事業創出活動 4

4.事業創出活動
事業創出活動
4
❏産業振興分野
滋賀大学経営者セミナー “ 海外展開を目指す ”
~ 国内外の「海外展開を目指す」支援プログラムを紹介 ~
国内市場の縮小や TPP による海外商品の輸入増加が見込まれる中で、国内市場をターゲットにしていた
中小企業が海外に目を向けつつある。しかし、中小企業にとって海外事業の展開は国内と違う商習慣の中で
販路開拓や貿易に関する人材育成などハードルが高いと言える。しかも、海外に販路を開拓するまでには展
示会費用など様々な費用と時間がかかる。
国の海外への事業を支援する補助金や支援プログラムは、年度初めに募集時期が集中していることから、
事前にどの補助金が何に使えるかを知っていないと申請するチャンスを逃すことにもなる。
準備段階から支援プログラムについての知識を得るために、モノづくりから農産加工品まで幅広い業種の
中小企業向けに、海外に販路を求める時に使える国の支援プログラムの説明と事例を紹介すると共に、進出
する国にも様々な支援プログラムがあるため、今回は、香港貿易発展局大阪事務所(Hong Kong Trade
Development Council)と 大阪の英国総領事館 貿易・対英投資部(UK Trade and Investment Japan)から
日本企業に対しての支援プログラムも合わせて紹介した。
■開催日
2015 年 6 月 11 日(木)、7 月 9 日(木)、8 月 6 日(木)、9 月 10 日(木)
■会
滋賀大学大津サテライトプラザ(JR 大津駅前
場
日本生命大津ビル4階)
■内 容
・ 経済産業省の海外展開支援
・ 中小企業基盤整備機構の具体的な海外展開支援
・ 香港貿易発展局の香港進出のための支援
・
UK Trade and Investment Japan の英国進出のための支援
① 2015 年 6 月 11 日(参加者
36 名)
「企業の海外展開支援の取組(ベトナム)
」
近畿経済産業局通商部部長
浅井
亨
氏
「一帯一路」“One Best,One Road”
通商部国際事業課長
小橋
厚司
氏
初回は、日本の海外事業の展開支援について、近畿経済産業局通商部部長 浅井亨氏より「企業の海外展開
支援の取組」の講演があり、国際事業課長 小橋厚司氏からは具体的な支援プログラムと事例が紹介された。
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② 2015 年 7 月 9 日 (参加者 17 名)
「アジアのビジネスセンター ~香港を活用した海外展開」
香港貿易発展局大阪事務所長
伊東
正裕
氏
香港は、関税のない製品が多く日本との距離も近いことか
ら、初めて海外に販路を求める企業にとってはハードルが低
いと言える。
香港貿易発展局は、30 以上の国際展示会を毎年開催し、日
本からの出展企業も多いことから、伊東正裕所長に香港貿易
発展局の支援プログラムや支援事例を紹介していただいた。
*香港貿易発展局は、東京・大阪に事務所があり、日本企業
との貿易促進や、香港を経由した中国。アジアでのビジネス
の拡大に努めている。
③ 2015 年 8 月 6 日
(参加者
18 名)
「中小企業の海外展開支援について ~中小機構の事業を中心に~」
中小企業基盤整備機構近畿本部長(現在、中小企業基盤整備機構理事)小淵
良男
氏
「タケックス・ラボの海外展開事例」
株式会社タケックス・ラボ
小淵
良男 氏
代表取締役社長
岡田
久幸
氏
岡田
久幸
氏
中小企業の活性化のためには域外への販路拡大が必要で、中小企業の 40%以上は海外展開について
関心がある。独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿本部では、中小企業・小規模事業者を対象にした、
海外事業計画の策定や市場可能性調査(F/S 調査)、さらには海外販路を拡大するための Web サイトの外
国語化支援などを幅広く支援している。今回は幅広い支援プログラムの説明と支援を受けた株式会社タ
ケックス・ラボ代表取締役社長
岡田久幸氏から支援を受けるための準備・進め方について話があった。
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③ 2015 年 9 月 10 日 参加者数 21 名
「ロンドンでお好み焼き屋
ほんまに儲かりまっか」
ABENO HUB 代表
ジョナサン・ブラウン 氏
「英国での支援プログラムのご紹介」
英国総領事館
対英投資担当官
山村
文恵
氏
ジョナサン・ブラウン氏は、英国の大学で日本語を専攻、名
古屋に留学した際に、
「お好み焼き」と出会い、目の前の鉄板
で焼くスタイルに感動したことが切っ掛けで、英国でお好み焼
き屋さんを開業した。
本格的なお好み焼き屋を作るために、厚手の鉄板を日本で作
るなどの準備をして、1993 年ロンドンの大英博物館の近くに、
最初の店、
「ABENO」をオープン。ヨーロッパに受け入れ
ジョナサン・ブラウン
氏
られるために、ベジタリアンには豆腐とホウレンソウ、イスラ
ム教徒には鶏肉などの具材の提供や「お好み焼き」をフルコー
スするなどの工夫をして人気店になった。2004 年には 2 店舗
目の「ABENOTOO」を、昨年 2 月には、粉物の本場の大阪に
「ABENOHUB」をオープンした。
今回の講演では、ミシュランにも取り上げられるまでになっ
た 20 年余りの取組みから、和食を世界にどう紹介するかを具
体的に紹介いただいた。
駐日英国大使館・総領事館の貿易・対英投資部は英国と日本
山村 文恵
氏
企業のビジネス交流促進のため、トレードミッション、展示会
への出展、セミナー等を様々な活動を行っている。
今回は、山村文恵氏より、日本企業の対英投資のための各種
情報および支援についての紹介があり、その後、英国総領事館
対英投資部のサポートを受け、ロンドンのセレクトショップが
集まるノッテングヒルに、昨年 12 月に和装販売店「WOSOUKAN」
をオープンされた株式会社和想代表取締役 池田訓之氏(鳥取
市)から、支援内容とオープンまで取組みをご紹介いただいた。
池田 訓之
氏
4 回で延 92 人が参加されたが、すでに年度内に海外の展示会出展が決まっている、あるいは市場調査に
行くという企業・組合も少なくなかった。本セミナーに参加した企業からの要望もあり、海外での市場調査、
展示会視察、商談研修を検討することになり、初めて海外に販路を求める中小企業にとってリスクが少なく、
余りコストを掛けない海外展開として、県内の食品関連企業の香港市場に向けたビジネスモデル構築の研究
に取組むことになった。
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滋賀大学経営者セミナー “ 海外展開を目指す ”
~食品関連企業の香港視察・商談研修~
香港は、関税がない品目が多く、食品の輸出条件が少なく、輸送距離が短いことから、海外への事業展開
を始める食品関連の中小企業にとっては取組みやすい国の一つである。このため香港をターゲットにして、
滋賀大学経営者セミナーの参加企業と海外への販路開拓を検討されている食品関連企業に声をかけて、
「食品
関連企業の香港視察・商談研修」を企画し、参加企業を募集することになった。
海外の展示会出展は、出展準備や出展費用が、中小企業にとっては大きな負担となり国や県の海外展示会
補助金を受ける場合が多いが、バイヤーを探すために数年間も展示会に出展する必要がある。
今回の「食品関連企業の香港視察・商談研修」は、比較的リスクが少なく、経費負担を余り掛けず、海外
市場調査と販路を検討するために、参加企業は下の3つのプログラムから選択して、現地集合・現地解散で、
参加出来ることにした。
① 2015 年 11 月 4 日(水)、5 日(木) 現地デパート・スーパー等の視察
② 2015 年 11 月 5 日(木) 香港国際ワイン&スピリッツフェア視察
③ 2015 年 11 月 6 日(金) 香港バイヤーとの商談、現地コンサルタント相談会
① 現地デパート・スーパー等の視察
イオン香港の他、事前に調査した地元スーパー「TASTE」「WELLCOME」
「City Super」、百貨店の「そごう」
などの食品売場を中心に、販売商品、販売価格、販売方法などの市場調査を行った。
②
香港国際ワイン&スピリッツフェア視察
展示会名:The eighth
会場
Hong Kong International Wine & Spirits Fair
会期:11 月 5 日~7 日
:香港国際コンベンション&エキシビジョン・センター
展示企業 1,060 社(32 ヵ国)、バイヤー20,000 人( 75 ヵ国)が集まる国際展示会である。ジェトロがジャパ
ンパビリオンを出展して4回目となり、やや規模は縮小していると言う声もあったが、独自で出店している
中小企業や契約している現地バイヤーとの共同出展など日本企業の出展ブースは他国に比べても多い。
ジェトロパビリオン
日本の企業をサポートするブース
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③
滋賀大学香港食品商談会
◆
開催日時
◆
会
2015 年 11 月 6 日(金) 13:00~17:00
場
香港日本人倶楽部 菊の間 香港銅鑼湾怡和街 68 號 18 樓
◆ プログラム
第一部
プレゼンテーション 8 社の商品を紹介( 内 4 社の商品は滋賀大学が紹介 )
紹介商品/日本酒、米、丹波黒大豆、鮒ずし、鮎のオイル缶、焼酎
第二部 個別商談会
香港側バイヤーなど 7 社商談
第三部 セミナー
「香港への食品輸出と飲食業の進出について」 香港 BS CFO 鴫谷 賢二 氏
企業の商品プレゼンテーション
バイヤーとの試飲・試食 交流会
プレゼンテーション会場
バイヤー・参加企業との交流会
2015 年 11 月 7 日
最終日には、香港で日本食材などを輸入する田村貿易有限公司田村千秋社長から、香港の食品市場、輸出
についてお話をいただき、その後、参加企業との意見交換を行った。
中央が、田村貿易有限公司 田村千秋社長
今回の香港視察・商談研修は、京都銀行香港駐在員事務所所長 藏田雅喜氏に商談会場の選定や日系スーパ
ーの紹介、市場調査などに協力をいただき、また、Cathay Pacific Catering Services 和食料理長 森静昭氏には、
田村貿易有限公司 田村千秋社長の紹介と会社への訪問に同行いただいた。本学経済学部 4 年王丹さん・大学
院博士後期 2 年張艶紅さんの中国人留学生 2 名は、現地バイヤーへの参加依頼のメール発信と交渉を行い、商
談する企業の商品リスト、プレゼンテーションの翻訳、商談会でのプレゼンテーション、個別商談の通訳の他に
も、現地の嗜好調査などを行なった。このように、日本と海外の協力がないと、個々の中小企業が海外に販路を
求めることは大変難しい。来年度については、海外側の協力者を増やす試みを行いたいと考えている。
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滋賀大学経営者セミナー “ 海外展開を目指す ”
~アジア向け日本酒の製造~
滋賀大学経営者セミナー「海外展開を目指す」に参加された蔵元藤居本家(滋賀県)は、アジア向け日本
酒開発に興味を持たれていたために、2015 年 7 月 11 日に本学留学生 10 名が参加し、
同社の日本酒を試飲し、
味やパッケージなど様々な意見を聞いた。
この意見をもとに、9 月 16 日 2 名の留学生がアジアからの訪日観光客を対象に、「中国・香港・台湾などアセアン
周辺国を対象とした日本酒ヒヤリング調査」行い、さらに、同社の海外担当者が「滋賀大学香港食品商談会」にも参
加し、香港で販売されている日本酒の調査を行った。
日本酒は日本人の嗜好に合わせて作られたもので、海外で販売される日本酒も国内商品とほぼ同じである。
しかし、アジアの嗜好は生活習慣、気候、食事などの違いがあるように、日本と同じでなく、ヒヤリング調
査でも、
「日本酒は中国の白酒と比べ薄く感じる」などという意見もあった。
12 月 17 日、アジアの嗜好に出来るだけ近づけた日本酒を造るという蔵元藤居本家に本学留学生 8 名(中
国、台湾、ベトナム)が参加し、七代目蔵元藤居鐵也氏、杜氏西沢拓也氏の指導によってアジア向けの日本
酒の仕込みを行った。
同社の日本酒には、滋賀大学の名前をラベルに入れることになり、出来た日本酒は、3 月に本学卒業式後
の謝恩会で披露され、5 月には海外でもテスト販売される予定である。今後も、試飲による調査を行った上
で、よりアジアの人達に好まれる日本酒作りに協力していく予定である。
七代目蔵元藤居鐵也氏より仕込み
について説明を受け、西沢杜氏ら皆
さんの指導によって、行った日本酒
の仕込みは、留学生にとって日本の
文化も知る貴重な経験となった。
(文責 特任教授 近兼 敏)