三江線の斜面管理について

鉄道における土工等設備の防災管理について
Ⅰ.維持管理
1.はじめに
列車の安全、安定輸送を確保するために『土木建造物の機能を適切に維持する』、
『鉄道線路を災害から
守る』ということが必要である。そのためには土木建造物がその機能を維持しているかどうか適切な時期
に検査をしなければならない。当社の検査については、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」に基
づき当社の技術基準を定め、次項以降のとおり維持管理を行っている。
【鉄道に関する技術上の基準を定める省令(H13.12.25 国土交通省)】
第 90 条 施設及び車両の定期検査は、その種類、構造、その他使用の状況に応じて、検査の周期、対象
の部位、及び方法を定めて行わなければならない。
2.構造物の検査と検査時期
初回検査
・・・・・・・・・・・・・原則、共用開始前
通常全般検査
・・・2 年
特別全般検査
・・・10~20 年(構造物で異なる)
全般検査
構造物検査
個別検査
・・・健全度Aの構造物発見時および必要の都度
随時検査
・・・必要の都度
3.検査対象
切盛土や土留壁などの「土工設備」
、排水こうなどの「排水設備」、落石止めを目的とした さくや擁壁
などの「防護設備」といった土工等設備に加え、自然斜面をはじめとして線路周辺の環境変化も検査対象
としている。
C 落石おおい
○
C 落石止さく
○
A のり面工
○
C 砂防えん堤
○
B 下水きょ
○
A 土留壁
○
C 落石止擁壁
○
B伏 び
○
C 落石止さく
○
B 排水工
○
A 土留擁壁
○
A切 取
○
A盛 土
○
【検査対象となる土工等設備のイメージ図】
設備区分
A 土工設備
○
B 排水設備
○
C 防護設備
○
4.検査(通常全般検査)
構造物が置かれている環境条件および既往の検査記録に基づき適切な周期での検査を行っている。
(1)主な調査項目
①変状に対する調査
・・・設備状態、建築限界を支障する事象(倒木・倒竹等)の発見 等
②不安定性に対する調査・・・立地条件、周辺環境、変状以外の状態 等
(2)調査方法
目視を基本に、必要に応じて各種計測機器を用いて盛土や切土の勾配やのり長、変状の進行性、盛土自
体や切土表層の地盤強度等を測定する。また斜面カルテを作成し、これを活用する。
【参考】斜面カルテ
(1)目的
カルテは、土構造物の斜面状態を現地調査、目視確認したうえで結果を記録するもので、対象とする
土構造物は盛土、切土、自然斜面、渓流、トンネル坑口や素地等である。2年に1回実施する通常全般
検査を実施した上で、
概ね 10 年~20 年程度で周辺環境を含め全面的に見直してカルテを更新している。
(2)斜面カルテ例(別紙)
5.判定
全般検査および随時検査を実施した土工等設備に対してABCSの4段階に区分している。
区分
健全度A
健全度B
健全度C
健全度S
状態
運行保安、旅客及び公衆などの安全ならびに列車の正常運行の確保を脅かす、またはその恐
れのある変状等があるもの
将来、健全度Aになる恐れがある変状等があるもの
軽微な変状等があるもの
健全なもの
⇒三江線の土工等設備においては、Aランクの占める割合が全体の3割に及ぶ
6.措置
土工等設備の変状の進行や崩壊の可能性が疑われた場合その兆候についてより注意深く調査を行う「監
視」、崩壊防止や被災した場合の機能回復を目的とした「補修・補強」および補修・補強が技術的に困難
な場合などは「改築・取替」を実施している。
また周辺の安全が確保できないと判断した場合には、列車運行速度の制限などの運転規制や近接する道
路や区域の通行規制といった「使用制限」の措置を講じることもある。
Ⅱ.気象条件による運転規制
雨、風、地震など災害時における運転取扱いをあらかじめ定め、列車事故の防止を図っている。
種別
雨規制
風規制
地震規制
概要
降雨が、盛土区間や切取区間の表面から路盤内部
に浸透すると、路盤が緩み、のり面崩壊や局所的
な陥没が発生する恐れがある。このため降雨の状
況に応じて運転規制を定めている。
強い風により、列車脱線、橋りょう下への落下等
の事故を未然に防止するため、風速計を設置し
て、ある一定以上の風速に達した場合の運転規制
を定めている。
地震による線路災害が発生する恐れがあり、主要
な駅に設置された地震計の示す地震加速度(gal
値)がある大きさ以上に達した場合の運転規制を
定めている。
規制値に達した場合の取扱い
徐行もしくは運転見合わせ
(運転見合わせの場合は保守係員による
点検後、徐行を経て通常速度で運転再開)
運転見合わせ
(小康状態であることを確認後、基本的に
は徐行を経て通常速度で運転再開)
一旦停止後、揺れの程度に応じて、通常
速度での運転再開、徐行もしくは運転見
合わせ
(運転見合わせの場合は保守係員による
点検後、徐行を経て通常速度で運転再開)