16 超高張力鋼板の穴広げ性向上のためのせん断切口面改善方法

16 超高張力鋼板の穴広げ性向上のためのせん断切口面改善方法
塑性加工研究室 池田 豊
引張
穴広げ加工
せん断
あ切口面
高張力鋼板を用いたサスペンションアーム
板材
せん断加工
穴広げ加工
せん断
切口面
穴広げ割れ
板材端部で発生する引張応力による割れ
せん断切口面性状
割れ
り
せん断切口面改善方法
だれ
板材
割れ
せん断面
粗い
バリ
せん断切口面
割れ
破断面
390MPa級鋼板
980MPa級超高張力鋼板
穴広げ加工後
穴広げ性向上のためのせん断切口面改善方法
1) 慣用穴抜き
最適なクリアランス比の調査
2) カウンターブランキング
割れの起点となる
破断面の低減
3) 破断面平滑加工
破断面粗さの低減
1.慣用穴抜きにおける最適な
クリアランス比の調査
2.カウンターブランキングによる
破断面の低減
3.破断面平滑加工による破断面
粗さの低減
実験に用いた高張力鋼板
材質
JSC980Y
JSC780Y
JSC590R
板厚
t/mm
1.41
1.41
1.40
降伏応力 引張強さ
/MPa
/MPa
620
1027
558
823
446
600
伸び
/%
18.7
19.0
26.2
n値
0.12
0.12
0.14
慣用穴抜き加工方法
パンチ
(φ10)
t
板押え
ダイス
ブランク (防錆油塗付)
130×120×t
クリアランス
クリアランス
クリアランス比c =
t
c = 4∼30%
慣用穴抜き加工方法
t
板押え
パンチ
(φ10)
ダイス
ブランク (防錆油塗付)
130×120×t
クリアランス
クリアランス
クリアランス比c =
t
c = 4∼30%
穴広げ加工方法
φ72
板押え
60°
パンチ
12
6543
R5
ダイス 穴抜き
ブランク
バリダイス側
拡大図
穴広げ加工の評価方法
穴抜き
ブランク
ダイス
板押え
割れ貫通
パンチ
穴広げ装置
d0
d
穴広げ前
穴広げ後
d−d0
限界穴広げ率λ =
d0
慣用穴抜きにおける
限界穴広げ率と穴抜きクリアランス比の関係
適正クリアランス比
破断面
60
50
JSC590R
圧延方向 5mm
破断面
30
外側
40
穴広げ前
20
10
0
内側
限界穴広げ率λ / %
せん断面
JSC980Y
5 10 15 20 25 30
穴抜きクリアランス比c / %
35
割れ貫通
λ=28%
せん断面
穴広げ後
(JSC980Y,c=20%)
割れ
1.0mm
慣用穴抜きにおける
限界穴広げ率と最大⊿hの関係(JSC980Y)
⊿h
高さ
レーザ顕微鏡により切口面を測定
限界穴広げ率λ / %
30
円周方向位置
c=20%
12%
20
25%
16%
8%
30%
10
0
バリ過大
10
20
30
40
最大⊿h / μm
4%
50
1.慣用穴抜きにおける最適な
クリアランス比の調査
2.カウンターブランキングによる
破断面の低減
3.破断面平滑加工による破断面
粗さの低減
破断面を低減するカウンターブランキング
上パンチ
上ダイス
ブランク (防錆油塗付)
下ダイス
下パンチ
破断面を低減するカウンターブランキング
上ダイス
上パンチ
ブランク (防錆油塗付)
下ダイス
下パンチ
破断面を低減するカウンターブランキング条件
上ダイス
パンチモーション
(φ10 )
s1
(φ10.06 )
上パンチ
下ダイス
(c1=4% , 12% , 20%)
下パンチ
上パンチストローク
(0∼60%)
(b) 上パンチによるせん断
s2
(φ10.05 ,10.28 ,10.50 )
(a) 初期状態
下パンチストローク
(0∼120%)
(c) 下パンチによるせん断
(d) 穴抜き
慣用穴抜きとカウンターブランキングされたせん断切口面
だれ
0.2mm
だれ
せん断面
せん断面
破断面
破断面
バリ
JSC590R
0.05mm
下部
せん断面
だれ
JSC590R
だれ
JSC980Y
JSC980Y
(a) 慣用穴抜き
(c=20%)
(b) カウンターブランキング
(c1=12%, s1=30%, s2=90%)
カウンターブランキングにおける
限界穴広げ率と引張強さの関係(c1=12%, s1=30%, s2=90%)
限界穴広げ率λ / %
60
カウンターブランキング(c1=12%)
50
40
慣用穴抜き(c=20%)
30
20
10
0
穴広げ性向上
600
800
1000
引張強さ / MPa
カウンターブランキングにおける
限界穴広げ率と最大⊿hの関係(c1=12%, s1=30%, s2=30∼90%)
限界穴広げ率λ / %
60
慣用c=20%
JSC590R
50
40
30
20
カウンター
ブランキング(c1=12%)
慣用c=20%
カウンター
JSC980Y
ブランキング(c1=12%)
10
0
5
10 15 20 25
最大⊿h /μm
30
1.慣用穴抜きにおける最適な
クリアランス比の調査
2.カウンターブランキングによる
破断面の低減
3.破断面平滑加工による破断面
粗さの低減
破断面粗さを低減する破断面平滑加工
パンチ角度α = 破断面角度θ
ダイス
穴抜き
ブランク
バリ側
破断面角度
θ
パンチ角度α
破断面粗さを低減する破断面平滑加工
パンチ角度α = 破断面角度θ
平滑加工パンチストロークstp
ダイス
穴抜き
ブランク
破断面角度
θ
パンチ角度α
接触
バリ側
stp=1.0mm
破断面粗さを低減する破断面平滑加工条件
φ10.72
ダイス
α° 穴抜き
ブランク
板押え
パンチ
φ12
JSC980Y
だれ
だれ
せん断面
破断面
ニ次
せん断面
破断面
せん断面
θ
(a) 二次せん断面
有り(c=4, 8%)
JSC980Y
θ
(b) 二次せん断面
無し(c=12∼30%)
穴抜き
4 8 12 16 20 25 30
クリアランス比 c / %
破断面角度θ / ° 10 10 5 11 13 19 20
パンチ角度α / °
10 10
5
破断面
10 15 20 20
破断面平滑加工前後の切口面構成と
穴抜きクリアランス比の関係(JSC980Y, α≒θ, stp=1.0mm)
せん断面
せん断面
平滑加工面
切口面構成 / %
100
だれ
せん断面
75
二次
せん断面
50
破断面
25
0
バリ
-25
0 5 10 15 20 25 30 35
穴抜きクリアランス比c / %
(a) 加工前
100
切口面構成 / %
破断面
75
破断面
50
25
せん断面
だれ
平滑加工面
0
バリ
-25
0 5 10 15 20 25 30 35
穴抜きクリアランス比c / %
(b) 加工後
破断面平滑加工における限界穴広げ率と
穴抜きクリアランス比の関係(JSC980Y, α≒θ, stp=1.0mm)
50
破断面平滑加工
平滑加工面
40
圧延方向 5mm
1.0mm
30
割れ貫通
20
0
慣用穴抜き
5 10 15 20 25 30
穴抜きクリアランス比c / %
35
λ=45%
穴広げ後
外側
10
割れ
内側
限界穴広げ率λ / %
60
破断面平滑加工における
限界穴広げ率と最大⊿hの関係(JSC980Y)
限界穴広げ率λ / %
60
50
40
加工後
加工後
20%
25%
30
加工前
c=20%
20
加工前
c=25%
10
0
5
10 15 20
最大⊿h / μm
25
30
まとめ
1)慣用穴抜きにおいて,最適な穴抜きクリアランス比
は切口面の最大⊿hの低いc=20%であった.
2) 780MPa級までの高張力鋼板では,カウンター
ブランキングによりバリの抑制と切口面の破断面
を低減でき,穴広げ性が向上できた.
3)破断面平滑加工により,切口面の最大高さを低減し
平滑にすることによって,超高張力鋼板の穴広げ性
を1.6倍向上できた.