 系統)
献
道上勉、 大石孝穂、 「負荷変動モデルと BTB の
AFC 解析」、 電気学会論文誌、 Vol. 120-B、 No. 7、
2000
[2] 井上和夫、川田昌克、西岡勝博「MATLAB/Simulink
による わかりやすい制御工学」森北出版
[3] 林政義, 望月宏悦, 野呂康宏, 苅部孝史, 古川伸比古,
高木喜久雄, 「南福光直流連系設備における周波数安
定化制御の検証」, 電気学会論文誌, Vol. 121-B, No. 9,
2001