地域性に おける おもてなし - さくらコミュニケーションズ

キラリと光る
おもてなしの心⑧
地域性に
おける
おもてなし
雪国を訪れる人は、雪国の人の根底に流れる「素朴なあた
たかさに触れたい」
という欲求を持つのです。このように、
おもてなしを円滑にするための環境が実によく整っている
のが雪国なのです。
☆緊張感を与えない南国のおもてなし
一方、南国の人は一般的に開放的な気質と言われます。
とにかく、おおらかでとびきりの明るさが魅力です。ハワ
イやバリに代表される南国のおもてなしは、
「その場所に行
くだけで癒される、くつろげる」という、緊張感を与えな
株式会社
さくらコミュニケーションズ
代表取締役
古川智子
い目配りが人々を虜にするのでしょう。何度も足を運びた
くなる秘訣は、この「何もしないおもてなし」にあるので
す。もちろん、全く何もしないという意味ではなく、必要
なときはすぐに駆けつけますが、それ以外はご自由にどう
ぞという姿勢と、暖かな気候からくる、ストレスを感じさせ
ない純粋な笑顔が、ストレスを抱えている人々にとって最
☆身も心も温める雪国のおもてなし
高の心地よさにつながるのです。
疲れ果てた体と冷えきった心を温めて欲しいときには、
弊社は全国各地でセミナーをさせていただいております
温泉に入り、お酒を飲み、あたたかい料理を食べて布団の
が、最近では海外にも出張する機会があり、おもてなしの
中でぬくぬくしたくなります。多忙で煩わしい日常生活か
地域性を実感することが多々あります。今回は、
「地域性に
ら離れて体と心を癒したいときには、あたたかい陽光を浴
おけるおもてなし」についてお話させていただきます。
び、芳しい香りのする花々に囲まれて、海やプールに飛び
地域については、雪の降る北国と、雪の降らない南国の
二つに分けることができます。一般的に雪国で生活する人
は忍耐強い気質であると言われます。長い冬を越すために
は、連日の除雪作業はもちろんのこと、昔であれば何日も
外に出られない日が続くことも多くありました。
このような厳しい生活環境が雪国の人を忍耐強くし、雪
込み、爽やかにリフレッシュしたくなります。
☆都会と田舎でも異なるおもてなし
地域性は、都会や田舎で分類して考察することもできま
す。例えば、おもてなしの主軸として、都会では「案内」が、
田舎では「飲食」
(郷土料理)となることも多いケースです。
国ならではのおもてなしの心を育んだのです。例えば、雪
江戸時代の歌舞伎なども地方から江戸にきた人をおもてな
が降っているとても寒い日に、突然、見も知らない人が家
す場所であったと言います。オペラ・コンサート・スポー
に訪ねてきたら、雪国の人は間違いなく自宅に招き入れる
ツスタジアム・博物館などは都会でしか味わえないスポッ
でしょう。さもなければ、その客人は外で凍え死んでしま
トです。最近「はとバスツアー」がヒットしている理由もこ
うことになるからです。これこそが自分の都合よりも相手
こにあります。また、田舎では、その土地ならではの食材
を心配するという「おもてなしの心」の原点であり、雪国の
で作る料理や飲み物を味わうことができます。ここ数年の
人は「困っている人を助ける」という精神を持っています。
地域活性化において、食のブランディングを通じた町おこ
また、雪国の人は、身体を温めるためにお酒を飲む習慣が
しを進める自治体は安易に急増しましたが、その理由もこ
あります。日本の日本酒、ロシアのウォッカなどはこのた
こにあります。
めに生まれたと言われます。
さて、皆様、私の研究では世界の人々に共通することな
ロシア・ウォッカ博物館のニキシーン館長はこう言いま
のですが、人はそのときの心の状態によっておもてなしを
す。
「ロシアは寒い国で、いつも辛い生活をしている。だ
されたい場所を無意識のうちに選んでいます。皆様が次の
から、ロシア人にとってウォッカ以外のお酒は助けになら
お休みに旅をするとしましたら、どのようなおもてなしを
ないのさ」と。そして、お酒を酌み交わすというコミュニ
して欲しいと思われるでしょうか♪
ケーションこそが相手との心の距離を縮め、心を温めます。
次回は、自治体のおもてなしについてお話します。
No.264 2010.10-