先進国の国債利回り低下等を踏まえた欧米非国債投資

Vol.136
企業年金豆知識
2016.8
明治安田生命保険相互会社 総合法人業務部 東京都千代田区丸の内2-1-1
今回のテーマ:先進国の国債利回り低下等を踏まえた欧米非国債投資について
日銀によるマイナス金利政策のもと、国内債
券の収益率がマイナス圏あるいは超低位で推
移する状況が常態化しているなか、国内債券代
替資産として為替ヘッジ付きの外国債券(以
下、ヘッジ外債)が従前にも増して注目を集め
ています。
その一方で、日欧中銀による金融緩和の継続
等を背景に海外長期金利も低下傾向にあるこ
とに加え、ドル需要の高まりに伴う為替ヘッジ
コストの上昇を受けて、欧米国債への投資妙味
は以前に比べて薄れつつあります。
こうした状況を踏まえ、今回は、国内債券の
代替を念頭に置きつつ、為替ヘッジ付きであっ
ても一定の収益確保が期待できる欧米の非国
債に焦点をあててみたいと思います。
らず、生保(一般勘定)や地銀などでも外債へ資
金をシフトさせる動きが活発になっています。
2.欧米国債の状況
一方、海外に目を向けると、金利低下は日本に
限らず、欧米国債の利回りも低下傾向にあります。
(図表 2) 日米英独 10 年国債利回り
(%)
2.5
2
1.5
1
0.5
日本
独国
0
米国
英国
-0.5
15/7
1.高まるヘッジ外債のニーズ
昨年公表された企業年金連合会の調査結果で
は、企業年金の運用における国内債券の代替先と
して、オルタナティブやアンコンストレインドと
いった非伝統的な運用商品を抑え、ヘッジ外債が
上位に入っています。
(図表1) 国内の超低金利持続による収益低迷、
将来の金利上昇(懸念)に対する対応策(複数回答)
内 容
国内債券の構成比率を圧縮
割合
46.3%
ヘッジ外債の採用または組入比率の増加
36.9%
一般勘定の採用または組入比率の増加
債券以外を対象としたオルタナティブ商品の採用・組入増加
31.7%
28.2%
債券を対象としたオルタナティブ商品の採用・組入増加
債券アンコンストレインド運用商品の採用
26.8%
14.9%
物価連動国債・変動利付国債の採用
ハイイールド債やバンク・ローンなどのクレジット戦略
の採用・組入増加
シティ世界国債Indexやバークレイズグローバル総合
Indexをベンチマークとした運用商品の採用
短期債運用商品の採用
12.7%
その他
10.6%
98.9%
1.1%
※「対策をとった」または「対策を検討中」
と回答した基金型DB373基金が対象
15/9
15/11
16/1
16/3
16/5
16/7
出所)Bloomberg
回答
無回答
6 月下旬には、英国のEU離脱動向を受けて、
ドイツ長期金利がマイナス圏へ突入し、その後米
英国債の利回りも過去最低水準に至っています。
日本に先行してマイナス金利を導入したユー
ロ圏に比べ、米英の長期金利の水準は高く、イー
ルドカーブのフラット化も進んでいないものの、
米英債券への投資にはユーロ圏よりも高いヘッ
ジコストを伴います。特にドル需要の高まりから、
米債投資にかかるヘッジコスト上昇が顕著です。
かかる欧米国債の利回り低下や為替ヘッジコ
ストの上昇に伴い、欧米国債への投資からは、従
前ほどの収益獲得が期待できない状況になって
います。
12.2%
3.欧米債券市場での非国債の位置づけ
11.7%
11.4%
出所) 企業年金連合会「資産運用実態調査結果と解説(2014年度)」
今年に入って、日銀のマイナス金利導入に伴い
長期金利がマイナス圏に沈むと、年金基金のみな
先進国における投資適格(格付 BBB 以上)の
債券市場を比較した場合、日本では、国債が大宗
を占め、社債の市場規模は小さく、証券化商品の
取扱いは僅少ですが、欧米においては、社債、証
券化商品といった非国債の占率が高く、米国では
およそ 2/3 が非国債となっています。
*内容等についてのご照会は当社法人営業担当者にお願い申しあげます。
この市場特性から、日本の投資家が欧米債券へ
の投資を増やすにつれて、非国債の比重が高まっ
ていくことが見込まれます。
(図表 3) 先進各国市場の投資適格債券の構成
国債
政府関連債
社債
証券化商品等
計
日本
92%
6%
2%
0%
100%
米国 ユーロ圏
34%
59%
11%
16%
27%
16%
28%
8%
100%
100%
英国
71%
8%
18%
3%
100%
注) バークレーズベンチマークデータをもとに明治安田生命作成
4.国内債券代替としての欧米非国債
以上を踏まえると、国内債券に代わる安定収益
資産を外国債券に求める場合、ヘッジコストを控
除しても一定の収益確保が期待でき、ミドルリス
ク・ミドルリターンの特性を持った投資適格の欧
米非国債が有力候補のひとつになるものと考え
られます。
最大規模の米国市場における投資適格債券の
概観は下図のとおりで、続く①~④に米国非国債
の具体的な投資対象について概略を記します。
(図表 4) 米国投資適格債券市場の概観(イメージ)
証券化商品
リ
タ
ー
ン
政府
機関債
社債
米国債(格付 AAA)に準ずる高い信用度と流動
性を保持。利回りは米国債よりもやや高い。
②地方債
州や郡、市などの地方自治体政府が発行する債
券で、発行体自身の信用力によって元利金の支払
いを保証する一般財源保証債と、自治体が運営す
る社会インフラ事業等からの収入のみを償還原
資とするレベニュー債(特定財源債)に分かれる。
格付 A 以上が大半で、格付が同水準の社債と比
べてデフォルト率が低く、利回りは米国債に比べ
て概ね高水準。
③証券化商品(用語解説コーナーご参照)
代表的なものは、住宅ローン債権を担保に発行
されるMBS(モーゲージ証券)で、米国の債券
市場に占める割合は社債と同水準の 3 割弱。その
多くは、政府系機関が元利払いを保証しており、
米国債と並ぶ高い信用力を有する。住宅ローンの
繰上返済に伴う期限前償還の影響を受けるため、
そのリスク相当分が上乗せされて同格付の債券
より高い利回りを享受できる。
④社債
米国の社債市場は、日本の十数倍の規模を有す
るとともに、国内の銀行・保険・年金基金が 7
割以上を保有する日本と異なり、米国では海外投
資家と投資信託の保有で約 5 割を占めるなど、圧
倒的な厚みと拡がりを持つ。投資適格社債の対米
国債スプレッドは 7 月時点で百数十 bp 程度。
地方債
5.終わりに
国債
リスク
①政府機関債(エージェンシー債)
政府後援機関および連邦政府関連機関が自ら
の運営費用を賄うために発行する債券。いずれも
冒頭で触れた企業年金連合会の調査結果にも
あるとおり、ヘッジ外債以外にも様々な選択肢が
ありますが、安定収益資産たる国内債券の代替と
いう前提であれば、収益率のみならずリスクも見
極めた慎重な商品選択が肝要と思われます。
(文責:団体年金コンサルティング室
小野)
用語解説コーナー : 証券化商品
○金融機関や企業が保有する特定資産(様々な債
権や不動産など)とそれから発生する キャッ
シュフローを担保(裏付け)として発行される
有価証券を指します。
○米国では、MBSの他に、小規模ながら各種消
費者ローン債権を担保にしたABS(資産担保
証券)があります。
○また、証券化商品に類似したものとして、カバ
ードボンドがあります。保有する債権を担保と
して主に欧州の金融機関が発行する社債で、S
PC(特別目的会社)を通じて発行されるMB
SやABSとは異なり、発行する金融機関自体
の信用力も伴うことから、通常の社債と比べ信
用力が高まります。
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