スマホ GPS と地図読み

スマホ GPS と地図読み
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『山岳遭難の 4 割が道迷いです』
Android
iPhone
2016 年 7 月 22 日版
■この資料の主な内容
この資料の主な内容
・ GPS、スマートフォン(スマホ)の説明
・ ジオグラフィカ(登山用 GPS アプリ)の使い方
・ 地図読みの基礎知識とコンパスの使い方
・ 道迷い遭難の原因と対策、脱出方法
■GPS の基本的な仕組み
・ GPS はアメリカが運用する衛星測位システムの名前で、
上空 2 万 km を 32 機の衛星が飛んでいます。
・ 4 機の衛星から飛んでくる信号を受信し、それぞれの距離を計測することで現在地を計算します。
・ 衛星からの信号を受信して処理するので、携帯圏外でも使えます。
・ 受信だけなので携帯電波は関係ありません。機内モードでも使えます。
■スマホの
スマホの GPS について
・ 最近のスマホに入っている GPS は高性能です。登山にも十分使えます。
・ 登山用の GPS アプリはダウンロードした地図を本体に保存します→圏外でも使えます。
■GPS 専用機とスマホ、どちらが優れているのか?
ガーミンなどの GPS 専用機と比べてスマホはおもちゃと思われがちです。本当にそうでしょうか?
・ GPS の精度は iPhone6 以降なら非常に正確です。Android の場合、精度は値段と発売時期によりま
す。2014 年以降の機種で 3 万円以上なら登山で使えるレベルです(電子コンパスは必須)。
・ 多くのスマホはアメリカの GPS とロシアの GLONASS に対応しています。みちびき対応はこれか
らですが、2016 年現在は 1 機しか飛んでないので実用上の差はほとんどありません。2019 年になる
と日本向けスマホはみちびきにも対応するでしょう。
・ 画面の大きさ、精細さ、使い勝手はスマホの方が優れています。
・ ガーミンの eTrex30x の画面は 76,800 画素(240x320)ですが、フル HD(1920x1080)のスマホは 207
万画素です。27 倍のピクセル数となります。地図の見え方は雲泥の差となります。
・ バッテリーの保ちについては、
iPhone は plus で 20 時間、
iPhone6、
6s で 12 時間程度ですが Android
なら 24~40 時間近くログの記録を行えます。専用機(25 時間)と遜色ないか陵駕しています。
・ 耐寒、防水などの堅牢性については Android で防水機種なら専用機と遜色ありません。Xperia Z5
Compact は-20°の冷凍庫で 1 時間冷凍しても使えました。iPhone の場合は防水ケースに入れて体
温で保温しながら使いましょう。性質を理解して使えば厳冬期のログ記録も可能です。
・ スマホはリチウムイオン電池を使っているので冬季も使用可能です(稼働時間は多少短くなります)。
eTrex30x の基本稼働時間は 25 時間で、厳冬期にアルカリ電池は 7 割減(7 時間半)、エネループなど
で 3 割減(17 時間半)となります。25 時間使うには 2 本 500 円のリチウム乾電池(使い捨て)が必要に
なります。バッテリー消費についても専用機に優位性はありません。
・ 専用機は大きな物理ボタンがあり、冬用手袋でも使いやすいです。スマホの場合はタッチペンを使え
ば厳冬期でも使えます。または、鼻でボタンを押すという人もいます。
・ GPS 専用機は単三乾電池で動かすために低スペックのハードウェアが使われています。スマホの方
が高性能、高スペックです。消費電力は大きいですがバッテリーも大容量です。
・ 実は eTrex30x は海外では$240 程度で、格安スマホと変わりません。部品原価から見ればスマホの
方が高価な部品で作られています。そしてスマホは今後も進化していくでしょう。
1
・ 天気予報や情報収集など、スマホなら様々な用途に使えます。
結論:現在のスマホは非常に優秀。
結論:現在のスマホは非常に優秀。機種を選べば専用機と遜色ない、またはそれ以上の働きをします。
現在のスマホは非常に優秀。機種を選べば専用機と遜色ない、またはそれ以上の働きをします。
■スマホの特性と
■スマホの特性と機種選びのポイント
特性と機種選びのポイント
・ GPS 精度は iPhone6 以降が非常に優れています。→6 以降は気圧計で高度を補正している
・ 防水がいいなら Android 端末の防水モデルを選びましょう。→登山には防水が便利
・ 耐寒性能は Android 端末の方が優れています。→機種によるが厳冬期でも使えます(-20℃程度まで)
・ トラックログ記録時の稼働時間は、iPhone5,5s,SE が 10 時間程度、6,6s が 12 時間程度、plus シリ
ーズが 20 時間程度です(いずれも機内モードで使った場合)。Android はバッテリー容量が同じなら
iPhone の 2 倍使用でき、24~40 時間程度使えます。
・ 画面は 5 インチ前後、5.2 インチまでがよいでしょう。大きすぎるとポケットに入りません。
・ GPS 精度や普段の使い勝手は iPhone が優れています。耐環境性は Android が優れています。
・ Android なら 2014 年以降で 3 万円以上、Android5.1 以上の機種にしてください。
・ おすすめしない Android 端末は、らくらくホン(アプリのインストール不可)、電子コンパスが無い機
種、GPS 精度が低い機種(2013 年以前の古い機種、値段が 2 万円未満、ASUS のスマホなど)です。
■ジオグラフィカ(
ジオグラフィカ(登山用 GPS アプリ オフライン対応)
オフライン対応)
この資料では、スマホの GPS アプリとして『ジオグラフィカ』の使用を推奨しています。表紙の QR
コードを読むか、下記手順で検索してインストールしてください。
Android 版(Android OS4.0 以降) Google アカウントが必要
1.GooglePlay アプリ、または Play ストアアプリを起動
2.『ジオグラフィカ』で検索してインストール(無料)
iPhone 版(iOS7.1 以降)
以降) AppleID が必要
1.AppStore アプリを起動
2.『ジオグラフィカ』で検索してインストール(無料)
無料状態では一部機能に制限があります。制限を解除するにはアプリ内課金が必要です。無料でも基本
機能は使えますが、気に入ったら買っていただけると開発を継続できます m(_ _)m。
■なぜ携帯圏外
■なぜ携帯圏外で
携帯圏外でも使えるの
使えるのか?
・ ジオグラフィカは『キャッシュ型オフライン GPS アプリ』です。
・ 画面に表示した地図はアプリ内に保存(キャッシュ)され、以後は保存された地図を表示します。
・ 山に行く前に必要な地図を見ておけば地図の準備は完了です。
・ ただし、
『画面に表示した地図』しか保存されないので登山道に沿った詳細地図と、山域全体を見ら
れるような広域地図の両方を確認してください。
・ GPS 自体は空が見えていればどこでも使えます。もちろん携帯圏外の山奥でも海の真ん中でも使え
ますが、携帯圏外では A-GPS(ネット接続が必要)を使えないので、
測位に時間が掛かる事があります。
屋外なら 3 分ほど待てば測位出来るので、しばらく待ってください(その間に靴紐を結びましょう)。
2
■ジオグラフィカで出来る事
・ 携帯圏外の山奥でも海の真ん中でも現在地が判ります。
・ 日本国内なら国土地理院の地形図が使えます(海外の場合は OpenCycleMap など)。
・ 表示されるのは 1/25000 地形図なので地図読みの練習に使えます。
・ 地図をキャッシュしておけば携帯圏外でも地図のどこにいるのか判ります。
・ 歩いた軌跡(トラックログ)を記録出来ます。軌跡をパソコンや友達のスマホに送れます。
・ 設定した地点(マーカー)までの距離や標高差、方位、予想時間が簡単に判ります。
・ マーカーの方位角が判るので、コンパスを使った読図の答え合わせが出来ます。
・ マーカーを繋いで『ルート』を作れます。ルートによる自動ナビゲーション機能があります。
・ 任意の場所の距離や高度差、斜面の角度を計測する事が出来ます。
・ 目指す地点までの情報を声で案内してくれます。スマホを振ると喋る機能もあります。1 時間ごとの
時報や、100m ごとの高度など情報を喋るなど、音声機能が充実しています。
登山のナビゲーションに必要な機能は一通り持っています。他にも機能は色々あります。
地図にマーカーを登録して目指す事が出来ます。
マーカーまでの距離や高度差、方位角も判ります。
事前に取り込んだトラック(赤い線)を目安に
して歩けます。自分が歩いた軌跡も残せます。
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■ジオグラフィカの基本的な使い方
ジオグラフィカの基本的な使い方
■メイン画面
■メイン画面
インストールして起動すると、富士山の地図が表示されます。
現在地追尾ボタンを押すと現在地を表示します。
センターマーク
画面中央の+マークをセンターマークと呼びます。
『マーカー
追加』などで使います。
メニューボタン
メニューボタン
左上のメニューボタンを押すと各種機能、データにアクセス
出来ます。長押しするとよく使われる機能が表示されます。
画面クリア
ボタンや座標表示を消します。2 回押すと元に戻ります。
GPS 測位開始
測位開始
GPS を有効にして測位します。GPS 作動中は緑になります。
現在地には赤い自位置カーソルが表示されます。
現在地追尾
緑の時は現在地を画面の中央に固定します(センターロック)。現在地以外を見たい場合はもう一度押して
黄色にしてください。黄色の時は自由にスクロール出来ます。
マーカー追加(地点登録)
マーカー追加(地点登録)
センターマークの位置にマーカー(地点)を打てます。
トラックログ開始
トラックログ開始(軌跡の記録)
開始(軌跡の記録)
トラックログ(GPS ログ)の記録を開始します。緑=記録中。記録中はタップするとコントロールパネル
が表示されます。コントロールパネル左下の停止ボタン
を押すと停止します。
ルート案内
自分で作ったルートを使ってルート案内の機能を使えます。案内中は緑になります。
■座標表示
画面上部には現在地の高度、座標、コンパス、速度が表示されます。この部分を長押しすると、現在地
の情報をツイッターや facebook に投稿出来ます。クリップボードにコピー出来るので、メールに貼り付
けて送れば救助要請の時に現在地を正確に伝えられます。
また、座標表示の部分をスライドさせると検索窓が出てくるので、山名や住所で検索すれば地図をキャ
ッシュするときに便利です(山名で出ない場合は地域の名前や近くの有名な山名で検索)
。
4
■マーカー(地点登録)
■マーカー(地点登録)の使い方
(地点登録)の使い方
マーカー=『地点、POI、ウェイポイント』です。好きな地点に登録出来ます。
用途:休憩所、分岐、水場、山小屋、山頂、山菜の場所、釣りのポイントなどを登録して、
そこを目指す。
■追加方法
1.マーカーを追加したい地点にセンターマーク
を合わせる。
2.地図画面の右にあるツールボタン下から 3 番
目のマーカー追加ボタン
を押す。
3.ネットに繋がっていれば高度と地名が自動で
入る。変更も可能。
4.アイコンは 42 種類から選べる。
5.左下の
の
ボタンを押すと保存されます。右下
ボタンを押すと保存されません。
■マーカーのロックオン
地図に表示されたマーカーをロックオンすると、現
在地矢印とマーカーが線で結ばれて、画面上部に距
離などが表示されます。
1.地図に表示されているマーカーを長押し→メニューが表示される
2.メニューの『ロックオン』をタップ。
ロックオン中は座標表示の下に『マーカー
情報バー』が表示され、距離、高度差、予
想時間が判ります。
距離は高度も加味した直線距離です(水平
距離と高度差による斜距離)。およそ 30%
増しすると道なりの距離になるので、直線
で 2km の場合は道なり 2.6km くらいになります。時間は距離や斜度から計算した推定値です。
マーカー情報バーをタップするとマーカーの位置にジャンプします。
■ロックオンの解除方法
1.ロックオンしたときと同じ様にマーカーを長押し。
2.メニューの『ロック解除』をタップ。
ロックオンの解除を忘れると、いつまでも現在地とマーカーが線で繋がって邪魔なので使い終わったら
解除して下さい。
5
■マーカー(目指す地点)
マーカー(目指す地点)の
(目指す地点)の方位を知る
方法1.
方法1.自位置カーソルの向きをロックオンの線に合わせるとスマホの先に実際のマーカーがある。
1.
左の画像では、地図はノースアップ(北が上)で、
自位置カーソル
は東北東を向いています。
この時、スマホの上端も東北東を向いていること
になり、上端の先に目指すマーカーがあります。
画面上の自位置カーソルは、自分が向いている方
角を指します。
ちなみに、画面右上にあるコンパスは真北を指し
ます。磁北偏差は補正されています。下記のコン
パスにセットする方位角も磁北偏差補正済みの値
です。
方法2
方法2.マーカーをタップすると磁方位が表示される。コンパスにセットして磁針とノースマークを合
わせると、進行線の先にマーカーがある(下の写真は磁方位 87°をコンパスにセットした例)。
6
■トラックログ(歩いた軌跡、
■トラックログ(歩いた軌跡、GPS
(歩いた軌跡、GPS ログ)の使い方
ログ)の使い方
自分が歩いた軌跡を記録したり、記録したログを地図に表示したり、誰かが記録したト
ラックをアプリに取り込んで表示したり出来ます。
トラックログの記録開始と停止は、メニューボタン長押しで出るスマートメニューから
も可能です。
■トラックログを開始する
1.地図画面右のツールボタン、下から 2 番目のトラックログ開始ボタン
2.トラック名を設定して
を押す。
ボタンを押す。トラックログ開始ボタンが緑色になります。
■トラックログを停止する
1.トラックログ開始ボタンが緑色の時に押すとコントロールパネルが開く。
2.コントロールパネルの左下にある停止ボタン
を押すと停止する。
※ トラックログの記録中は、スリープ中もバッテリーを消費します。機内モードで使うとバッテリー消
費を抑えられますが、1 日の行動が終わったら忘れずに停止してください。
※ ログを記録すると記録音が鳴ります。デフォルトは小鳥の声で、設定で変更出来ます。
※ 他のアプリがメモリを大量消費するとジオグラフィカが強制終了させられる事があります。カメラ撮
影などをした後はジオグラフィカが動いていることを確認してください(iPhone の場合は特に)。
■トラックログを表示する
[メニュー]-[ファイル]-[トラック]にトラックが保存されています。
ボタンを押して『表示してジャン
プ』を選ぶと地図画面に表示されます。地図上のトラックを長押しするとメニューが出るので、そこか
ら『非表示』を選ぶと非表示になります。
■ヤマレコから
ヤマレコからトラックログをインポートする
からトラックログをインポートする
1.スマホのブラウザでヤマレコを開く。
2.インポートしたい山行レポートを探す。
3.GPS ログ(GPX)ボタンを押す。
4.GPX ファイルをダウンロードしてジオグラフィカで開く。
※インポートしたトラックは[メニュー]-[ファイル]-[トラック]に保存さ
れます。名前が空白の場合は
を押して詳細を開いて入力してくださ
い。
■トラックログをエクスポートする(
トラックログをエクスポートする(パソコンなどに保存する)
パソコンなどに保存する)
1.[メニュー]-[ファイル]-[トラック]でトラック一覧を表示。
2.エクスポートしたいトラックをタップしてチェックマークを付ける。
3.画面下にある大きなチェックマークボタン
を押して、GPX エクスポートをタップする。
4.Dropbox や Google ドライブに保存すればパソコンと同期出来ます。
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■ルートの使い方
ルートの使い方
ルートとは?
『ルート』とは、
『マーカー』(登山口、分岐、休憩場所、山頂、小屋など)を連続して繋げた
もので、マーカーによるナビゲーションを自動化するために使います。マーカーに到着する
と声で教えてくれて、自動で次のマーカーを目指します。最後のマーカー(ゴール)に着くと
自動で動作を停止します。
※ルートとトラックとルートは違うものです
ルートとトラックとルートは違うものです。混同しないようにしてください。
トラックとルートは違うものです。混同しないようにしてください。
『トラック』=道に沿った密度の高い線、軌跡
『トラック』=道に沿った密度の高い線、軌跡
『ルート』=マーカーを繋いだ粗い線
■ルートの作り方
[準備]
準備] 予定コースに登山口、分岐、山頂、休憩場所、ゴールなどのマーカーを打ち込んでおきます。細
予定コースに登山口、分岐、山頂、休憩場所、ゴールなどのマーカーを打ち込んでおきます。細
かく打ちすぎると鬱陶しいです。通常の日帰り山行なら
かく打ちすぎると鬱陶しいです。通常の日帰り山行なら 10 個くらいあれば十分です。
1.[メニュー]-[ツール]-[地図からルート作成]をタップしてください。
2.マーカー作成モードになるので、登山口からゴールまで順番にマーカーをタップしてください(※)。
間違えたらマイナスボタンで 1 つ戻せます。
※ピストンルートの場合は山頂までの片道分を作れ
ば OK です。使うときにピストン案内で動かせば、
山頂に着いたら自動で逆から読み込んでルート案内
を行ないます。
3.ゴールまで出来たら
ボタンを押してくださ
い。↓名前入力画面になります。
4.ルート名を確認して、気に入らなかったら変更してください(デフォルトのルート名は最高地点のマ
ーカー名が自動で設定されます)。
5.
ボタンを押すと保存されます。
保存したルートは[メニュー]-[ファイル]-[ルート]に保存されます。
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■ルート案内の種類
ルート案内
普通にスターからゴールまでのルート案内です。ルートのスタートから順にマーカーを廻って、最後の
マーカーに着くとゴールです。ゴールすればルート案内やトラックログの記録が自動停止します。
逆ルート案内
ゴールからスタートまで、ルート情報を逆に読み込んで案内をします。
『駅→途中いろいろ→山頂』というルートの場合、山頂からスタートして駅をゴールにしたい場合は逆
ルート案内を使います。
日帰りなら後述のピストン案内を使えばいいのですが、山頂近くの小屋で宿泊して次の日下山する場合
は、1 日目に普通のルート案内で山頂をゴールとして、2 日目の下山を逆ルート案内で動作させた方が便
利です(それぞれの日でゴールに着くとトラックの記録などが自動停止するため、止め忘れがない)
。
ピストン案内
ルート案内でゴールすると自動で逆ルート案内を始めます。
『駅→途中いろいろ→山頂』というルートの
場合、山頂に着くと自動で逆に読み込まれ、
『山頂→途中いろいろ→駅』という逆ルート案内が始まりま
す。
■シンプルなルート案内
ルート案内の機能は便利ですが、ルートを作るのはちょっと面倒です。そういう場合は『スタート、山
頂、ゴール』だけのルートを作ると簡単です。細かいチェックポイントがない分時間の計算に誤差が出
ますが手軽に使えます。
または、ルート案内ではなく、マーカーのロックオン機能でもナビゲーションは行えます。これから向
かうマーカーをロックオンして歩き出し(※)、近くに着いたらロックオンを解除、次のマーカーをロック
オンします。
マーカーロックオンの場合、到着のお知らせはありません。人間が判断し、ロック解除と次のロックオ
ンを行ないます。これでも目指しているマーカーまでの情報は分かります。この手順を自動化したのが
ルート案内です。
自分に合う使い方でいろいろやってみてください。
■コラム GPS との距離感
GPS を使うと登山から冒険的要素がなくなる、地図を見ながら現在地を推定するのが楽しいのに、それ
を放棄するなんてもったいないという意見があります。が、それは趣味の問題ですから好きにすればい
いのです。道に迷ってどうしようもなくなった時だけ使うというのもよいでしょう。それぞれの距離感
で GPS を使えば良いと思います。ただ、ほとんどの道迷い遭難は、
「おかしい」と思った時点で GPS を
使って現在地を確認していれば助かったものばかりです。最後の手段として GPS を持つのは道迷い遭難
対策としては有効と考えています。山岳遭難の 4 割は道迷いであるという事について考えてみましょう。
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■ルート案内の開始方法
ルート案内の開始方法
スマートメニューから案内を開始する場合
1.
メニューボタンを長押ししてスマートメニューを出してください。
2.近くにルートがある場合は『ルート[xxxx]を開始』などと表示されます。
3.タップするとルート案内が開始されます。
ルート一覧から案内を開始する場合
ピストン案内や逆ルート案内、遠くにあるルートを開始したい場合はこちらの方法を使います。
1.地図画面右にあるツールボタンの一番下にあるルートボタン
2.開始したいルートの R ボタン
を押してください。
を押してください。
3.ルート案内、逆ルート案内、ピストンルート案内のどれかで開始してください。
※ルート案内中は登録されたマーカーに到着すると音や声で知らせてくれます(
ルート案内中は登録されたマーカーに到着すると音や声で知らせてくれます(挙動は変更可能)
挙動は変更可能)。
※スピーチ設定の『インターバルスピーチ』がオンの場合は一定時間ごとに距離などを教えてくれます。
※『シェイクスピーチ』がオンの時はスマホを振ると
シェイクスピーチ』がオンの時はスマホを振ると声で
スピーチ』がオンの時はスマホを振ると声で教えてくれます(振るときにスマホを落とさ
声で教えてくれます(振るときにスマホを落とさ
ないように注意してください)
。下山時は
。下山時は段差などの
下山時は段差などの衝撃でしゃべってしまうので、うるさいようなら
段差などの衝撃でしゃべってしまうので、うるさいようなら、
衝撃でしゃべってしまうので、うるさいようなら、
設定のスピーチでシェイクスピーチをオフにし
設定のスピーチでシェイクスピーチをオフにしてください
オフにしてください。
てください。
トラックリンク
ルート案内とトラックログを連動させる機能です。ルート案内の
開始と同時にトラックログの記録を開始し、ゴールと連動して停
止します。近くで終わっているトラックログ(例えば前日停止し
たトラックログ)がある場合はそれに追記することも出来ます。
ゴールに着くと
ルートのゴールに着くとルート案内が停止します。ルート設定の
『トラックリンク』がオンになっている場合はトラックログの記
録も自動で停止します(自動停止前に画面を開いてキャンセルす
る事も出来ます)
。
目指すマーカーを変更したい場合
途中を飛ばして次のマーカーを目指すようにしたいときは、目指
すマーカーを切り替えます。地図に表示されたルート内のマーカ
ーアイコンを長押しすると、目指すマーカーを変更出来ます。
もしくは、ツールボタン一番下のルートボタンが緑色
の時に
押すとルートコントロールパネルが表示されます。そこで目指したいマーカーをタップすると切り替え
られます。
ルートコントロールパネルではルート案内を停止することも出来ます(スマートメニューからも停止出
来ます)
。
10
■ファイルメニューの使い方
ファイルメニューの使い方
[メニュー]-[ファイル]を開くと、各種データにアクセス出来ます。
■ファイルの種類
目的に応じて様々なファイルがあります。すべてを一度に理解する必要はありません。通常の使用で重
要なのはマーカー、トラック、ルートくらいです。各ファイルはフォルダでの管理も出来ます。
表示中のファイル
画面に表示したトラックやカスタムマップを一覧できます。余計なトラックなどを表示してい
ると、アプリの起動が遅くなる場合があるので使い終わったら非表示にしましょう。なお、一般設定の
『マーカー自動表示』がオンの場合、マーカーの表示/非表示はジオグラフィカが制御するのでマーカー
については気にしないでください。
トラック
トラックログ(GPS ログ)。道に沿った軌跡。
マーカー
地点の情報。別名 POI、ウェイポイントなど。水場や危険箇所など、色んな地点を登録してお
くと便利です。山菜採りや茸狩り、釣りなどのポイントを入れておくのもよいでしょう。
ルート
マーカーを繋げたナビゲーション用データ。登山口、休憩場所、分岐、山小屋、山頂などに打
ったマーカーを繋げてルートを作ります。各マーカーは直線で結ばれます。
カスタムマップ
カシミール 3D で作った KMZ ファイルをインポートして独自の地図を表示出来ます。特殊な
用途でしか使う事は無いため、ここでは説明しません。詳しくはコチラ
一括キャッシュ
[メニュー]-[ツール]-[一括キャッシュ]で範囲指定をして取り込んだ地図データ。表示キャッシ
ュの様に期限や容量で消える事がありません。
バックアップ
ジオグラフィカのデータを丸ごとバックアップして別の端末にコピー出来ます(※)。バックア
ップ画面を開いて『◎バックアップ』を押すとバックアップファイルが出力されます。Dropbox や Google
ドライブに保存してください。
※ただしトラック、マーカー、ルートのみ。カスタムマップ、一括キャッシュ、設定は対象外。
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■ファイルメニュー共通のボタン
ファイルメニュー共通のボタン
ジャンプボタン
各ファイルの行にあります(マーカー、トラック、カスタムマップ、一括キャッシュ)。そのフ
ァイルの座標にジャンプしたり、内容を地図に描画すると同時にジャンプしたりします。挙動
はファイルの種類によって違います。
表示ボタン
ファイルの表示状態を示します。トラック、マーカー、カスタムマップで使用します。目玉の
色が濃い行のファイルは地図に表示されます。薄いものは表示されません。トラックとカスタ
ムマップを必要以上に地図に表示するとアプリのパフォーマンスが落ちるので、使い終わった
ら非表示にしてください。一般設定の『マーカー自動表示』がオンの場合は全マーカーの目玉が濃くな
りますが、不利益はありませんので気にしないでください。
ファイル管理画面の下部にあるボタン
フォルダ追加
各種データをフォルダで管理出来
ます。押すと『新しいフォルダ』
が出来るので適切な名前にしてください。
チェック処理
タップをしてチェックを付けたフ
ァイルを処理出来ます。削除、フ
ォルダへの移動、エクスポートなどを行えま
す。処理メニューの内容は、ファイルの種類
やチェックを付けた状態(1 つだけか複数な
のか、など)で変化します。
上のフォルダボタン
見ているフォルダがルートフォルダ以外の場合に押せます。
押すと上のフォルダを表示します。
たまに下の階層のフォルダを見ていて、
『保存されたデータがない』という方がいます。どこのフォルダ
を見ているか把握して使いましょう。
閉じる
画面を閉じます。
■トラックやマーカー、フォルダの名前を変えたい場合
各行の『>』ボタンを押すと詳細画面が開きます(フォルダの場合は中に入ります)
。詳細画面
では画面上部に名前の編集欄があるので変更して閉じるボタンを押してください。
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■機能制限解除について
ジオグラフィカは基本的には無料で使えますが、一部の機能に制限が掛かっています。アプリ内課金で
『機能制限解除』を購入いただくと全機能を使えます。制限されている機能は下記の通りです。
・無料状態で記録できるログの回数は 8 回までです(解除後は無制限)。
・表示キャッシュの容量制限は 100MB までです(解除後は 500MB~無制限)。
・一括キャッシュは 5 回まで試せます。
・一括キャッシュの最大ダウンロード数は 300 枚までです(解除後は 3000 枚まで)。
この他に制限はありません。なので、ログを取らずに山中で現在地を確認する程度の使い方なら無料で
も十分使えてしまいます(開発継続の為に、課金していただけると非常に助かります)。
■機能制限解除の方法
1.メニューボタンを押して『設定』(歯車)を開きます。
2.『制限解除』を押すと購入画面が開きます。
3.『購入する』ボタンを押すと購入の手続きに進みます。確認が入るのでいきなり購入してしまうこ
とはありません。
■注意事項
・ 『購入済み』と表示されている場合は再度購入する事は出来ません(する必要もありません)。
・ iPhone で機種変した場合やアプリを再インストールした場合は『リストア』を押してください。購
入情報が確認出来れば追加課金なしで制限が解除されます。
・ Android から新しい Android に機種変した場合は『購入する』を押してください(リストアボタンは
ありません)。Google アカウントに購入情報があれば追加課金なしで解除されます。
・ Android から iPhone、またはその逆など、OS 自体が変わる場合は購入情報を引き継げません。再
度購入していただく事になります。アプリの見た目は同じですが、中身は全部作り直しており、相応
の手間と時間が掛かっています。ご理解いただければ幸いです。
13
■山行
山行前
山行前に準備を
準備をする
■地図をキャッシュする(キャッシュ=保存データ)
地図をキャッシュする(キャッシュ=保存データ)
歩く予定のエリアを中心に、地図を見ながら行程を確認すれば地図が保存されます。
手順
1.地図画面の座標部分を左にスライドすると検索画面になります。
2.山名や地名を入力して検索。結果をタップすると、その地点に飛びます。
3.目的の場所が表示されたら、地図を拡大したり縮小したりして、詳細地図と広域地図を表示してく
ださい。保存していない地図は圏外で表示出来ません(無い袖は振れない)
。
実際は、下記のマーカーを準備していく過程で地図のキャッシュも行なわれます。特別な操作をしてキ
ャッシュをするというより、山行前に地図を見て行程を確認すればキャッシュも同時に完了します。
■マーカーを登録
登山口、分岐、山頂、山小屋、ゴール地点、駅、バス亭などのマーカーを登録すると便利です。
(現在地が判ればいいという程度の使い方なら必要ないですが)
手順
1.地図画面のセンターマーク
2.マーカー追加ボタン
を各地点に合わせる。
を押す。
3.名前を設定する。
4.アイコンを自分の好みで変更する。
5.
ボタンを押すと登録されます。
登録したマーカーは[メニュー]-[ファイル]-[マーカー]に保存されます。
※スマホがネットに繋がっていれば高度は自動で設定されます。未接続の場合は地図を読んで手入力し
てください。
■ルートや既存トラック
マーカーによるナビゲーションを自動化したい場合はルートを作ると便利です。8 ページの『ルートの
使い方』の通りに作って使ってみましょう。
また、ヤマレコの山行記録から GPX ファイルをダウンロードしてジオグラフィカにインポートすること
も出来ます。インポートしたトラックは[メニュー]-[ファイル]-[トラック]から地図に表示出来ます。手順
は 7 ページをご覧ください。
■山行前の注意
・ 登山に行く前には必ず計画書を作って家族や友人にコピーを渡し、登山ポストに投函するかメールで
地元警察に提出しましょう。
・ 仲間が計画を作る場合でも、自分がどこを歩くのかくらいは把握しておきましょう。
・ 前日は十分な食事と睡眠を取り、忘れ物をしないように注意しましょう。
14
■ジオグラフィカを使う上での
ジオグラフィカを使う上での注意点
を使う上での注意点
■電池消費
トラックログの記録中、ルート案内中などはスマホがスリープしていても GPS を使用するためバッテリ
ーを消費します。機種によって変わりますが、1 時間に 3%~10%程度消費します。冬季は 3 割ほど増え
ます。
稼働時間例(機内モード、トラックログを記録、満充電からの標準稼働時間
稼働時間例(機内モード、トラックログを記録、満充電からの標準稼働時間)
、満充電からの標準稼働時間)
iPhone5,5s,SE → 約 1,500mAh で 10 時間 mAh はバッテリー容量
iPhone6,6s → 約 1,800mAh で 12 時間
iPhone6plus,6s+→ 約 3,000mAh で 20 時間
Nexus5 → 2,300mAh で 30 時間
Xperia Z5 Compact → 2,700mAh で 36 時間
Ascdnd G6 → 2,000mAh で 26 時間
Android 端末の場合は、バッテリー容量を調べて 75 で割ると稼働時間を推定出来ます(ただし機種や使
用状況、季節などで変わります)。iPhone はバッテリー容量を 150 で割ると稼働時間になります。
機内モードにするかしないかで稼働時間は大きく変わります。登山中は機内モードでの使用をおすすめ
します。機内モードにすれば、Android なら GPS 専用機よりも長時間使えます。
トラックログの記録、ルート案内などバックグラウンド動作をさせないで使う場合は、機内モードにす
ればほとんどバッテリーを消費しません。バッテリー消費を抑えたいならログの記録は諦めましょう。
また、バッテリー切れに備えて携帯充電器を持ちましょう。おすすめは Cheero 製品で、Amazon で買
えます。一泊で 6,000mAh、二泊で 10,000mAh、三泊~六泊で 20,000mAh くらいでしょうか。
左の写真は『cheero Power Plus 3 13400mAh』です。
0.6 を掛けた値がスマホのバッテリーに移ります。満
充電回数を計算すると下記の通りとなります。
iPhone5,5s,SE → 5 回ちょっと(63 時間)
iPhone6,6s → 4 回半(65 時間半)
iPhone6plus,6s+→ 3 回弱(73 時間半)
Nexus5 → 3 回半(137 時間)
Xperia Z5 Compact → 3 回(143 時間)
Ascdnd G6 → 4 回(133 時間)
括弧内はモバイル充電器分を含めたログの記録可能
時間です。夜に行動を終えた後の使用などでもう少し
短くなるでしょうから目安としてください。
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■水濡れ、落下、低温に注意
iPhone に防水モデルはありません。多くのスマホは落とすと画面が割れます。低温で風に吹かれると電
池の消費が早くなったり電源が落ちたりしてしまいます。iPhone は特に低温に弱いので、冬季は特に冷
やさない様に注意してください。
対策
・ 防水ケース、ジップロックを使用する。Android なら防水モデルを選ぶ。防水モデルでも水没はさせ
ない方が無難です。コネクタキャップの閉め忘れに注意。
・ 耐衝撃ケースを付ける、ストラップを付けて落とさないようにする。
・ ウェアの内ポケットに入れて保温する。ただし結露による濡れに注意。
・ 手袋をする場合はタッチペンが便利(というか冬は必須です)
。
・ iPhone はバッテリー残量を多めに保つ、冷えた時に写真の連写をしない(1 枚撮ったらすぐしまう)。
・ 電源が落ちてしまった場合は体に近いポケットにしまって体温で温めてください。温めて電源を入れ
れば復活します。電源が落ちても慌てずに対処しましょう。
■歩きながら使わない
安全な場所で立ち止まって使いましょう。転倒や滑落の原因となります。落石がありそうな場所も避け
ましょう。
■空が広く
空が広く見えないところでは
広く見えないところでは精度が下がる
見えないところでは精度が下がる
・ 測位には最低で 4 機の衛星が必要です。見通せる衛星が多いほど精度が上がります。
・ GPS は上空 2 万 km を飛ぶ衛星の信号を受信して測位します。アメリカの GPS 衛星が 32 機、ロシ
アの GLONASS 衛星が 24 機飛んでいます。大抵のスマホは GPS と GLONASS 対応なので 56 機を
使用可能です。ただし GLONASS の座標精度は低いので、結局 GPS 衛星が 4 機見えている必要が
あります。
・ 谷間、廊下状の沢、斜面、ビル街などでは位置情報に誤差が出ます。屋内や地下では正確な位置は出
ません。ジオグラフィカの座標表示の部分に精度が表示されるので、位置が怪しいと感じたら精度の
数値を確認しましょう(普通は半径 20m 以下)
。
■その他の注意
・ マグネット付きのスマホケースやカバーを使うと、スマートフォンの電子コンパスに干渉します。
・ スマートフォンの『位置情報サービス』をオンにして、GPS 衛星を使う設定にしてください。スマ
ホの設定が適切でない場合、現在地を表示出来ない場合があります。
・ スマートフォンをザックの底などに入れないでください。ザックにしまうなら雨蓋などに入れましょ
う。衛星からの信号は上から飛んでくるので遮蔽物があると受信出来ません。
・ 特に iPhone ですが、他のアプリがメモリを大量に消費するとバックグラウンドで動いているアプリ
が強制終了をさせられる事があります。よくあるのが、iPhone で写真を撮った後に歩いたらログの
記録が停止していたというパターンです。記録時の音(初期設定では小鳥)が鳴っていない場合は停止
しているので、一度ジオグラフィカの画面を出して動作を確認してください。
・ Android の場合はスマホ最適化アプリがキャッシュを削除したり、アプリを停止させたりします。そ
ういったアプリからはジオグラフィカを保護してください。
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■山で便利なアプリ
雨かしら
・ 国内の降水量をリアルタイムに表示します。
・ 使用にはネット接続が必要です。
・ センターマークの地点の天気予報を簡単に見られます。
・ 百名山の天気予報も簡単に確認出来ます。
・ iPhone 版、Android 版ともに無料。
・ Android 版は広告が表示されますが、設定で広告表示をオフにす
れば表示されなくなります。
peakfinder earth ピークファインダー
・現在地や任意の場所から見た山の名前を確認出来ます。
・実際の山並と同じ絵が表示されるので見やすい。カメラ系の山座同定アプリより正確で見やすい。
iPhone 版 480 円
Android 版 486 円
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■地図読み
地図読みの
地図読みの基礎
GPS を正しく使いこなすには、地図を読めなくてはいけません。GPS があっても地図読みとコンパスの
技術は必須と考えています。地形図の等高線から地形を想像出来るようになりましょう。コンパスの使
い方も覚えてください。
GPS とは、極論すれば『現在地を教えてくれるだけ』の道具です。持ったからといって地図読みの達人
になったわけでも、バリエーションルートを歩ける実力が付いたわけでもありません。自分の力に見合
った登山を心がけてください。身の丈以上の登山は、GPS では解決出来ない事故の原因となります。
■地形図 国土地理院 Web サイト『地理院地図』より
http://maps.gsi.go.jp/
・標準的な縮尺は 1/25,000。
『にまんごせんず』とも呼ばれる(上の地図のサイズは適当)。
・登山ショップで買うか、カシミール 3D や地理院地図で印刷する。
・2 万 5 千図の等高線は高さ 10m 間隔。50m ごとに太く描かれる。
・等高線の間隔が狭い=急斜面。
・山と高原地図は 5 万分の 1 地図で、等高線の間隔は 20m ごと。正確な地形は描かれていない。
・コンパスと併用する場合は磁北線を引いておいた方がいい。
■2 万 5 千図の場合の換算式
千図の場合の換算式
・地図上の 1cm は 250m。実際の 1km は地図上では 4cm。
『例:2.5cm=625m』
・等高線の幅は、
『0.5mm=39° 1mm=22° 2mm=11° 5mm=5°』
200%に拡大コピーして使う場合、距離は『1cm=125m 4cm=500m 8cm=1km』
傾斜は『1mm=39°2mm=22° 4mm=11°』となる。
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■地図から地形を読む
地形図に色別標高図を重ねて陰影を付けるとこんな感じ(普通の地形図には陰影が付いていません)
。
慣れると普通の地形図でも上の様に見えてきます。
■尾根と谷
山の地形は、とても大雑把に言えば『尾根と谷』に分けられます。
■尾根
下の地図では、尾根の部分に色を付けて判りやすくしています。
・尾根は山頂から下に向かって分岐していく。
・下りは尾根が分岐していくため、道を間違えやすい。登山での道迷いは下りに起きる事が多い。
・降りる尾根をどこか 1 箇所でも間違えると、とんでもない場所に着いてしまう。
・主要なピークを結ぶ尾根を『稜線』と呼び、最も顕著な尾根の連なりを主脈、主稜線と呼ぶ。
・ピーク間の低くなっている部分をコル (鞍部)と呼ぶ。コルは上から見ると等高線がくびれている。
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■谷、沢
下の地図では、谷の部分に色を付けて判りやすくしています。
・谷は山頂や稜線へ向かって分岐していく。
・沢登りでは、どこか 1 箇所でも間違えると目的地に着かない。
・沢を下ればいずれどこか下界に着くが、大抵は途中に滝があり、下降は非常に危険。
■隠れピーク
等高線は細かくても高さ 10m ごとなので、1~9m 程度のピークは『閉じた等高線』としてピークが描か
れないことがあります。そういう場所では、地形図を見る限り平坦なのに行ってみると小さな盛り上が
り(隠れピーク)があります。
隠れピークからは支尾根が伸びている場合
が多いので、尾根の出方から等高線に現われ
ないピークの存在を推理することが出来ま
す。
左の地図は、等高線が閉じていないけどピー
クの存在が疑われる場所を円で囲んであり
ます。
円で囲んだ隠れピークの南北に支尾根が延
びている事から、ここに 10m 未満のピーク
があることが疑われます。1334 という標高
点がある事もピークの存在を示しています。標高点はピークにつけられる事が多いです(絶対ではありま
せんが)。
他にも支尾根が出ている箇所があり、実際にこの尾根は西から東への下り一辺倒に見えて、実は 4 箇所
ほどの登りがあります。事前に地図をよく読み、地形の変化を予想しておき、それが合っているか現地
で確認します。こういった地図読みを繰り返し行なうことで、地図読みの技術が向上します。
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■現在地を知る方法
■地形と地図を見比べる
今いる場所から、実際の地形と地図を見比べて現在地を推定します。事前に地図をよく読んで頭の中に
イメージを作っておくことが大事。地図から先の地形を想定し、合っているか確認する事で道迷いを防
ぐ。
・ 利点…地図以外道具が要らない。
・ 欠点…初心者は間違いやすい。迷ってからの同定は難しい。行動中は常に地図と地形、植生などを見
比べ、現在地を同定し続けなければいけない。現在地を完全にロストしてからでは、ほとんど使えな
い。
■高度計を使う
登山道や尾根のどこかにいると判っている場合、時計などの高度計を見れば現在地が判ります。
・ 利点…地形だけで見るよりは正確。視界が悪くても使える。比較的短時間で判る。
・ 欠点…高度計を調整していないと誤差が出る。予定コースから大きく外れた場合は使えない。登りや
下りなら判りやすいが、平坦な稜線歩きでは位置が判らなくなる。複雑な地形の低山では、同じ標高
の地点がいくつもあるので判断が難しい。たまに高度計の調整が必要。
■コンパスで現在地を知る
■コンパスで現在地を知る
明確な目標物 2 点以上の方位角をコンパスで調べると現在地が判ります。
・ 利点…どこにいるのかまったく判らない状況でも現在地が判る。
・ 欠点…測定にミスがあると誤差が大きく出る。視界が悪いと使えない。明確な目標物(例えば山や建
物)が地図のどこにあるのか判らないと使えない。例えば、山を見てどれがどの山か判らないと使え
ない。慣れていないと時間が掛かる。
■GPS を使う
・利点…一瞬で正確な位置が判る。大抵の場合人間の測位や勘より正確。
・欠点…電池切れや故障のリスクがある(備える事で対策は可能)。廊下状の谷など地形によっては誤差が
出る。
地形をよく見て、地図とコンパス、高度計などを併せて使う事でおおよその位置を掴めます。予想した
現在地を GPS で確認すれば地図読みの練習になります。地図の地形と実際の地形を見比べる事は地図読
みの練習として非常に有効です。
GPS を使えば完全に現在地をロストした場合でも特定することが可能です。通常は地図とコンパスを使
ってナビゲーションを楽しみ、どうしようもなくなったら GPS に頼る、保険としての使い方もいいと思
います。ほとんどの道迷い遭難は、おかしいと思った時点で現在地を特定出来れば回避できます。
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■コンパス
「登山では地図とコンパスを持ちましょう」とはよく聞く言葉ですが、使い方を知らなければただのお
荷物です。きちんと使い方を覚えましょう。まずは大きめの公園などで練習するとよいでしょう。
登山用のコンパスは、下の写真の様なプレートが付いている物が必須です。単に方位が判るだけのコン
パスでは地図と併用できないので、あまり意味がありません。
■各部の名称
進行線
進行線
自分が進む方向や目標物の方向を示す矢印。
リング
プレートタイプのコンパスで一番大事な部分。
このリングを回して方位を決めます。
磁針
赤い部分が北(磁北)を指すようになっていま
す。北極点がある方向の『真北』と磁針が指す
『磁北』には、日本では西偏 7°前後のズレが
あります。地図にコンパスを当てている時、磁
針は無視してください。
ノースマーク
リングと一緒に動く。地図からコンパスを離した時はノースマークと磁針の北を重ねます。
磁北線インデックス
地図の磁北線とコンパスの磁北線インデックスを合わせることで、真北と磁北の差を補正します。
インデックスライン
方位角を読み取るための基準。上の写真ではおよそ 300°がセットされています。
長辺(左辺、右辺
長辺(左辺、右辺)
左辺、右辺)
地図にコンパスを当てる時に使います。
とりあえず名前が判らないと話が通じないので、各部の名称は覚えてください。
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■目的地の方位を知る方法
前提条件:現在地が判っている。
■地図上の方位角をコンパスにセットする
1.まず、地図上の現在地と目的地にコンパスの長辺を合わせます。
2.リングを回して、地図の磁北線とインデックスラインを合わせます。リング内のノースマークは地
図の北方向(上)を向くようにしてください。
コンパスを地図に当てているときは、磁針の存在は忘れてください。上の写真では磁針を消しています。
■コンパスにセットした方位角を使う
1.コンパスを体の正面で水平に構え、磁針とノースマークが重なる方向を向きます(リングには触らな
い。ここでリングを回してしまったら最初からやり直しです)。
2.進行線の先に目的地があります。
コンパスを地図から離したら、リングには触らず
コンパスを地図から離したら、リングには触らず磁針とノースマークを一致させてください。
リングには触らず磁針とノースマークを一致させてください。
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■見えている山の名前を調べる(山座同定)
見えている山の名前を調べる(山座同定)
前提条件:現在地が判っている。視界が良い。
■山の方位をコンパスにセットする
1.コンパスを両手で水平に持ち、進行線で名称不明の山を狙います(コンパスは水平)。
2.リングを回してリング内のノースマークと磁針を合わせてください。
地図から離しているときはノースマークと磁針を一致させる。
■セットした方位を地図に当てはめる
■セットした方位を地図に当てはめる
1.コンパスの長辺を現在地に当てる。
2.コンパス全体を
コンパス全体を回して磁北線とインデックスラインを合わせる(リングには触らない)。
コンパス全体を
3.長辺のライン上に山があれば、それが目的の山となるので名前を読む。
地図にコンパスを当てているときは、磁針の存在は無視する。リングは回さずコンパス全体を回す。
地図にコンパスを当てているときは、磁針の存在は無視する。リングは回さずコンパス全体を回す。
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■明確な目標物 2 点以上で現在地を調べる
前提条件:明確な目標物が 2 点以上、出来れば 3 点ある。視界が良い。
■目標物への方位角を調べる
1.コンパスを両手で水平に持ち、進行線で目標物を狙ってください。
2.リングを回してリング内のノースマークと磁針を合わせてください。
■地図に当てはめる
1.地図にコンパスを置き、目標物に長辺を合わせる。
2.コンパス全体を回して磁北線とインデックスラインを合わせる。
3.長辺に沿って線を引く(目標物から直線が出ている状態になる)
。
これを 2 つ以上、出来れば 3 つの目標点に対して行なうと、線の交点が現在地周辺という事になります。
尾根や登山道など明確なライン上にいる場合は 2 点でもそこそこの精度が出ます。測定をした上で地形
を見て正確な現在地を推定します。
■注意点
・ 精密に方位角を決めないと誤差が大きくなります。
・ 目標物が遠すぎると使えません。誤差が大きくなるし地図の範囲内にないと線を引けません。
・ 視界が悪いと使えません。樹林帯や悪天候時は使えません。
・ 通常は目標物 2 つでは精度が出ません。3 つでも精度は半径 100m くらいです。それでも地形を読ん
で絞り込めば現在地は判ります。
■地図読みのまとめ
地図読みのまとめ
・ 地図読みとコンパスは慣れと練習が大事です。常に地図とコンパスを携帯して使い慣れてください。
GPS は地図読みの答え合わせにも使えます。
・ 視界が効かないなど、条件が悪い時は地図とコンパスでは現在地を特定出来ない事もあります。その
場合は見える範囲の地形から推定しますが、難しい場合は GPS に頼った方がよいでしょう。
・ 見通しが悪い低山ほど道迷いしやすく、高山での道迷いは重大な事故の原因となります。
・ GPS は電池切れや故障に注意しましょう。特に防水でない機種は水濡れに注意してください。
・ 地図、コンパス、GPS を併用することで道迷い遭難のリスクを減らすことが出来ます(山岳遭難の 4
割が道迷い遭難です)。
・ 遭難原因の 4 割は道迷いですが、
道迷いからの滑落は道迷いにカウントされていません。
その事から、
実際はもっと多くの道迷いが起こっていると思われます。道迷いが減れば、山岳遭難全体が減ってい
くはずです。
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■道迷い遭難の主な原因と対策
・ 地図もコンパスも持っていない。当然使い方も判らない。地図を持っていてもガイドブックの地図な
ど、地図読みに適さない精度のものだと迷った時に困ります。1/25000 地形図か、せめて山と高原地
図を持ちましょう(5 万分の 1 なので地形は読みにくいですが情報は多めです)。
・ 単独行。単独の場合は自分以外に判断する人がいないので、間違った判断をしても誰も止めてくれま
せん。単独行者は遭難した時の死亡率がパーティー登山の 2 倍です。慎重な判断と行動を。
・ 引き返さない。
「間違えたかも」と思いつつも引き返す事なく進んでしまう。道が判らなくなったら
確実に判る場所まで戻りましょう。間違った道を突き進んで沢を下ったりすると、怪我や死亡のリス
クが非常に高くなります。まずは判る場所まで引き返してください。GPS で無理矢理修正すること
も出来ますが、地形や道の状態によってリスクが少ない選択をしてください。
・ 飲酒登山。酒を飲むと正常な判断力が失われます。道迷い以外でも、滑落や転倒の原因になるので飲
飲酒登山。
酒は行動が終了してからにしましょう。ビールには利尿作用があるので水分補給には適しません。
・ 準備、装備の不足。地図とコンパスを持つのはもちろん、GPS
アプリでも地図をキャッシュしない
準備、装備の不足。
で山に入ったら『現在地の座標が判るだけ』になってしまいます(紙の地図と組み合わせればなんと
かなりますが)。ヘッドランプや食料、ツエルト、ファーストエイドキットなど、万一に備えた装備
も持ちましょう(重くなりすぎない程度に)。
・ 体力不足。登る山に対して体力が足らない場合、地図や
GPS を見て現在地を確認するのが億劫にな
体力不足。
ります。また、間違えた場合に登り返す決断を出来なくて沢に下ってしまいがちです。正常な判断を
するには余裕が必要です。
自分の体力に合った山やコースを選び、無理のない計画を作りましょう。山行前日はしっかり睡眠を
取る、体調が悪い場合は無理せず中止するなど、事前の準備と判断も重要です。
・ あやふやな情報。山で会った登山者から聞いたあやふやな情報を元に急に計画を変えて失敗した遭難
者もいます。事前に登る山とコースについてしっかり調べ、その情報を元に計画に従って行動しまし
ょう。その場の思いつきでコースを決めるとろくな事がありません。
・ 焦り。日没まで時間が無い、バスや電車、ロープウェイの時間に間に合わないなど、時間に追われる
焦り。
と、分岐を見逃したり間違った判断をしやすくなります。焦らず落ち着いて行動しましょう。焦って
もいいことはありません。余裕のある計画を作りましょう。
・ うっかり、過信
うっかり、過信。
、過信。明らかな道標を素通りしたり、道標を見ていながらなぜか逆に行ってしまったり、
『魔が差した』としか思えない遭難事例があります。
「自分は道迷いなんかしない」という過信は禁
物です。誰にだって道迷いの可能性はあります(GPS を持っていても道に迷う人はいます)。
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■道迷いからの脱出
■道迷いからの脱出
間違えないのが一番ですが……、もし迷ったと気付いたら?
間違えないのが一番ですが……、もし迷ったと気付いたら?
間違った道に入った場合、道が無くなったり予定外の標識が出てきたり、どこかで道迷いに気付きま
す。その時に大事なのは『慌てず騒がず焦ら
『慌てず騒がず焦らず冷静になる』
『慌てず騒がず焦らず冷静になる』ことです。
ず冷静になる』
まず落ち着いて現在地を確認
1.GPS を持っているなら現在地を確認しましょう。
2.お茶でも飲んで落ち着きましょう。冷静になる事が大事!
3.基本的には来た道を戻って正しいコースに戻ってください。戻る道が登りでも、下って楽をしよ
うと考えない方が安全です。低山の場合は尾根を下る
尾根を下るという判断も場合によってはアリですが、地形
尾根を下る
次第です。尾根でも途中で崖になる事があります。地図を読みましょう。
沢を下るのは最悪
最悪の結果になりやすいのは『沢を下る』という判断です。一般登山道でもない限り、沢は途中に滝
や崖があって、無理に降りようとすると怪我をしたり死亡したりします。積雪期は雪崩の危険もあり
ます。
パニックになった時、自分では
パニックになった時、自分ではパニックに気付かない
ではパニックに気付かない(
パニックに気付かない(特に単独行は危険)
特に単独行は危険)
パニックになっても自分がおかしくなっている事にはなかなか気付けません。ハッと我に返ると怪我
をしていたり、とんでもない場所に立っていたりします。遭難している最中は間違いなく『静かなパ
ニック状態』になっています。まずは落ちついて、よく考えて、勘や勢いではなく論理的に考えて行
動しましょう。単独の場合、客観的視点が無いのでパニックに気付けません。単独行者が遭難した時
の死亡率はパーティー登山の 2 倍です。
無理を
無理をしない
もし気付いた時すでに進退窮まってしまった場合は、携帯が繋がるなら救助要請をして動かないこと。
無理に崖を登り降りしようとすると滑落してしまいます。ただ、これも場合によります。ロープやク
ライミングギアを持っていて正しく使えるなら脱出方法がある事もあるし、降雨時に狭い沢の中にい
るのは危険です。水が濁ってきたら鉄砲水の可能性があります。その場に応じて対処しましょう。
登山届は大事です
遭難時に捜索の手がかりになるのは登山計画書です。必ず家族、友人、警察署、鍵付きの登山ポスト
に届けましょう。計画書と違う行動を取ると、遭難時に見つけてもらえる可能性が低くなります(捜索
費用もかさみますよ)。予定外の行動を取る時は、発見されにくくなるリスクを考慮して慎重に判断し
ましょう。計画段階でエスケープルートも考慮して計画書に載せておきましょう。
道迷い遭難をしないように、楽しい登山を!
制作:松本圭司(ジオグラフィカ開発者)
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地図:国土地理院