お盆を中心とした夏期休業期間中やゴールデンウイーク・シルバーウイーク、年 末年始等には、操業を停止した製造工場等において設備の新設や更新工事を実施す る機会が多くなりますが、作業日程が限られた中での慌ただしい工事となることも あり、労働災害も発生しやすくなります。 特に製造工場における設備工事等では有機溶剤等の化学物質や硫化水素・一酸化 炭素等による中毒事故や、感電事故等も発生していることから、各職場においては、 労働災害防止対策の徹底・再確認をお願いします。 ①「発注者」と「施工者」間での情報共有は念入りに ㋐工事対象の設備はどういった物なのか、㋑付近の配管やタンク等には有害物質が入っていないか、 ㋒その場所における作業方法は適切なものであるか等、工事開始前までに、発注者(製造工場)側担当 者と施工者(設備工事業者)側担当者の間で、十分な打ち合わせをしておくように心がけましょう。 特に、工事開始以降に発覚した不明な点について、施工者が発注者に確認したくても、発注者側担当 者が休暇中であったため確認が取れず、施工者の勝手な判断で作業を継続した結果、事故が発生したと いうケースもあります。 ●災害事例 1 X 工場内の配管取替工事を行っていた設備工事業者 Y の 労働者 Z が、作業のために足をかけたタンクの蓋を踏み抜 き、タンク内に落下。タンク内の酸性物質を含んだ廃液を 全身に浴び薬傷を負った。 ⇒取替対象である配管の直下にあるタンク内に酸性物質を 含んだ廃液が貯蔵されていること、タンクの蓋が人の体重 に耐えうるほどの強度を有していないこと等について、発 注者と施工者間での事前確認が不足していたこと。 ●災害事例 2 A 工場内で配管取替工事を行っていた設備工事業者 B の 労働者 C と D が、取り外した配管を移動させようとしたと ころ、別の配管に接触し、接触した配管が破損、内容物が 吹き出し、労働者 D が薬傷を負った。 ⇒発注者と施工者間で、作業計画の事前確認・打ち合わせが 不足していたこと。 ②施工方法は適切か? 発注者の要望に沿った作業を行うことはもちろんですが、その作業計画が「作業安全」「労働衛生」 の観点から問題のないものであるか、発注者・施工者両者による事前チェックが重要です。 ●災害事例 3 U 複合商業施設の売り場の一部改修工事において、粉じん 等を他の売り場に飛散させないようにとの発注者からの指示 をうけ、建築工事業者 V が作業エリアをビニールシートで養 生し解体機械を使用したところ、労働者 W が一酸化炭素中毒 となった。 ⇒狭隘で換気不十分な作業空間で排ガスが発生する解体機械を使用したこと。 発注者の要望する工期が短く、作業能力が小さい電気式の解体機械が使用できなかったこと。 ③「施工者」どうしの間でも、作業連絡が必要 作業のためにやむを得ず危険な状態(一時的に開口部を設ける、手すりをはずす、機械のカバーをは ずす等)や有害な状態(有害ガスを発生させる、十分な換気が行えない場所において内燃機関を備えた 装置を使用する等)を設ける場合は、発注者はもちろんのこと、その周辺で作業する別の施工者にも危 険・有害作業に関する情報を提供してください。 また、作業が終わって設備を復旧する場合(配管内に薬液を再注入させる、停電させていた回路を通 電する等)にも同様の措置を講じてください。 ●災害事例 4 F 工場内において、設備工事業者 G の作業員が作業通路直 下に存在する地下配電室の保守点検作業を行っていたところ、 付近で別の作業を行っていた設備工事業者 H の労働者 I が、 点検口が空いていることに気付かずに通りかかり、地下室に 3 メートル墜落し、負傷した。 ⇒作業通路直下の地下室で作業することを他の設備工事業者 に周知していなかったこと。 開口部の周辺に墜落防止柵を設ける、注意標識を設置する等の対策を講じていなかったこと。 ●災害事例 5 Q 工場内において、化学設備の更新工事を行っていた設備 工事業者 R の作業員が、作業が終了したため、一時使用停止 していた配管に薬液を再注入したところ、配管の接続が不十 分であった箇所から塩素ガスが発生し、付近で別の作業をし ていた設備工事業者 S の労働者 T がばく露した。 ⇒配管に薬液を再注入することを他の設備工事業者に周知していなかったこと。 配管に薬液を再注入し不具合が無いことを確認できるまでの間、その周辺における作業を中止さ せなかったこと。
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