米ジョイ・グローバルを買収、過去最大の 3000 億円

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◇コマツ、米ジョイ・グローバルを買収、過去最大の 3,000 億円
-2017 年半ばに買収完了、鉱山機械で 7,800 億円規模-
コマツは7月 21 日、米子会社コマツアメリ
鉱山機械メーカー規模
(億円換算、2015年推定)
カ(本社:米国イリノイ州)が、露天掘り・坑
10,000
を行うジョイ・グローバル社(Joy Global Inc.、
8,000
本社:米国ウィスコンシン州ミルウォーキー、
6,000
以下ジョイ社)を 28 億 9,100 万ドル(約 3,000
4,000
E
社
D
社
C
社
B
社
社
コマ
承認、関連国での承認取得を経たうえ、2017
0
ョイ
と合意、今後、ジョイ社の株主総会における
2,000
ジ
カの完全子会社とすることについてジョイ社
A
社
億円)で買収すると発表した。コマツアメリ
ツ+
内掘り向け鉱山機械の製造・販売・サービス
年半ばをめどに買収を完了する予定。
買収は、ジョイ社株式を1株当たり 28.3 米
ドル(総額約 28 億 9,100 万ドル:約 3,036 億円)で取得する予定。ジョイ社発表では債務残
高含めて 37 億ドル。買収資金については手元資金および借入金により調達することを想
定、現時点で増資は想定していない。
コマツは、2021 年の創立 100 周年を見据え、それ以降も持続的な成長を目指すため3カ
年(2016-2018 年度)の中期経営計画を4月よりスタートしているが、中計における成長戦
略の実現に向け、主要事業である鉱山機械事業の体制を大幅に拡充するため、ジョイ社の
買収を決定した。
ジョイ社は鉱山機械事業で 130 年以上の歴史を有し、コマツがこれまで保有していなか
った超大型の露天掘り向け鉱山機械および坑内掘り向け鉱山機械の製造・販売・サービス
を行う年間売上高 31 億 7,200 万ドル(約 3,330 億円、従業員1万 3,400 人)のグローバル企
業。数年前にも証券筋からコマツに対し買収提案があったが、今回は、コマツがジョイ社
の企業文化等にも関心を持ち、今年初めから本格交渉が開始された。
コマツの鉱山機械事業は、1921 年の創立時から始まり、1990 年代以降に競争力のある鉱
山機械メーカーや代理店などの買収を積極的に行ったことで、現在の事業規模は約 4,500
億円にまで成長したが、これまで事業の対象は、鉱山における2つの採掘手法(露天掘り、
坑内掘り)のうち露天掘り向けのみに留まり、その中でも一定の大きさを超える超大型の露
-1-
天掘り向け積み込み機械はカバーしていなかった。
現在、新興国の成長鈍化や資源価格低迷の影響を受け、鉱山機械の需要は大きく落ち込
んでいるが、世界の人口増および都市化率の上昇を背景に長期では増加し、採掘手法につ
いては、経済合理性の点から露天掘りの機械の大型化と、坑内掘りのニーズが更に高まっ
ていく見込み。
ジョイ社の買収により、コマツが保有していない超大型の露天掘り向け鉱山機械および
坑内掘り向け鉱山機械などを新たに製品ラインナップに加えると共に、直接販売・サービ
ス体制を統合し強化する。更に、品質と信頼性を重視するコマツとジョイ社のモノ作り技
術を融合させるだけでなく、両社の強みである「IoT(Internet of Things)」を活かし、露天
掘りおよび坑内掘り向け鉱山機械をコマツの鉱山管理システム上でつなげ、機械の稼働最
適化、遠隔操作、無人化を進めることで、鉱山現場の安全および生産性の大幅な向上に貢
献する。
■製品ラインナップの補完
ジョイ社はロープショベル、超大型ホイールローダー、ドラッグライン、ドリルなどコ
マツにない露天掘り向け製品を保有している。また、積み込み機械であるロープショベル、
超大型ホイールローダーはコマツが製造販売する超大型の電気駆動式ダンプトラックと積
み込み時の適合性が非常に高いため、販売、サービスでの相乗効果が期待できる。更に、
ジョイ社はこれまでコマツが手がけてこなかった坑内掘り向け製品を保有することから、
ジョイ社の買収によってコマツは坑内掘り向けにも事業の対象を拡大する。ジョイ社の買
収によって、コマツは露天掘りだけでなく坑内掘りを含めた全ての鉱山の顧客に対してダ
ントツ商品を提供できる体制を整えることができる。
■ダントツソリューションの強化
ジョイ社は顧客の現場の安全および生産性の向上を最優先としつつ、ハードの開発と共
に、現場で稼働する機械を IoT でつなぐスマート・サービスなどの開発・導入に取り組ん
でいる。コマツも同様に、無人ダンプトラック運行システム(AHS)の展開、鉱山管理シス
テムや KOMTRAX Plus などを通じて機械および施工の見える化を進め、顧客の現場の安全
および生産性の向上に取り組んでいる。両社の IoT から得られる鉱山現場における様々な
データをコマツのオープンプラットフォーム上でつなげ活用することが可能になるため、
大きな相乗効果が期待できるとしている。
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■コマツとジョイ・グローバルの鉱山機械における沿革
コマツ
1884年
1917年 竹内鉱業(株)(創立1894年)、小松鉄工所を開設
し、自社用工作機械、鉱山用機械を生産
1963年 米ビサイラス・エリー社と油圧ショベルに関す
る技術提携契約締結(1981年3月解消)
1964年 米インターナショナルハーベスター社と合弁事
業契約締結(1982年1月解消)
1986年 ドイツに「小松インダストリーズヨーロッパ
(有)」設立
1988年 米国に「小松ドレッサーカンパニー」設立
1989年 ドイツのハノマーグ社に資本参加
1995年 コマツドレッサー社で世界最大のダンプトラッ
ク「930E」を開発
1996年 コマツドレッサー社を「米州コマツカンパ
ニー」に社名変更
1996年 ドイツに「デマーグコマツ(有)」設立 (1999年2
月「 コマツマイニングジャーマニー(有)」に社
名変更)
1996年 米国のモジュラーマイニングシステムズ社に資
本参加
1997年 米国に「コマツマイニングシステムズ(株)」設
立
2000年 米国の建設・鉱山機械部品メーカー、ヘンズ
レー・インダストリーズ社を買収
2004年 六甲工場で超大型油圧ショベルPC3000の生産開
始
2007年 茨城工場、金沢工場、コマツインディア(有)
生産開始
2008年 リオ・ティント社の豪州鉱山で、無人ダンプト
ラック運行システムの稼動開始
2011年 リオ・ティント社と無人ダンプトラック150台導
入に向けた覚書締
コマツロシア製造で大型ダンプトラック生産
2012年
2014年
2015年
コマツの鉱山機械売上推移
(単位:億円)
ジョイ・グローバル
会社設立(P&H)
1884年:P&H
Alonzo PawlingとHenry Harnishfegerの創業者
名が社名。その後世界的ブランドとして定着。
1919年:Joy machinery創業。
1994年: Harnishfeger IndustriesがJoy
Mining Machinaeryを買収
ジョイ・グローバルの業績
(単位:億ドル)
60
15
50
10
40
5
30
0
20
-5
10
-10
0
-15
06 07 08 09 10 11 12 13 1415年
売上高
参考:
2011年:CATがビサイラス・インターナショナル
買収
(負債引き受け含めて86億ドル)
2012年:P&HとJoy統合でJoy Globalに。
露天掘りはP&H、坑内掘りはJoyブラン
ド。
LeTourneau(米国)買収、露天掘り事業を強化
IMM(中国)買収、坑内掘り事業を強化
Mining Technologies International(カナダ)
のハードロック事業を買収
Montabert(仏)買収、ハードロック事業を強化
ジョイの地域別売上(直近1年)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
アフリカ
8%
15
14
13
12
11
10
09
08
07
06
ユーラシ
ア
9%
中南米
18%
本体・サービス等
営業利益
部品
-3-
中国
8%
北米
38%
オースト
ラリア
19%
■コマツの記者会見内容(2016 年7月 21 日)
---数年前にも買収を計画していたそうだが、改めて具体化した経緯は。
大橋徹二社長:一つ目は我々の財務基盤が過去3年の中期経営計画の実行でかなりしっか
りして大型買収もできるようになってきたこと。二つ目はジョイ社の売上あるいは鉱山市
場が今はボトムにあるので、今後は伸びること。三つ目はジョイの企業文化、お客様に対
する真摯な態度。直販・直サをやっているので、お客様の課題を理解して、その中身をど
うやって解決しようかと、我々の活動と同じようなことをやっている。
---単純合算で鉱山機械の売上は 7,800 億円になるが、業界地図は変わってくる?
大橋社長:鉱山機械事業の売上高を単純合算すると業界で2番目位になる。その意味では
非常に大きな前進になる。またコマツのマイニング事業はサービスの売上比率が 59%、直
販・直サもやっている。対してジョイ社は 76%、単純合算すると 71%。新車の売れないこ
の時期に非常に強い基盤がある。しかも世界中にサービス網がある。
---ジョイ社の中国市場における特色、地域的な補完関係はどうか。
大橋社長:鉱山のある所には、大体両社とも殆ど入っている。両方ともグローバルプレイ
ヤーであることが一つ。中国にはジョイは3工場を持ち、中国全土をカバーしている。
---コマツはマイニングでは米・独の会社を買収するなどの歴史があり、日米欧に工場
を持つが、ジョイ社で生産拠点再編の動きがあるが。
大橋社長:一番大きいのは米国で、本拠地のミルウォーキーをはじめ各地。英国にも1工
場。中国はメイン工場は2つだけ。ジョイ社は鉱山機械業界で生き残りをかけてここ2~
3年間構造改革を実行中。工場を閉めたり売却したりと。中国でも3工場から2工場に集
中するなどどんどんやっている。米国でも同じようなことをしている。基本的には、まず
それらをきちっとやり遂げることが大事だと思う。(注:生産拠点は米国、カナダ、中国、
オーストラリア、フランス、ブラジル等)
---今回の買収プロセスが本格化したの経緯や、どちらが話を持ちかけた?
大橋社長:コマツがジョイ社に関心を持って、コマツから提案した。交渉を始めたのは 2016
年初め。
---買収価格について1株 10 ドルを割り込む時期もあった会社に 28 ドルも出すのは。
藤塚主夫副社長:ジョイの株価は 2011 年頃 100 ドル近くでピークだったが、その後最安
値は 10 ドルまで下がった。28.3 ドルというのは直近の株価でいうと大体 20%位のプレミ
アムで、底の時期からすると大体3倍。世間相場からすると普通のプレミアムと思う。ま
た買収によって将来生み出される価値からみても妥当と思う。
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---ジョイの構造改革費用は今後も発生するのか。
大橋社長:同社は 10 月決算。昨年度から持ち越しているものに関しては、費用が発生す
ると思う。
---経営への関与ということで、コマツから役員を派遣する等については。
大橋社長:買収後は経営体制はある程度セパレートしてやっていこうと考えている。
「JOY」のブランドを残すことを考えているが、まだ合意したばかりで各国の規制をきっ
ちりクリアすることが大事。今後の経営のやり方や体制は、ジョイ社のトップとも相談し
ながら、合併委員会のような組織を設けて議論を深めていく。
---今回、逆三角合併ということで、3,000 億円規模の 100%買収を決めた理由と、今後
の投資計画に何らかの影響については。
藤塚副社長:買収をやるなら 100%買収をやろうということで、100%子会社にすることを
決めた。コマツの歴史の中でも大規模な買収だが、前の中期経営計画では財務体質を強化
しようということで、借入金のレベルをずいぶん落としてきた。それでいろんなことにお
金を使う自由度が出てきた。これをやると一時的に借入金が増えてネット DER も 0.4 位一
時的に悪化するが、現在のキャッシュフローからいえば、それもいずれまた戻ってくる。
財務体質の強さもある程度はキープできる。今後も案件があれば考えていく。
---今後の M&A に対する方針、また市況に今後先高感が出てくると、業界内ではこう
した動きは活発になってくるのか。
大橋社長:他社の話は分からないが、当社は3つの分野で M&A をやってきた。一つはマ
ーケットを獲得すること。アメリカのダンプトラックやドイツのマイニングショベル、代
理店も買収しながら事業を進めてきた。お客さんを獲得するのと技術も獲得する。二番目
については、我々が中期経営計画で打ち出しているバリューチェーンを豊かにするのが狙
い。我々が作っているのは建設鉱山機械や産業機械である。そういう事業を強くしていく。
---統合後、さらに合理化はあるのか。先に GE とマイニングで提携しているが、今回
の買収で変化することは。
篠塚久志専務:さらなる構造改革は今後両社で独占禁止法をクリアしてから決めることな
ので、今の段階で具体的なアイデアがあるわけではない。GE との関係は、超大型ダンプ
に搭載するホイールモータに関するもので、ジョイ社を買収することで、ホイールモータ
の購入量も増えるなどのシナジー効果でより関係が強化されることになる。合弁会社の件
は、GE とは内容をオープンにしながら話を進めていきたいと考えている。(了)
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