日本の工業專用地域面積の変動状況

リサーチ・メモ
日本の工業專用地域面積の変動状況
2016 年 8 月 1 日
市街化区域では 12 の用途地域を必ず定めなければならない。工業專用地域は、專ら工業の利便の増進
を図るための地域であり、典型的には、重化学工業等の大規模工場の專用立地を図るゾーンである。臨
界部の港湾ゾーンや内陸部の中核工業団地などに指定例が多い。このエリアでは、住民の生活の安全を
確保するため、住宅や飲食店、物販填補の建築が禁止される。このため工場以外では、診療所、風呂屋、
倉庫、事務所などが認められるのみである。日本の全用途地域(市街化区域外を含む。
)中、約 8%を占
める。
日本経済の低迷、新興国の工業化により、国内の素材型・量産型の大規模工業団地造成の時代はすで
に終焉していることに加え、工業專用地域での厳しい用途制限から、工業専用地域では相対的に大きな
地価の下落が進行し、境界的なエリアでは部分的に工業地域や準工業地域に用途変更が進んでいるとみ
られる。
他方、近年においても、高速道路の開通等により、北東北、北関東、東海地域で一定程度の工業団地
の造成が進んでおり、工業専用地域の指定もそれに見合う形で相応の増加がみられている。
ここ 5 年の全国のストックベースの工業専用地域面積を追ってみると下表のようになる。平成 20 年代
前後にストックの減少する時期があったが、平成 20 年代に入ると、年による変動が大きいものの、基調
としては増加の方向である。
(図表1)
工業專用面積(全国)の増減状況(ha,%)
①工業專用面積(ha)
②用途地域面積(ha)
③=①/②(%)
19 年度末
147,115
1,847,377
7.97
20 年度末
145,903(▲1,212)
1,848,519
7.90
21 年度末
145,845(▲58)
1,850,050
7.89
22 年度末
146,665(820)
1,851,647
7.92
23 年度末
147,217(552)
1,854,509
7.93
24 年度末
147,233(15)
1,857,210
7.93
25 年度末
147,517(285)
1,859,279
7.93
(注)1.都市計画協会「都市計画年報」による
2.( )内は前年に対する工業專用地域の増減面積
一般財団法人 土地総合研究所
1
(図表2)工業専用地域面積の年間増減面積と工業專用地域面積の全用途地域面積に占める割合
(ha)
(%)
1000
7.98
7.96
500
7.94
0
7.92
7.9
-500
7.88
-1000
7.86
-1500
7.84
19~20年度 20~21年度 21~22年度 22~23年度 23~24年度 24~25年度
工業專用地域面積の全用途地域面積に占める割合(%)
工業専用地域面積の年間増減(ha)
(注)都市計画協会「都市計画年報」による
最新時点の 26 年 3 月末現在の全用途地域に占める工業專用地域面積の割合は8%に過ぎない。用途地域中、
最もウエイトが高いのが準住居地域、次いで第一種低層住居專用地域であり、それぞれが約 2 割を占め、第一
種中高層住居専用地域、準工業地域が約1割づつを占める。工業專用地域面積の絶対値が大きい 10 都道府県
は以下のとおりであり、北海道を別格として、大型港湾、東三河湾を持つ愛知県、鹿島港を抱えるが茨城県の
面積が大きい。茨城県は全用途地域面積の 2 割近くをが工業專用地域が占めるという特異な状況にある。
(図表3)
全用途地域面積に占める 12 用途地域の内訳割合
第一種低層住居専用地域
7.9%
第二種低層住居専用地域
18.3%
5.7%
0.9%
10.9%
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
13.9%
4.0%
近隣商業地域
4.1%
1.5%
準住居地域
商業地域
5.4%
4.7%
準工業地域
工業地域
22.8%
工業専用地域
(注)都市計画協会「都市計画年報」による
一般財団法人 土地総合研究所
2
(図表4)工業專用地域面積(都道府県)の多い都道府県とそのシェア
都道府県
工業專用地域面積
都道府県内の用途地域面積
(ha)
に占める割合(%)
北海道
18,510
13.5
愛知
11,382
10.1
茨城
10,079
17.4
千葉
8,528
10.2
福岡
6,892
8.8
神奈川
6,636
6.9
兵庫
6,506
8.8
栃木
4,761
12.4
山口
4,284
10.9
岡山
3,888
11.4
(注)都市計画協会「都市計画年報」による。平成 26 年 3 月 31 日現在。
平成 20 年から平成 26 年(いずれも 3 月 31 日現在)までの工業專用地域面積の増加率について、都道
府県別の寄与度(合計 100%)で見ると、むつ小川原開発計画の変更に伴い、1000ha 規模の大きな工業
專用地域の用途変更を行ったという特殊要因を持つ青森県を除いた数値でみると、最も増加寄与度が大
きいのが愛知県、次いで群馬県、茨城健、三重県となっており、東海、北関東など、港湾又は高速道路
に地の利を持つポテンシャルの大きい各県が工業専用地域面積の増加に寄与していることがわかる。他
方、南関東、関西圏、四国、九州ではこの間に大きな動きが見られない。
(図表5)工業專用地域面積の増減の都道府県別寄与度
30.0%
25.2%
25.0%
20.0%
15.4%
15.0%
12.7%
10.2%
10.0%
6.2%
6.6%
8.2%
7.6%
6.0%
0.0%
-5.0%
-10.0%
北海道
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
山梨県
長野県
新潟県
富山県
石川県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
福井県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
5.0%
-9.1%
(荒井 俊行)
一般財団法人 土地総合研究所
3