プログラム(PDF形式)

第 48 回 海洋工学パネル
生かそう!我が国の遠隔離島―沖ノ鳥島と南鳥島を考える―
日 時: 2016 年 7 月 26 日(火) 9:30~17:45
会 場: 日本大学 理工学部 駿河台キャンパス 1 号館 121 室
【趣旨】
わが国は広大な領海および排他的経済水域(EEZ)を有し総面積は世界 6 位となる。この排他的経済水域を形成
する島嶼の代表として沖ノ鳥島、南鳥島があげられる。こうした島嶼は国境離島とも呼ばれ、これまで利活用に
供されることは極めて少なかった。
しかしながら、沖ノ鳥島ではサンゴ礁の増殖試験や浮魚礁の設置など、水産資源の開発や国際的にも評価される
環境保全研究が展開され、南鳥島の周辺海域においても水産資源の開発が進められてきている。また、これら島嶼
につながる海域ではマンガンノジュールやメタンハイドレードなどの鉱物資源も発見され、広大な海洋に対して
大いなる可能性が見出されてきている。こうした取り組みは海洋調査機器などの発展が寄与してきたことは言う
までもない。
そこで、今回のパネルでは、沖ノ鳥島、南鳥島に焦点をあて、海洋調査機器の現状、これら島嶼周辺や島嶼に接
続する水域で行われている水産資源開発、海底鉱物資源開発、サンゴ礁増殖試験などを紹介するとともに、島嶼
の維持管理技術などを紹介し、遠隔諸島を維持することの必要性、維持するために必要とされるさまざまな技術
開発について提案したい。
【プログラム】
第1部
9:30~9:35
司会
日本海洋工学会運営委員
開会挨拶
畔柳昭雄(日本水産工学会)
日本海洋工学会会長
山崎哲生(資源・素材学会)
国境離島の現状と課題-行政機関における取り組み状況
9:35~10:15 沖ノ鳥島及び南鳥島における特定離島港湾施設の整備について
国土交通省 港湾局 海洋環境課 海洋利用開発室長 田中知足
「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」
(低潮線保全法)が平成 22 年 6 月に施行された。国土交通省においては、本法に基づき、本土から遠く離れた
特定離島(南鳥島、沖ノ鳥島)において、排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用に関する活動の拠点として、
船舶の係留、停泊、荷さばき等が可能となる港湾の施設(特定離島港湾施設)を整備するとともに、国による管
理体制の構築を図っている。今回のパネルでは、沖ノ鳥島及び南鳥島における国土交通省の取組として、特定離
島港湾施設の整備状況等について紹介する。
10:15~10:55 沖ノ鳥島における水産庁の取り組みについて
農林水産省 水産庁 漁港漁場整備部 整備課 課長補佐 朝倉邦友
平成 28 年 4 月 27 日に「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別
措置法(有人国境離島法)
」が公布されるなど、国境離島について、国民の関心が高まっている。このような状況
下、水産庁では、国境離島の維持のため、様々な施策を進めていくこととしているところであり、国土面積を超
える約 40 万 ha の排他的経済水域(EEZ)を有する沖ノ鳥島においては、周辺海域での持続的漁業活動や島の保
全に資する取組みとして、平成 18 年度よりサンゴの増殖技術の開発や調査を実施しているところである。
今回のパネルでは、これまで水産庁が実施してきた沖ノ鳥島におけるサンゴ増殖の取組みについて紹介する。
海洋調査機器の現状と課題
10:55~11:35 海底鉱物資源調査のシステム化
東京大学 生産技術研究所 特任准教授 ソーントン・ブレア
熱水活動によって生成される鉱床、海水由来であるマンガンクラスト・ノジュールなどの化学堆積岩は、成因に
関わるプロセスが違うため、含まれる成分、鉱物の形状、分布状況が大きく異なる。このため、オールマイティ
な調査方法は存在しない。それぞれの鉱物の性質を考慮し、調査のボトルネックとなる課題に答える技術の開発
が必要となる。本講演では、日本で行なわれている調査研究を中心に、海洋調査機器の現状と課題について紹介
する。
11:35~12:05 第1部・討論
12:05~13:05 昼食
第2部
司会
日本海洋工学会運営委員
関本恒弘(日本沿岸域学会)
13:05~13:25 海洋工学関連会議報告
維持管理手法の現状と課題
13:25~14:05 遠隔離島の生態工学的保全技術
東京大学大学院 理学部 研究科 教授 茅根 創
我が国は,国連海洋法条約(1994 年)に基づく,海洋基本法(2007 年)
,低潮線保全法(2010 年)によ
って,1島で 43 万km2 もの EEZ を持つ遠隔離島の維持と拠点整備を進めている.遠隔離島管理の国家実
効として,南シナ海における中国の岩礁埋め立て・要塞化にみられるハード管理と,米英仏豪など遠隔離
島に広大な海洋保護区を設定するソフト管理とがある.前者は,国際的な批判を受けている一方,後者は
EEZ 維持とともに,生物多様性条約(1993 年)の愛知目標(海域の 10%を海洋保護区に設定する)をも
満たす賢い管理である.水産,資源・エネルギーなど海洋の利活用が必要であっても,
「我が国の」EEZ の
利活用だけを前面に出した管理は,太平洋小島嶼国の理解を得られず,太平洋の広大な EEZ の利活用の機
会を失う.遠隔離島は,サンゴ礁の土台の上に,サンゴの礫や有孔虫の砂が堆積してつくられた生態的な
過程で造られた島であり,生態系の維持=国土の維持である.本講演では,太平洋小島嶼国と共通の課題
である,海面上昇に対する小島嶼の維持を目的とした,サンゴや有孔虫による遠隔離島の生態工学的保全
技術の開発について説明する.
資源開発の現状と課題
14:05~14:45 沖ノ鳥島および南鳥島周辺の海底鉱物資源開発の見通しと課題
大阪府立大学大学院 工学研究科 海洋システム工学分野 教授 山崎哲生
沖ノ鳥島および南鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の限界延長を認められた海域には、海底熱水
鉱床、コバルトリッチクラスト、レアアース堆積物等の海底鉱物資源の存在が確認されている。これらを、レア
メタル、レアアース類を含む金属供給源と捉えて、現状において経済性評価をすると、あまり良い結果は得られ
ない。一方、技術の進展、価格の上昇、副産物の利用等を想定して、将来の経済性評価をすると状況は変わる。
現状および将来の経済性評価結果について概説するとともに、技術の進展と副産物の利用に焦点を当てて詳しく
紹介する。
14:45~15:25 沖ノ鳥島のサンゴ礁と水産資源について
一般社団法人水産土木建設技術センター 調査研究部 安藤 亘
沖ノ鳥島は日本最南端の島であり、広大な排他的経済水域が確保される水産上で極めて重要なサンゴ礁の島であ
る。水産庁は 2006 年より、沖ノ鳥島でサンゴ増殖に関する調査に着手し、毎年 3000 個のサンゴ移植を行って
いる。また、水産業等を中心とした沖ノ鳥島の利活用を図るために、リーフ内外の水産資源の状況についても調
査を実施されている。
水産資源の状況については、
リーフ内の中央部においてサンゴ群集の被度が高く、
多様な魚介類が生息している。
また、リーフ外及び周辺海域では、エビ類、アジ類、キンメ・キントキ類、カツオ類、マグロ類、シイラがみら
れ、水産資源として利用できる魚介類が豊富に生息していることがわかっている。
15:25~15:45 第2部・討論
15:45~16:05 コーヒーブレイク
第3部 総合討論
16:05~17:35 総合討論
国境離島の維持管理の課題
司会
福井県立大学 教授 大竹臣哉
アルファ水工(株) 綿貫 啓
17:40~17:45 閉会挨拶
日本海洋工学会副会長
柴山知也(土木学会)
17:50~19:30 懇親会
司会
日本海洋工学会運営委員
福島朋彦(資源・資材学会)