第2回公開質問 - 島根原発・エネルギー問題県民連絡会

2016年8月2日
松江市長 松浦正敬 様
島根原発・エネルギー問題県民連絡会
代表世話人
北川 泉
連絡先住所 松江市朝日町 489
三洋苑ビル1階D室
「原子力災害に備えた松江市原子力災害広域避難計画」に関する第二回公開質問
国の原子力規制委員会の田中委員長が、原子力発電について、
「規制基準への適合性を審査するが、
安全だということは申し上げません」と繰り返し述べているように、誰も原発の安全性を保証して
いません。このような状況下で、島根原発 2 号機の再稼働に向けた審査が進められていることに対
して、多くの県民は島根でフクシマのような事故が再び繰り返されるのではないかと危惧していま
す。
市民の命と暮らしを守るためには、島根原発でフクシマのような事故を起こさせないことにつき
ますが、仮に重大事故が発生しても市民が被ばくすることなく、安全が守られなければなりません。
「原子力災害に備えた松江市原子力災害広域避難計画」は、その重大な役目を担うものと位置付
けられます。そこで、去る 5 月 16 日付で、「原子力災害に備えた松江市原子力災害広域避難計画」
に関する基本的事項について質問しました。貴職からの 7 月 7 日付回答は、島根県知事宛の同じ主
旨の質問への回答が国の教訓・指針等をそのまま回答するなど、ほとんど質問に対する回答と言え
るような内容ではなかったことに比べれば、ご自身で検討された回答と考えられます。しかし、そ
れでも回答までに約2か月間もかかった割には、質問の観点からずれている回答であったり、具体
的に問いているのに「総合的に判断する」など、具体性に欠ける回答、曖昧な回答であったため、
再質問するものです。また、原子力災害時における市民の避難計画については、細部にわたって検
証しなければ、その実効性を信頼することはできません。そこで、基本的事項に関する再質問に続
いて「追加の質問」を行いますのでご回答ください。
ここで、地方自治体たる松江市は、原子力災害の影響から逃れることについて、松江市に住所を
有する市民・企業・団体など、及び松江市を訪問している観光客・ビジネス客などについて、直接
一次的に責任を持ち、このことは島根県や国に責任を転嫁することは出来ない重要な原発立地自治
体であることをまず確認しておきます。島根県や国が主な役割を担う事項でも、松江市が直接一次
的に親身になって市民への対応をすべきで、島根県や国への丸投げはしてはならないことです。そ
の意味では、避難計画・対策について、島根県や国に追随するだけでなく、松江市民の安全安心の
観点から、必要な場合には島根県や国と対峙し、方針を変えさせるように動く気概も必要です。松
江市がそのような立場であることを再認識した上で、真摯な回答をお願いするものです。
なお、回答に当たっては、8 月 17 日までに文書で回答をお願いします。また、別途、意見交換の
場を設けていただきたく、併せて要請します。
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1.第 1 回質問に対する7月7日付市長回答への再質問
1―1 福島第一原子力発電所の事故から得られた教訓に関する回答について
質問にある「避難行動及び避難計画」には、
「事故発生直後の避難」のことだけでなく、避難生活、
帰還、移住、補償といった観点も総合的に含まれるものと考えます。これは福島原発事故から5年
以上も経過した現時点では当然、学ぶべき教訓と考えます。教訓をいかに自分のこととして学んで
いるかが、松江市における避難計画・対策には重要です。それらの観点からの教訓が回答にあげら
れていないことが、計画や対策に対する考えや対応の狭さを感じさせます。
この観点から、次のように例として挙げる教訓への言及がありませんでした。教訓について改め
て回答ください。
①刻々と変わる風の向きによって放射性物質の流れる向きも変わり、避難する方向を安全な方向に
もっていけなかったこと、そのような対策が取れなかったこと、は教訓にはありませんか。これ
は単に SPEEDI の活用ができなかったという技術面だけではないと考えます。
②避難時に亡くなった人はもとより、避難生活の長期化やそれに伴う事業継続の困難の中で、関連
死も非常に多く発生していますが、このことから学ぶことが教訓にはありませんか。
③回答の「(4)広域的な避難について」の中に「住民避難が長期化した」とはありますが、前記②
にもあるような避難生活、帰還、移住、補償といった観点からの教訓は無いのですか。
1-2 島根原発2号機の再稼働について地元判断を求められた場合に関する回答について
①地元同意・不同意の判断についての回答が、島根県知事宛の同じ主旨の質問への回答をほぼその
まま流用した回答となっています。島根県と松江市は回答を合わせるような取り組みをされてい
たのですか。島根県と松江市はあくまでも異なる地方自治体であり、異なる回答があっても問題
はないと考えています。
②質問では、「地元判断基準として避難ないし避難計画は位置づけられるか」「位置づけられるとし
たら地元同意・不同意を分ける境界線として避難計画の実効性は『「具体的に』どのようなものか、
わかりやすく」と問うています。
原発再稼働についての地元判断は市民の暮らしや命に影響を与える重大な問題であり、その判
断基準は予め明示されるべきものです。ところが、市長回答にある「総合的判断」は極めて曖昧
であり、市長の裁量が大きな比重を占めることになります。これを避けるためには、判断基準と
する事項を具体的に明確にするとともに、各事項の充足状況ないし到達レベルを個々に具体的に
定めるべきです。
地元同意の判断基準が松江市において既に用意されているのであれば、その公表をして下さい。
特に、今回質問の原発重大事故時の避難について、地元判断に占める避難計画の位置づけ、及び
同意を可と判断するに足る避難準備計画の到達レベルについても具体的に明示して下さい。
③回答受け取りの場で口頭ではありますが、松江市幹部から「判断基準は事前には検討しない」
「避
難計画は判断に直接的には結びついていない」との発言がありました。幹部がこのように考えて
いるとしたら由々しき問題と考えます。この真意について、再度きちんと説明下さい。
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1-3 松江市の避難計画の現状に関する回答について
市長は、
「避難計画は、福島第一原子力発電所の事故から得られた教訓などを踏まえて策定してい
るが、避難車両の確保、避難退域時検査場所における体制の整備などを具体化し、計画の実効性を
高める必要があると認識」と回答されています。
「再稼働に同意できるに足る避難計画・対策の水準」をあらかじめ明示し、松江市の避難計画に密
に関係する県内外自治体で合意された上で、その水準に達成していない限り、いつ原発過酷事故が
発生するかわからない性質上、見切り発車で再稼働に同意することはあってはならない(同意でき
ない)と考えます。市民が安全確実に避難できることを実際に保証できる水準の避難計画・対策を
達成できていることが必要です。
①回答の意味するところは、
「広域避難計画は、現状では不備である」との認識で間違いないですか。
別の表現を用いれば、広域避難計画の実効性は現在、何パーセント程度であり、再稼働同意の目
標として何パーセント程度の上積みを目標とされているのか、具体的な項目を挙げて回答をお願
いします(避難の場合の実効性が十分でこれ以上高める必要はないと判断されている項目、及び
実効性が十分でなく高める必要があるという項目の両方について)。なお、具体的な項目を挙げて
各々基準目標値と達成度を見える化、定量化して計画・対策を進めることが大事であることは、
松江市もご承知のことと考えます。
②避難計画・対策の現状は、
「再稼働に同意するには不足あるいは不十分な点がある」、つまり「再
稼働に同意できる水準にない」と現状で考えていることで良いですか。仮にそれでも現状で同意
できる水準にあるという考えならば、その合理的な根拠を明示下さい。
③前記の基準と現状を明示された上で、避難計画・対策が再稼働に同意できる水準に到達するのは
いつ頃と見込んでいるかを回答ください。
1-4 周辺自治体と中国電力(株)との安全協定締結に関する回答について
問4「30 キロ圏内の他市が、松江市と同レベルの稼働、再稼働についての同意・不同意の権限を
持つように、島根県・中国電力に働きかける意思はないか、ないのであれば、その根拠と理由を示
す」についての市長回答は、
「他市の取組みに対して特に申し上げることはない」であり、
「松江市
は松江市民の安全の確保だけを考えて安全協定を結んでいる」とのことである。質問では松江市の
安全協定のことには特に言及しておらず、
「他市の取り組みに対して特に申し上げることはない」
という根拠と理由を求めています。このように、質問についての回答がずれていることから、再度
回答を求めます。
ここで、福島原発事故の際には、飯舘村など 30km圏外の地域も放射能に汚染され、住民は避難
生活を余儀なくされてきました。民間研究所が作成した原発事故による放射能汚染シミュレーショ
ンでは、風向きによっては島根県全域が避難対象となる可能性が示されている。隠岐の島もこの例
外ではなく、2 万人が短時間に脱出できる船の用意もありません。
島根原発の 30km圏外においても、事故時には長期にわたる避難が予見されるものであり、貴職
が問1に対する回答において、教訓として挙げた様々な問題は、30km圏外の住民にとっても重大
な問題であるはずです。
つまり、島根原発においても、原発過酷事故の際の影響は、30Km 圏内の自治体に対してはもちろ
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んのこと、30Km 圏外の自治体に対しても、様々な多大な影響を与えることになります。
このような大きな影響を与えうる再稼働が島根県および松江市のみの自治体の同意の判断でな
されるとしたら、ひとたび重大な事故が起これば、原発立地自治体としての松江市は、その再稼働
に唯一同意したことによって生じ、大きな事故影響を受けた他自治体に対して、重大な責任を負う
ことになります。
にも拘わらず、
「自分のこと(松江市民・企業等)しか考えない」
、重大事故が起こって他自治体
に大きな影響を与えても「他自治体のことはどうでも良い」というはなはだ利己的な考えとみなせ
ますが、こういう考えをしているということで良いですか。良いと考えているとすれば、それで良
いという合理的な根拠を示して下さい。
1-5 熊本地震を踏まえてに関する回答について
①複合災害への対応方針は、
「まずは地震や津波への対応を優先し、指定避難所や自宅等で屋内避難
を実施する」とありますが、地震や津波時に指定避難所内はともかく、災害発生直後は「自宅等
で屋内退避」を行わず、屋外退避が基本です。地震発生時から放射能影響(漏れ・拡散)が短時
間で発生し、かつ地震が継続している場合、地震・津波の屋外退避と原発事故(放射能影響)で
の屋内退避が矛盾します。市民はどうすれば良いのですか。合理的な方策を具体的に説明下さい。
なお、地震・津波と放射能影響の両方を避けるための指定避難所に避難するにしても、道路や橋
の不通が起こった場合や要介護者・支援者の場合に移動が直ぐにはできす、移動中の被ばくも避
けられません。このことはどう考慮されていますか。
②「一定基準の放射線量が測定された場合には安全を確認してから広域避難を行う」とありますが、
どのような放射線量の場合でどのくらいの時間をかけて安全確認をするのですか?。また地震発
生から避難すべき放射能影響(放射線量)になるのが短時間であった場合、どのように短時間で
安全確認を行うのですか?
③「避難経路については優先的に復旧を行う」とありますが、放射能影響下で誰がその復旧にあた
るのですか?。このような場合、原発災害だけの場合の避難対応要員以上の復旧要員が必要にな
りますが、このことは避難計画・対策にどのように盛り込まれていますか?
④「避難経路については耐震性の高い緊急輸送道路等を指定しており、
・・・、複数の避難経路を選
定している」について、回答受け取りの場で、口頭ですが、
「具体例として鹿島町の佐陀川にかか
る佐太橋が耐震性の高い緊急輸送道路であるか」と問うたところ、松江市幹部から「耐震性の高
い緊急輸送道路でなく、ここが通れなくなった時は南側の道路・橋を通るう回路があり、市民配
布の避難計画にも明記してある」とのことでした。ところが、実際に市民配布の「鹿島地区の避
難計画」には記述がありません。これではこのような複合災害が起こったときにとても避難でき
ません。これは一つの例示ですが、この観点について、正しい説明を再度求めます。地区配布の
避難計画に、地震を含む複合災害の場合が考慮されていないのではと考えますが、この点はどう
ですか。
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2.避難計画に関する追加質問
避難計画・対策の達成内容・レベルは、再稼働の同意・不同意の判断基準になるべきもの、とい
う観点でもあるが、必ずしも再稼働の観点だけで行われるものでない。現在、原子炉格納容器に比
べて安全レベルの低い核燃料プールにはたくさんの使用済核燃料が保管されているが、そのことを
考えると現時点で既に十分な避難対策が確立されていてしかるべきである。これは 5km 圏内の PAZ
内市民にヨウ素剤が配布されていて、このヨウ素剤の服用の可能性が今にも有りうると島根県・松
江市が認めていることとも合致する。そのことから、この避難計画・対策の完備は、再稼働以前の
問題でもあり、早急な対応が必要なものであることも確認しておきたい。
2-1
例えば、宍道断層帯部分の地震災害が起こってその周辺の道路や橋の被害が大きく通れな
くなった場合、恵曇地区、佐陀地区、講武地区の市民はどう避難するのか。このような具体的な観
点を網羅的につぶして対策を取っているか。終わっているか、終わっていない場合、いつ終わる見
込みか。
2-2
原発事故で放射能影響が起こった場合に、例えば北東の風が吹いている場合、鹿島町の市
民はどのように避難すればよいのか。大田方面(南西方面)への指定経路ではもろに長時間被ばく
してしまう。県道 264 号からだんだん道路方面への避難が合理的だが、「鹿島地区の避難計画」に
はこのような場合の避難方法が明示されておらず、役に立たない。さらに、短時間のうちに風向き
が変わる場合には、避難をより一層困難にする。この点についてどう考えているか。
2-3
昨年行われた避難計画向け調査では、単に「平成27年10月1日現在で家族全員が在宅
している状況での調査」としていたが、最悪ケース(例えば、家族で唯一の車を所有する夫が出か
けていて家には不在で、車で避難できない家族が取り残されているなど、避難者数・要支援者数が
最大の場合など)の観点での調査及び計画への組み込みも必要である。その観点の調査は。いつ、
どのように行うのか。
2-4
松江市は、観光立脚あるいは企業誘致に積極的で、このこと自体は良いことだが、至近距
離に原発を抱え、原発災害リスクも抱えている。ひとたび原発大災害が起これば、避難の必要や被
爆の危険が発生する。また企業にとっては事業継続できなくなる。このことを考えると、方針が矛
盾しないか。原発リスクを広報することは必須だが、このことで原発の存在が観光や企業誘致の足
を引っ張ることが明らかで、広報することに消極的になることも想定される。このことをどう考え
ているか。
2-5
観光客やビジネス出張者など松江市への一時的な訪問・滞在者へどのように避難計画のこ
とを周知しているのか、するのか。また、そもそも、現時点でそのような説明パンフなどが存在す
るか。
5
2-6
原発災害発生時の避難の計画・対策が市民に周知されようとしているだけで、その後の避
難生活、帰還、移住、補償といった説明がなされていない(説明パンフもない)。このことをどう
する考えか。このことをきちんと市民に説明されていることも、再稼働の同意・不同意の判断には
必要である。なお、そもそも避難計画・対策と同様に原発が稼働していない今でも必要なことであ
る。
2-7
中国電力の島根原発安全対策費がうなぎ上りに増大しているように、避難計画・対策を詰
めれば詰めるほど、松江市の避難に係る費用(人的エネルギーを含む)も増大していく。いくら、
国や島根県からの交付金、中国電力からの諸税・寄付金があったにせよ、市民や企業などの血税を
一民間企業の事業に起因する、この避難計画・対策につぎ込み続けなければならず、はなはだ問題
であるが、このことについてどう考えているか。
2-8
原発事故に伴う放射能影響災害が発生した場合、松江市職員はどのように対応するのか。
鹿島支所の少ない職員数ではとても対応できない。他地区から応援が来るとしても、この点は、職
員自身の地震被災、また地震による複合災害で道路・橋が遮断された場合にはとても来ることが出
来ない。またそもそも放射能影響環境下で危険な鹿島町に、いざその時にどれだけの職員が来る意
思があるか。これをどのように担保するかが具体的に避難計画で考慮されているか。
2-9
避難計画・対策が想定しているように正しくなされること(問題がないこと、基準を達成
していること)の総合的な検証(試験)はどのように行うのか。部分的な検証の積み上げだけでな
く総合的な検証が必要です。総合的な検証で問題があれば(基準に達しない点があれば)、その点
を改善した上で、再検証も必要になる。一般には、完成度を上げるには、数サイクルの実施が必要
となる。
以上
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