日本語要旨

小林 真一 教授
平成28年4月1日就任
【数学科】
平 成28年4月1日より数 理 学 研 究
ガウス整数の基本性質を使って、自
上 の 微 積 分 や 幾 何 の 理 論 が 発 展し
院 に 着 任しました 。専 門 は 整 数 論 で
然 数 k に 対し、x ^ 2 + y ^ 2 = k を 満 た
ています。
( 1±1 / p )は p 進 数 体 上
す 。特にL - 関 数 の 特 殊 値 公 式に興 味
す 整 数 x , y の 個 数 を 求 め ることが で
の 円 の 面 積 と も 解 釈 で き 、ラ イ プ
を もって い ます 。特 殊 値 公 式 の 起 源
きます 。そ れは( x + y i )
( x - y i )= kと
ニッツ 公 式 は 「
, 実 数 体とす べ て の p
は 、次 の ライプニッツ公 式 です。
書けば、kをガウス整 数 の 世 界で分 解
進 数 体における円 の 面 積を掛け合
する問 題になるからです。ライプニッ
わ せ ると 、4( 分 母 1 , 分 子 4 )と いう
ツ 公 式 は ア ー クタ ンジェント の テ イ
円の方程式の整数論で重要な量が
ラ ー 展 開 から 得ら れま す が 、三 角 関
現 れる」と解 釈されます。
この 公 式 の 魅 力 は 突 然 現 れる円 周
数 や テ イ ラ ー 展 開 、円 の 面 積といっ
私 の 研 究 対 象 で あるL - 関 数 の 特
率に ありますが 、
π/ 4 の 係 数 の 1 / 4
た 解 析 的 な も の が 、円 の 方 程 式 の 整
殊 値 公 式 は 、ほとん どが ま だ 予 想 の
にも 整 数 論 的 意 味 が ありま す 。虚 数
数 解という離 散 的 な 問 題と結 び つ い
段 階ですが、これと同 様 の 現 象が、円
単 位 を i とし て ,2つ の 整 数 m , n を
ているところが大変不思議です。
の 方 程 式 だ け で なく、どん な 整 数 係
使って 、m + n i と 表 さ れ る 複 素 数 を
ライプニッツ公 式 は
数 方 程 式 系 に 対して も 存 在 する( だ
ろう)というも の です 。楕 円 曲 線 の 場
ガウ ス 整 数 と 呼 び ま す 。ガウ ス 整 数
に関しても 通 常 の 整 数と同 様 の 理 論
合 がリー マン 予 想と並 ん でミレニ ア
が 作 れます 。特 に 大 切 な の は 素 因 数
ム 問 題になって いるB S D 予 想 です 。
分 解 法 則 の 存 在 で す が 、実 はこれは
とも 変 形 で き ま す 。ここで 積 は 任 意
少し 前 に B S D 予 想 に 関して さ さ や
ラ イ プ ニッツ 公 式 の 左 辺 の 係 数
の 素 数 p > 2 を わ たり、±は p が 4 で
か な 貢 献 が で き た の はうれしいこと
1 / 4 で 、分 子 が 1 で あ ることに 対 応
割って 余り3 のとき+で 、そ れ以 外 の
でした 。今 後 も な に か の 貢 献 が で き
して います 。また 分 母 の 4 は 、可 逆 な
ときは−です 。実 は 各 素 数 pに対して
るようがんばりたいと思 います。
ガウス 整 数 が±1と±i の4つ で あ る
p 進 数という実 数と類 似 する 数 の 体
ことに対 応して います。
系 が 存 在しま す 。現 在 で は p 進 数 体
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物理学科 Physics
べき的相互作用が生み出す揺らぎの極限
物理学科
現実の世界で観測される非ガウス分布の解析表現
准教授
均
質な連続体としての近似が可能で
自然界は重力、静電気力、流体力学場、
水野 大介
のように与えられることが示されました。
ある平衡系の物理量の揺らぎを考えましょ
等々のべき的に減衰する相互作用で満ち
詳細は省きますが、
この新しい極限分布
う。微視的・巨視的スケールの中間である
溢れています。例えば多数の恒星からの重
は、系の特徴的なサイズ
(R)
と相互作用源
メソスケールでは観測量の揺らぎを計測
力相互作用、あるいは、多数の遊走微生物
することができて、その分布はガウスにな
からの流体力学的な相互作用の和を観測
の濃度( c )、および、相互作用の強さを表
す尺度(γ)
により表現されており、既知の
るはずです。
しかしながら、現実に観測され
することを考えましょう。重力相互作用も、
るメソスケールの揺らぎは必ずしもガウス
(この場合の)流体力学的な相互作用も、
的に接続することが分かっています(ただ
分布を示しません。特に、乱流、
ガラス、細
どちらも距離の2乗に従って減衰します。
し、任意の空間次元で同じことが言えるわ
胞、遊走微生物懸濁液(アクティブマター)
その場合個々の相互作用を単純に数学的
けではない)。我々は、
この新しい非ガウス
極限分布であるガウスとレビの間を連続
等の様々な非平衡系では、著しく非ガウス
に足し合わせたときの統計分布は、個々の
分布の解析的表現が、現実系(遊走微生物
な揺らぎが観測されます。その起源が明ら
相互作用の分散が有限である時にはガウ
懸濁液やアクチン/ミオシンゲル、ガラス、
かになれば、非ガウス分布の形状とその時
ス分布に、分布の裾野がべき的に広がり発
乱流)
で観測される非平衡揺らぎを定量的
間発展を解析することで、非平衡系の性質
散する場合にはレビ分布と呼ばれる安定
に説明することを、実験・理論および数値シ
や振る舞いに関する理解を深めることが
分布に収束することが期待されます
(中心
ミュレーションを用いて明らかにしている
出来ると期待されます。そのためには、観
極限定理)。
しかしながら、
3次元空間中に
ところです。
しかも、時間的に変化する相
測量のガウス分布への収束を期待する統
べき的な相互作用を引き起こす揺らぎの
互作用源の動力学も取り込めると考えて
計学の基礎的定理(中心極限定理)
を踏ま
源が乱雑に分散している場合、新しい極限
おり、今後の研究の進展を楽しみにしてい
えつつ、熱平衡の範疇には収まらない系の
分布の特性関数(分布関数のフーリエ変
ます。
揺らぎを定量的に記述する新たな理論的
換)の解析的な表現は、
枠組みが必要です。我々は現在下記のコ
ンセプトに基づいてこれを構築しています。
*1F2(α;β, γ; z)は超幾何関数を表す。
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