H26.3.4 (株)ディ・アンド・ディ 素地調整時の Sm/Rz 管理について 沖縄地区鋼橋塗装マニュアルにおいて、塗膜耐久性に及ぼす影響は、ケレン程度が 49.5%と非常に大きく防 錆上最重要因子であるものの、素地調整の仕上がり程度を理論的に定めることは難しいので素地調整基 準として ISO を採用すると記述されています(但し、塗り替え塗装における素地調整はケレングレードで規定され ています)。一般的に、塗装の素地調整に用いられている基準としては、ISO 表面洗浄度(St2・・・Sa2・1/2 等)、ケレンのグレード(1種から 4 種)がありますが、これらは被塗面の清浄度を規定しているのみとなっていま す。 一方、塗膜の耐久性には、被塗面と塗料との付着力が大きな影響をもっており、この付着力は被塗面と 塗料との分子間力と接着面積により支配されています。この分子間力は塗料と被塗面の種類によって規定 され、接着面積は素地調整によって大きく影響されることとなります。 重防食塗装に代わる防食としてアルミニウム、亜鉛等の金属溶射が採用されることがありますが、鋼面に塗 装塗膜より重い金属を付着させるためには付着力を確保することが重要であるため、その素地調整には、 接着面積を数値的に管理する手法として、鋼面の粗面度を Sm/Rz で規定する手法が採用されており、一般 的には Sm/Rz<4 と規定されています。ケイ砂を用いる塗装用ブラストによって得られる Sm/Rz は 10 前後です ので、溶射用ブラストにはアルミナグリッド等が使用されています。 また塗膜は、乾燥および硬化時、屋外暴露において経時的に内部応力が発生し、この内部応力が塗膜 の引張り応力以上に蓄積されると、塗膜にクラックが発生し、更には塗膜剥離に至ることとなります。この内部 応力は有機系塗料においても発生していますが、アルコシシシランを主成分とした無機系塗料では発生が大きく、 それを抑制することが難しいことより、従来は、アルコキシシランにエポキシ、ウレタン等の有機系を加えた有機無機ハ イブリッド塗料が開発され販売されてきました(柔らかい有機系の含有により内部応力発生を抑制)。弊社は、 アルコキシシランの組成、触媒種、添加剤の最適化により、この内部応力発生を大幅に抑制した 100%無機系塗 料パーミエイト HS-200 系を開発しご好評を得ておりますが、内部応力発生を零とすることは不可能であるため、 塗膜の耐久性維持のため、塗膜の厚さ制限による内部応力発生抑制および付着力確保のため被塗面の 粗面度 Sm/Rz を規定させて頂いております。 粗面度 Sm/Rz と塗膜耐久性との相関研究を種々条件下で長期間実施し、動力工具を用いたケレンにおい て得られる最小値近傍の Sm/Rz25 前後であれば、規定値の塗膜厚さにおいて 30 年以上に塗膜耐久性を 確保しうると判断し、これを素地調整基準とさせて頂いております。当然ながら塗装用ブラストで得られる Sm/Rz は 10 程度であり、より好ましい状態となります。 微小クラック 発生期間 年 素地調整による耐用年数(カラー塗膜60μm) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 0 10 20 30 40 50 粗面度 Sm/Rz 以上
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