重粒子線研究センター見学レポート

~群馬大学重粒子線医学研究センター見学会レポート~
2016 年 6 月 4 日、群馬大学の重粒子線医学研究
センタ―の見学会に参加してきました。
施設見学の後、重粒子線治療についての講演を
聞きました。
最近、何かと耳にすることが多い「先進医療」
という言葉。その治療の一つがこの重粒子線治療
なのです。
この「重粒子線治療」は何かといいますと、主にガン治療に使うもので、ガン細胞に照射して、ガン
細胞をやっつけます。従来、ガン治療は手術により摘出していましたよね。また、放射線を当てること
で、ガン細胞をなくす、という治療もあります。ただ、放射線治療だと体の一部を切り取ることなく治
療ができて、その分、体への負担は小さいですが、副作用も多く、放射線により正常な細胞をも壊して
しまいました。その点、重粒子線では、ガン細胞へピンポイントで照射するので、正常な細胞を壊すこ
となく治療できます。
重粒子線で治療が可能なのは、前立腺ガン、肺がん、頭蓋低ガン、頭頸部ガン、肝ガン、子宮頸がん、
膵ガン、骨軟部ガン、小児ガンなどです。胃ガンや乳ガン、食道ガン、首辺りなど不規則な動きをする
部位にはこの治療は適さないそうですが、肺ガンは呼吸に合わせて自動的に照射する技術があるためで
きるそうです。また、首辺りは様々な神経が通っているため、その神経に当たってしまうと、思わぬ障
害を引き起こす可能性もあるので、今の技術では重粒子線治療は行えません。
薬を服用すれば治るもの、全身をめぐる血液のガンなどは、重粒子線治療は行いません。
施設はこのような感じです。
この部屋の機械でぐるぐる回転しながら光の速さまで出します。その中で、不純物等を取り除き、
隣の部屋の治療室で照射します。この機械の運転、照射などはすべてコンピュータ管理です。
この治療は、適応する部位のガン患者が全員できるとは限りません。治療の第一選択は手術ですが、
手術したら機能損失の可能性がある、場所が難しい・麻酔ができない・心臓への負担・高齢などの条件
があるため手術ができない、手術しても残ってしまうかも、手術拒否の場合に重粒子線治療ができる可
能性があります。
まず、初診で病状の確認、説明を行い、検査し、治療計画を作成します。その後、治療の準備にかか
るのですが、重粒子線治療の間は一切動くことはできません。そのためのオーダーメイドの固定具を作
成し、その状態で CT 撮影を行います。治療は CT を見ながら行われます。経過観察を行いながら、入院
または通院で、病気によって照射回数が違う治療をこなします。
例えば、肺ガンの治療は、照射が 4-5 分、準備を含めて 30-60 分、1日1回です。治療期間は4週間
(週4回×4週間=計16回)です。
これが治療室です。左にあるのが、CT、人形の横にあ
るのが照射機です。この写真で見えませんが、上にもあ
ります。これでは右側の照射ができないように見えます
よね?大丈夫です。下のベッドが反転するので、右側の
照射もできますよ。
キューピー人形の上に被せてあるのが、オーダーメイドで作るものです。水をかけるとゆるくなります。
ここにセット
これを奥の機械にセットします。この箱の中の形は、患者さんのガン組織の形によって作られます。
照射しなくていいところにはあまり当たらないように、ガン細胞の中心にはしっかりと当たるようにな
っています。
照射中は痛みなどは感じません。熱いのかな?など疑問はあると思いますが、ほとんど感覚はないそ
うです。皮膚に近いと赤くなり、日焼けのようになることもあるそうです。
最後に気になるのはお値段ですよね。
例えば、切除非適応の骨軟部腫瘍だと 240 万円前後です。重粒子線治療は先進医療として認められて
いるので、保険診療と併用して治療を受けることができます。ほかの治療ですと、重粒子線治療は 314
万円かかりますが、通常の診療と共通する診察、入院、検査、投薬などについては、健康保険等が適用
されます。
① の自己負担についてこの 314 万円を負担するのは難しいですよね。そこで!医療保険の先進医療特
約等に入っていれば大丈夫です。
また、健康保険の高額医療制度も使えますよ。
現在、日本人の 2 人に1人はガンにかかるといわれている時代です。ガンにかかって、仕事を辞め
てしまうと、治療費や生活費などが圧迫してきます。重粒子線治療は入院せず、通院で治療ができま
す。午前中休んで治療して、ということもできます。
先進医療を使えば治るガンも増えてきました。お金がなくて治療できない、ということにならない
ように、今一度、ご自分の契約内容を確認してみてくださいね。
2016.08.01 藤枝結華