授業科目名 担当教員名 開講曜日・講時 サブタイトル くずし字講読 鈴木

授業科目名
くずし字講読
担当教員名
鈴木 堅弘
開講曜日・講時
月曜4限
サブタイトル
江戸時代の「絵本」を読む
授業の目的・到達目標
(1)本講義を通じて、「くずし字」の読み方の基礎を理解する。
(2)江戸時代の書籍や書画を原本資料にもとづいて読み解く技術を身につける。
(3)江戸時代の「絵本」(絵双紙)に記された文字を読み込む訓練をおこない、自ら「くずし字」(変体仮名)を読めるようにな
る。
(4)江戸時代の「絵本」に描かれた言葉や図像を通じて、江戸庶民の生活、習慣、思想などを理解し、江戸文化に対する知
見を広げていく。
授業の概要
「くずし字」とは、平安時代から江戸時代の書物、手紙、文書などに記された字体を崩した文字のことである。それらの文字
は、筆が流れるままに記され、今日の我々から見ると、古語として判読が難しく感じられる。
そこで本講義では、「くずし字」を解読する方法を学び、その実習をおこなう。半期を通じて、「ひらがなのくずし字」(変体仮
名)が読めるようになることを目標とする。その際に、江戸時代の「絵本」を取り上げる。ここでの「絵本」とは、現在の児童向
けの読み物とは異なり、江戸庶民が生活のなかで親しんだ「絵を主とした通俗的な本」(絵双紙)のことである。本講義では、
歌川国芳や葛飾北斎などの有名絵師が描いた絵本をテキストとし、江戸時代の人びとが読んだ資料(一次資料)を用いて、
くずし字を読み解く技術の習得をめざす。また、古文書、手紙、書画、和歌などの歴史資料の判読へとつながる入門編とし
て、「くずし字解読」の基礎的な力を身につけることを目的とする。
授業計画
本講義では、初回から第3回まで、「くずし字」(変体仮名)を読み解く方法の解説をおこなう。以後、毎回、授業内で絵本のプ
リント(テキスト)を配布し、各自、くずし字を解読する練習を30分間ほど実施し、残りの時間で答え合わせと判読の要点を説
明する。その際に、浮世絵や絵画を通じて、江戸時代の庶民生活や風俗習慣など、江戸文化に関する解説も加える。
なお、くずし字解読の技術習得には、とにかく原本資料を何度も読み込むことを必要とする。そこで本講座では、文字読みの
訓練を積極的に実施し、語学の授業と同じような講義スタイルをとる。
第1回:ガイダンス ―〈くずし字〉とは何か、〈絵本〉とは何か―
第2回:くずし字の解読方法① ―〈ひらがな〉と〈字母〉、解読方法の説明―
第3回:くずし字の解読方法② ―くずし字辞典の使い方、解読の実践―
第4回:歌川国芳・浮世絵の解読① ―東海道五十三次と猫見立て―
第5回:歌川国芳・浮世絵の解読② ―木版画の歴史と印刷技術―
第6回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読① ―江戸の衣装文化―
第7回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読② ―江戸のかざりとデザイン―
第8回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読③ ―香りの文化と恋文―
第9回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読④ ―浴衣と日本人―
第10回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読⑤ ―夜の風景と浮世絵―
第11回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読⑥ ―模倣文化と江戸絵画―
第12回:下河辺拾水『伊呂波歌』の解読⑦ ―遊女と吉原の世界―
第13回:葛飾北斎『画本彩色通』の解読① ―大津絵と京のお土産―
第14回:葛飾北斎『画本彩色通』の解読② ―くずし字の解読方法の復習―
第15回:定期試験 ―まとめ、期末筆記テスト―
※毎回、授業内で「絵本のプリント」(テキスト)を配布するが、教科書『仮名変体集』(新典社)を必ず持参すること。
※講義では、PowerPointや映像資料を利用する。
※定期試験では、教科書、辞書、参考書は持ち込み可。ノートは持ち込み不可。
※定期試験の終了後に、特別講義として「春画のくずし字」を実施する。
授業外学習の指示(予習・復習・課題等)
毎回、予習用として、次回に使用する「絵本のプリント」を配布する。事前に、そのテキストに目を通し、判読が難しいと思わ
れるくずし字に関しては、教科書『増補改訂 仮名変体集』(新典社)を用いて調べておくこと。また復習として、講義内で解読
できなかった文字について、再度、辞書で確認し、くずし字の判読をくり返しおこなうことが望まれる。その際に、下記に記した
「くずし字辞典」等を参考資料とし、くずし字の解読にいち早く慣れることを理想とする。
評価方法・評価基準
授業への参加40%、期末筆記テスト60%の評価配分による。
履修条件・留意点及び受講生に対する要望
日本の古い書物、歴史資料、美術作品を研究対象にしたいと考えている方は、是非、履修してほしい。また、博物館学芸員
や図書館司書をめざす方も、積極的に履修してほしい。昨今の博物館や図書館では、「くずし字」を取り扱う機会も多く、目録
作成、展覧会準備、物品購入などの際に、くずし字解読の能力が求められる。
なお、本講座は、文字読みのトレーニングを実施するため、根気よく学習に取り込む姿勢が望まれる。
一部の講義で、性表現を描いた絵画を取り扱う場合がある。
購入必須テキスト(授業内で配付するプリント類を除く)
伊地知鐵男編 『増補改訂 仮名変体集』新典社(本体¥350)
参考文献・作品等(購入不要:より深く授業内容を理解するための有用資料)
児玉幸多 『くずし字用例辞典 普及版』 東京堂出版 1993年
児玉幸多 『くずし字解読辞典 普及版』 東京堂出版 1993年
かな研究会編 『画引き かな解読字典』 新典社 1994年
中野三敏『古文書入門 くずし字で「徒然草」を楽しむ』角川学芸出版 2013年
中野三敏『古文書入門 くずし字で「百人一首」を楽しむ』角川学芸出版 2010年
前田勇 『江戸語の辞典』講談社学術文庫 1979年
鈴木一雄編 『三省堂 全訳読解古語辞典 第四版』三省堂 2012年
参考WEBサイト(サイト名・URL)
特になし