二酸化炭素クラスターイオンの赤外光解離分光

二酸化炭素クラスターイオンの赤外光解離分光
(広島大院理a、東大院総合b)○井口佳哉a、村岡梓b、川上愛子a、永田敬b、江幡孝之a
分子クラスターイオン
• イオンコア構造・電荷分布
↓
構造、反応性などを決める基本的因子
• 電荷共鳴相互作用
Ψ–
φ(A1) • φ(A2+)
φ(A1+) • φ(A2)
Ψ+ = (0.5)1/2•φ(A1+)•φ(A2) + Ψ+
(AA)+
A+ + A
電荷が非局在すると電荷共鳴吸収帯が可視-近赤外領域に出現する
(0.5)1/2 •φ(A1)•φ(A2 +)
(CO2)n+ 光解離分光
Smith and Lee, J. Chem. Phys. 69, 5393 (1978).
Johnson et al., Chem. Phys. Lett. 112, 285 (1984).
可視領域に強い電荷共鳴吸収帯 → ダイマーイオンコア構造
振動構造が観測されず、クラスター構造に関する情報はほとんど得られない
モノマーイオンコア構造が存在しないことは証明していない
本研究
(CO2)n+の構造に対し赤外分光によりアプローチする
モノマーイオンコア構造は存在しないのか
ダイマーイオンコアはどのような構造なのか
溶媒分子はイオンコアに対しどのように溶媒和していくのか
■ 赤外光解離分光法 CO伸縮振動とその結合音
■ 量子化学計算
密度汎関数法(安定構造、振動解析) Wavenumber
実験装置図
2000-3800
cm-1
Yield of
(CO2)2+
(CO2)3+ *
解離
hν
(1-5 mJ/pulse)
(CO2)3+
1000-2200 cm-1 (0.2-1 mJ/pulse)
親イオンと娘イオンを分離
測定イオン種を選別
(CO2)2+
+
CO2
(Dissociation
Threshold)
(CO2)n+ 赤外光解離スペクトル
C2O4+ asym. CO
C2O4+ sym. CO
C2O4+
CO2+
C2O4+
CO2
CO2 asym. CO
n = 3
fragment ion intensity
n = 4
n = 5
(CO2)n+がC
n =2O6
4+イオンコア構造
band
を持つこと
position
species
(cm-1)
+イオンコア構造がほとんど
CO2
n = 7
存在しないこと
CO2
2349.3
CO2+
1423.08a
を確認した
n = 8
C2O4+
(マトリックス中)
wavenumber /
cm-1
aKawaguchi
bZhou
2130.8b
1274.4b
et al., JCP 82, 1174 (1985).
and Andrews, JCP 110, 6820 (1999).
C2O4+の構造と赤外スペクトル
(0.50)
(CO2)3+
2.319
(0.50)
C2h
ΔE = 0 eV
(0.43)
IR intensity
X
X
C2O4+ C2h
C2O4+ C2v
2.707
CO2+
(0.57)
(0.57)
C2v
ΔE = 0.16
Gaussian98 B3LYP/6-311+G*
括弧内の数値は電荷分布を表す
(cf. Zhou and Andrews, J. Chem. Phys. 110, 6820 (1999))
CO2
(CO2)3+の赤外スペクトルは、
+
km/mol
(× 0.5)
C2h200
のC
2O4 イオンコアと溶媒
CO2のスペクトルの重ね合わせ
で説明できる
-1
wavenumber / cm
赤外光解離スペクトル
ν3
C2O4+
2ν2 + ν3
CO2
9
13
ν1 + ν3
6
8
70
24
20
6
61
30
5
36
24
7
6
5
5
4
5
5
50
26
6
7
33
(図中の数字は半値全幅を表す)
n = 3→4に伴い2130cm-1のバンドが消滅
n = 5以上でC2O4+イオンコア由来のバンドの幅が大きく増加
赤外スペクトルのサイズ依存性
数値はMulliken chargeを表す
11 (ag) 2090 cm-1
0 km/mol
12 (bu) 2143 cm-1
311 km/mol
対称性の変化によりスペクトルが変化?
3個目以降の溶媒分子はIVRを促進する位置に
溶媒和していくのではないか
問題点
sym. CO
FWHM = 20
18
9
17
n = 3
19
4
(0.339)
(0.331)
15
(0.331)
5
13
6
9
7
8
8
Gaussian98 B3LYP/6-311+G*
wavenumber / cm-1
Sym. COではn = 5以上で逆に
バンド幅が狭くなる
量子化学計算でC2O4+イオンコア構造が出
現しない。電荷が全体に非局在してしまう。
まとめ
■(CO2)n+の赤外光解離スペクトル(1000-3800 cm-1)を観測した
■ C2O4+イオンコアがC2h構造をもつことを確認した
■ C2O4+イオンコア由来のバンドのサイズ変化を、イオンコアに対する
溶媒和により説明した
■今後の展望
量子化学計算による考察
その他の3分子クラスターイオンへの拡張(CS2、N2O、OCS、SO2等)
謝辞
装置製作において以下の皆様に大変お世話になりました。御礼申し上げます。
西信之教授、十代健助教、根岸雄一助教(分子研)大下慶次郎研究員(理研)
古屋亜理研究員(東北大、現分子研)中西隆造助教(東大)