第 1 回 静薬学友会賞 受賞者 Award Recipients (4名) 平成28年7月17日 鈴木 康夫 Yasuo Suzuki (昭和39年卒)静岡薬科大学8回生 静岡県立大学薬学部名誉教授・中部大学客員教授 [ 受賞題目 ] インフルエンザ制圧に寄与する糖鎖薬学的研究と活動 略歴: 昭和39年静岡薬科大学薬学科卒。昭和42年同大学院薬学研究科博士課程中退。昭和42年同助手 (生化学講座)。平成元年静岡県立大学薬学部教授。平成8年同大学院薬学研究科長(兼)。平成10年同薬学部 長(兼)。平成18年同定年退官、同薬学部名誉教授・客員教授。平成18年中部大学生命健康科学部教授。平成 20年同ヘルスサイエンスヒルズセンター長(兼)。平成22年同生命健康科学研究所長(兼)。平成26年同定年 退官、同客員教授。平成16年日本薬学会賞、中日文化賞受賞。 受賞題目の概要: インフルエンザウイルス(以下ウイルス)は、自然宿主(野生水鳥)からヒトへ伝播し、さらに ヒトーヒト間伝播能力を獲得し、 しばしば、世界大流行を起こす。 私は、この分子基盤が、ウイルスのシアル酸という糖を含む糖鎖受容体の認識変異および 宿主域変異であること、 とりわけ、鳥ウイルスが、 どのようにしてヒトーヒト間伝播能力を獲得し ていくのかを分子、細胞、個体レベルで明らかにした。 上記の基礎研究に加えて、抗インフルエンザ活性を持つ多くの天然由来、化学合成糖鎖化 合物を発見し、地球規模の感染症から人類・社会を救う可能性を一歩進めた。 本研究の重要な骨子は、母校の静岡薬科大学、静岡県立大学薬学部で行われ、国際誌に発 信された。本研究は、これまで、分離されていた「糖鎖化学、糖鎖生物学」 と「ウイルス学」 「薬 学」の両分野を融合することにより初めて成し得たものであり、新たな「糖鎖ウイルス学」 「糖鎖 薬学」 という研究分野を開拓した。 これらの成果は、様々なメディアを介して、インフルエンザの制圧に寄与する活動として実 行された。 山本 敏博 Toshihiro Yamamoto (昭和42年卒)静岡薬科大学11回生 社会福祉法人 聖隷福祉事業団 理事長 [ 受賞題目 ] 医療・福祉経営における薬剤師の貢献の基盤づくり 略歴: 昭和20年生まれ 。神奈川県出身。昭和42年静岡薬科大学卒業後、イハラ農薬株式会社中央研究所 (当時)勤務を経て、昭和43年聖隷保養園(現・聖隷福祉事業団)に入職。聖隷浜松病院薬剤部勤務を経て、同 病院資材課長、事務長を歴任。昭和57年より同事業団理事を務め、平成12年9月より現職。一般財団法人芙蓉 協会(聖隷沼津病院)並びに一般財団法人恵愛会(聖隷富士病院)の理事長も務める。その他、静岡県社会福祉 法人経営者協議会 会長、静岡県医療審議会 委員、浜松商工会議所 副会頭など多数の公職に就任。 受賞題目の概要: 聖隷福祉事業団において、聖隷浜松病院の薬剤部に配属後、資材課へ異動し、薬剤の専門 知識をもとに価格交渉を行い、徹底したコストコントロールを実践。その後、聖隷浜松病院の 事務長を経て法人理事長就任以降、専門職出身である自身の経験を活かし、さらに強力な リーダーシップを発揮。本法人を「保健・医療・福祉・介護サービスを総合的に提供する事業 体」 として、国内でも屈指の規模(平成28年6月現在144施設294事業)を誇る社会福祉法人 へと成長させた。 中でも、国立病院の移譲や公立病院の指定管理者の受託など、多角的に事業を展開し、医 療・福祉分野の経営において、薬剤師が経営能力を発揮する上でのさきがけとなった。その 後、多くの薬剤師が法人の役員や病院経営に携わるきっかけをつくり、専門職の活動領域の 拡大が評価されたことで、医療技術職から経営管理者への転身 というキャリアモデルを形成 した。 現在では、放射線技師や臨床検査技師などその他の医療技術職による経営部門への転身 者も増え、多様な人材の登用で、法人の組織力の向上につながっている。 第 1 回 静薬学友会賞 受賞者 (4名) Award Recipients 平成28年7月17日 村松 郁延 Ikunobu Muramatsu (昭和44年卒)静岡薬科大学13回生 福井大学名誉教授、金沢医科大学客員教授、福井県立大学客員教授 [ 受賞題目 ] 受容体の表現型薬理学に関する研究および新薬開発への応用 略歴: 昭和44年静岡薬科大学卒。昭和47年同大学院薬学研究科修士課程修了。昭和52年京都大学大学院 医学研究科博士課程修了、医学博士。昭和53年京都大学医学部助手。昭和56年同講師。昭和57年福井医科 大学(現福井大学医学部)助教授。平成7年同教授。平成16年同医学図書館長。平成18年同医学科長。平成20 年同ライフサイエンスイノベーション推進機構長。平成24年福井大学名誉教授。同子どものこころの発達研究 センター特命教授。平成26年金沢医科大学・福井県立大学客員教授。昭和61年日本薬理学会学術奨励賞。 平成3年かなえ医学奨励賞。平成24年福井県科学学術大賞。 受賞題目の概要: 受容体は、神経伝達物質や薬物のターゲットとして、多くの生理機能や薬理反応に関与して いる。 これまで、受容体は一つの遺伝子から一つの表現型しか発現しないと考えられてきた。 私は、単一受容体遺伝子から複数の表現型が発現し生体で機能していることを発見し、 「表 現型の薬理学Phenotype Pharmacology」 という新しい薬物治療概念を提唱した。その基と なる主な発見は以下の2点である。 1)アドレナリン受容体のうち、α1A遺伝子からはα1Aだけでなくα1Lという薬物感受性が異なる 表現型が発現し、特に下部尿路ではα1L 表現型が主に機能していて新規排尿障害治療薬 のターゲットになる。 2)ムスカリン受容体のうち、中枢ではM 1サブタイプが細胞膜だけでなく細胞内にも発現し、 記憶・学習など高次脳機能に別々に関与していること、そして細胞内受容体が新規アルツ ハイマー病治療薬の標的分子となる。 以上の成果はまた、一つの神経伝達物質が複数の受容体表現型に同時に作用するという 神経伝達機構の多様性をも説明する。 坂下 光明 Mitsuaki Sakashita (昭和52年卒)静岡薬科大学21回生 日星産業株式会社 専務取締役 [ 受賞題目 ] 新規高コレステロール血症治療薬の開発 ̶ HMG-CoA還元酵素阻害剤・ピタバスタチンの創生 ̶ 略歴: 昭和52年静岡薬科大学製薬学科卒。昭和54年同大学院薬学研究科修士課程修了。昭和54年日産化 学工業(株)入社。昭和大学医学部第一薬理学教室 研究員。平成4年昭和大学博士号(医学)。平成20年日産化 学工業(株)取締役 医薬品事業部長。昭和大学 医学部第一薬理学教室 兼任講師。平成26年日産化学工業 (株)執行役員 医薬品事業部長。平成28年日星産業(株)専務取締役。 受賞題目の概要: 高コレステロール血症は動脈硬化性疾患の重要な危険因子の1つである。日本においては 近年の食生活の欧米化に伴い脂質異常症の患者が増加し、有効性および安全性の高い治療 薬の開発・上市が望まれていた。 その様な中、薬物治療において、コレステロール生合成に関わるHMG-CoA還元酵素を阻 害する薬物が、最も有効的に血中LDLコレステロールを低下させる事が判明し、世界中の製 薬会社が独自の開発を進めていた。 日産化学工業(株)においても有効性および安全性の高い新規治療薬の創生を目指して、 基盤技術である有機合成力を駆使し、数々の構造変換に注力し、有望な化合物群を見出し た。その後、日産化学工業株式会社は興和株式会社とライセンス契約を締結し、興和株式会 社が主導し、共同開発を進めることにより、ピタバスタチンを創生し平成15年、日本において 商品名リバロとして上市した。 ピタバスタチン(リバロ)は有効性が高く、薬物相互作用が少なく安全性の高い治療薬とし て広く認知・使用されており、日本はもとより、世界21ヵ国においても発売され、医療に大きく 貢献している。
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