ルーペで開ける 新しい世界

私流 二子山の歩き方
広報ずし● 2016.8
ルーペで開ける 新しい世界
案内人
野村美佐さん(桜山)
(右)福留晴子さん(池子)
(左)
(野村さん)山で静かに過ごす時間をこよ
なく愛する。八ヶ岳などの山岳地帯から
身近な里山まで、
山の魅力を伝える写真
展を鎌倉で開催。
(福留さん)森林インストラクター。公園勤
務の傍ら、
野山の草木で染色し帽子を編
む。
「そんな、
身近な自然とつながる暮らし
を楽しむ人の輪が広がっていくと嬉しい」
「いつもあっという間に時間が過ぎ
ちゃうんです」スタート地点から2人は
なかなか動きません。後ろ足に花粉球
を付けたミツバチ。性別が変わるオオ
バコの花。縄文人も衣服の材料に使っ
たカラムシ。2人の興味はつきません。
2人は地元の山で過ごす時間が大好
きな山友達。野村美佐さんは登山と写
真が趣味。写真は展覧会を開くほどの
腕前です。トレーニングがてら二子山
を歩いているうちに身近な自然の豊か
さに気づき、自然観察の魅力にはまり
ました。福留晴子さんは、緑地コンサ
ルタントを経て現在は公園に勤務。身
見慣れていた植物の新しい姿に
感動
2人の山歩きはとてもマニアック。
野村さんはいつもルーペを持ち歩い
ています。足元の葉や花、コケ、樹皮、
気になったものをルーペでのぞきま
す。葉脈の繊細な美しさ、雄しべ雌
しべ・花のパーツの造形の面白さ、
近な植物による草木染めの指導に当た
ることもあります。
拡大して初めて気づくコケたちの小
さな世界。のぞくたびに目を奪われ
とう が
よう
ます。中でもお気に入りは冬 芽 と葉
こん
とう が
痕。冬 芽 は春に成長して葉や花にな
よう こん
る芽、葉 痕 は枝から葉が落ちた痕で
とう が
す。植物ごとに個性を持つ冬 芽 の姿
よう こん
には愛着を覚えますし、葉 痕 の動物
の顔のようなユーモラスな姿にはク
スっとします。
落ちているイヌビワの実を拾い、
ナイフで割ってルーペでのぞきます。
中には白い小さな花が並んでいて、
ここに住むイヌビワコバチを探しま
す。このハチは体長1 ~ 2mmの小さ
なハチで、その名のとおりイヌビワ
だけを食し、オスはイヌビワの中で
表紙の写真
これは絶対持ちましょう
これがあると
もっと楽しい
一生を過ごします。イヌビワはこの
ハチによってのみ受粉・結実します。
互 いがいなくては 生 きていけない 運
命共同体です。
水
日差しからだけでな 傷を洗うことも
くけがからも頭を守 できるので水が
お勧め。夏場は
ります
特に多めに
地図
4
ルーペ 初心者は虫めがね
でも大丈夫
スマートフォンやタブレットで地図を見るのは
危険です。この辺りは電波が届かない場所も
あり、
地図を見られるなくなることも。必ず紙
で持って行きましょう。地図は緑政課で配布
しているほか、
二子山山系自然保護協議会の
ホームページからダウンロードできます。
二子山の展望台。冬の晴れた
日にはスカイツリーまで見晴
らせます。
こんなに
楽しい
スギゴケ
ネジバナ
ムラサキシキブ
ムラサキシキブ
(花)
「こんなところにネジバナが咲いて
いる!」いつ、どこで、どんな植物が
あるのかを分かっている2人には、山
歩きは発見の連続です。近くにあっ
て何度も行けるからこそ、季節によ
る変化や些細な違いに気づけます。
「山は色々な楽しみ方があります。で
も、本当は何もしなくっていい。目
を閉じて土の匂いを嗅ぐ、木々の葉
ずれの音に耳を傾ける、山にいるこ
とそのものが豊かな時間だと思いま
す」山は訪れた人を豊かにする魅力が
あふれています。
草木染め
植物ハンドブック
拡大した写真はマクロレンズを装着したスマート
フォンで撮りました
山 にいることそのものが 豊 かな
時間
他にもこんな
楽しみが
帽子
くと
ルーペでのぞ
ムラサキシキブ
(つぼみ)
イヌビワ。割ってみると、同じ仲間
のイチジクにそっくり
ユーモラス
な植物たち
化学染料を使わずに植物の葉、茎、根、実な
どを煮出した液で染める草木染め。植物由来
の優しい柔らかな色合いが魅力です。同じ種
類の植物でも、それぞれ含まれている色素が
一定ではないため、
全く同じ色は出せません。
桜の落ち葉を
使 っ て 染 めた
布。 色 を 定 着
させる 媒 染 液
を 変 えること
で、違った色を
出せます。
桜の落ち葉
広報ずし● 2016.8
とう が
ヤツデの冬芽
ようこん
オニグルミの葉痕
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