宿題 No.4

マクロ経済学Ⅰ- 2016 年度前期
担当:蛭川雅之
宿題 No.4 - 解答例
2016 年 7 月 27 日
※正答は赤字、解説は(もしあれば)青字で印字してあります。
問1 ~ 問2
以下の空欄に該当する用語を選べ。
景気が悪くなると税収が落ち込んでくるが、こうした動きは結果的に景気の落
ち込みを軽減する効果があるといわれる。これを財政制度の( 問1 )機能とい
う。税収が落ち込めば、その財源の穴埋めは( 問2 )の発行でまかなう必要が
ある。
問1:a. バッファー
問2:a. 貨幣
b. 自動再生
c. 均衡
b. フード・スタンプ
d. ビルトイン・スタビライザー
c. 約束手形
d. 公債
問3 ~ 問6
以下の空欄に該当する用語を選べ。
国債の償還や利払いを除いて財政収支がバランスしている状態を( 問3 )が実
現している状態という。これが実現していれば、政府債務は国債の( 問4 )分
だけ増えていくが、GDPが( 問5 )と同じ割合で増えていくので、債務とGDP
の比率が大きく膨らんでいくことは少ないと考えられる。もっとも、経済がき
びしい( 問6 )に陥っていると、名目金利はマイナスにならないのに対して、
名目の( 問5 )はマイナスになるので、( 問3 )を実現しても債務は膨れ上が
っていく。
問3:a. プライマリー・バランス
ンス d. プライム・レート
問4:a. 残高
b. 発行価額
問5:a. 貨幣の流通速度
問6:a. インフレ
b. セカンダリー・バランス
c. 金利
b. 利子率
b. デフレ
c. オフ・バラ
d. 額面金額
c. 物価成長率
c. 債務超過
d. 経済成長率
d. デフォルト
問7 ~ 問14
以下の空欄に該当する用語を選べ。
IS曲線とは( 問7 )を均衡させるような利子率とGDPの関係、一方、LM曲線
とは( 問8 )を均衡させるような利子率とGDPの関係を表すものである。両者
が交わる点がマクロ経済の均衡を表している。ここで貨幣量が増えるような金
1
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融政策が行われると( 問9 )シフトし、利子率は( 問10 )、GDPは( 問
11 )。財政支出が増えるような財政拡大政策が行われると( 問12 )シフトし、
利子率は( 問13 )し、GDPは( 問14 )する。
問7:a. 財市場
b. 労働市場 c. 貨幣市場
d. 株式市場
問8:a. 財市場
b. 労働市場
d. 株式市場
c. 貨幣市場
問9:a. IS曲線が左側に b. IS曲線が右側に
右側に
c. LM曲線が左側に
問10:a. 低下し
d. 一定となり
b. 上昇し c. 不変であり
問11:a. 減少する b. 増加する
c. 不変である
問12:a. IS曲線が左側に b. IS曲線が右側に
が右側に
問13:a. 低下し
b. 上昇し
問14:a. 減少する
d. LM曲線が
d. 一定となる
c. LM曲線が左側に
d. LM曲線
c. 不変であり d. 一定となり
b. 増加する
c. 不変である
d. 一定となる
問15 ~ 問16
以下の空欄に該当する用語を選べ。
経済政策の目標の数が経済政策の手段( 問15 )場合、すべての経済政策を同
時に達成することができなくなる。こうした状態にあるとき、経済政策目標の
間に( 問16 )があるという。
問15:a. より少ない
問16:a. オフバランス
b. より多い
c. と同数である
b. オフセット
d. とほぼ等しい
c. クーリングオフ
d. トレードオフ
問17 ~ 問19
以下の空欄に該当する用語を選べ。
景気を刺激しようとして積極的な財政政策を行うと( 問17 )が上昇して消費
や( 問18 )がかえって抑制され、景気刺激効果が期待通りには出ないことが
ある。こうした現象を財政政策の( 問19 )効果と呼ぶ。
問17:a. GDP b. 利子率
問18:a. 投資
c. 債券価格 d. 株価
b. 政府支出 c. 財政赤字
d. 貿易赤字
問19:a. アシスト・アウト b. フォース・アウト c. プット・アウト
ウディング・アウト
2
d. クラ
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問20 ~ 問24
以下の空欄に該当する用語を選べ。
GDPや貨幣量のように、その時点の価格を用いて評価した変数を( 問20 )と
いう。これらを物価指数などで調整して物価変動の影響をなくした変数を( 問
21 )という。例えば、GDPを( 問22 )で割れば( 問23 )になり、貨幣量を
物価で割ったものは( 問24 )になる。
問20:a. 名目変数
b. 実質変数
c. 媒介変数
d. 確率変数
問21:a. 名目変数
b. 実質変数
c. 媒介変数
d. 確率変数
問22:a. 貨幣の流通速度
b. 為替レート
c. GDPデフレーター
問23:a. 名目GDP b. 実質GDP c. 名目GNP
問24:a. 名目貨幣残高
b. 実質貨幣残高
d. 利子率
d. 実質GNP
c. 名目預金残高
d. 実質預金残高
問25 ~ 問35
以下の説明が正しければ a 、誤っていれば b を選べ。
問25:累進課税制度における所得税の最高限界税率が50%であれば、所得税の
課税対象額が1億円である人の所得税額は5,000万円である。b
限界税率が50%でも平均税率はもっと小さいはずなので、所得税額が
5,000万円より少なくなるはずである。
問26:限界税率が高い経済ほど乗数効果が強まり、景気の変動幅は大きくなる
といえる。b
限界所得税率が高い場合、可処分所得が小さくなり消費も減少する。そ
のため創出される有効需要は小さくなり、乗数効果は弱まる。また、 乗
数効果が弱いため、好不況時の所得の変動は小さくなり、景気の変動幅
も小さくなる。
問27:所得税が累進的な構造を持っていると、所得の増大とともに限界税率は
増大するが、平均税率は変わらない。b
所得税が累進的な構造の下では、所得の増大とともに累進税率、平均税
率ともに増大する。
問28:マネタリストや新古典派の考え方によれば、所得減税を行っても景気刺
激効果を与えることはできないと考える。a
マネタリストおよび新古典派はリカードの等価定理が成り立つと考える。
問29:金融緩和(金利低下)政策は一般に為替レートの下落(減価)をもたら
す。a
金利の低下により国内での資金運用の魅力が薄れるため資金流出が起こ
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り、為替レートが下落する。
問30:貨幣需要の利子弾力性が大きいほど金融緩和政策の効果は大きくなる。
b
貨幣の利子弾力性が大きい場合、わずかな利子率の低下で貨幣需要が大
きく上昇する。そのため、金融緩和を行っても利子率は大幅に低下せず、
投資に対する刺激は限定的となり、その結果国民所得の増大も限定的な
ものにとどまる。
問31:流動性の罠の状況ではLM曲線が垂直になるので、財政政策は有効でな
く、金融政策の効果が大きくなる。b
流動性の罠の状況ではLM曲線が(ほぼ)水平になり、金融政策を行っ
てLM曲線を右方にシフトさせても均衡利子率と均衡国民所得の組合せ
に変化を生じない。このように金融政策は無効である一方、財政政策は
有効であり、IS曲線を右方にシフトさせることで均衡国民所得を増大さ
せることができる。
問32:投資の利子弾力性が非常に大きければ、財政政策を行ったときの景気刺
激効果は小さい。a
投資の利子弾力性が大きい場合、財政政策による利子率の上昇が民間投
資を大きく減退させる。この投資の減退は乗数プロセスを通じて増幅さ
れ所得決定に悪影響を及ぼす。その結果、財政政策による所得の増大は
限定的なものになってしまう。
問33:原材料価格が上昇すると、総供給曲線は上方にシフトする。a
原材料価格が上昇すると製品価格も上昇し、どのような生産量に対して
も物価水準が上昇する。その結果、総供給曲線は上方にシフトする。
問34:新古典派が想定する世界では、財政・金融政策を行うことによって生産
量を増加させることができる。b
新古典派の総供給曲線は完全雇用水準の下で垂直になる。そのため、財
政・金融政策を行って総需要曲線を上方にシフトさせても生産量を増大
させることはできず、物価水準のみが上昇する。
問35:ケインジアンが想定する不完全雇用が存在する世界では、財政・金融政
策を行うことによって生産量を増加させることができる。a
不完全雇用が存在する世界では総供給曲線が右上がりになる。財政・金
融政策を行って総需要曲線を上方にシフトさせると生産量が増大し、同
時に物価も上昇する。
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問36 ~ 問45
以下の空欄に該当する数値を選べ。もし正答が見つからない場合は、正答に最
も近い数値を選択せよ。
ある国の経済は家計、企業および政府の3部門から構成されており、次のよう
なモデルで示すことができるとする。
財市場の均衡式: Y  C  I  G
消費関数: C  20  0 .8Y
投資関数: I  100  15 r
政府支出: G  30
貨幣市場の均衡式: M  L
貨幣需要: L  2Y  100 r  300
貨幣供給: M  200
ただし、 C は消費、 I は投資、 G は政府支出、 Y はGDP、 r は利子率、 M は
貨幣供給、 L は貨幣需要である。IS曲線は( 問36 )、LM曲線は( 問37 )と
表されることから、均衡GDPは( 問38 )、均衡利子率は( 問39 )となる。
ここで、政府支出を変化させることなく貨幣供給のみを25増加させると、GDP
は均衡水準から( 問40 )増加し、利子率は均衡水準から( 問41 )下落する。
一方、貨幣供給量を変化させることなく政府支出のみを5増加させると、GDP
は均衡水準から( 問42 )増加し、利子率は均衡水準から( 問43 )上昇する。
この結果から、政府支出のみの増加はクラウディング・アウトを招くことがわ
かる。そこで、政府支出を5増加させるのと同時に貨幣供給量を( 問44 )増加
させれば、クラウディング・アウトを回避でき、このときGDPは均衡水準から
( 問45 )増加する。
問36:a. Y   75 r  750
b. Y   75 r  750
c. Y  75 r  750
d. Y  75 r  750
財市場の均衡式に消費関数・投資関数を代入し、次の結果を得る。
Y  20  0 . 8Y   100  15 r   G  120  0 . 8Y  15 r  G
 0 . 2Y   15 r  120  G
 Y   75 r  600  5 G .
1
(1)に G  30 を代入することにより、以下のようなIS曲線を得る。
IS 曲線: Y   75 r  600  150   75 r  750 .
問37:a. Y   50 r  50
b. Y   50 r  50
c. Y  50 r  50
d. Y  50 r  50
貨幣市場の均衡式に貨幣需要を代入し、次の結果を得る。
5
2 
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M  2Y  100 r  300
 2Y  M  100 r  300
1
 Y  M  50 r  150 .
2
3 
(3)に M  200 を代入することにより、以下のようなLM曲線を得る。
LM 曲線: Y  100  50 r  150  50 r  50 .
問38:a. 270
問39:a. 6.3
b. 300
c. 325
b. 6.4 c. 6.5
4 
d. 350
d. 6.6
(2)(4)を Y , r  に関する連立方程式として解き、 Y , r   270 , 6 . 4  を得
る。
問40:a. 2.5
b. 5
問41:a. 0.1
b. 0.2
c. 7.5
d. 10
c. 0.3
d. 0.4
(1)(3)から次の結果を得る。
  Y   75  r  5  G


1
  Y  2  M  50  r
条件より、  G ,  M
(5)
(6)
  0 , 25  であるから、
  Y   75  r

  Y  12 . 5  50  r
と な り 、 こ れ ら を  Y ,  r  に 関 す る 連 立 方 程 式 と し て 解 く と
 Y ,  r   7 .5 ,  0 .1 が得られる。従って、この金融政策により、
GDPは均衡水準から7.5増加し、利子率は0.1下落する。
問42:a. 5
問43:a. 0.1
b. 10 c. 15
d. 20
b. 0.2 c. 0.3
d. 0.4
 G ,  M   5,0  を(5)(6)に代入し、
  Y   75  r  25

  Y  50  r
を 得 る 。 こ れ ら を  Y ,  r  に 関 す る 連 立 方 程 式 と し て 解 く と
 Y ,  r   10 ,0 .2  が得られる。従って、この財政政策により、GDP
は均衡水準から10増加し、利子率は0.2上昇する。
問44:a. 25
b. 50 c. 75
d. 100
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マクロ経済学Ⅰ- 2016 年度前期
問45:a. 25
b. 50 c. 75
担当:蛭川雅之
d. 100
政府支出を増加させてもクラウディング・アウトが発生しないようにす
るには、(5)(6)で  G ,  r   5 , 0  とおく。その結果、
  Y  25


1
  Y  2  M
が 得 ら れ 、 こ れ ら を  Y ,  M
 に関する連立方程式として解くと
 Y ,  M   25 ,50  である。従って、財政政策によるクラウディン
グ・アウトを回避するためには貨幣量を50増加させればよく、このとき
GDPは均衡水準から25増加する。
問46 ~ 問50
以下の空欄に該当する数値を選べ。もし正答が見つからない場合は、正答に最
も近い数値を選択せよ。
ある国の経済は家計および企業の2部門から構成されており、次のようなモデ
ルで示すことができるとする。
財市場の均衡式: y  C  I
消費関数: C  25  0 .8 y
投資関数: I  15  2 r
貨幣市場の均衡式:
M
L
p
貨幣需要: L  0 .5 y  5 r  50
貨幣供給: M  1,000
ただし、 C は消費、 I は投資、 y は実質GDP、 r は利子率、 p は物価水準、
M は名目貨幣供給、 L は貨幣需要である。IS曲線は( 問46 )、LM曲線は
( 問47 )と表されることから、総需要曲線は( 問48 )となる。 さらに、総
供給曲線が y  75 p であるとき、均衡における物価水準とGDPは( 問49 )お
よび( 問50 )である。
問46:a. y  10 r  200
b. y  10r  200
c. y  10r  200
d. y  10r  200
財市場の均衡式に消費関数・投資関数を代入し、次の結果を得る。
y  25  0 . 8 y   15  2 r   40  0 . 8 y  2 r
 0 . 2 y   2 r  40
 IS 曲線: y   10 r  200 .
7
マクロ経済学Ⅰ- 2016 年度前期
2,000
 10r  100
p
2,000
d. y 
 10 r  100
p
問47:a. y  
担当:蛭川雅之
b. y  
2,000
 10r  100
p
c. y 
2,000
 10 r  100
p
貨幣市場の均衡式に貨幣需要を代入し、次の結果を得る。
1, 000
 0 . 5 y  5 r  50
p
1, 000
 0 .5 y 
 5 r  50
p
2 , 000
 LM 曲線: y 
 10 r  100 .
p
問48:a. y  
1,000
 50
p
b. y  
1,000
 50
p
c. y 
1,000
 50
p
d. y 
1,000
 50
p
総需要曲線はIS曲線とLM曲線から利子率 r を消去することにより得られ
る。IS曲線とLM曲線の左辺、右辺どうしを足し合わせることにより、総
需要曲線は以下のようになる。
2y 
問49:a. 2
問50:a. 150
b. 3
2 , 000
1, 000
 100  総需要曲線: y 
 50 .
p
p
c. 4
b. 200
d. 5
c. 250
d. 300
総需要曲線と総供給曲線の交点が均衡における物価水準とGDPを与える。
具体的には、  y, p  に関する連立方程式
1, 000

 50 (1)
y 
p

 y  75 p
(2)

の解を求めればよい。(1)(2)から y を消去することにより
75 p 
1, 000
 50
p
 3 p 2  2 p  40  0
 3 p  10  p  4   0
が得られ、 p  0 を考慮すると物価水準は p  4 となる。さらに(2)から
実質GDPは y  300 である。
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