富山湾漁場環境総合調査(水質)について

富山湾漁場環境総合調査(水質)について
富山県水産試験場
主任研究員 辻本
栽培・深層水課
良
1 背景・ねらい
富山県水産試験場では、富山湾の漁場環境を把握するため平成13年度に富山湾漁場環
境総合調査を実施した。それから5ヵ年が経過したことから、平成18年度に第2回目の総
合調査を実施し、水質環境、底質環境、藻場および餌料環境について調査した。
水質環境調査では、富山湾全域に及ぶ表層海水の水質分布を把握するため、富山湾内
に36地点を配置し、平成18年6、9、12月および平成19年3月期に調査を行った。また、表
層海水中に出現する植物プランクトンと動物プランクトンの季節変化を明らかにするた
めに、富山湾奥部に位置する神通川河口海域において月1回の調査を実施した。
2 成果の概要
(1)水質分布
富山湾の表層には、河川水の影響を受けた低塩分水が広く分布していた。栄養塩の
ひとつであるケイ酸態ケイ素は、塩分の低いところで濃度が高くなっており、塩分分
布と良く対応していた。なお、ケイ酸態ケイ素は、植物プランクトンの珪藻類が増殖
するうえで必須な栄養塩であり、主に自然の風化作用を受けて河川から海に供給され
る。
(2)植物プランクトン
神通川河口海域における植物プランクトンの細胞数の季節変化を調べた結果、植物
プランクトンの細胞数は、暖水期に多いことが明らかとなった。いずれの季節も珪藻
類が優占種となる場合が多く,これらは動物プランクトンや魚介類の餌として非常に
重要な種である。一方、赤潮による有害な影響を引き起こす種が含まれる渦鞭毛藻類
が優占種となることはなかった。富山湾の表層海水中には、河川からケイ酸態ケイ素
が豊富に供給されており、珪藻類の増殖が促進されていると考えられる。
(3)動物プランクトン
神通川河口海域における動物プランクトンの個体数の季節変化を調べた結果、動物
プランクトンの生息密度のピークは、植物プランクトンのピークから1~2ヵ月遅く現
われた。カイアシ類の個体数が最も多く、次いで枝角類が多かった。カイアシ類や枝
角類は、多くの魚介類の餌となっており、特に仔稚魚にとって重要である。
3 成果の活用面・留意点
富山湾の漁場環境を保全していくためには、その特性を把握することが必要である。
今回の結果から、富山湾における低次生物生産(栄養塩→植物プランクトン→動物プラ
ンクトン)に対して、河川水の果たす役割のひとつを明らかにすることができた。5ヵ年
ごとの総合調査を継続し、今後とも富山湾の漁場環境を見守っていきたい。
4
問い合わせ先
水産試験場 栽培・深層水課
TEL 076-475-0036
担当:主任研究員
2
辻本
良
(参考)具体的データ
(1) 塩分分布
(2)ケイ酸態ケイ素の濃度分布
平成18年6月5~8日における表層海水中のケイ
平成18年6月5~8日における表層海水中の塩分
*1
分布を示した。塩分15 PSU 以下の低塩分水が、 酸態ケイ素の濃度分布を示した。濃度は、3~114
小矢部川・庄川河口海域、神通川河口海域および μM*2の範囲であった。小矢部川・庄川河口海域、
黒部川河口海域に分布した。また、富山湾沿岸に 神通川河口海域および黒部川河口海域で濃度が高
は塩分25 PSU以下の海域が広がっていた。
かった。ケイ酸態ケイ素の濃度分布は、塩分分布
と良く対応していた。
(3)植物プランクトンの季節変化
(4)動物プランクトンの季節変化
250
その他
渦鞭毛藻類
珪藻類
5.0
4.0
個体数(個体/㎥)
3.0
2.0
1.0
その他
矢虫類
枝角類
カイアシ類
200
150
100
50
2月26日
2月5日
1月5日
11月30日
11月6日
10月4日
9月4日
8月1日
7月3日
4月6日
2月26日
2月5日
1月5日
11月30日
11月6日
10月4日
9月4日
8月1日
7月3日
6月8日
4月26日
4月6日
神通川河口海域における植物プランクトンの季
6月8日
0
0.0
4月26日
細胞数(×10^6/L)
6.0
神通川河口海域における動物プランクトンの季
6
節変化を示した。細胞数は、8月1日に5.1×10 細 節変化を示した。個体数は、10月4日に196個体/m3
胞/Lで最も多く、2月26日に1.8×103細胞/Lで最も で最も多く、6月8日に1.24個体/m3で最も少なかっ
少なかった。6~10月の暖水期にかけて植物プラン た。全期間を通した出現個体数では、カイアシ類
クトンが多かった。各月の珪藻類の占める割合は が最も多く、枝角類がそれに次いだ。
35.5~99.1%の範囲にあり、珪藻類が優占種とな
る場合が多かった。一方、渦鞭毛藻が優占種とな
ることはなかった。
*1:Practical Salinity Unitの略で塩分の単位を表す。日本海の沖合を流れる対馬暖流水の塩分は、
33 PSU以上である。塩分33 PSUを100%とすると、15 PSUは45%、25 PSUは76%に相当する。
*2:栄養塩などの濃度の単位を表す。マイクロ(μ)は10-6、モル(M)はmol/Lを意味する。
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