農学部 HAYAKAWA 応用生物科学科 生物資源制御学講座 YOUICHI 早 川 洋一 教授 「昆虫生理活性タンパク質・ペプチドに関する作用機序の解明と 医動物薬への応用」 [キーワード] 昆虫,サイトカイン,ペプチド,生理活性,ストレス 昆 虫 か ら 細 胞 増 植 因 子 ・ サ イ ト カ イ ン の 発 見 研究紹介 ◆研究概要 当研究室では,昆虫の生活や行動上の特性について, 寄生,変態,休眠,食欲,ストレス応答,生体防御など の生理現象に焦点を当て,昆虫の未だ知られざる潜在能 力を生化学的,さらには分子生物学的に解析していま す. ◆GBP(発育阻害ペプチド)の発見 寄生バチは宿主の幼虫体内に卵を産み,幼虫体内の栄 養成分を吸収し,幼虫が蛹になる前に卵から孵化して幼 虫の体を突き破り外に出てきます.小説や映画の「エイ リアン」を連想される方も多いのではないでしょうか. この寄生バチに寄生された宿主幼虫の血液中から宿主の 発育を遅延させる新規生理活性ペプチドを世界で初めて 発見,単離し,発育阻害ペプチド(growth-blocking peptide, GBP)と命名,特許登録に至っております.発 見した GBP は低分子量(アミノ酸 25 残基)で,高濃 度では昆虫の発育を阻害し,逆に 1nmol~数百 nmol 程度の低濃度では細胞増殖作用を示すことから,医動物 薬に応用できる可能性があります. 子を発見しました.昆虫に限らず多くの生物が,ストレス 順応性を有することは古くから知られた事実です.具体的 には,ストレス前処理をすることによって,その後のより 強度のストレスに対する抵抗性を獲得する能力です.同定 した因子は、注射によってストレス前処理をしていない昆 虫にストレス抵抗性を付与する生理活性を持っています. この因子の作用機序などの研究や哺乳類の機能的相同因 子の探索を目指しています(特許の項を参照). ◆今後の展開 化学合成が容易な GBP は細胞増殖作用があるため,や けどなど皮膚移植の治療や癌治療への応用が期待できま す.また,ストレス順応性誘導因子は,益虫であるミツバ チやカイコの飼育に役立つばかりでなく,新規殺虫剤や医 動物薬の新規リード化合物としての利用も期待されます. ◆特許 「ストレス耐性付与組成物,ストレス耐性付与方法,スト レス耐性体内増殖方法,およびストレス評価方法」 特願 2015-059490 ◆殺虫タンパク質の発見 また,昆虫のストレスと死に関する研究にも取り組ん でいます.一般的に宿主は,寄生バチ幼虫の脱出前に死 ぬことはありません.しかしながら,宿主幼虫が飼育環 境の悪化により体調が弱っている時に寄生された場合に は顕著に死亡率が上昇します.この死因を解析する過程 で腸内バクテリア由来と考えられる「殺虫タンパク質」 を発見しました. ◆ストレス順応生誘導因子の発見 さらに,既寄生宿主幼虫体液中にストレス耐性誘導因 寄生された宿主の発育主の発育障害 掲載情報 2016 年 7 月現在 製薬・殺虫剤関連企業へ 一言アピール 昆虫からの生理活性物質の単離指導,新規殺虫剤開発への助言,昆虫を用 いた生理・行動解析アッセイ系の開発など,情報技術の提供ができます. 産学・地域連携機構より GBP が有する細胞増殖作用は,様々な用途での効果が期待できます.農薬や医療 関連の企業の方との共同研究も積極的に取り組んでいきたいとのことです. 佐賀大学研究室訪問記 2016 佐賀大学 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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