ドライラミネータの最新動向

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複合化技術とコンバーティング
ドライラミネータの最新動向
富士機械工業㈱
平田 昌司
1.はじめに
昨今の循環型社会への移行の波は確実
a)環境・省エネ
誇 る 当 社 の ス タ ン ダ ー ド 機 で あ る。
・VOC処理装置の排熱利用
FML2は、軟包装業界とは異なる分野、
に印刷業界にも押し寄せており、環境・
・乾燥器排気再利用
高品質を目指した仕様に対応したハイグ
省エネに配慮した機械が仕様を決める上
・高効率機器の使用
レ ー ド 機 で あ る。FML2 の「M」 は
で前提となりつつある。また、品質・歩
・資源使用量削減、再利用
「Medical」
「Material」
「Malleable」を
留まり改善等の機械本来の要求も勿論向
b)品質向上
意味しており、
「医療」および「高機能
上してきている。機械メーカーとして、
・製品ロスの低減
性材料(工業・産業)
」分野をターゲッ
市場競争に打ち勝つためにも、これらの
・異物混入対策
トにした「柔軟な」発想の機種としてス
要求への柔軟な対応が必要となる。今回
・残留溶剤低減
タートしたのだが、軟包装分野において
はラミネータの中でも、当社の主力の1
c)稼働率向上
もロス低減(品質確保)
、稼働率向上に
つであるドライラミネータ(以下ドライ
・高速化
繋がり高評価をいただいている。
ラミ)に焦点を絞って、市場ニーズ、当
・段取り時間短縮
社機械の対応等を中心に記す。
・運転条件記録、再現
てFML2の代表的な特徴をいくつか紹介
d)クリーン
しておく(図2)
。詳細は当社ホームペー
2.最近の市場ニーズ
・清掃性
ジ等を参照いただきたい。
市場ニーズとひとくちに言っても、実
際には、
各社の要求は様々である(小ロッ
ト化もあれば長ロット対応もある)
。社
会情勢の反映、従来要求の発展的な内容
が主にはなるが、出来上がった製品の品
質を保証できるよう、インラインによる
詳細は省略することとなるが、次項に
・SUS仕様
・機械構造(ゴミが溜まりにくい)
、
ロール配置(ゴミを拾わない)
図1の、重なり合う円の中心に当社の
3.ニーズに対応した機械仕
様(FML2)の概略
3.1 環境・省エネ
乾燥器排気のリサイクル化も当然のこ
ドライラミ「FL2」
「FML2」がある。
FL2は軟包装業界に多くの納入実績を
ととなりつつあるが、高効率乾燥器のお
各種検査装置等の設置も要求として増え
つつある。中には、
あらゆる調整要素(加
工条件も含む)を数値的に管理し、品質
環境・省エネ
的に安定した生産を行える機械(オペ
品質向上
レータはボタンを押すだけ)等の夢のよ
うな要求をいただく場合もある。
これらの中から、軟包装業界のニーズ
を中心に要求を大まかに分類して記す
(図1)
。
稼働率向上
クリーン
お問い合わせ
http://www.fujikikai.co.jp/inquiry/
図1 軟包装業界 ニーズの分類
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かげで、No.2ゾーン以降の排気には、ほ
巻芯ロスなく製品を巻き取ることができ
稀にいただくこともあるが、クリーンに
ぼ溶剤が含まれておらず、大部分をリサ
る(3本ロール方式を採用し省スペース
ついては、各社それぞれの要求を反映す
イクルに回すことが可能である(自己リ
化にも貢献)
。
るスタンスであり、費用とのトレードオ
サイクル、前段リサイクル等)
。
また、ニアロールを標準搭載しており、
フである。例として、基材上の部材(主
これにより、
熱交換器の仕様ダウン(≒
巻き初めから巻き終わりまで安定した基
にステー)はSUS仕様、コーティング部
燃料減)
、排ガスの減(排風機の小容量
材の搬送が可能となり、美しい巻姿が得
はすべてSUS、メッキ仕様等がある。
化≒省エネ)が可能となる。さらに機械
られる。
表1、図3はそれぞれニーズに対する
全体の電力の約70%に相当する乾燥器
用送風機のインバータ化を行えば、送風
対応例の一部とその割合を示す(効果に
3.3 稼働率向上
ついてはデータがないため除外)
。品質
機の電力消費が約半減することも実績と
高効率・大風量乾燥器を標準で備えて
に関する要求が最も多いことが一目瞭然
して掴んでいる(注:仕様次第のため要
おり、高速化に貢献するとともに、中性
である(クリーンの割合が多いのは、品
確認)
。
能程度のフィルタ(メンテ用歩廊付)を
質を高める対応の結果、クリーンも合わ
これらの対応を行うだけでも、見える
設けることによる品質の確保にも抜かり
せて向上する場合が多いため)
。
効果として機械としては約35%の電力
はない。オプションにはなるものの、最
表1、図3には反映していないが、人
が削減される試算である。今のところオ
終フードゾーンの仕様を選択することに
件費削減のためのタンデム仕様、稼働率
プション仕様として選択いただくことに
より、さらなる残留溶剤対策(追加乾燥
アップのための印刷機とのインライン仕
なるが、機械寿命を考えた場合、経済効
器)
、熱シワ対策(冷風ゾーン)等の要
様、納入から廃棄までの機械をサポート
果は非常に高く、これからの機械には是
求への対応も可能である。
するメンテナンス体制もニーズとしてい
非とも導入を薦めたい。
ただいていることも記載しておく。
3.4 クリーン
3.2 品質向上
また、テーマからは少し逸れるが、近
乾燥器(給気系統のダクトを含む)接
い将来の無溶剤化を見据えて、ノンソル
ドライラミの命ともいえる巻取部には
ガス部SUS仕様は国内においてはほぼ一
機の引き合いは勿論のこと、ドライ用
アキューム機構を設けていることが最大
般的となりつつある。中性能フィルタ
(既
コータヘッドとノンソル用コータヘッド
の特徴であり、静止した状態で安定し、
出)をHEPAフィルタへの仕様アップも
の兼用機の需要も出始めてきた。国内に
コーティング部
No.1巻出部
巻取部
アウトフィード部
アキューム部
ラミクリーニング部
No.2巻出部
図2 FML2の姿図の1例
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表1 ニーズと対応の代表例
目 的
機 構
環境、省エネ、管理
乾燥器用送風機インバータ化
対応状況
区分
△
a、他
備 考
送風機 要防爆仕様
環境、省エネ
高効率機器使用
△
a
テンコンモータのみ標準
環境、省エネ
乾燥器排気再利用
〇
a
設備としては標準
客先設備側での対応が主
環境(資源の減)、省エネ
VOC排熱利用、溶剤回収
△
a
環境(資源の減)
原反小径対応※1、リード紙対応
△
a
巻芯ロス
ロスレス巻取※1、静止巻取
〇
b
FL2,FML2で機構異なる
巻取ロス
ニアロール
〇
b
エア式※1、電動式選択
多段階仕様有
※1
製品カール
スーパーテンション装置
△
b
異物混入(紙継)
巻出スライドカッター
△
b,d
異物混入(紙継等)
ゴミトリロール
△
b,d
異物混入
巻出巻ずれ防止装置
△
b,d
異物混入
メカチャック、ハイロック
△
b,d
異物混入
乾燥器直前中性能フィルタ
△
b,d
段取時間短縮
スリーブ圧胴
〇
c
段取時間短縮
ロングストロークチャッキング
〇
c
生産速度アップ
大風量乾燥器
△
c,b
〇
c,a,b,d
〇
d
※1
清掃性向上(還流装置)
AQチェンバードクター
清掃性向上(乾燥器内)
ノズル脱着ワンタッチ化
錆対策
乾燥器・ダクト接ガス部SUS化
△
d,b
管理
異物検査装置・膜厚計
△
他
ウェブクリーナ等含
紙粉(紙管)対策
FML2は〇
2腕圧胴仕様(△)
FML2は〇
各項目への波及効果有
ISO関連で増えつつある
〇:標準 △:オプション(またはオプションの内一部のみ標準対応)
に対して進んでいる雰囲気を感じる。
※1:登録特許有
かかい摘まんで記す。
なお、情報としては古いかもしれない
6%
が、海外のラミネータ用接着剤の比率を
19%
26%
参考として記す。ヨーロッパ、アメリカ
幸いにして当社は、機械メーカーとし
ブラジルでは60%以上がノンソル向け
ては、比較的早くからウェブハンドリン
と思われるとの社内資料がある。
グ研究に取り組んでいる。あらゆる現象
が解明されているわけではないが、ウェ
4.最新技術
a 環境・省エネ
b 品質
ブハンドリング理論により機械診断を行
食の安全が取り沙汰される昨今、食品
い、搬送に起因するトラブルを減じる適
の保存性を高める技術についての話題が
正ロール配置の機械を構想中である。例
比較的身近な存在となってきている。
として、フィルムのシワ発生が起きにく
また、品質、環境・省エネへの対応を
c 稼働率
どのような技術で実現しているかを確認
d クリーン
する上でも、ドライラミの新技術につい
その他
ての注目度は高まりつつある。残念なが
ら、当社のドライラミには、胸を張って
図3 ニーズの割合
ル配置の見直し)
では年間の接着剤使用量の50%以上、
36%
13%
4.1 ウェブハンドリング(ガイドロー
く、かつ、紙通し作業が容易なロール配
置などがある。
4.2 NEWチェンバードクター(仮称:
Dチェンバードクター※2)
「画期的な最新の技術を搭載!」と言え
これまで高粘度(主にレトルト用)の
るような、目新しい技術は現時点ではな
接着剤は、粘度管理も厳しくどちらかと
おいても注目を集めてきているが、比較
いのが実情である。よって、当面は既存
いえば苦手意識を持っていた。このこと
的海外向けの引き合いには、
ノンソル(水
の技術に磨きをかけ、客先要求を満たす
はドライラミを販売する上で大きなネッ
性化)が多くあり、国内市場よりも環境
ことを目指している。その中からいくつ
クとなっており、ナチュラルドクターと
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の兼用が可能な構造、スペースの確保を
当社の視野を広げるとともに、社会的技
し、コンバーター各社の判断のみでは、
余儀なくされていた。
術の発展への貢献にも繋がるものと考え
方向性の決定自体が如何ともしがたいの
ている。
が実情と考える。よって、いただいた要
NEWチェンバードクターはドライラ
ミ用のレトルト接着剤をターゲットとし
て開発し、当社テストデータによると、
求と社会情勢を踏まえ、機械仕様として
6.おわりに
の進むべき方向性を見定める目を養うこ
従来型のAQチェンバードクターに対す
世界的な人口増大による食糧不足、包
とがメーカーとしても不可欠である。そ
る均一な塗布において優位性が見えてい
装形態・概念の変化≒社会の変化に伴う
して方向性が定まった後は、要求を柔軟
る。現在運用も踏まえ、実機への導入を
具体的な要求は、現時点では明確にはい
に取り入れ、その時代に適した製品の永
計画中である。
ただいてはいないものの、確実に近い将
続的な開発がメーカーの責務であると考
来の仕様に反映されるはずである。
えている。
4.3 NEW巻取システム
(ワインド
※2
スター※3)
例として、包装は「捨てるもの」から
なお、本稿は、社内プレゼン資料およ
「守るもの」と概念が改められ、また、
び当社関係各位からの聞き取り情報を参
従来の当社の「トルク一定カーブ」で
通信販売の割合の拡大、個食による包装
は、トルクは一定となり、ロス低減の効
形態の変化、廃棄エネルギーの大きいア
果はあるものの、必ずしも製品に対し最
ルミを使わない流れも、緩やかにだが生
※2:特許申請中
良(ロスが最も少ない)であるかは疑問
まれてきている。
※3:商標出願中
であった(巻き締まりに対しては有効で
考に作成した。
社会的な大きな流れによる要求に対
はあるが、ロスそのものに対しては、製
品・品質次第で良否の判定が異なる等)
。
現在、理論と実践の融合した新システ
ムでデータの蓄積を行っている最中であ
る。汎用的な導入にはまだ時間がかかる
ことが予測されるが、近い将来の希望に
なるものと考えている。
5.今後の展望
ここまで良いことを中心に記載してき
たが、現実的にはドライラミ(に限らず
多くのシステム)は、潜在的に不安定な
要素を抱えているのもまた事実である。
過去には起こっていない不明な現象の発
生、ソフトに密接に関連していると思わ
れる不可解な事象、機械メーカーではコ
ントロール困難な品質の高まり、使用資
材(特殊基材、薄物基材、接着剤)の変
化などが挙げられる。これらの現象の主
原因の追究、改善を目指し、機械として
のさらなる完成度アップを目指している。
また、ドライラミにて培ったノウハウ
と、磨き抜かれた優れた技術を武器にし
て、軟包装以外の分野へのシェア拡大を
目指している。特に電池関係・高機能性
材料関係の分野、医療分野等への進出は、
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