548 類似業種比準価額を求める場合の類似業種の判定について

平成 28 年 8 月 8 日
No.548
類似業種比準価額を求める場合の類似業種の判定について
取引相場のない株式を評価する場合に類似業種比準価額を用いるときの類似業種の判定について、解説します。
(1)類似業種比準価額
類似業種比準価額とは、評価会社の事業内容が類似する業種目の株価を基として、評価会社と類似業種の 1 株当たりの配
当金額、利益金額及び帳簿価額による純資産価額の割合比を考慮して求めた金額をいいます。
(2)類似業種の判定方法
類似業種比準価額を計算する場合の類似業種の判定については、評価会社の事業が日本標準産業分類のどの分類項目に該当
するかを把握することが必要です。政府統計の総合窓口のホームページにある日本標準産業分類から分類項目を把握すること
ができます。分類項目を把握することができたら、国税庁のホームページの「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価
額計算上の業種目との対比表」を参考のうえ類似業種比準価額計算上の業種目を判定します。
(政府統計の総合窓口の日本標準産業分類の分類項目)
(日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表)
(3)業種を判定する上での注意
医療法人は、医療法上剰余金の配当が禁止されているなど、会社法上の会社とは異なる特色を有しています。
このような医療法人の出資を類似業種比準方式により評価するとした場合、類似する業種が見当たらないことから、類似業
種を「その他の産業」として評価することになりますが、
「医療,福祉」に間違われることがあります。
類似業種を間違えた場合の株価の違いを以下の設例で確認することとします。
【設例】
①課税時期 平成 28 年 4 月
②会社規模区分 大会社
③評価会社の 1 株当たりの資本金等の額 500 円
④比準要素等
類似業種比準価額を計算する場合の、
「評価会社」及び類似業種の「その他の産業」
、
「医療,福祉」の 1 株当たりの各比
準要素は以下のとおりとします。
類似業種の株価
年配当金額
年利益金額
純資産価額
評価会社
10
100
医療,福祉
232
2.3
15
125
その他の産業
274
3.8
21
207
⑤「医療,福祉」として類似業種を間違えて判定した場合の 1 株当たりの類似業種比準価額
10 円
100 円
(イ)232 円 ×( 15 円 ×3+125 円 )÷(注)4×0.7=112.0 円
(ロ)
(イ)× 500 円 =1,120 円
50 円
⑥「その他の産業」として類似業種を正しく判定した場合の 1 株当たりの類似業種比準価額
10 円
100 円
)÷(注)4×0.7=90.1 円
(イ)274 円 ×( 21 円×3+
(ロ)
(イ)×
207 円
500 円
50 円 =901 円
(注)医療法人に対する出資を類似業種比準方式で評価する場合、医療法人については医療法第 54 条の規定により剰余金
の配当が禁止されていることから、1 株当たりの年配当金額はないこととなり、比準要素数は「4」となります。
1 株当たりの年配当金額を 0 円として比準要素数を
「5」
として計算する間違いを多く見掛けるため注意が必要です。
上記のように類似業種を間違えてしまうと株価に大きく影響を与えてしまうため、評価会社の類似業種をしっかり把握するこ
とが重要です。
(担当:田中 裕史)