企業ネットワーク専門委員会 企業ネットワーク専門委員会

標準類制定状況
2015年度第4四半期
企業ネットワーク専門委員会
(JJ-22.13
(JJ-22.13第1版、
JJ-22.13第
第1版、SR-0069
SR-0069)
)
企業網インタフェース
SWGリーダ
四井 信平
(日本電気㈱)
CT I/F
SWGリーダ
恒本 真司
(富士通㈱)
■技術調査
1. はじめに
企業ネットワーク専門委員会は、企業網において電
話サービス等で利用される信号方式を標準化する活動
SR-0069
企業網における TV 会議システムに関
する調査報告書
の場のミッションを担っている。標準化の範囲は、企
業網インタフェースおよび Computer Telecommu-
2. JJ-22.13
nication Interface(以下 CT I/F)であり、それぞれ
2.1. 本標準の定義
サブワーキングを設けて標準化活動を推進している。
IP-PBX(Private Branch eXchange)間のプライ
・企業網インタフェース:端末-PBX 間相互接続
ベート網(IP 網)を中心とした IP プロトコルの標準化
・CT I/F:コンピュータ-PBX 間相互接続
を実施している。
企業網インタフェースでは、ITU-T、ISO/IEC 勧告に
今後の市場および国際勧告の動向を考慮すると、SIP
加え、近年では IETF の SIP を適用するための活動を行
(Session Initiation Protocol)プロトコルをベース
とした端末⇔PBX間のSIPプロトコル技術を企業網内
っている。
CT I/F では、2015 年度は ISO/IEC 標準の制・改定
においても検討する必要がある。
予定がないため、基本的に休会とした。ただし、ECMA
以上のことから新しい技術分野に対する最新の技術
会合の時期にTTC標準の制・改定の必要性を継続的に
動向や、それらに対する事業者側の対応状況に焦点を
チェックしている。
あて、標準化することとなった。
2015 年度第 4 四半期の標準化会議には、企業ネッ
トワーク専門委員会から以下の標準案を付議し、5 月
26 日に制定された。
2.2. 企業内での接続規定点について
本標準は、JJ-22.01 に規定されるフレームワーク
また、企業ネットワーク関連で今後必要となる標準
標準の網接続アーキテクチャにおいて、私設総合サー
化項目としてTV会議システムに関して調査を行い、調
ビス網交換機(PINX)と SIP 端末間(インタフェース
査報告書を発行した。
E) の推奨仕様を規定するものである。本標準は“企
業網内の SIP 端末⇔PBX 間の SIP プロコルの DTMF
■企業網インタフェース関連標準
JJ-22.13
企業 SIP 網に接続する SIP 端末⇔サー
バ間 DTMF 信号音伝送インタフェース技術仕様(第 1
版)
(Dual-Tone Multi-Frequency)信号音伝送”に特化
したプロトコルを標準化したものである。
図1に基本接続構成及びJJ-22.13のプロトコル参
照点の位置を記載する。
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◉標準類制定状況
TTC report 2016. July Vol.31/No.2
図 1 基本接続構成及び JJ-22.13 のプロトコル参照点の位置
着信側端末がDTMF信号音伝送のアウトバンド方式
2.3. 標準化ドキュメントの位置づけ
本標準のドキュメントの位置づけを図 2 に示す。
200 OK に DTMF 信号音伝送をアウトバンド方式で
JJ-22.13の位置
<サービス規定技術仕様>
付加サービスに関連する技術仕様
実現する情報を含んだ SDP(Session Description
XXXXサービスに関する技術仕様
Protocol)情報が収容される。
YYYYサービスに関する技術仕様
これにより、発着信両端末で DTMF 信号音伝送のア
ZZZZサービスに関する技術仕様
<接続インタフェース規定技術仕様>
フレームワーク内で用途/適用範囲
を制限した技術仕様群
を許容する場合、INVITE リクエストに対する応答の
AAAA
BBBB
CCCC
DDDD
技術仕様
技術仕様
技術仕様
技術仕様
ウトバンド方式を許容したこととなり、通話中の
DTMF信号はアウトバンド方式で伝送されることとな
る。
<フレームワーク規定技術仕様>
ベースとなるフレームワーク技術仕様群
フレームワーク規定
図 2 JJ-22.00 SIP 関連技術仕様の構成
2.4. JJ-22.13の概要説明
発信側端末がアウトバンド方式を要望しない場合、
INVITE リクエストにアウトバンド方式で実現する情
報を含まないSDP情報を収容して送信される。着信端
末は、受信したINVITEリクエストにアウトバンド方式
DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)信号音を伝
で実現する情報がない場合、発信端末がアウトバンド
送する方式として、DTMF 信号音を音のまま RTP
方式を許容していないと判断して、200 OK には
(Real-time Transport Protocol)で伝送する方式を
DTMF信号音伝送をアウトバンド方式で実現する情報
インバンド方式という。一方、DTMF 信号音を RTP の
1パケットとして伝送する方式をアウトバンドという。
を含まない SDP 情報を収容して送信する。
また、着側端末がアウトバンド方式を要望しない場
本標準は企業網内の SIP 端末間がサーバを介してア
合、
着信端末は受信したINVITEにアウトバンド方式で
ウトバンドDTMF方式を指定する場合のセッション確
実現する情報を含んだSDP情報が収容されていたとし
立手順、および SIP 端末間でのアウトバンドの DTMF
ても、200 OKにはDTMF信号音伝送をアウトバンド
プロトコル方式を標準化したものである。
方式で実現する情報を含まないSDP情報を収容して送
発信側端末がDTMF信号音伝送をアウトバンド方式
信する。200 OK を受信した発信側端末は、200 OK
で要望する場合、
音声コネクション接続要求のために、
にDTMF信号音伝送をアウトバンド方式で実現する情
RFC3261 による INVITE リクエストが、発信側端末
報を含まないSDP情報を受信したことで、
着信端末ア
から着信側端末に送信される。そして、音声でのコネ
ウトバンド方式を許容していないと判断して、インバ
クションを確立する。この時 INVITE リクエストには、
ンド方式で DTMF 信号音を伝送する。
DTMF信号音伝送をアウトバンド方式で実現する情報
を含んだ SDP 情報が収容されている。
2
図3にDTMFをアウトバンドで通話確立するシーケ
ンスを示す。
◉標準類制定状況
TTC report 2016. July Vol.31/No.2
図 3 DTMF をアウトバンドで通話確立するシーケンス
図 4 DTMF をアウトバンドで通知する Event Payload フォーマット
図4にDTMF Event Payloadフォーマットを示す。
企業ネットワーク内でも積極的に活用されている。TV
会議システムを実現するために使用されるプロトコル
3. SR-0069
企業網におけるTV会議システムに関
する調査報告書
は、基本的な呼制御方式に加え、会議制御方式、音声
符号化方式、映像符号化方式など多くの拡張が必要で
本調査報告書では、
TV会議システムの主な構成と必
ある。そのため、制御方式が複雑になりベンダー間で
要な装置間プロトコルを挙げ、企業ネットワークにお
の相互接続性の問題が指摘された。また、従来の TV 会
ける標準化の必要性を調査した結果を報告する。
議システムでは、ITU-T H.323プロトコルが用いられ
近年、TV 会議システムは、コスト削減、移動時間削
てきたが、国内キャリア網や海外ベンダー製品ではSIP
減、コミュニケーションの活性化等の効果が期待され
を用いたものが登場し、また、企業ネットワークにお
3
◉標準類制定状況
いてもSIPによるPBX間相互接続のための仕様が整備
されてきた。以上のことから、企業ネットワーク専門
員会にて、企業網におけるTV会議システムの標準化を
目指し調査を行なうこととした。
調査の結果、企業ネットワークに特化したTV会議シ
ステムの標準化の必要性は低いことが判明した。各拠
点の呼制御手順は、通常の企業 SIP 網プロトコル(JJ22.11)による手順を適用すればよいこと、また、使
用するメディア符号化に関する標準は、メディア符号
化専門委員会で制定した標準(JJ-40.30 SIP 網にお
けるオーディオビジュアル通信システム)で機能的に
満足するため、企業ネットワーク専門委員会としての
標準化は行わず、JJ-40.30 を適用することとした。
TV 会議システムは、WebRTC と呼ばれるウェブ・
プラウザ上で行なう方式も登場しており、従来型のプ
ロトコル(SIP/H.323)とは異なる方式で実現してい
る。今後、これらの新しい方式と企業ネットワークと
の接続で標準化ニーズが高まった場合、速やかに標準
化を行なう方針である。
4. 今後の予定
動画やチャットなど SIP プロトコルを絡めたメディ
アサービスのニーズが増大しており、企業ネットワー
クの観点から検討を進めてきた。今や、企業内の実運
用においてはサーバ・端末間のマルチベンダ SIP 接続
も活発化しており、これまで SIP プロトコルの基本接
続について標準化してきたが、さらに今後は、ニーズ
の高い付加サービス(SDP、7k コーデック、RTCP、
セッションタイマー機能など)について調査および標
準化を進めていく。
さらに企業内でのワークスタイル変革も進展してお
り、PBX 仮想化、ネットワーク・フォレンジックなど
様々な新技術が採用されつつある。このため、今後の
企業ネットワークで必要となる技術の動向や方向性を
調査していく方針である。
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TTC report 2016. July Vol.31/No.2